密室化した「人権研修・講演会」の惨め哀れ

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By Jun mishina

コロナ禍によって医療、製造、飲食、教育、観光、様々な分野が損害を受けている。またライブ、イベント、祭りなどは政府・自治体による密閉、密集、密接「三つの密」回避呼びかけで自粛、中止、延期が相次ぐ。「人が集まる」と言えば普段は行政が最大級に配慮する人権研修・講演会もさすがに中止、延期を余儀なくされている。こうした活動は講師や運動家の貴重な収入源に違いないが、その話が本当に社会に寄与するのならば謝礼なしでもネット発信してみてはどうか? しかし表舞台で不特定多数の人にスピーチするなど絶対にできないはず。それは単に謝礼の問題以上に人権研修・講演会は“ 密室・密教”化しているからだ。

臨時収入、にしては随分まとまった額である。

非常事態宣言もやむなし、という声も強まる中、それでもデモや集会という面々がいまだに存在する。週末の空白を埋める貴重なデモや集会が中止というのは心理的に動揺することだろう。しかしここは「大人になって」という言葉をかける他ない。その点、かの“人権研修 ”は…。

名言頂きました「ファシィリテーターがパッパパッパ」

人権研修・講演会は自粛を呼びかける側の自治体の行事だけあって開催を見合わせている。現実的な対応をしているようだ。もともと行政側の運動体に対する“ご機嫌伺い”という性格の行事。また人権研修や講演会を受講することが公共事業入札の加点になる場合もある。このため講師選びも大変だ。運動体側の“専属 ”でなければ後々、問題になる可能性もある。自治体が解放同盟推奨の講師を重視するのはトラブル回避の意味もあるわけだ。

別稿で紹介した解放同盟と福井県庁の交渉記録「2014年9月10日人権問題についての懇談会の申し入れ」に露骨なやり取りがあった。

仲間ではない講師に対してはこの通りボロクソ。

解放同盟側から映画と研修会について「部落問題に特化した研修をやったって、言われてるんやけれど、どこに特化されたのか。今、説明聞いても分からんへんわ。そんな説明の仕方やったら。特化した取り組みしましたと、こう言うてんやから、具体的に、どう特化したのか」という質問があった。つまり人権問題の研修といってもテーマは幅広いが「同和問題」に力点を置けという要求なのだ。

それに対しての人権室長の回答とその反応である。例によってぞんざいな口調だが、ともかく人権研修の性格を単純明快に表している。

ファシィリテーターとは会議の進行役、調整役といった意味だが、ここでは講師役も兼ねたようだ。この同盟員は「自分の思いを、パッパパッパ喋られるだけ」というが基本的に人権研修や講演会の講師は大方、そんな程度だろう。我々も取材でこうした関係の講演会を聞いたが、おおかた「ネット云々」あるいは「某政党がーー(共産党のこと)」、あるいは弊舎への罵倒、こうしたものである。それに同対審答申についての知識や解釈も必ずしも解放同盟が正しいとは限らない。

「ファシィリテーターがパッパパッパ」には笑ってしまったが、自分たちの息がかかった講師や発言者ならばこんな言い方は絶対にしない。つまりこのやり取りは解放同盟が推挙する講師を採用せよ、との圧力にも見える。もちろん研修は県の予算、つまり税金。しかし普通の住民は研修の内容も予算もまず知ることはないだろう。また内容を問い合わせたとしてもまず非公開か、広報誌でわずかに扱う程度である。

人権研修はケツ持ちが命

90年代に「芸能人は歯が命」という歯磨き粉のCMがあった。言うならば人権研修はケツ持ち(バック)が命といったところ。また人権研修の密室性についても示唆するところが多いこのエピソードを紹介しよう。2012年4月、京都府亀岡市で無免許で自動車を運転していた少年が小学生・保護者の列に突っ込み3人が死亡、7人が重軽傷という痛ましい事故が起きた。当時、ネット上ではこの少年が解放同盟員の幹部の子息という情報がありその真偽を確認するため取材した。結論から言えばデマで加害者少年は一般地区出身だったが、この取材の過程で妙な情報を入手した。

同和問題、女性の人権などの分野で活動する社納葉子氏というフリーライターがいる。解放同盟の関連刊行物でも執筆多数。SNSなどを見ると在日朝鮮人活動家の李信恵氏ら反差別活動の面々との集合写真がある。失礼ながらライターというよりも活動家というイメージの人物だ。

こんな話だった。社納氏が亀岡市からの依頼で2011年7月、「人権教育講座」に登壇した。すると受講者から「えせ同和」などの批判を受け、また亀岡市教育委員会からも説明を求められたというのだ。要するに同和や人権問題を専門にする「運動体より」の講師が攻撃されるという珍しい例である。

そして市からは職員による聞き取りを求められた。ところが社納氏のブログによると亀岡市教育委員会からの連絡はしばらくすると途絶えたという。当時、社納氏にメールを通じて取材を申し込んだが断られた。亀岡市に至っては取り付く島もないという様子で一切「ノーコメント」だった。普通、自治体職員は感情を表さないものだが、当時応対した職員は非常にナーバスになっていた。なお謝礼は交通費込みで28900円とありこのクラスの講師の相場が分かるのも興味深い。

面白いことに当時、社納氏よりも亀岡市側の取材拒否感が強かった。また妙なことに地元解放同盟の支部長に事故の一件だけではなく、講演会についても聞いてみたのだが「えせ同和やて。面白いこというやないか」と初耳の様子だった。つまり地元の有力な同盟員ですらトラブルを把握してなかったようだ。

自治体職員や活動家というものは分かりやすい人種だ。自身が有利な立場の時は攻勢、強気に出るし、不利と見ると沈黙、後手になる。この場合は明らかに亀岡市側がトーンダウンしている様が見て取れた。つまり亀岡市は社納氏の経歴や背景を理解していなかったのだろう。それは

講演を文字起こししたものを読んだ、部落解放運動の関係者の一人は「まったく問題ない」と言い切ってくれた。

『部落差別は「特別な差別」なのか?17』 (2012-04-11)

という辺りに事態収束の謎が垣間見える。つまり「えせ同和」とクレームをつけた参加者たちが女性講師に“かましてみよう ”と思ったところ、相手は上位のバックボーンがあったから尻すぼみしてしまったと見た。市役所側も拳は振りあげたが同じく背景を知ってどう矛先を収めていいのか右往左往したのだろう。仮に登壇したのが解放同盟の役員や関係する大学教授あたり人権研修の常連ならばこんな事態は起きてなかったはず。「フリーライター」という微妙な存在と知名度が参加者や亀岡市の判断を鈍らせたのだろう。現象としては面白いが誰の、どんな立場の人権に何ら役に立ってないエピソードである。

ともかく人権研修にとっていかにバックが大事で、また非常に密室的で狭い世界であるのかお分かり頂けたはずだ。

社会に還元できない企業の人権研修

次いで企業における人権研修である。これについては確かに民間の活動だから「公開」を前提にしたわけでもなく、またその義務もない。それゆえ行政よりもより企業の研修は不透明だ。ご承知の通り、関西電力内では高浜町元助役の森山栄治氏が“先生 ”ともてはやされた。というのも人権研修は企業にとってトラブルを防ぐみかじめ料のようなもの。特に電力会社のように用地買収、住民トラブルになりやすい業種にとって森山のような存在は確かに先生=用心棒に違いない。

関電と同和の関係は森山に留まらない。目下、和歌山市の連合自治会長詐欺事件を追及しているが同時に関西電力和歌山支社にも注目している。というのも和歌山同和問題企業連絡会の連絡先は関西電力和歌山支社になっている。むしろ和歌山同企連と関電は一体と言っても過言ではない。

森山栄治の問題が起きた後でも人権研修は重視するという。

では和歌山支社の場合はどんな活動をしているのか同社に質問してみたが

機関誌は発行しておりますが、あくまでも会員企業相互における人権啓発活動の一助として活用しているものであるため、会員企業以外にはお出ししておらず、お渡しするのはご容赦ください。和歌山同和問題企業連絡会の所在地につきましては、任意団体の代表幹事として便宜上「関西電力和歌山支社」の所在地を使用しているだけであり、実際に同企連の事務所といえるような部屋(スペース)はございません。

との回答だ。不思議なことに他団体も同様のことだが、とにかく機関誌を外部に出すことを敬遠する。これはおかしい。なにしろ人権活動なのだから社会貢献度が高い内容ではないのか。むしろ広く周知するべきだと思うがそうではない。「出さない」というよりも「出せない」というべきだろう。それは「センシティブ情報」を含むだとかそうした理由ではない。この関係の刊行物を実際に読んでみても正直、論じるほどの内容ではないのだ。

そして運動家も団体も「論評」されること、そして無関係の外部の目を極端に嫌がる。恐怖心といっても大袈裟ではない。シンパと活動家、従順で反論しない公務員に囲まれた完全なる“ホームグラウンド ”でしかその弁舌は生きられないのだ。不特定多数の目に触れるネット配信など荒野やジャングルに置き去りにされたようなものだ。しかし思う。

他者に対して「啓蒙」「教育」というのならば、コロナ自粛を契機に密室から出でよ!そして誰の目に触れられる場所でシンパ以外の人間に語りかけるべきだ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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密室化した「人権研修・講演会」の惨め哀れ」への5件のフィードバック

  1. 文句大臣

    今現在も、同和問題が無くなっては困るという、何とも馬鹿らしい研修なんですね。
    差別を無くせと謳いつつも、差別を決して忘れさせない(笑)姿勢に感服しました。

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      もはや目的化していますからね。自治体側も無駄なポストを作れるし運動体とwinwinの関係です。

      返信
    1. 三品純 投稿作成者

      確か父親が講演したと思います。
      講演録があったはずだから、あれば公開します。

      返信