国土を荒廃させ、地域住民の生命財産を脅かしかねないメガソーラー、風力発電。「自然エネルギー」という美名の下、政治・行政・マスコミ・企業が推進してきた。だが各地で相次ぐメガソーラーの乱開発に住民たちが許可取り消し、設置差し止め裁判で対抗している。反再エネ利権の機運が高まるが団体間の「結束」はまだ脆弱だ。
「メガソーラー 訴訟」でググれば 同種案件がズラリ
1000kW以上の出力能力を持つ太陽光発電施設は一般的に「メガソーラー」といわれる。なぜ各地でメガソーラーが乱立したのか。2012年から始まったFIT「固定価格買取制度」により、一般家庭・一般企業も電力会社へ売電が可能になったことにある。国の制度を利用した事業なので売電事業は安定的な収益が見込める。本来の自然エネルギーという目的よりも「投資対象」に変質し、中国、韓国、ドイツなど海外資本が参入した。
大規模なメガソーラーは当然ながら小規模よりも売電収入が多い。このため平地が少ない日本では山林を切り開きメガソーラーを設置するようになった。その結果、森林破壊、土砂災害という問題が深刻化している。
「メガソーラー 訴訟」というキーワードで検索してもらいたい。建設差し止め訴訟、設置許可取り消し訴訟、こういった案件がズラリと浮上する。
木が伐採されむき出しの地面に敷き詰められたパネルは痛々しい。
不思議なことは普段、SDGs(持続可能な開発目標)を声高に叫ぶ政治家、行政、マスコミ、環境活動家らがメガソーラーに対して無批判であることだ。
対してメガソーラー、風力発電による環境問題、設置に伴う乱開発、違法開発に直面する地域の市民団体、NPOが「全国再エネ問題連絡会」(38団体)を結成して情報発信、政策提言などを行っている。
特に2021年7月に発災した「熱海市伊豆山土石流災害」によって関心が高まったかもしれない。現場付近にメガソーラーが建設されたこともあり、土砂災害との因果関係も指摘された。熱海災害以降、同会の活動が活発になった印象だ。
政界への陳情やロビー活動も積極的で「真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議員連盟」(古屋圭司会長)は国会議員の中でも最も協力的である。
そして3月15日、衆議院第二議員会館で公開シンポジウムが開催される予定だった。
当日は著者も取材予定だったが、その直前に中止の連絡が入る。政界の中枢である議員会館でシンポジウムを開催することは非常に有意義で世論喚起にも貢献するはず。関係者、支援者ともに不本意だったのは言うまでもない。
メガソーラー問題を国政の場で考えるのには絶好のタイミングだった。
脱原発には 殺到する 国会議員なのに…
今年はメガソーラー問題に一石を投じるいい機会だ。FIT法の改正によって太陽光発電事業者の認定を受けていながら未稼働だった約5万件(約400万kw分)が今年3月末に失効した。「未稼働」とは技術的な理由ではなく単純に「投機」「収益」狙いにある。
もともとFITは自然エネルギーを普及させるために買取価格を高額に設定。参入を促すためだ。そして普及すればさらに発電コストは安くなる。だが悪質な事業者は買取価格が高額のうちに権利を取得し、発電コストが安くなるのを待ってから稼働しようというのだ。そういう狙いで生じた未稼働5万件はいかに多いことか。裏返せば2012年の制度開始以来、エネルギー不足に何の貢献をしなかったことになる。ザル制度だ。
そして太陽光発電は再生可能エネルギーという本来の趣旨を離れて、ビジネス目的になったことはもはや説明は要らないだろう。
強引に山林を切り開き斜面に無理やりパネルを貼り付けるメガソーラーのどこに「環境配慮」の精神があるのか。
このため3月のシンポジウムはメガソーラー抑制に向けて良い情報発信の場になるはず…。だがここに政治的事情が絡み中止になってしまう。
直前で議員会館が使用不可になったのだ。議員会館では日常的に「院内集会」が開催されている。その多くは「野党」系である。皮肉なことに再エネ問題へ抑制を求める院内集会は聞いたことがない。その一方「再稼働反対」「脱原発」こういった趣旨の集会なら福島原発事故以降、どれだけ多く開催されてきたことか。こういう点からもエネルギー問題を取り巻く政治力がご理解頂けるだろう。
「脱原発」では議員、活動家も大挙する一方、自然環境や人体に悪影響を与えかねない太陽光・風力発電問題には関心が低い。再エネ信仰極まれりだ。
中止をめぐっては再生エネルギー推進派の圧力といった情報がSNSで飛び交う。だがそうした事実は確認できない。ただ説明はそれぞれ食い違うが再エネ慎重派が一枚岩になれない点は事実として浮かび上がった。
連絡会関係者は中止理由をこう明かす。
「真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議員連盟に所属し、同時に『再生エネ普及拡大議員連盟』(柴山昌彦会長、河野太郎顧問)へ参加している議員もいます。15日の院内シンポジウムの会場を確保したのが再エネ議連にも所属する小林鷹之衆院議員だったので、真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議連側が不信感を持ったこと。また連絡会側としては超党派での取り組みを求めましたが、古屋圭司会長が“(超党派は)必要なく自民でやっていく。それなら議連の名前は出せない ”として中止になったのです」
「経済的メリット」、そして自然エネルギーという大義がある再エネ推進派と異なり、慎重派は分が悪い印象だ。ここ数年、盛り土・メガソーラー取材を進めてきたが、いずれも行政・自治体議員は業者に甘く、地域住民に冷淡という傾向があった。メガソーラーに対して政治と行政は非常に及び腰だ。
全国再エネ問題連絡会事務局の一般財団法人熊森協会(西宮市)によれば
「確かに古屋先生からはそのようなご指導を頂きましたが会場の件とは無関係です。単純に手続きに不備があり議員会館は利用不可となり、代替会場もなかったので中止になりました」
と政治的理由は否定。中止は手続き上のミスとの説明だ。しかし運動として見た場合、脱原発や再エネ推進のような一体感に欠ける。
また先の関係者はこう続ける。
「連絡会といっても複数の団体の連合体で政治スタンスや再エネの考え方もそれぞれ異なります。その一つがウイグル問題なんです」
真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議員連盟の参加者をみると、ウイグル問題に関心を寄せる議員がいる。また連絡会内でもウイグル問題に関心を寄せる会員がいた。
ウイグル問題は どこまで 向き合うか?
再エネ問題、特に太陽光パネルを考える上でウイグル問題は難題だ。太陽光パネルはウイグル自治区製が多く、ウイグル族の過酷な強制労働によって生産されているという指摘がある。
実はウイグル問題は再エネ慎重派、抑制派にも影を落とす。
「連絡会は地域の問題が解決すればいいという会員、対して太陽光パネルとウイグルの強制労働など国際問題まで考えたいという会員がいます。ウイグルは重要な国際問題ですが、各地域に課題が山積しているのにウイグルまでは…と抵抗を感じる人がいるのも仕方がないでしょうね」(同前)
これも厄介な話だ。メガソーラーをめぐっては一筋縄ではいかない業者や企業も多数である。工事や許認可の差し止めですら困難なのにその上、ウイグル問題というのはハードルが高いどころの話ではない。
さらにもう一点、気になるのは日本人にとってウイグルに対してどこまで心を寄せるのか。
先の衆院千葉5区補選で当選した自民党・英利アルフィヤ衆院議員は父親がウイグル系だ。ただその主張を見るにいわゆる“ 反中的”ではないし、立憲民主党などリベラル左派に近い主張を持っている。著者の眼にもアルフィヤ議員は「SDGsに心酔する意識高い系キラキラ議員」という印象は強い。
このため保守派からは英利アルフィヤ議員は非常に評判が悪く、SNS上でも批判、中傷が相次いだ。
しかし妙なもので反アルフィヤ派をみると普段はウイグル問題に関心を寄せる人物も少なくない。敵(中国)の敵(ウイグル)は味方というロジックが成立しなかったからウイグルにルーツを持つアルフィヤ氏に反発を覚えるのだろう。一議員の「ウイグル」というルーツをとっても向き合い方が大きく変わるものだ。
ではメガソーラー問題でどこまでウイグル問題についての行動を起こすのか、またその価値はあるのか疑問だ。それに国内のメガソーラーの危険性を伝える時に「ウイグル問題」では現実味に欠ける。
皮肉にもメガソーラーの参入業者に中国系が多いのは確かだが、ウイグル問題を持ち出したところで乱開発やグレーな事業運営の改善にはつながらないだろう。
たった一度のシンポジウムの中止に過ぎないが、メガソーラーの抑制、改善することの困難さを物語る。悪質な業者の高笑いが木霊するようだ。
ウイグル人がほんとに製造で労役に使われているのであれば製品に付着するDNAでわかりませんかね
民族固有の遺伝子があるはずです
>皮肉にもメガソーラーの参入業者に中国系が多いのは確かだが、ウイグル問題を持ち出したところで乱開発やグレーな事業運営の改善にはつながらないだろう。
使う製品と業者は似通ってますから多少影響あると思います。お店によって客層が違いますよね?
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