【特集・香港デモ】自爆テロを決意する悲壮な若者たち

カテゴリー: 国際, 香港デモ | タグ: | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

国内問題が重なり香港デモ情報をお伝えできなかったが、そんな矢先、本誌に取材協力、情報提供をしてくれているX氏から衝撃の情報が入ってきた。激化する香港警察に対抗するため、一部の若者たちが「自爆テロ」を実行しようというのだ。もはや香港デモは「泥沼化」などと生易しいものではなくなってきた。デモ隊は香港政府、そして中国共産党に屈するのか? それとも民主化を勝ち取るのか? もはや問題は香港だけではなく、東アジアの未来がかかっている!

*アイキャッチ画像の説明左から「こんな子供も逮捕」「白髪の老婆も逮捕」「銃口を心臓に突き付ける。これを謀殺と言わずなんと言う」という解説がついていた 。

エスカレートする警察の取り締まり。負傷者も多数出ている。

悲しい小話。香港は発展途上国?

近頃、香港で流行る小話を一つ。とある若者たちが香港の政治状況について語り合っている。
「香港って途上国なのか?」
「そんなことはないよ。おかしなことを言うね」
「じゃあ、過去1年でデモ隊に実弾発砲した国家って知ってるかい?」
「さあ」
「スーダン、コンゴ、ナイジェリア、ジンバブエ、イラク・・」
お互い顔を見合わせ、そして「香港だ」と嘆息する。
「アハハ、これじゃあ確かに途上国かもね」

悲しき“ ポケットジョーク”だ。ご存じの通り、香港デモ隊への発砲事件は日本でも報じられている。「デモと発砲」はある意味、その国の民主主義の成熟度が表れているかもしれない。あの「あさま山荘事件」の際、後藤田正晴警察庁長官は指揮をとる佐々淳行警備実施及び広報担当幕僚長に発砲を禁じた。万一、犯人を射殺した場合、「殉教者扱い」になってしまうことを恐れたものだ。だから機動隊は銃で武装した連合赤軍メンバーに丸腰で対処せざるをえなかった。日本特有の犯人であっても「人命尊重」の意味もあったかもしれないが、香港警察の場合、そうした配慮もない様子。発砲すれば国際的な非難が高まるが、それ以上に鎮圧を重視する。こういう方針からしても中国の関与が漂ってくるものだ。

大陸系の警官(軍人)の存在については面白い映像がある。

北京語で部下を叱責する警官。実は人民解放軍?

X氏の解説によると「タバコを吸っていた私服の部下に対して”お前はそれでも
軍人か!”と北京語で叱責する隊長らしき人の姿が撮影されています。香港での
公用語は北京語ではなく広東語、話の内容から人民解放軍の兵士が警官に化けているとの噂に信憑性を与える映像です」という。

またX氏は有名な香港映画『インファナル・アフェア』のエピソードを引用して
この一件の異様さを強調するのだ。「劇中、昇進面接に望む若い警官の主人公が英語で上官へ決意を語る場面があるんです。それがいまや警察内部では公用語が英語から北京語に変わったと いうのでしょうか。考えにくいですよね」

誰もがスマホ片手に動画撮影し情報発信できる時代だ。大陸との内通を当局が秘匿しようとしても隠しおおせるものではない。

爆弾を抱えて警察に突撃計画

キャンパスは戦場と化した。立場新聞より引用。

さて日本でもかなり大きく報道されたが、11月11日、香港警察は中文大学に突入し催涙弾などを発射した。 現場の写真を見ると、まるで空爆でも受けているかのようだ。そもそも大学とは「学の独立」という観点から「自治」が認められている。警察と言えども簡単に侵入できるものではない。 日本の学園紛争も大学に機動隊を入れるというのは、学校側も非常に高度な判断が必要だった。それほど「大学」に対する権力・警察の介入は厳格なものなのだ。いわんや武装した警官が踏み込んで催涙弾を放つなど異常事態というレベルではない。学生はもちろん教職員あるいは市民にとってもショックだったはず。中には爆弾を抱えて警察に突撃してやる! こんな悲壮な覚悟を持った学生も出ているというのだ。

悲壮なやりとりが交わされている。右は日本語訳。

警察に殺されるぐらいならば、死なば諸共という心境なのだろうか。ここでもしデモが敗北すればそれは香港の民主化の未来が閉ざされることになりかねない。学生たちの覚悟が伝わってくる。

大学側は政府に対して警察の無断侵入禁止を求めた。

デモ参加者の不審死は警察の犯行? 警官による集団レイプの噂も

痛ましい事故現場。こういう映像を流すのも海外メディアらしい。
事故のニュース。 3階に血痕があるなら、2階に落ちる前に既に怪我をしていた証左だとも (映像29秒あたり) 。

今月8日、デモに参加していた香港科技大学の周梓楽アレックスチョウ氏が立体駐車場から転落して死亡したという痛ましいニュースが報じられた。報道によれば周氏は催涙弾をよけたところ足を踏み外して転落したという。その死をめぐり警察の犯行説が浮上。当時の状況が疑問視されている。同日のAFPBBニュースは「周さんは4日未明、前夜に警察とデモ隊との衝突があった立体駐車場の敷地内で血だらけになって意識不明で倒れていたところを発見され、クイーン・エリザベス病院(Queen Elizabeth Hospital)に搬送されたが、同院で8日午前8時09分、死亡が確認された」と報じた。

不審死について3つの問題点を挙げている。

またなぜ立体駐車場にいたかといえば催涙弾から逃れるためによじ登ったということである。上記3ポイントの邦訳を見て頂こう。

疑問1 学生周はなぜ駐車場ビルに姿を表したのか?
「(通行人が)衝突現場から歩道橋を伝って現場を離れる時、救援を求める声が聞こえて初めて、周の存在を知った」

疑問2 学生周はなぜ墜死したのか? 催涙弾を避けるため?
「催涙弾の発射位置より120m離れていて拡散して効果ない。まして駐車場ビルは壁がなく通気性が良い。足を滑らせたという話は疑問がある」

疑問3 警察を避けて転落するか?
「周囲の壁は1.2mの高さがあり簡単に足を滑らせらるものではない」

また「3名の救急隊員と周囲の住民に対して「あっちいけ!」と機動隊の経験が恫喝したこと。通常は12分で到着する救急車が30分かかっていることが指摘されている。

この点についてX氏は「死因は警察発表の通りかもしれませんが、警官が市民を殴打したり、催涙弾を撃つ映像が多数残されていますよね。これでは警官が彼を追い詰めて殺したという“噂 ”も信ぴょう性が出てきます」と訴える。

またこんな情報もある。デモに参加した少女の全裸の水死体が発見され「事故」として扱われているが、警官に謀殺されたとの見方もある。そんな中、「私は機動隊に集団レイプされ妊娠しそのまま病院で堕胎させられた」と告発し記者会見する少女も現れ、真偽の程はさておき、物議を醸している。

周梓楽氏転落死亡事故の原因はともかく、民主化デモの中で公式に初めて死者が
出たのは事実。しかも警察の発表は二転三転している。

「事件前の現場には警官はいなかったという当初の話から、事件前に、一般市民のドライブレコーダーに警官の姿が映っていることが暴露されると前言撤回。香港市民の信頼を損なうような後手後手の対応が目立っています。香港市民に実弾や催涙弾を放つ様子は、市民の味方ではなく、まるで独裁者に従う軍隊の姿そのものではないですか」とX氏も憤る。その通りだ。

「香港社会の文化や経済力は、世界的にも歴史的にも稀有な一国二制度という枠組みの下で発展してきたのです。不完全ながらも自由民主を保つ香港は、民族融和・協調を旗印に掲げる中国政府にとっても貴重な存在のはずです。。確かに中国本土の発展は香港をも飲み込む勢いだが、それもこれまで香港という『大陸への窓口』があったお陰でもあります」(X氏)

つまり香港が持つ自由な雰囲気が「中国」を支えてきたとも言えよう。その自由を中国政府が奪おうとするならば愚策としか言いようがない。これ以上、犠牲者を出さないためにも、そして香港の魅力を失わないためにも政府・中国共産党は学生や市民たちの願いに耳を傾けるべきだ。

事故現場のイラスト。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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