関西電力金品授受 福井県関係者聴取文書を入手「本質は同和問題」だった

カテゴリー: 地方, 行政 | タグ: , , | 投稿日: | 投稿者:
By 宮部 龍彦

2019年に発覚した、関西電力幹部が高浜町元助役の森山栄治から金品を授受していた問題。今年の2月29日にようやく福井県職員に対する調査記録の大部分が公開された。しかし、多くのメディアはオンブズマンによる情報公開訴訟の結果公開に至ったことについては報じたものの、公開した文書の中身についてはほとんど触れていない。

筆者が文書を入手して確認したところ、県職員の回答に原発についての言及は少なく、森山元助役の影響力の理由として、「人権・同和問題」を挙げる回答がほぼ全てだ。また、森山元助役が部落解放同盟の顧問的立場であったとする回答もあった。文書には“同和のドン”に対する恐怖が赤裸々に記されている。

調査対象者で 心を病んだ人がいるので 配慮を…

問題の文書は、2019年11月21日に福井県が公開した「高浜町元助役との関係にかかる調査報告書」のベースとなった、各職員による回答だ。「市民オンブズマン福井」の情報公開請求に対して全面非公開にしたため、行政訴訟に発展し、2023年11月15日に名古屋高裁金沢支部が個人情報以外は公開すべきとの判決を出していた。そして2月29日に福井県は内容のほとんどを公開したわけである。

NHK等多くのメディアは文書が公開されたことを報道したが、不思議なことに、肝心の文書の中身についてはほとんど触れていない。そこで、筆者は福井県に対して情報公開請求を行い、文書を実際に見ることにした。

福井県からすぐに筆者に連絡があり、「オンブズマンや報道向けに既に配布した文書だから」という理由で、情報公開請求の手続きをせずに“任意開示”という扱いで文書を送るということだった。そして、福井県の担当者からはそれに加えて口頭で次のような要望をされた。

「文書の扱いについてこちらで制限はできないですが、調査対象者で心を病んだ人がいるので、その点について配慮をお願いします」

ということであった。

文書は300枚以上の書類の束になっているのだが、このような紙が添付されていた。常々筆者が感じていることだが、通常の情報公開請求で公開される文書にも、このような補足説明を付けておけばミスリードを防げるのではないか?

以下から文書を見ることが出来るので、特定の誰かを吊るし上げるのではなく、冷静に見ていただきたい。

高浜町元助役関係調査様式.pdf

「同和関係者として注意が必要」「森山天皇」

既に公開されていた報告書にも「同和」の文字が6つ含まれており、森山元助役が同和関係の有力者であることは示唆されていた。しかし「事案発生の背景及び要因」「再発防止策の提案」の部分に「同和」の文字はなく、倫理の徹底、自己点検、相談窓口といった、ありきたりな結果に終わっている。

しかし、職員の回答内容の全てに目を通すと、まさに同和問題が問題の本質であり、「同和」に対する過剰な恐れが背景にあることが分かる。逆に、高浜原発誘致の功労者といった視点での回答は見当たらない。

そのことを象徴するのが、農林水産部長だった人物の回答。「原発関係の人物という印象は無い。人権の人という印象」と書かれている。やはり、キーワードは原発ではなくて、人権・同和であることが分かる。

これは、副知事を務めた人物の回答だ。「同和対策(地域改善対策)は森山氏抜きでは進まないと聞いていた」と書かれている。同様の記述が他の職員の回答にも多数あり、文字通り森山氏が「同和のドン」であったことが分かる。

「この問題の本質は同和問題だったと思う」と断言する職員がいた。

読み進めると、さらに強烈な表記もある。

「同和関係者として注意が必要と聞いていた」「同和関係で怒らせると怖いと聞いていた」

表に出せば「差別発言」と言われてしまいそうな記述である。それでもあえて職員がこう書いたのは、よほどのことであろう。

「森山天皇」と呼ばれていたという証言も複数ある。

中には「気のいいおじいちゃん」「人生の師」といった記述もあるが、そのような評価はごく一部。全般に怒らせると怖い、要注意人物という印象を持っているという趣旨の回答が圧倒的に多かった。

先輩から「部落」は使わないように言われたとの証言も。

森山元助役は 部落解放同盟の「顧問的立場」だった?

関西電力幹部との金品授受問題が発覚した直後の2019年10月7日、部落解放同盟は「福井県高浜町元助役から関西電力幹部への金品受領問題に関する部落解放同盟中央本部のコメント」を発表している。その中で、解放同盟は「確かに解放同盟の関係者であり、県連結成に尽力したひとりではあるが、解放同盟内で影響力を持っていたのは、2年間の書記長当時だけであり、それ以後は、解放同盟福井県連や高浜町支部の運営等において関与することはなく」と書いており、長らく解放同盟は森山元助役とは無関係だったことを強調している。

しかし、今回公開された文書の内容を見ると、そうではないことが分かる。

解放同盟の役職にあったのは1970年の解放同盟高浜支部結成直後の2年間と解放同盟は説明するが、職員の証言によれば1995年の時点で解放同盟福井県連の団体交渉に「同盟の顧問(?)的立場で出席」していたと書かれている。

これは、地域福祉課人権室室長だった職員の回答。「部落解放同盟の全国組織の会長が知事を訪問する際の連絡不備により激怒されることもあった」とある。

黒塗りにされている部分は、森山元助役の地元である、西三松のことであろう。

福井県に対する団体交渉では、県側を激しく追及する立場だったようである。東京、神戸での部落解放同盟の全国大会に出席していたという記述もある。神戸の大会とは、2003年の「部落解放研究第37回全国集会」のことであろう。

解放同盟の組織内での役職は持っていなかったとしても、事実上活動に関与し、外部からは解放同盟の関係人物として認識されていたことは間違いないであろう。地元住民を引き連れていたという記述もあることから、高浜町の解放同盟支部が森山元助役の影響力を知らず、それに依拠することがないというのもあり得ないことだ。

要は 大規模な“えせ同和”事件では ないか?

解放同盟のコメントは「明らかにされなければならないのは、原発建設を巡る地元との癒着ともとれる関係であり、それにともなう資金の流れの透明化こそが、この事件の本質であるはずだ。それを部落差別によって、事件の本質を遠のかせてしまうことになることだけは本意ではない。原発の誘致・建設に至る闇の深さという真相を究明することは棚上げし、人権団体にその責任をすり替えようとする悪意ある報道を許すことは出来ない。また、いち早くこうした“同和利権報道”に対して、ヘイトスピーチなどに反対してきた多くの団体や個人が批判を展開してくれていることもつけ加えておきたい。」と結ばれている。

しかし、福井県職員に対する聞き取り調査結果を見る限り「原発建設を巡る地元との癒着」も「原発の誘致・建設に至る闇の深さ」はほとんど見えてこない。これは十中八九、いやそれ以上に同和問題であろう。

もちろん、これは福井県職員に対する調査なので、関西電力との関係についての記述は限られる。ただ、民間企業に情報公開制度はないので、行政資料を手がかりにするしかない。

「同和の研修などは密室で行われていた」「同和対策でトラブルが有ると大事になる」「吊し上げにされるということは聞いていた」という記述。黒塗りの部分は「同和地区住民」という趣旨の記述か。

一連の文書から読み取れるのは、“同和”についての活動の密室性。そして“同和”対する職員の恐れ。これは、関西電力の職員にとっても同じではなかったか。

関西電力とも、同和研修という形で関わっていたことは明らかになっている。原発利権の問題であるなら、全国各地で同じような問題が起こっていてもおかしくないはずだ。しかし、高浜町だけで、しかも森山元助役という特定の人物に関してだけ異常な実態があったことは、福井県職員が告発している通り、同和問題以外に説明ができないであろう。

関電の金品授受問題は、くだけた言い方をすれば「えせ同和森山栄治に関西電力という一企業が食い物にされた事件」ということではないのか。その原因に同和に対する恐れ、そのことについて議論することができない状況があることは間違いない。

そして、今回の文書の内容を詳細に報じることが出来るのが本サイトだけということが、問題が何ら解決されていないことを示している。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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関西電力金品授受 福井県関係者聴取文書を入手「本質は同和問題」だった」への8件のフィードバック

  1. 白山のび太くん

    笑っちゃうのが、森山栄治の孫が京都の私立中高一貫校を卒業して、司法試験に合格(大学はどこを卒業したか不明。東大法か京大法であろう。)し、検事に任官し、事件発覚当時東京地検勤務の現職の検事であったこと。

    返信
    1. .

      日本姓氏語源辞典で森山姓は「善隣」になっていませんが、森山はそもそも部落にルーツがない人間だったのでしょうか?
      #60a989ee6d1e6ba87753b99e665ae65d

      返信
  2. 匿名

    解放新聞は解放同盟と森山氏を結びつけるなという論調。
    しかし、脅しのダシに使われるということは解放同盟がそれほどに恐れられているということ。
    例えばトヨタ自動車の社員ということを背景に金品を脅し取れないだろう。
    解放同盟が過去の暴力行為を反省し、生まれ代わらない限り(無理でしょうが‥)第2第3の森山榮治が出てくるでしょうね。

    #278fc8072e7ea50eb3a86d186f3b8843

    返信
    1. 宮部 龍彦 投稿作成者

      実際、解放同盟に籍を置いていたし、行動を共にしていたので、解放同盟と無関係という趣旨の説明は無理があるでしょうね

      返信
  3. 元自治体職員

    大手マスコミは、怖いからか、面倒なことを避けるためか同和問題は回避することがよくわかりました。私は地方自治体職員でしたが、毎年行われる職員向けの人権研修では、同和の人は過去に差別を受けていて、被害者であることのみが強調されていて、現在起こっている同和利権やえせ同和問題には触れていませんでした。部落=被害者ということのみが広められていて、部落を背景にした脅しなどの問題が報じられないのはおかしいと思います。
    #bf540166f476b7751629bc9dacd9c5b9

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