京都ダークスポットウトロと紙屋川住宅の「現在地」(後編)

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By 三品純

見世物にするな、という意識

1月、京都市内で開催された「在日コリアン集落地区「ウトロ」と「紙屋川開キ町」問題を考える集い」では、ウトロに関して環境改善事業の成果が報告された。対して紙屋川住宅についてはいまだに解決の道筋が立たず、支援者も四苦八苦している様子が見て取れた。ウトロの場合は、住民と支援団体との協力関係が構築できたからこそ、行政、そして韓国政府まで動かせた。

ところが紙屋川住宅の場合、かなり異なっている。「住民たちは見世物にするなという意識が強い」(紙屋川問題を考える会の森岡均氏)。つまりメディアの取材、あるいはアングラ好き、マニアといった存在だけではなく支援者に対してすら疑心暗鬼になる傾向があるというのだ。住民の中には支援者に対して「行政の回し者」と嫌悪感を露にすることもあるというから、支援活動も容易ではない。外部者に対する反発、確かに耳が痛い部分もある。

「宅地の下に流れる川」「下水がないため洗濯機の水が路地に垂れ流し」「崖のスレスレに建つ住宅」「小川で洗濯をする人」初めて紙屋川住宅を目の当たりにした時の光景は鮮烈だ。だから本誌以外でもメディア、部落マニアといった人々が紙屋川を訪れる。とても「ダムの中にある住宅」という異様な光景は、確かに好奇心を刺激するが、彼ら住民にとってみれば「生活の場」だから反発を招くのも当然だろう。

しかしそもそも「ダムの中に住む」という異常な状況を住民たちも認識すべきだ。たびたび見舞う水害、にも関わらず「水害には腹をくくっている。消防署が危ないと言う時は避難すればよい」(証言集より)という住民もいる。

こういうデータもある。2012年7月、紙屋川の増水が発生した際、右岸側住民6名中2名が救出辞退、左岸側住民17人中16人が救出辞退をしていた。「腹をくくる」と言ったところで万一、人的被害が発生した時、補償問題に発展するのは火を見るよりも明らかだ。だから住民が結束し、意思統一を図ることが解決への第一歩だ。しかし最も基本的であるはずの「住民の協力体制」がないことが紙屋川住宅問題を深刻化させている。

結束できない住民たち

京都府が2013年に実施した住民調査によると紙屋川住宅の住居は46棟でうち16棟が空き家で、60歳以上の住民が4割となっている。「在日部落」として知られるようになった紙屋川住宅だが実はなぜ住宅街が形成されたのか? その理由も定かではない。通説では紙屋川の砂防ダムが完成した昭和28年頃から徐々に住宅が増えてきたというが、ここに集まった在日韓国人・朝鮮人が戦時中の「徴用」で来た人々なのか、不法入国者なのか、あるいは単に住宅を持てない貧困層が集まったのか? そうした歴史的背景が分からない。

紙屋川問題を考える会の森岡氏は「同和事業を受けられなかった在日朝鮮人・韓国人が住み着いた」などの所説を挙げたが、それも「確固たる証拠はない」と説明していた。

「考える会」が住民にルーツについて尋ねたところこんな回答があった。

「砂防ダム初期(1952年前後)に、3~4人が今では想像もできない、家ともいえないような場所で暮らし始めたと聞く。ダム建設に携わった人か千本(*京都市北区)の部落から来た人かは分からない」

「(ダム建設者が住み着いた、という説に対して)そんなにきれいなものではないと思う。戦後の厳しい状況の中で不法とわかっていてもとにかく住まねばならず、住み着いたのだと思う。東九条ゼロ番地より劣悪環境だった」

東九条ゼロ番地とは映画『パッチギ』のモデルになった地域だ。この通り住民たちすらもなぜ紙屋川住宅ができたのか知らないのだ。生活に困窮していたことは心情的に理解できる。ただし形成過程すら分からないのに一方的に「差別」と言われても当惑してしまう。

ウトロの場合、国策で徴用された朝鮮人労働者(全員がそうであるかは別に)という歴史的背景を持つため権利闘争下で、住民たちが団結できたのに対して、逆にルーツが見えない紙屋川住宅は連帯感を生まないのかもしれない。

だから自治組織もなく、右岸住民と左岸住民は貧富の格差があり、決して関係は良好ではないそうだ。「地区内の生活保護受給者を働いていない、と批判的に見る住民もいる」(運動家の一人)という状況もあるから、これは「在日差別」とはまた別の問題が存在している。結束できないのはこうした経済的事情と歴史的記憶の欠如が起因しているようだ。

「受け身の意識」を変えてみては?

そして住民たちに蔓延する「受け身の意識」。これは「考える会」が実施したアンケートからも見て取れた。調査回答によると「府からの転居の提案」に対しても「今度浸水したら考えたい」という意見があった。

「床上浸水が起きた際の問い」に対しては「床上浸水には市から義援金が出るはずだが、窓口に行っても手続きが煩雑なので諦めた」と答えている。アンケート結果では行政に対して「ほとんど何もしてくれないという不信感を持つ人も多い」とまとめている。どこか受動的で「してくれない」「してもらえない」という心理が強い。行政も決して放置している訳ではなく、市営住宅の斡旋など環境改善を進めている。もちろんいかに劣悪な環境だったとしても「居住する」ことは、土地への愛着を生むのは仕方がないことだろう。

ただ繰り返すが本来、住むべき場所ではないのだ。まず町の協議会といった統一的な組織を結成し、意思統一を図ること。「ダムの中にある住宅街」という異常な状況を解決するには、まずは住民の結束。これしか道はないだろう。

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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京都ダークスポットウトロと紙屋川住宅の「現在地」(後編)」への3件のフィードバック

    1. 鳥取ループ

      情報ありがとうございます。これは現地に行かないと分かりませんね。
      機会があれば行ってみます。

      返信

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