違法サケ漁アイヌ活動家激白「アイヌ協会は許せない」

三品純 By 三品純

サケ漁はアイヌの固有の権利という主張は長年、続いてきた。特に2008年、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」 が衆参両院で決議採択されたことも権利意識を高めている。昨年9月、紋別アイヌ協会の畠山敏会長らは紋別市内で開催した儀式行事で無許可のサケ漁を行った。報道によると北海道警は北海道内水面漁業調整規則違反の疑いで書類送検する方針という。この間、支援者やアイヌ問題の有識者らは「先住権」として畠山会長を擁護してきた。その中には慰安婦問題や反原発運動の関係者も加わっている。このため左派の政治運動に利用された感もあるが、同氏の不満は政治や行政だけでもなかったのだ。怒りの先は―――。

平成3年に提出された質問主意書。この時はサケではなくカニ漁が先住民族の権利という主張だ。

アイヌ団体の会員が先住権を根拠に無許可でサケを捕獲するという事態は古くから起きている。またサケに限らずカニ漁の捕獲でも同様のトラブルが起きていた。1991年には色丹島周辺でカニ漁をしたアイヌの漁業会社「ウタリ共同」の社員が有罪判決に。これに対して社会党(当時)のいとう正敏まさとし参議院議員はアイヌ民族に先住漁業権があるとして質問主意書を提出した。 翫議員は宗教団体が人権問題や反戦活動に取り組む「宗教者平和ネットワーク」の創設者であり、解放運動でも知られた人物だ。

サケ漁はアイヌ固有の権利という主張はよく聞かれるが、ならば彼らはサケ漁が生業なのか。著者が取材したアイヌ団体の面々は会社経営者や団体職員、自営業者、公務員だった。遥か昔から現在に至るまでサケ漁を続け、それを現政府や行政が奪ったというならば抵抗するのは分かる。しかしアイヌ協会の会員でそのような自給自足の生活をする人がいるものか?

それにカニ漁まで含まれるのか疑問だ。まず先住権という議論はさておいて、そもそもサケに限らずカニも資源保護の観点から禁漁期間があり捕獲にも規制がある。彼らがどう先住権をタテにしても自然保護の観点からこうした規制は遵守されるべきだ。ただしアイヌ漁の伝統儀式の場合、北海道内水面漁業調整規則4章52条によって例外的に認められる。

この規則のうち水産動植物の種類若しくは大きさ、水産動植物の採捕の期間若しくは区域又は使用する漁具若しくは漁法についての制限又は禁止に関する規定は、知事の許可を受けた者が行う試験研究、教育実習、増養殖用の種苗(種卵を含む。)の自給若しくは供給又は伝統的な儀式若しくは漁法の伝承及び保存並びにこれらに関する知識の普及啓発(以下この条において「試験研究等」という。)のための水産動植物の採捕については、適用しない。

もっとも儀式などの場合も川にいるサケではなく市場などで仕入れたサケが使用される。実際にサケ漁を見せるアイヌ協会の会員たちは民族衣装を着込み銛を手にするが、普段は一般的な生活をしている人々。だからアイヌの血を引くというが簡単には捕獲できない。それから珍しい行事だから観光客も訪れるが、見物人も絶対に竿や網を使ってはならない。魚影どころか目の前にサケがいる。なんだったら素手やたも網で捕まえることができるかもしれない。

しかし主催者からも再三、注意されるが伝統漁法以外で捕獲してはならない。サケは市場から仕入れるわけだから当然、高額な予算が必要になってくるが各種アイヌ団体から補助金が支給される。

著者が実際に見学したのは2014年に千歳アイヌ協会が開催した祭りだ。同協会の会長らが実際にサケ漁を見せてくれたが簡単には捕獲できなかった。その後、一般の参加者も体験できたが、もちろん一般人が容易にできるものではない。銛で突けたサケは持ち帰り可だが、繰り返すがその他方法による捕獲は禁止行為だ。

千歳アイヌ協会のサケ漁。かなり苦戦していた。
後片付けも一苦労。

伝統漁法と言っても船を川に運ぶのだから大変な作業だ。重機を使って搬入・搬出する。千歳アイヌ協会の会長は建設会社の社長だったのでこうした重機の扱いも慣れていた。伝統文化を守るにも文明の利器が必要ということだろう。

紋別アイヌ協会は補助金申請の過去も

さて千歳アイヌ協会のように正式なルールに即して儀式を行う団体もある。ところが先述した通り昨年、紋別アイヌ協会は道職員が制止する中でサケを捕獲してしまった。 同協会は 昨年8月31日、9月1日の両日「第21回 先祖供養の儀式と新しい鮭を迎える儀式」と銘打ち、 古布絵作家で俳優の宇梶剛士氏の母・宇梶静江さんをゲストに儀式や文化体験、伝統料理の試食などを行った。畠山会長が違法なサケ漁をしたのはこの時である。

畠山会長はニュース映像でも「先住民族としての権利」を主張しており、この模様はニュース映像でも確認できた。事件後の9月15日、緊急記者会見を開催したのは さっぽろ自由学校「遊」 。道内で慰安婦問題などにも取り組む左派団体であり、先述した 「第21回 先祖供養の儀式と新しい鮭を迎える儀式」 の共催団体でもある。

その他アイヌ協会のように正式な手続きを踏み開催すればギャラリーも見込め、それこそ普及活動には絶好の機会ではないか。現に千歳の時は苫小牧や富良野などかなり遠方から来た見物客もいた。せっかくの儀式だから道に申請してサケ漁を行えばいいもの。そんな気もした。逆に言えば「政治主張」込みだからあえて無許可漁に踏み切ったのだろうが‥。ただそんな畠山氏の行動に疑問を持つのは地元関係者。

「一昨年(2018年)にアイヌ民族文化財団に「第19回カムイノミ・イチャルパ」・「カムイ・チェプノミ」を開催するとして補助金を申請していたんですよ」

2018年は同財団に補助金を申請し、2019年は申請をしていない。アイヌ民族文化財団( 札幌市中央区北1条 )は公益財団法人としてアイヌの文化振興や補助事業を行っている団体だ。

財団によれば「2018年は紋別アイヌ協会の行事に90万2千円を支給しています」との説明だ。さらに紋別アイヌ協会が適正にルールにサケ漁を行ったかについては「現地で確認した訳ではありません」ということだ。つまり財団はチェックしていないわけでどんな漁法かは知らないという。ずさんではないか。

2018年は申請した上で儀式を開催した。

畠山氏「北海道アイヌ協会は許せない」

さらに気になるのは北海道アイヌ協会の反応だ。アイヌ活動家が「先住権」を主張してサケ漁を正当化したとしても協会側が無許可のサケ漁を推奨するわけにもいかない。またもう一点気になったことがある。北海道アイヌ協会の加盟団体一覧に紋別アイヌ協会が掲載されていないことだ。紋別アイヌ協会は畠山会長の私的団体なのか。 北海道アイヌ協会に今回の問題について聞いてみた。

応対した同協会事務局長によれば

「サケ漁は長い歴史を持ちそんな簡単に説明することはできませんよ。広くて様々な問題があるんです」

こう話す事務局長。申し訳ないがどうも歯切れが悪い。

「畠山さんが何をやったのかきちっと聞いていないから述べる立場ではありません。先住民族とサケとの関係性や、関連するアイヌ関係の法律だとか国際社会で(議論が)どう進んできたのか、いろいろな立場があるから(畠山氏の是非を)話すのは難しいんですよ」

ということだ。ならば紋別アイヌ協会の活動は「不当ではない」との認識なのか? 単純にイエス/ノーの判断が欲しいわけだが、正当か不当かという質問には対しては

「そんな浅い問題でなく幅広いし、価値観も違うんです」

と事務局長。また紋別アイヌ協会が加盟団体に入っていないことについて「以前は所属していました。なぜ離脱したか? それは答える立場にありません。抜けたとは言え仲間には違いないから畠山さんのことを批判できませんしね」ということだ。

残念ながら無許可のサケ漁についてはっきりした見解はもらえなかった。ただ少なくとも北海道アイヌ協会としては無許可のサケ漁について「推奨しない」のは伝わった。

流氷の町、紋別市のアイヌ儀式は確かに見てみたい気もする。

ならば直接、紋別アイヌ協会に事情を聞くしかない。問い合わせ先を探してみると同団体のパンフレットを見つけた。そこの連絡先に問い合わせてみると、まず女性が応対してくれた。会長のご家族ということだ。同女によると

「2018年は漁という形ではなくて、支援者の方から頂いたサケをお供えしたのです。昨年は網で漁を行ったところあのように違法ということになったんですが…よろしければ本人に代わりましょうか? 隣にいますので」

なんと畠山会長が近くにいるというから幸いだ。応じてくれた会長はさぞや猛者かと思いきや丁寧な口調の温厚な人物だった。直近の報道を見ると北海道警が「書類送検の方針を固めた」ということだが、話を向けると―――

「もう書類送検されていますよ。しかし間違ったとは思いません。今年も儀式は行う予定です」

ということだ。また北海道アイヌ協会との関係について触れると意外な答えが待っていた。

「はい。確かに私たち紋別アイヌ協会は北海道アイヌ協会を離脱しました。いつ? 5~6年前のことです。なぜなら私たちの要望をちゃんと知事まで伝えてくれ、というのに聞いてくれません。また先住権や漁業の問題についてもアイヌ協会がしっかり対応してくれないからもう所属する意味がないと思ったのです。それに何よりもアイヌを見世物にするのが耐えられません」

この通り、北海道アイヌ協会本部に対する不満を隠さない。さて話を整理してみよう。2018年は支援者から贈られたサケで儀式を行ったわけだからもちろん違法ではない。しかしアイヌの伝統漁法で獲ったサケではないから儀式としては不本意かもしれない。

そして昨年のサケ漁で用いたのは「網」とのこと。これは疑問だ。サケ漁に網を用いるのはアイヌの伝統漁業なのか。それではただの投網漁だ。先住権や民族固有の文化を訴えるが、では博物館やアイヌ施設に展示されている銛などは一体何か、という話になる。

と、こんな疑問を抱いたが確かに畠山会長の不満も一理あると思う。現在のアイヌ事業、行政はむしろ自民党が熱心で「アイヌ政策を推進する議員の会」は代表の吉川貴盛衆院議員を筆頭に菅官房長官(アイヌ政策推進会議座長)、堀井学衆院議員( 前アイヌ政策推進会議座長代理)ら自民議員がズラリ。また元北海道知事・町村金吾・信孝元衆議院議長親子ら北海道の大物政治家もアイヌ事業に熱心だった。というのも一つの背景としてアイヌ事業がハコモノ行政にも直結しているのが大きい。民族共生象徴空間(白老町)など最たるものだ。同和対策特別措置法で行われた同和事業も自民党政権で始まり最も恩恵を受けたのは社会党系の部落解放同盟だ。アイヌ事業も同和と酷似する。

しかし現在のアイヌ問題に執着する人権派、運動家たちは普段、自民党を批判する割にこのような実態に無批判だ。それに反権力、反体制をウリにする新聞・テレビもこれに追従している。

巨額の税金を投じた大きなハコモノの中で政治家や行政、観光客の前でアイヌ舞踊を披露する、こんな光景―――。同氏からすればこうした行為は「見世物」のように映り、協力的なアイヌ協会は政治や行政側に懐柔されたと感じたのかもしれない。畠山会長の無許可サケ漁は「固有の権利主張」と同時に北海道アイヌ協会への抵抗と言えるだろう。

行政関係者とセレモニーを行う北海道アイヌ協会副理事長(常務理事兼任)の阿部 一司(ユポ)氏。

違法サケ漁アイヌ活動家激白「アイヌ協会は許せない」」への1件のフィードバック

  1. アバター遠州屋

    自然を対象にした諸権利が招く紛争の解決は望ましいものではないという意見です。「鮭」はアイヌ民族や日本民族の空腹を満たすために川を遡上してきているわけではないはずです。「鮭」の繁殖を促す努力にはそれ相応の果実があっていいと思いますが独占的な権利が付与されるというのは馴染まない。今後100年、1000年争い続けていけば良いのではないでしょうか。

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