関西生コン「ヤドチョウ」たちの裁判② コンプライアンス活動の罠

三品純 By 三品純

2勝5敗。関西生コン裁判の傍聴券抽選の戦績である。抽選の倍率は日によって異なるがだいたい3~4倍といったところだろうか。傍聴券を入手できればいいが、早朝から大津や大阪までやってきて抽選に漏れた時のダメージは大きい。入学試験のように当選番号が張り出されるから顔なじみになった傍聴希望者からは「不合格やったな(笑)」といじられることもある。5月21日、湖東協組事件の公判は運よく傍聴することができた。2勝目だ。今回は大津生コンクリート協同組合の村井攻一理事長ら幹部も登場し、関西生コンの内情を語った。

関西生コンの機関紙「くさり」。発行人は湯川被告。湯川被告は人事、活動方針、活動家の配置などを担う有力者だ。顔写真は武建一氏。

傍聴券の抽選が当たると手首に巻いてもらった番号札を切ってもらう。そして法廷に入る。

「触らんといて。バッジだけやん」

いかにも市民活動家風の高齢女性が騒いでいる。裁判所は特定の政治メッセージやプラカード、横断幕の持ち込みは禁止だ。この女性は胸に政治メッセージが書かれたバッジをつけており、それを注意されたのだ。

「私らはすぐに他の人に代わってもらうから。バッジぐらいなんなの?」

傍聴は少しでも多くの関係者に参加させたいため、どうやら傍聴券を使い回しにしているようだ。確かに傍聴席は代わる代わる人が変わる。また「ぐぉーごー」と高いびきが聞こえてくる。要するに「傍聴」よりも、「動員」したことの方が重要なのだろう。公判前に裁判長から政治的メッセージの持ち込み禁止の注意があったが、おそらくこのやり取りがあったかもしれない。

例によって傍聴券求め列ができる大津地裁。駐車場は関係者の車やバスで満車。

イン企業、アウト企業とは?

前々回、裁判長が公判期日を伝えてきた時に「21日は重要な日になる」と言っていた。というのも大津生コンクリート協同組合の村井攻一理事長が証言に立つからだ。村井証人にも「遮蔽しゃへい」が行われた。するとひそひそと声が伝わってくる。

「理事長(村井)の顔なんて誰でも分かるがな」
「ネットに出とるやんなあ」

これは別稿でも触れることになる。大阪地裁の公判では連帯から嫌がらせを受けたという企業の役員が証言に立っても遮蔽はなかった。むしろこちらの方が遮蔽した方が良さそうなものだが。遮蔽については弁護人から異議が申し立てられた。確かにどういう基準で決められているか分からない。

村井証人は大津協のトップであり、武被告とも交流があった。建設会社への恐喝、威力業務妨害で取り調べを受けたこともある人物だ。村井は2014年から理事長に就任。当時は1㎥あたり1万円前後で取引されていたという。関西では和歌山県、奈良県が値上げに成功して一種のモデル地域になっていた。

そこで滋賀県内では大津協、湖東協同組合、そして連帯と協議がもたれた。この場には湖東協事件の湯川裕司被告(関西生コン副委員長)らが出席した。捜査関係者によれば「湯川被告は連帯の活動の指揮だけではなく、人事や仕事の割り振りなどを掌握し連帯内では影響力がある」という人物だ。活動家たちも仕事がかかっている。だから武被告はもちろんだが、湯川被告も絶対的な存在なのだ。

大津、湖東、連帯の協議では湖東協が生コン価格1 ㎥ あたり3000円の値上げをすることが報告された。大津協には「越境」して値上げの妨げにならないようにと要請された。つまりより価格が安い業者が選定されるからだろう。もし大津協が「越境」して販売した場合、「連帯としても措置する」と湯川被告から伝えられたという。

この場合の「措置」とは何らかの妨害行為、抗議活動が起きるということだろう。連帯としても値上げはメリットがある。村井によれば値上げした場合、1 ㎥ あたり200円を連帯に支払わなければならない。なるほどこのようにして活動資金が集められるわけだ。

さて関西生コンの裁判では様々な専門用語、業界用語が出てくる。だから取材も学びながらの悪戦苦闘だ。同和事業、朝鮮総連・朝鮮学校、その他特殊団体の取材をする場合、まず予備知識を得るには「記念誌を読め」という弊社の合言葉がある。団体内で制作された「〇〇の歩み」などとタイトルがついた記念誌を見たことはないだろうか。こうした記念誌には本来は表に出ない話があっさり記載されていることもある。世間の非常識も業界では当たり前だからだ。とは言え裁判での証言はとても重要だ。「教科書」には載っていない生の情報が出てくる。村井からは「イン企業・アウト企業」という存在が語られた。これも記念誌には出てこない。

「イン・アウト」。もちろんIN・OUTのことだが単語だけで察しのいい人はおおかたの意味を理解できるだろう。イン企業とは連帯のシンパ、アウト企業とは連帯に参加しない企業である。連帯傘下の企業から生コンを購入しない企業(アウト)の現場に嫌がらせや抗議活動に行く。これが「アウト対策」と呼ばれるものだ。2015年10月19日、村井は大阪西区の料亭「江戸堀やまぐち」で武被告らと会食した。村井はここで大津協の値上げと「アウト対策をしてほしい」と武に伝えたという。つまり大津協の企業だけが値上げをしては販売上、不利である。だから連帯側に値上げをしない=アウト企業への“措置 ”を要請したわけだ。この際、武ら連帯側からは「協力して一緒にやっていきましょう」との返答を得た、こう村井は証言した。

同じ生コン業者でもイン・アウトというだけで対応は随分、変わるものだ。イン・アウト関連については村井よりも次の元連帯組合員の水本証人の方が興味深かった。

新京都生コン正門の立て看板。関西生コンのシンパ企業ということがよく分かる。

コンプライアンスという魔法の言葉

次の水本証人はすでに懲役2年6か月、執行猶予3年の有罪判決を受けている。連帯では「争議対策部」に所属していた。これは文字通り争議に関わる部署。「労働争議」に関与するというわけだから、平たく言えば実働部隊というわけだ。すでに水本証人は連帯から離れており、逮捕された当時は連帯側の弁護士の接見も拒否したという。

さすがに元実働部隊だけあってその話は生々しい。アウト企業の場合、「道路に小石一つ、囲いが1cmでも出ていたら抗議する」という。こうしてアウトからイン企業に変更させるというのだが、面白いことにイン企業に対しても抗議活動を行うことがある。証人らコンプライアンスの実働部隊はまず新京都生コン株式会社に集合。そして現場に“ 出撃”していた(同社についての詳細は別稿で)。

例えば下請け企業が連帯関係の企業であっても、発注企業が県外でアウト企業を使っている場合、それに対してけん制するためイン企業に仕掛けることもあるそうだ。またインに対する行動は一種の「カモフラージュ」の意味もある。つまりこういうことだ。アウト企業ばかり集中して抗議をすると「自分たちの言うことを聞け」という連帯の思惑がミエミエ。抗議活動ははっきりいってタテマエとはいえ環境対策・労働状況の確認という大義がある。しかしアウト企業ばかりになると大義が胡散臭くなるというわけだ。

そこでイン企業にも抗議を行うことでコンプライアンスの指摘は「イン・アウト」と無関係であることをアピールする。ただイン企業のアリバイ抗議の場合はかなり行動もゆるく、ほとんど指摘せずに終わるとのことだ。

ここでまた新しい用語を聞いたのだがこうした抗議活動のことを連帯内では「コンプライアンス活動」と称している。 証人の「コンプライアンス活動はアウト対策だ」という話が印象的だ。つまりアウト企業の些細なミスや不備などをあら探しするのである。 コンプライアンス=法令遵守というのは今さら説明の必要もないだろう。もちろん法令遵守というのは大切なことだ。「円滑な企業活動のためには違法行為、脱法行為も許される」とはならない。

とはいえ日本の場合、あまりに厳格すぎるコンプライアンスが企業、自治体の障害になる場面もある。他人に対して異常なまでにモラルや倫理を求めるご時世。コンプライアンスと言われれば誰も反論できない。この辺り個人情報保護、差別もそうだろう。コンプライアンス、個人情報、差別、この言葉を突きつければおおかたの企業や行政は沈黙するものだ。

コンプライアンス活動の前線基地!?

連帯のコンプライアンス活動もまた言葉の意味を巧みに使用したものに違いない。仮にアウト企業に対して激しい抗議活動が行われたので、警察に通報したとする。駆け付けた警察としては道路に1cm1mmでも備品や工具が出ていた場合、まあまあ、と。「その程度は仕方がないです」とは言えないだろう。また連帯側が自治体の専門職員を連れてくることもある。溝にわずかでも汚泥が流れていた場合、これまた「その程度・・」とは言えない。

証人によればコンプライアンス活動は法的には正しいかもしれないがやはり「嫌がらせ」という認識だったそうだ。連帯側の弁護人も「法令遵守のため」と主張しているが、果たして本当にコンプライアンスの観点からの指摘だったのか、あるいは逆手に取った嫌がらせなのか? 関西生コンを象徴するかのような活動だけにどんな判断が下されるのかとても興味深い。

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