辺野古転覆事故で揺れる沖縄県。事故をめぐる玉城玉城デニー知事の対応は強く批判されており、来月の知事選(9月13日投開票)への影響が注目される。知事選には過去最多の8人が立候補の見通し。自民党・日本維新の会から推薦を受けた保守系新人の古謝玄太・前那覇市副市長が玉城氏を追う格好だ。革新勢力が強い沖縄だけに玉城氏が優勢な状況だが、25年参院選、26年衆院選で保守票が伸びてる。保守票が基礎票を積み上げており、現職有利を覆し古謝氏にもチャンスがありそうだ。(写真=玉城氏の政策発表会)
下地氏にはダマされた…

2022年に続いて沖縄県知事選への出馬が噂された下地幹郎氏。筆者は6月末、同氏に真意を確認したが「知事選には出ません」と明言した。ところが下地氏は7月13日に出馬表明。保守割れして、自民・維新の推薦を受ける古謝氏が不利になると下地氏への不満が相次ぐ。
現状は玉城氏が既存の選挙基盤で先行する一方、保守票の潜在量は大きく、古謝氏がどこまで一本化できるかが勝負という構図だ。有力候補を比較してみた。
玉城デニー氏の支持政党は立憲・共産・社民系・社大など。連合も推薦 現職の知名度と、2022年に全4選挙区で勝った地域基盤が強みだ。
古謝玄太氏は自民・国民・維新・参政党から推薦。若さ、官僚・那覇副市長経験、保守系各党の票をまとめる求心力は申し分ない。
下地幹郎氏は資料上、約5万票規模の個人票を持ち、特に宮古・那覇などで影響力があるという。出馬すれば票割れ要因となる。
2022年知事選を振り返ってみる。
- 玉城氏:339,767票(50.84%)
- 佐喜眞氏:274,844票(41.13%)
- 下地氏:53,677票(8.0%)
- 玉城―佐喜眞の票差:64,923票
特に那覇市で玉城氏は約2万4,800票差をつけており、大票田となる。読谷、西原、北中城、南風原、今帰仁、大宜味などでも玉城氏が強い傾向だ。
一方、宜野湾市、名護市、宮古島市、北・南大東村、国頭村などは保守系が比較的強く、古謝陣営にとって重点地域になるだろう。
玉城氏の強みはなんといっても都市部での強さ。大規模な米軍基地が所在しない那覇市で玉城氏が大きくリードする一方、普天間飛行場を抱える宜野湾市では佐喜眞氏が上回った。ただし、後者には佐喜眞氏の元市長としての地盤も影響しており、基地の有無だけでは説明できない。
2025年の参議院選挙(比例代表)で県内労組の動向を見てみる。自治労は岸真紀子氏に県合計で987票、JP労組は小沢雅仁氏に県合計で3148票、 情報労連は吉川さおり氏に県合計で 1212票をそれぞれ投票。
もちろん国政票=知事選票とはならないが、自治労などの大規模な労働組合が持つ実際の知事選での影響力は、この数字よりも大きい。特に自治労のような組織は家族、知人、OBまで幅広く呼びかける。運動員は選挙慣れしており、ポスター貼り、電話かけなど選挙の実働部隊として能力が高い。
保守票のポテンシャルに期待する声
単純な二者対決で2022年と同じ投票総数と仮定すれば、逆転に必要な票数はおよそ3万2500票。この差を逆転するのは並大抵のことではない。
だが古謝氏にも十分にチャンスがあることは数字からも読み解ける。2025年参院選の比例票をまとめた。

保守系6党の合計が37万3429票で、リベラル4党を14万9158票もリードしている。
基礎的な保守票はすでに革新を上回っているのだ。それでも玉城氏が勝つのは以下の3つの要素がある。
①玉城氏への個人的な人気。「国政選挙では自民党や維新・国民民主などに投票している保守・中道寄りの有権者や無党派層の中に〝知事選ではデニーさんに入れる〟という有権者が一定量います」(県自民党員)
②沖縄マインド。普段は保守系の政党を支持していても、基地問題などの局所的なテーマにおいて「現職のスタンスを支持する」という地元の心理が働き、政党の枠を超えて革新側に票が流れる現象が起きる。
③保守分裂。自民、維新、国民、参政などは国政ではバラバラ。知事選で「古謝玄太氏」という一人の候補者にこれらすべての票(37万票)を完全にまとめるのは、組織のカラーが違うため容易ではない。
古謝氏にとっては厳しい選挙戦になることは言うまでもない。だが一見すると「革新の牙城」のように見える沖縄だが、組織や政党の「足腰(基礎票)」という点では、すでに保守・中道系がかなり優勢な状況なのだ。
今回の知事選では、25年参院選の比例票で保守系6党の合計がリベラル系4党を約14万9,000票上回った基礎票を、古謝陣営がどこまで実際の得票に結び付けられるかが焦点となる。

2026年衆院選の沖縄比例では自民が22万1783票、35.3%を獲得。2025年参院選の10万7120票から約11万4,700票増え、約2.1倍に当たる。
古謝氏が衆院選で自民党が得た票を固めても、2022年知事選で5万3,677票を獲得した下地氏が、今回も保守・中間層から一定の票を得れば、反玉城票が分散する可能性がある。下地氏の得票が勝敗を左右するカギとなりそうだ。
だが「玉城氏の優位を崩して接戦に持ち込める条件」は整った。古謝氏が玉城超えを果たして〝活動家天国〟沖縄にメスを入れることができるか。



