次々に不可解な事実が浮かび上がる森友学園「瑞穂の國記念小學院」の用地買収問題。この機に乗じて「森友10万人デモ実行委員会」が結成された。１２日には２０００人デモ、１９日には１０万人デモが計画されている。

同委員会の趣旨を見るとこうある。

「 今回の森友学園問題をきっかけに、安倍政権に退陣要求をする10万人規模のアクション、および全国ネット運動キャンペーンを主催いたします。参議院選野党共闘で奮闘した市民団体の連合体としての実行委員会を組成し、衆議院選に向け、0.1％でも、とにかく自民党の支持率を下げることを目的とします」

特に最後のくだり「自民党の支持率を下げることを目的」から必死さが伝わる。野党共闘の起爆剤にしようと懸命だ。一方、韓国、北朝鮮、中国といった東アジア諸国への批判を学校行事に取り入れたことに対して、在日団体も抗議の声を挙げている。その一つ、民団大阪府地方本部が塚本幼稚園に送付した抗議文を見ると、妙な文言があるのだ。

抗議文は、鄭鉉権団長の署名付きで、籠池泰典園長宛に送られた。内容はこうだ。

保護者に「よこしまな考え方を持った在日韓国人や支那人」や「（韓国の）心を引き継いだ人達が日本人の顔をして我が国に存在する事が問題」「韓国人と中国人は嫌い。お母さんも日本に嫁がれたのなら、日本精神を継承するべきです」という手紙を韓国にルーツのある保護者に渡しました。在日韓国人や中国人を蔑視したこれらの行為は、明らかに民族差別であり、私達在日韓国人の人権を著しく侵害するものであるため、到底容認することができません。教育基本法第2条には「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し・・・」と書かれているにもかかわらず、貴学園が行っている教育はこれを著しく逸脱した教育である。私たちは貴学園が行ってきた民族差別に強く抗議するとともに以下を要求します。

ここまではいかにも”さもありなん”という印象。しかし要求項目を見ると、こうある。

一、保護者を対象に説明会を開催し、上記の行為が民族差別であると認めた上で謝罪し、再発防止のために役職員対象に人権教育研修を充実させること。
一、在日韓国人や中国人に対する偏見を改め、公式の場で謝罪すること。

「再発防止のために役職員対象に人権教育研修を充実させること」。企業や役所の総務担当者ならば心当たりがある人も多いだろう。通常、部落解放同盟が企業や行政を糾弾した場合、その後、人権研修会、学習会の開催を持って終了というのが通例だ。ただ解放同盟が糾弾しようとした企業が、実は、全日本同和会の会員企業だったので、手を引いたというパターンもあり、一括りにはできないがまずこの流れと言っていいだろう。

こうした研修会は、おおかた解放同盟の役員、あるいは座付き作家、ジャーナリストが講師となって開かれる。もちろん講師には、謝礼が発生。本誌が過去、確認した”相場”は、１０万円～３０万円。作家やジャーナリストにとっては、またとない臨時収入になる。

今回の森友学園の場合、明らかに学園側に非があり、抗議したくなる心情も理解できる。しかしこの要求は、民団が推挙する講師を採用せよ、ということなのか。それでは、逆に民団側にとってあらぬ誤解を招きかねない。民団大阪府地方本部に意図を聞いた。

「こちらから講師を派遣するという意味ではなく、偏見を助長するような教育をやめてほしいというお願いです」

民団としては、あくまで自発的な見直しを求めたという説明だ。とは言えなにしろタチの悪い話が多いのが、人権研修会・学習会の類。かつて企業の内の人権研修会をめぐっては、在日コリアン人権協会が近畿大学人権問題研究所・北口末広教授（当時、部落解放同盟中央執行委員）に対して「研修会を妨害された」と訴訟を起こしたことも。いわゆる「人権運動家」にとっては、アイデンティティーと生活がかかるため、きな臭い話も起こりうるのだ。抗議の文言としては、あまり適切ではないかも。