【日本財団の闇】大使館が 関与?怪文書が 物語る “親日国家”パラオという 幻想【後編】

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By Jun mishina

前回、レポートしたインド太平洋の安全保障専門家、早川理恵子氏に対する怪文書から日本-パラオの暗部が見えた。そこから同国に抱く“親日国家 ”とは異なる実相が浮かび上がる。中国の太平洋進出でパラオ政府も米中の狭間で外交に苦心する今、かつて日本人が抱いた親日国家・パラオはもはや幻想かもしれない。

パラオ大使館→笹川平和財団への 書簡がなぜ 漏れた?

①原本。黒塗り部分は宛先の笹川平和財団。
②複数の関係者に郵送された怪文書。

早川理恵子氏が主宰する「インド太平洋研究会」にソロモン諸島マライタ州・ダニエル・スイダニ前州首相、セルサス・タリフィル氏両氏の招聘に端を発した怪文書騒動。都内で開催されたスイダニ氏の講演会後に議員、ジャーナリストらに早川氏を中傷する怪文書が送られてきた。

それは同氏の「パラオ国家安全保障局アドバイザー」という肩書きが虚偽であるとするものだ。

怪文書はパラオ大使館が笹川平和財団に宛てた文書(①原本)を和訳して、ジャーナリストら5人に送付したもの。パラオ大使館による文書をなぜ第三者が所有しているのか謎が多い。

何らかの事情を知ると囁かれる笹川平和財団職員も文書(①原本)が同財団に送られてきたと説明する。パラオ大使館から笹川平和財団への書簡が流出した格好だ。

前回記事でも指摘したが早川氏は日本財団の問題点を告発する立場にある。財団内にとって“目障り ”な存在なのは言うまでもない。わずか一枚の怪文書には日本‐パラオの虚実が込められているようだ。

戦前人脈、暴力団人脈が パラオに絡む

第二次世界大戦終了後、敗戦から国際社会に復帰し、国を繫栄させる。当時の政治家たちがこう願いその通り、高度成長をもたらしたのは事実だ。その熱気は『東急100年史』からも読み取れる。

五島昇社長が太平洋地域の発展について思いを寄せ始めたのは、戦後、軍務を解かれた元青年将校らにより青年懇話会が行われた時期にさかのぼる。日本が主権を失ってGHQの占領下に置かれ、かつてのリーダーたちは追放されて不在、労働組合運動が激化する混沌とした状況のなかで、懇話会は日本の将来について持論をぶつけ合い、議論を尽くす場となっていた。当時のメンバーは大半が官庁在籍者で、のちに首相となる中曽根康弘も常連の一人であった。ここで、たびたび俎上にのぼったのが太平洋諸国との関係である。五島昇社長は、太平洋地域が、米国や欧州と対等なパワーバランスを持つ第三極になり得るのではないか、かつての大東亜共栄圏とは異なるアプローチで日本が指導的な役割を果たすことで地域全体の活性化に導くことができるのではないか、との考えを抱くようになった。

太平洋地域の活性化を「大東亜共栄圏」と見立てるあたり戦前世代らしい。またパラオを始め太平洋島嶼国は日本の統治時代もあり沖縄県民を中心に日本人6万人以上が植民。そして激戦があった。保守派、特に戦前世代にとってはノスタルジーに浸れる地域でもある。本来は月をモチーフにしたパラオの国旗も「日の丸をモデルにした」という説は保守派の心情をくすぐった。

戦前世代がパラオに集まり、そして利権につなげていく。

1985年11月29日、第103回国会商工委員会で元社会党・横江金夫衆院議員から中曽根首相(当時)はこう追及を受けた。

中曽根総理に対して、パラオ島にあるこの会社が持っている二十万坪の土地を贈呈をしたということが書いてあるのです。総理はパラオ島へお行きになったかどうか知りませんが、何か仄聞いたしますと、息子さんが行かれたとかどうとかという話もあるようでございますけれども、私は、こういう内部告発の中にこれが出てくるということ、パラオ島は外国でございますから、そんなことは外国のことでわかりません、こういうふうなお話なのかもしれませんけれども、ここらあたりについて、これはもう内部資料を私は渡しますけれども、どうか調査をしっかりしていただきたいと思うのです。

文中の「この会社」とは政官界との癒着が指摘されたジャパンライフのことだ。中曽根元首相がジャパンライフ所有の土地を贈呈されていた。

そしてパラオは日本財団とも関係が深い。同財団・笹川陽平会長のブログ「パラオ訪問」その2によると「パラオとの関わりのきっかけは、父・笹川良一が石原慎太郎都知事の紹介でクニオ・ナカムラ(大統領就任前)と面談したのが始まりであった」としている。

パラオに船を寄贈する笹川良一氏(中)。石原慎太郎運輸相(当時)。保守派人脈と関係が深い。

ナカムラ氏は三重県がルーツでペリリュー島出身。住民用の船寄贈を要請された笹川良一氏が快諾し、1990年に日本丸・大和丸を提供した。

あるいは大変な激戦だった「ペリリューの戦い」の戦没者が祀られる「ペリリュー神社」は日本からの観光客も多い。整備に関わったのは任侠右翼と囁かれる滑川裕二氏(NPO南洋交流協会理事長)だ。同氏についてはいずれ詳細をレポートするがとりあえず「ペリリュー神社」について話を進める。

同神社の整備はパラオ政府の要請で、また現地人も望んだという美談も伝わるが実はこの話、滑川氏が語ったこと。裏付けのない話なのだ。とはいえ美談の虚実などパラオにすればどうでもいい話。むしろ戦前ノスタルジーに惹かれて日本人観光客が見込めるというものだ。

「パラオ人が日本統治時代を懐かしむ、感謝する」といった言説は作られた美談という側面もある。あるいはパラオに巣食う人々の願望、幻想かもしれない。

確実にいえるのは“ 親日国家パラオ”というイメージの方が政治、外交、ビジネス、広い分野で都合がいいのだ。このためパラオの暗部に注目される機会は少ない。

その一つがパラオと統一教会の関係だ。トミー・レメンゲサウ前大統領夫人がパラオ国内で統一教会の集会を開催していたことも機関誌などで確認できる。統一教会のパラオ進出は20年前以上から懸念されており、教団は現地要人に接近して活動拠点を確保してきた。

世界平和統一家庭連合 NEWS ONLINE(2019年12月16日)より。レメンゲサウ前大統領夫人が統一教会の式典で祝辞。

新聞・テレビなどマスコミ報道は旧統一教会狂騒ともいえるが日本財団との関係に言及したことはあっただろうか。だがこれらの情報は早川氏のブログ、各種記事でも指摘されていること。そして親日国家としてのパラオとは異なる実相が読み取れるのだ。さらに中国マフィア「三合会」がパラオで暗躍するなど国際組織の脅威に直面する。

パラオと関係が深い笹川平和財団(日本財団)も同国政府に影響するのだ。

「レメンゲサウ前大統領は親日派として笹川平和財団も推したんです。逆にスランゲル・ウィップス現大統領を“ 親中派”と考えていますが違います。ウィップス大統領は実業家なので中国をビジネス相手として大切にしているだけ。政治、外交では慎重な対応をしているんですね。ただここで忘れていけないのは途上国特有の“弱者の恐喝”というロジックが働くこと。“ 我々の要求を受け入れない場合は中国につくぞ”というわけです。実際、ウィップス大統領は米国との交渉でブリンケン長官を震え上がらせています」(早川氏)

もはや親日国家・パラオは神話といっても過言ではない。それも政治家、財界人に作られた親日神話ともいえよう。「国旗は日の丸を模した」「日本統治時代は良かった」こんな話をしてもきっとパラオ人は微笑んでくれるに違いない。繰り返すがそれは観光、商業、外交でも利益につながるからだ。パラオを始め太平洋島嶼国が「親日国家」とはもはや幻想の世界。親日国家という願望を捨て現実的な外交をしなければいずれ太平洋地域に五星紅旗で埋め尽くされるだろう。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【日本財団の闇】大使館が 関与?怪文書が 物語る “親日国家”パラオという 幻想【後編】」への2件のフィードバック

  1. 匿名

     また統一協会の四文字に脊髄反射する与太記事かよ。
    #42c2621ab4ce86ca18f5d5937e226ed6

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