「呼ばれた意味がないじゃないか!」。4月7、8日、第9、10回熱海市議会特別委員会(百条委員会)が開催されたが、7日の参考人「前土地所有者の関係人」は終了後、こう激怒した。同氏は盛り土造成地が現所有者に渡った当時を知る人物。本来は現所有者をめぐる県(東部健康保健センター)、市職員の不可解な対応を証言するはずだったが、事前通告された質問は黙殺。県と熱海市は行政の不作為から逃れ、また現所有者を擁護してはいないか。それを物語る一幕だった(タイトル写真はメガソーラー着工時)
現場責任者が 開いた 4日のナゾ記者会見の ウラ側
無論、前所有者を擁護するわけではない。前所有者をめぐっては本来、熱海市だけではなく、小田原市が百条委員会を開催すべきなのだ。しかしここに至って「現所有者守れ」という雰囲気を肌で感じている。最も“ババ ”を掴ませやすい関係人物に責任転嫁しての幕引きはあってはならない。
まず7日の百条委員会前に起きた不可解な事態を紹介しておこう。
「〇さん(現場責任者、第7回参考人)ならよくゴルフ練習場で見かけますよ」(神奈川県西部住民)
第7回 百条委員会「現場責任者」証言は 崩壊した!で検証したこの人物。このところ妙に“余裕綽々 ”の態度が伝わってくる。本来は重要人物で、昨年は複数の報道陣が追跡するも、その消息は知れなかった。そして先月17日、第7回百条委員会では「リモート会議」で参考人招致に応じるわけだが、前所有者の「恫喝音声」を流した上で「盛り土には一切関与していない」と主張した。
現場責任者が伊豆山造成の中心人物であることは明白。「関与していない」という証言はありえない。このため同氏の証言は「信憑性がない」と一部議員、報道陣からも声が挙がった。
当時、残念ながら「現場責任者」の傍聴について著者は「退席」と相成った。ただ当日、「リモート会議」と聞かされた時に意外だと思った。同氏は高齢者。どのようにリモワ環境を準備したのか、と疑問を感じた。
関係者は舞台裏を明かす。
「実はその当日、現場責任者の元に自由同和会神奈川県本部役員が同席していたのです。おそらく前所有者のインターネット、文書作成担当だったので協力したのでしょう」
この役員は前所有者(自由同和会神奈川県本部前会長)の“側近 ”で証言通り主にネット、文書作成を担当した。前所有者によれば「(役員は)ネットに詳しいから採用した」という。こうした点からしてリモート会議は同役員がサポートしたと思われる。
現場責任者と同役員は協力関係。だが皮肉な巡りあわせがある。
現場責任者は前所有者と民事訴訟で争った過去を紹介したが、その際
2022年3月21日当サイト記事。
と証言した。本訴訟で前所有者側の書面作成に関わったのが、なにを隠そう同役員なのだ。それが今では前所有者を告発する立場で協力関係にある。ここで重要なのは伊豆山開発をめぐる利害関係は、書面や公文書、登記簿上の名義だけでは推し量れないということだ。伊豆山で浮上する関係人物は何らかの形で交流や利害がある。
さて渦中の現場責任者、百条委員会の証言が「怪しい」との指摘が耳に入ったのだろう。
今月4日、再び熱海市内で記者会見を開き「前所有者の音声」を公開した上で、再び伊豆山開発と無関係だと訴えたという。それを仲介したのがとある市議。現場責任者が「信頼できる仲介人」としての“ご指名 ”だった。しかしこの市議は現所有者との関係が取沙汰されており、8日参考人の一人。
どう考えても不自然だ。長らく“雲隠れ ”だった現場責任者がなぜ一転して積極的に「前所有者」の情報発信するのか、どのように某市議と信頼関係を持ったのか? そもそも「(伊豆山開発と)無関係」を訴えるのも不可解である。というのは盛り土が危険だと行政に告発したのは誰でもない現場責任者なのに、だ。
「前所有者への責任転嫁」というシナリオ作り。こんな不穏な空気を感じざるを得ない。
このような推測を立てた矢先、迎えた7日の百条委員会、「前土地所有者の関係人」の怒りは図らずもその推測を裏付けた気がしてならない。
東部健康保健センター「盛り土は 現所有者が処理する」
「前土地所有者の関係人」への質問は本来、別の委員が担当するはずだったが健康上の理由で欠席。変わって質問したが先の“ 記者会見セッティング市議”だった。
ところが質問というのが「前所有者との出会い」「別のホテルの解体工事」など。つまり盛り土についての大局的な質問だと思えない。また新旧の土地所有者の売買を知る人物だけに、その点を深堀りすべきだ。
それが冒頭の怒りのコメントに繋がる。
「だったら独自に会見しますよ」。同参考人は百条委員会終了後、記者を集めて本来、行うべき証言を説明した。補足すると百条委員会の質問は事前、通告され参考人は証言内容をまとめておく。ところが肝心部分の質問がなかったというわけだ。
それは行政の不作為と現所有者の責任を示す内容。こんな話である。
同氏と現場責任者らは前所有者と長らく対立関係で盛り土の危険性を警察や県に告発しようとした。意図としては“仕返し ”や“ 灸をすえる”という意味があった。
熱海署に出向いたがその回答は「時効」。平成25年頃、東部健康保健センターに申し入れをしたところ担当職員は
「あの問題(盛り土)は解決している」
と発言したという。その上で「現所有者が全てあの土地を購入しており、現所有者の方で全部処理する。所有権が移った以上、前所有者をどうのこうのとできる筋合いの話ではないから、この件については一切対応できない」
との反応を示したという。この証言が事実であれば県は盛り土が「解決済み」で、現所有者が処理するという認識なのだろう。役所にすれば同和の背景を持つ前所有者とは関与したくない、という本音も十分予想できる。
現在、東部健康保健センターがどのような反応を示すか興味深い。しかし所有権が移った以上、(前所有者について)対応できないというのは確かにその通りだ。
面白いものでもともと参考人らの東部健康保健センターへの告発は「正義心」というよりは「前所有者潰し」が主目的である。行政側はその意図を察知したのかは分からない。つまり「すでに無関係の前所有者の話を持ち込むな」という県東部保健センターの対応が逆に「現所有者の責任」との見解を示唆していないか。
当時、参考人らの前所有者の盛り土告発は頓挫した。なぜなら県・市ともに(前所有者について)「関知せず」との方針は変わらないからだ。
熱海市K職員「現所有者は熱海市に貢献している人」
前所有者は厄介者、現所有者は名士。熱海市の一連の対応からはそんな受け止め方が透けて見える。それは公文書の文面にもあった。現所有者を「名士」と表現。先の参考人の証言からも熱海市の反応が如実に分かる。
以前報じた2007年、熱海市議会建設公営企業委員会で同市水道温泉課長(当時)による
「新幹線ビルディングそのものがですね、同和系列の会社でございまして、ちょっと普通の民間会社と違いますので」
との答弁を覚えているだろうか。本件を象徴する一幕—――。
前所有者をめぐっては小田原市役所ではS職員、熱海市役所ではK職員が“新幹線対応職員 ”として関係者の間で囁かれた。
そこで昨年7月、K職員に「同和系列の会社」答弁について質問したところ
との回答だった。あれから数カ月、状況も大きく変わったが再びK職員が浮上した。
参考人はこう振り返る。
「ある時、K職員が“ 〇〇(前所有者)さんいる?”なんて新幹線ビルディングを尋ねてきた。そうすると“いやー〇〇さん、もういい加減工事をきちんとやってくださいよ ”というとお互い何度も会っているから友達感覚で前所有者は“やるよ、やるKさん悪いな ”という感じだったなあ」
対応が生温い。そう感じる向きもあるだろう。しかし友達感覚などまだマシ。行政と同和関係者はもっと卑屈、まるで主人と下僕。
覚えているだろうか。東日本大震災の時分、部落解放同盟中央本部役員で当時、復興担当相だった故・松本龍氏が岩手県県庁を訪問した際、松本氏は何を思ったか頑張れ日本と書かれたボールを蹴った。「復興のキックオフ」という意味らしい。ボールを取りに行く達増拓也知事はまるで子犬や小動物の戯れだ。あの一件は同和団体と行政、自治体の関係を端的に示している。
K職員の本気度はともかくとして“ きちんとやってください”と言えるだけまだ良心的かもしれない。ところが問題はここから。
「数年前に私用で熱海市役所に行った時、たまたまK職員に会ったんですよ。“前所有者の件は片付いたの? ”と尋ねるとK職員は“現所有者が造成地を購入して、全て処理することになりました。現所有者は熱海市にすごく貢献している人 ”と言ってました。貢献とは何を意味するのかよく分からないけど」(同参考人)
A171の文書にある「名士」とは熱海市役所内で共通認識だったかもしれない。
K職員に確認した。
―新幹線ビルディングでの発言は本当ですか?
訪問した記憶はありますが、発言内容ややり取りは覚えていません。
ー現所有者が処理すると言ったことは?
それもよく覚えていません。
最後にもう一度、今でも「同和系列」答弁は「不適切」だったのか聞いてみた。
「当時(発災後)はいろいろなことを聞かれたので混乱していたかもしれません」
以前よりも認識は改まったようにも思えたし、苦心している様子だった。もちろんK氏だけを責める訳にもいかない。全国の自治体職員はおおかた同和に「無条件降伏」だから。しかしそれ以上に重要なのは県と市は過去、盛り土造成地は「現所有者の責任」と考えていた可能性である。この点はさらに追及しなければならない。
次稿は前所有者がいう造成地の「実行行為者」が参考人になったので、同氏証言を中心にレポートする。当サイトでは千場氏として紹介した人物だ。
土石流事故により、誰が一番利益を受けるでしょうか。二級河川の逢初川が30年の一度の確率の雨に対応できるようになると、上流部の開発がしやすくなります。調整池も川の拡幅も必要なくなるのです。私は前所有者を擁護するものではなく、現所有者が事故により、税金で盛り土を処分し、所有地の開発がしやすくなる、盗人に追銭のような気がします。
同感です。伊豆山は、しっかりした崩れない地盤と安定した森ですから、元の逢初川のままでも大丈夫でした。台風で大水が出ても水は濁りませんでした。残った盛り土を取り除き、木を植えて森を再生するのが本来の復興工事です。上流の開発なんてとんでもない。第二の盛り土等の被災者・住民の心配は無視で、道路や川の工事、公営住宅の建設にゼネコンが繁盛している。土建屋の喰い物にされている感があります。
ご承知の事かも知れませんが、逢初川河口から1〜2km程北側にある稲村地区から熱海ビーチラインにかけての海沿いの土地のかなりの部分が、土石流源頭部の現所有者の所有になっている様です、新宿貿易という会社から買い取ったものが多い様です。他にも熱海駅周辺にも彼の所有地が結構有る様です。この辺の購入経緯とか調べると何かわかるかもしれません。ぜひ貴社で調査して下さい。