部落問題にも 手心なし ラムザイヤー論文の中身

アバター By 鳥取ループ

韓国ウォッチャーであれば、「ラムザイヤー論文」が今、熱い話題となっていることはよくご存知だろう。米国ハーバード大学法科大学院のマーク・ラムザイヤー教授が昨年8月に発表した「太平洋戦争における性の契約」という論文は、端的に言えばいわゆる「従軍慰安婦」というのは当時ありふれていた「売春婦」と変わらないという内容であり、韓国からは大きな反発を招いている一方、日本国内からは同調する声が上がっている。

しかし、ラムザイヤー教授の挑戦的な論文はそれだけではない。実はラムザイヤー教授は日本の部落問題についても、「同和事業が部落に組織犯罪を引き寄せた」「部落民のアイデンティティは水平社運動後に作られたもの」という趣旨の論文を発表している。

筆者が注目した論文は2つある。1つは2017年9月に発表された“Outcaste Politics and Organized Crime in Japan: The Effect of Terminating Ethnic Subsides.(日本における同和対策と組織犯罪:同和事業終了の効果)”であり、もう1つは2019年4月に発表された“On the Invention of Identity Politics: The Buraku Outcastes in Japan. (作られた身分政策:日本の部落民)”である。

原文は、リンク先から読むことができる。表題の日本語訳は、なるべく分かりやすいように意訳したものだが、すでにこの時点で、まず日本の研究者ではやれなさそうなものであることを感じるだろう。

ラムザイヤー教授は、アメリカ人でありながら日本育ちなので日本語を理解するのだが、現在はアメリカの大学の教授なので、論文はもちろん英語である。その時点で尻込みしてしまう人も多いと思うが、安心して欲しい。2021年のAIは、かなりよい精度で英語を日本語に翻訳してくれる。以下の動画を参考に、各人で翻訳して読んでいただきたい。

同和事業が部落に 組織犯罪を 引き寄せたという 衝撃の内容

どのような論文でもそうだが、その内容の要旨が冒頭のAbstractに書かれている。2017年の論文の要旨をなるべく分かりやすく翻訳すると次のとおりだ。

1969年、日本は部落民に対する莫大な助成事業(訳注:同和事業のこと。以降は意訳)を立ち上げた。同和事業は暴徒を引き寄せ、犯罪組織を通じて利用可能になった大きな収入は、反社勢力になるために合法的な仕事を捨てた部落民に供給された。この過程で、同和事業は部落民を暴徒と見なしてきた多くの日本人の偏見を助長した。

政府は2002年に同和事業を終了した。我々は事業終了の効果を30年分の自治体のデータと、長い間伏せられていた1936年の全国部落調査と結合して研究した。最初に我々は、同和事業終了後に多くの部落民が自治体から転出していることを発見した。おそらく、同和事業によって生まれた大きな非合法的収入が、若い部落民が主流社会に合流することを妨げていたようだ。次に、同和事業に伴う暴徒による腐敗と恫喝が終わり始めると、部落民が多い自治体では不動産価格が上昇したことが分かった。同和事業が終わって暴徒がいなくなると、他の日本人は徐々に、かつての部落民の居住地が魅力的な場所であることに気がついた。

これは、かなり衝撃的な主張のように思えるが、実は前段は目新しいものではない。同和事業の弊害は同和事業開始以前から日本国内でも指摘されてきたことで、同和事業が行われていた最中の1986年の地対協意見具申でも、同和事業の中で新たな差別意識を生む要因がある指摘された。むしろラムザイヤー教授の独自の主張は後段の部分である。

ただ、前段部分の研究も興味深い。論文の中では、矢田事件、八鹿高校事件、北九州土地転がし事件、飛鳥会事件等、部落解放同盟が関係する過去の主要な組織犯罪を網羅して説明している。まるで、共産党系の全解連が解放同盟と激しく対立して時代に出していた、解放同盟を批判する書籍のような構成である。

ただ、共産党員である寺園敦史氏の書籍を多く引用する一方で、解放同盟に近い角岡伸彦氏の本も多く引用している。さらに、戦前の全国水平社を暴力的団体とまで言い切っているが、共産党系の書籍でもそこまで書くことはないから、ラムザイヤー教授は共産党系のイデオロギーとは独立して、独自に同様の結果に至ったものだろう。なお、角岡伸彦氏は自身の著書がラムザイヤー教授に引用されたことをかなり嫌がっている

そして後段の部分。これは驚くべきことに「全国部落調査」がベースとなっている。では、ラムザイヤー教授がどうやって「全国部落調査」を手に入れたのかというと、筆者が要因である。ラムザイヤー教授はこう書いている。

我々の研究は部落民の所在地を特定することを可能にした。我々は長く隠されていた1936年の調査を通して特定した。政府は部落民を組織させた団体、中央融和事業協会を通して調査をした。342ページの手書きの文書にはそれぞれの部落、部落民の世帯数、部落民の人口が掲載されている。ほとんどの情報の日付は1935年である

我々はこのリストを1936年当時の場所から現在の自治体に変換した。ほとんどの部分は1936年当時の名前は上位の市町村名に残すのみである。現在の1742の自治体のほとんどは何度も合併や名前の変更がされた。調査のそれぞれの部落について、我々は現在の場所を追跡した。

我々は2015年の後半に1936年の調査を入手した。鳥取ループというペンネームの宮部龍彦が彼のインターネットサイトに投稿したものだ。宮部はおそらくフリーライターと出版者で、何年も解放同盟に対して激しい反腐敗キャンペーンをしている。彼自身が部落民であるようだが、2017年の早くから解放同盟との危険な闘いに閉じ込められている。宮部はこの調査を復刻することを計画し、解放同盟は出版禁止の訴えをした。彼らの全国的ウェブサイトでは「鳥取ループの化けの皮をはぎ、徹底糾弾し、彼を社会から永久追放するまで戦う」と宣言している。

1963年調査全般の信頼性を疑う理由はない。それを行った中央融和は、戦後に解放同盟となった松本の暴力的な水平社より穏健で、もしかすると解放同盟は攻撃していたであろう。同盟は調査をしていない。代わりに、少なくとも1つの解放同盟の出版物はこの調査に依存している。

ご覧の通りで、驚くべきことであるが、筆者が全国部落調査を公開しなければ、この論文が書かれることはなかったと言える。ただ、ラムザイヤー教授にはいくつか事実誤認がある。

まず、全国部落調査を筆者が公開したのは2016年1月のことなので、2015年後半に入手したという記述は間違いであろう。そして「彼らの全国的ウェブサイト」の下りは、全国連のことであろう。ラムザイヤー教授は部落解放同盟と部落解放同盟全国連合会の違いを知らないと考えられる。

ラムザイヤー教授は全国部落調査から都道府県ごとの部落民の人口・人口比率を推計し、それが人口移動や地価とどのような関係があるのかを検証している。まさにこれこそが社会学であり、興味深い研究である。

ただ、筆者として気になる点は、都道府県単位での検証はあまりにも大雑把すぎるのではないかということだ。ラムザイヤー教授は個別の部落の地名までは価値がないという趣旨のことを書いているが、そうではなく、やはり出来る限り個別の部落に迫るような精度で検証すべきであろう。

部落民は 水平社以降に でっち上げられたもの!

ところで、2017年の論文の最初の方では、部落民は肉屋や皮革業者等の評判の悪い仕事をしており、士農工商の下に置かれた身分の人々の子孫と書かれている。この点について、筆者はラムザイヤー教授は古い研究内容の認識のままではないかと思ったのだが、何とラムザイヤー教授はすぐにそのことに気づいていたようである。

それどころか、2019年の論文では、部落民は皮革業者等の子孫ではなく、そのアイデンティティは水平社結成以降にでっち上げられたものと断じた。2019年の論文のAbstractも翻訳してみた。

14の国勢調査と様々な一次資料を使って、日本の被差別民とされる人と彼らの名目上の人権団体が重度の犯罪的強奪機関に変貌したことを追跡する。多くの学者は部落民と呼ばれる被差別民を、近世の皮革業者らの子孫と説明してきた。彼らの先祖が死骸を扱っていたために差別に苦しみ、日本の伝統的因習である穢れ意識に反抗した。

実際は、ほとんどの部落民は皮革業者の子孫ではなく、障害となる独特の行動様式を持った貧しい農民の子孫である。他の人々は穢れから離れるために彼らを避けたかも知れないしそうでなかったかも知れない。しかし、多くの場合犯罪への関与や家族の崩壊を避けるために、彼らを避けたことは確かだ。

部落の現代的な変革は1922年に自称共産党が部落の「解放」組織を立ち上げた時に始まった。部落民をマルクス主義の歴史観に適合させるために、皮革業者の身分という空想上のアイデンティティをでっち上げ、それが今なお続いている。苦しい身分政策である。数年後、犯罪起業家が新しい組織を乗っ取り、巨額の金銭を要求する、暴力的な糾弾と結びついた、強請り戦略を開発した。その結果、選択的な移住と公的補助金の増大が続いた。この論理は、ベッカーとヒルシュマンにより説明される経済論理と直結します。すなわち、より大きな(公的な)補助金が与えられると、機会費用の少ない部落民は、部落に残り、犯罪に注ぎ込もうとする。この戦略は世間の激しい反感を書い、正業を選んだ部落民は部落を捨てて、一般社会へと溶け込んだ。

前半部分について、ラムザイヤー教授は、江戸時代にカワタと言われた身分の人々が明治維新により職業上の独占権を失い、差別だけが残り、その状況を打破するために全国水平社が立ち上がったという趣旨の定説について、解放同盟と強く結びついた学者による偏ったものと厳しく断じている。そして、そもそも「300万の部落民」という言説は根拠がなく政治的な都合で捏造されたものであり、そもそも現代の部落民のほとんどは皮革産業と関係なく、部落民というアイデンティティはマルクス主義者と全国水平社を乗っ取った暴力集団がでっち上げたものだと主張している。

興味深い主張として、カワタは「皮田」とも「川田」とも表記でき、皮革業者と川沿いの田んぼを持つ農民の両方を指すことから、カワタ=皮革業者ではないということである。実際、カワタという地名や名字の起源は、単に川と田んぼのことであることから、ラムザイヤー教授の指摘は的を射ていると言える。

そして、実際のところ、現代の部落民のルーツはそのような川沿いのような条件の悪い土地を持たざるを得なかった貧しい農民と、あるいは都市スラムの住民であることが多いということである。

無論、この論文が正確ではないところもある。実態として皮革業者ではなく貧しい農民であったという点は概ね正しいが、地域によっては川沿いの田んぼを開発した人々に穢多身分が多かったのは確かである。また、都市スラムの代表例として西成のあいりん地区を上げているが、あいりん地区は同和地区指定されなかったことを見逃している。

しかし、見どころはやはり後半部分である。この論文で2017年の論文と同様に矢田事件を、八鹿高校事件のような解放同盟の組織犯罪を挙げているが、なんと狭山事件にも言及している。ラムザイヤー教授の解釈では、東京郊外で起きたレイプ殺人事件である狭山事件では、実際に部落に犯罪が多いという「人種プロファイル」をもとに警察は犯人を特定した。石川一雄の単独犯ではないかも知れないが、いずれにしても石川一雄は犯人の1人で間違いないということだ。

2017年の論文とは違って、戦前の全国水平社の運動にも多く言及し、彼らが暴力、恫喝、強請りを数多く行っていたこと、松本治一郎は犯罪組織の首領のように見られていて、芸者を買い取って愛人にしたり、満州で偽薬を販売して儲けるなど、そうと見られるにふさわしい行動をしていたということである。

論文はかなりの分量があるので、ここで全ての内容を紹介するのは難しいが、解放同盟に真っ向から挑戦し、それどころか、共産党に対しても全く容赦のない内容である。

解放同盟・同和事業批判と言えば、どうしても解放同盟と共産党・全解連の対立という文脈で語られることが多いが、ラムザイヤー教授はそのどちらにも属さず、さらには外国人という立場である。ある意味で中立的な立場であるラムザイヤー教授から、共産党・全解連でさえやらなかったような、フルスロットルでの解放同盟・同和事業批判の論文が出されたことは大変に興味深い。特に2019年の論文は部落問題に興味があれば、必読であろう。

なお、ごく最近である今年3月7日に、事実上解放同盟と一体である国際人権NGO IMADRから論文の掲載誌に反論の書簡が出されている。しかし、それを書いているのは、全国部落調査事件において、解放同盟側の立場で意見書を書いたこともある大阪市立大学の阿久澤麻理子教授。ラムザイヤー教授は、日本国外も含めて、多くの部落問題研究者は解放同盟の影響下にあると切り捨てており、まさしくそのような立場である阿久澤麻理子教授の反論は意に介さないかも知れない。

部落問題にも 手心なし ラムザイヤー論文の中身」への2件のフィードバック

  1. アバター耕作員

    Internet Archive だけが日本国法務省の脅迫に屈せずに全国部落調査を残してくれた訳ですね。
    wikipediaのほうは仕事が現役の頃、感謝の気持ちで何回か寄付したことあるんですが、前者にアクセスしたのは無職になってからなので、寄付メールも放っておいてあんだけど。お布施しましたか?w

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