奈良の元ダルク系福祉施設「GARDEN」に消防法違反 建物問題でオーナーと対立

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By 宮部 龍彦

奈良県大和高田市の障害福祉施設「一般社団法人GARDEN」が入居する建物で重大な消防法違反が発覚し、高田消防署から「違反対象物」として公表されている。施設運営法人は、薬物依存症者のリハビリ施設として知られる「ダルク」系団体である「奈良ダルク」の後継団体である。現在は「一般財団法人ワンネス財団」の傘下団体となっている。

問題となった建物はもともと倉庫として建築確認を受けた2階建ての建物だが、無許可で中2階部分が設置され、実質的に3階建ての施設として使用されている。火災発生時には深刻な人的被害の危険があるにも関わらず、改善の目処が立たない状態だ。

消防法違反が指摘されるも改善進まず

高田消防署に掲示された違反対象物の掲示

2025年2月、消防署立入検査で、建物には消火栓、自動火災報知設備、誘導灯が全く設置されていない重大な消防法違反が判明。同年3月に消防署が違反を公表したものの、現在に至るまで改善されていない。

関連資料によれば、建物の所有者は「有限会社北橋」。建てられたのは現在の法人代表者の父親の代である1992年のこと。建物には大きなシャッターがあり、一見して倉庫だが、実際に1999年までは物流会社の倉庫として使われていた。

それが、2005年からは「三重ダルク」に貸し出された。その後団体名が「奈良ダルク」「社団法人 くら」「一般社団法人セレニティーパークジャパン」に変わり、現在は「一般財団法人ワンネス財団」傘下の「一般社団法人GARDEN」になっている。団体名が変遷しているので分かりにくいが、今は全国展開しているワンネス財団のルーツ自体が「三重ダルク」で、「奈良ダルク」の頃から代表者は変わっていない。

当初は事務所として貸し出されたものの、いつしか薬物依存症者等の施設として利用されるようになった。早朝に建物を訪れると、誰もいる様子はなかったが、付近の住民によると昼間には多数の人が出入りしているということだった。一般社団法人GARDENのウェブサイトによると、薬物だけではなく、アルコールやギャンブル依存症の回復支援も行っているとされる。

消防法違反について確認するために高田消防署を訪れると、掲示板に確かに違反対象物として「一般社団法人奈良GARDEN」という名称で掲示されていた。消防署の担当者に聞くと、立入検査をして消防法違反が判明して公表の対象になったことは事実だが、詳しい経過については決裁が終わっていないので答えられないということであった。

消防署によれば、今は建物に入所者はいないと言う。

しかし、再び施設を訪れると、建物に事務所に人がおり、入所者と思われる人が出入りしていた。聞いてみると、夜間はそれぞれアパート等で宿泊しており、昼間だけ施設で依存症から回復するためのカリキュラムをこなしているという。「入所者」はいないが「通所者」がいるということなのだろう。

施設関係者によれば通所者は50人くらいで、今は違法薬物以外のオーバードーズが多いという。消防法違反を指摘され、また建物の改修を巡ってオーナーと折り合いがつかないことは認めた。しかし、詳細についてはワンネス財団と協議しないと答えられないという。

GARDENとオーナーの対立で警察沙汰も

一方、オーナーの北橋氏は「建物は父の代に倉庫として貸したが、知らない間に中二階などが増設され実質3階建てになっていた」と説明。さらに、用途外の福祉施設としての使用を「貸主として承諾していない」と強調する。

現在、建物は違法建築状態となっている。そのようになった具体的な経緯は不明だが、北橋氏によれば、GARDENおよびその前身の団体はそれを知っていたはずだし、平成23年に当時の「セレニティーパークジャパン」が奈良県障害福祉課から指定障害者福祉サービスの指定を受けた時に、行政側は消防設備の不備を認識できたはずだという。北橋氏としては、行政が認可したものだから問題ないと信じていたということなのだ。

また、GARDEN側代理人の内橋裕和弁護士(奈良総合法律事務所)から北橋氏に対し、中二階の解体や改修費用の一部として500万円の負担を求める文書が送付され、また「負担ができないなら、1500万円で建物を買い取る」と提案があったが、金銭面で折り合いがつかず北橋氏は拒否。双方は対立したままだ。

なお内橋弁護士自身がGARDENの役員という立場である。内橋弁護士は様々な刑事事件の被告の代理人を務める「人権派弁護士」としても知られ、印象深いところでは水平社博物館に向けた「差別街宣」に対する損害賠償請求訴訟の代理人を務めたこともある。

ところで、関係者によれば次のようなこともあったという。あるとき、GARDENと建物の施工会社、北橋氏の三者で話し合いが持たれたが、交渉は決裂。北橋氏は退席したが、GARDENの関係者が北橋を自宅まで追いかけ、それを避けようとした北橋氏が転倒し、軽いけがをした。その後もGARDEN関係者が北橋宅前に居座ったため、警察が来る騒ぎになった。

消防署用に別の議事録を作成

そして、関係者から見せられたのが、2つの議事録だ。どちらも「北橋ビル打合せ議事録(第1回)」となっているが、一方はざっくりした内容で、もう1つは詳細に書かれている。片方は消防署への提出用で、もう1つが内部向けだという。

話は前後するが、高田消防署を訪れた時にこれらを見せたら、簡単な方が消防署に提出されたものだという。内容から見て、GARDENと工務店によるものだろう。詳細な方を消防署に出さなかったのは、〝もめている〟ことを知られたくなかったと見るのが自然だ。しかし、〝二重議事録〟は誠実な対応とは言えないだろう。

なお、厚生労働省の基準によれば、宿泊を伴う指定障害者支援施設と比べ、通所型の「指定障害福祉サービス事業者」の防災基準は比較的緩やかになる。GARDENは通所型の指定のみであり、指定障害者支援施設としての指定は受けていないため、防災基準もそれに準じる。

ただ、いずれにしても、現在の施設が消防法違反であり違法建築状態なのは事実。今の状態を放置して火事や災害で死傷者が出れば、関係者の責任が問われる。

今後、GARDENに対する指定障害者福祉サービス事業者の指定を行政が取り消す可能性はあるのか。奈良県障害福祉課に問い合わせたところ、消防法違反の件は承知しているということであるが、今後指定を続けるかどうかについては回答待ちの状態である。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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