【広島市】都町改良住宅駐車場裁判、個人口座への公金流入が明らかに

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By 宮部 龍彦

本サイトで報じてきた、広島市西区の都町改良住宅の駐車場をめぐる、会計書類の開示を求める裁判(広島地裁民事1部(光岡弘志裁判官))の判決が4月17日に出た。結果は却下。形式的には原告の全面敗訴である。

しかし、その理由は「訴訟係属中に原告が求めた主要資料が開示され、訴えの利益が失われた」というもの。当初の目的が事実上達成されたという意味では原告の全面勝訴である。

裁判の最中に、原告が元組合長とやりとりする機会があり、公金である付設駐車場の管理費用が個人口座で処理され、私的流用が疑われる状況となっている事実が明るみになった。また駐車場区画が又貸しされて一部住民が利ざやを稼いでいた問題についても、市が利用申請時の車検証提示義務化など是正策に着手した。

改良住宅には敷地に設けられた、住民に無償貸与された駐車場の他に、「付設駐車場」という有料の駐車場がある。無償貸与された駐車場について、現実には駐車場管理組合が料金を徴収していることは既報のとおり。

一方、付設駐車場は、広島市が指定管理者(第一ビルサービス)に運営を委託しており、指定管理者から自動車管理組合に、利用者に対する指導や迷惑駐車の報告、駐車スペースの清掃などの業務のために管理委託費が支払われていた。裁判の過程でさらに明らかになったのは、この管理委託費の不透明さだ。

裁判所が官公署に対し「調査嘱託」を発する制度がある。過去に広島市が管理組合に直接管理を委託していたため、原告が「過去の委託料振込先を示す資料」を請求し、裁判所が広島市に嘱託。しかし、振込先口座の情報は「法人等の不利益情報に当たる」として開示を拒んだ。

ところが、別途管理組合から提出された通帳コピーには委託費が振り込まれた形跡がなかった。自治会名義の通帳のコピーも提出されたが、そこにも委託費は振り込まれていなかった。

そして、元組合長の証言により、市との契約だった2004年度〜2014年度の管理委託料(年2万6800円)が、組合名義ではなく組合長個人名義の口座に送金されていたことが分かった。このことが明るみになると、現在の契約相手である指定管理者は2024年10月以降の振込を停止。市も「組合名義口座が確認できるまで指定管理者からの振込を見合わせる」と方針転換した。

さらに、事態は急展開した。裁判の判決が出る直前の2025年3月に行われた自治会の総会で、紛糾しつつも原告が組合長となった。

冒頭で述べた通り、目的とする文書が出てきて原告側の訴えの利益がなくなったため裁判の判決は却下となった。そうでなくても、原告と被告が同じになって対立が解消されたことで却下ということもあり得ただろう。

元組合長は管理費の私的流用を認めた形だが、その理由として「(広島市)西区建築部長から『好きに使っていい』と言われた」と説明しているという。

過去のことであり、しかも口頭でのことなので、市側に証拠は残っていない。当時の市と管理組合の契約書も破棄済みだ。ただ、自治会のことについては市はノータッチであるだけでなく、駐車場は公有地でありながら、そのことに関わるお金の扱いもかなりルーズであったことは想像に難くない。

今後、元原告側は横領での刑事告発や、何らかの方法で支出された管理費を返還させることを検討しているが、ハードルは高い。

ただ、公営住宅の管理がこれほどいい加減であったこと、法的措置を取るだけでも様々なことが明らかになることが分かっただけでも、貴重な事例ではないだろうか。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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