【民団】内なる 分断(後編)反呂体制派の 金利中氏が 新団長に 選出 初の朝鮮学校卒の 団長に賛否も

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By Jun mishina

2月28日、在日本大韓民国民団(民団)定期中央大会兼団長選が東京・韓国中央会館で開催され、民団神奈川県本部・金利中キムイジュン常任顧問を中央本部新団長に選出した。同氏は民団改革を訴え反呂前団長の筆頭。前編で執行部側との対立をレポートした。一転、新団長という急転直下に期待と疑問が入り乱れる(金氏の写真は民団HPより)。

昨年末、民団本部前に「出禁」の 貼り紙に

東京聯合ニュースによると団長選で金氏は347票を獲得し、128票の金泰勲キムテフン中央本部副団長を下した。金泰勲氏は「呂健二ヨゴニ前団長の側近」(民団関係者)で旧体制派候補が敗れた格好だ。

金新団長は朝鮮学校卒業後、関東学院大学に進学。卒業後は民団神奈川県地方本部の監察委員長や団長などを務めた。朝鮮学校出身者が民団団長になるのは初めてのことだ。

民団団長選といえば2021年、任秦洙氏の立候補資格を取り消し呂氏が無投票で再選されたという経緯がある。呂氏に反発した一派が「民団中央正常化委員会」を結成し、内紛が発生。呂氏は「分断ではなく結束こそ」と5月14日の第55回定期大会で鎮静化を図ったが火種を残した。

それが前回記事でレポートした民団東京地方本部事務所前の怒鳴り合いだ。

「民団を潰す気か!」

「お前が潰す気か!」

呂体制派と第56回臨時中央大会で暫定で団長に選出された金利中氏派の一団が激しい口論を繰り広げた。同胞の対立に対して一時は韓国大使も仲介に入り、呂前団長に改善を促したという。

韓国中央会館5~9階への出入り禁止を求める警告文には新団長の金氏の名もある。ところが金氏が正式に団長選で勝利。急転直下という意味がお分かりだろう。

金新団長の名前も。

金新団長派の団員は「金氏は“私に問題点を教えてください。それを修練していきます”という態度。逆に金泰勲氏は“これをやる、あれをやる”と独断的。呂体制と変わらない」と選挙選の感想を漏らす。

改革派としての期待は347票対128票という票差にも表れた。ここ数年、起こった民団内の“内なる分断”にも終止符が打たれようとしているのか。だが一方で不安を訴える民団関係者、在日韓国人も少なくない。

朝鮮学校出身という 経歴に反発も

昨年12月の韓国中央会館前。

やはり不安要素として挙げられているのが金団長が朝鮮学校出身者であることだ。在日韓国人、民団関係者にとって「朝鮮総連」「朝鮮学校」への恐怖感、抵抗感は根強いものがある。日本人側の感傷、あるいは共生社会といった甘い感情で片付けられるものではない。

しかも警戒感を抱くのはこうした歴史的背景だけではない。

東京聯合ニュース(2022年6月14日)によると北朝鮮・金正恩朝鮮労働党総書記が同年5月末、朝鮮総連に書簡を送り民団との「民族団結事業」を強化するよう指示したという。もちろんこれは先述した民団の内紛を金正恩氏が意識してのことだ。裏返せば北朝鮮も注視したほどの対立だったことになる。

民団内部、特に保守派・反北・反総連側にすれば看過できない問題だ。このため融和と和解が求められるがなにしろ金新団長が「朝鮮学校出身」という点に疑問を抱くのも無理からぬこと。

これに対して金新団長を支持した現役役員はこう反論した。

「金団長が朝鮮学校出身? 全く問題ないと思います。というのは民団は第7次宣言で日本国籍者をとった方々、戦前から住む方々、戦後渡日した韓国人、そして朝鮮総連籍を離脱した方々、いずれも抱え併せて共存していくという方針をとっています。それに関東の民団地方本部にも朝鮮学校出身者の団長はいますよ。何の問題もありません。日本だって共産党出身から大物の保守派になった人もいるでしょ」

民団が朝鮮総連側の離籍者も積極的に受け入れるという以上、朝鮮学校卒の新団長が誕生しても問題ないということだ。

しかし金正恩氏自らが民団との団結を命じたということはそれだけ内紛が深刻だったということだろう。火種はまだ否定できない。民団改革を訴える金団長だが、まずは内部の融和に手を焼くはずだ。

一方で内紛を冷ややかに見る若い在日韓国人からはこんな声も。

「長年、コリアンタウンだった東京・大久保も今やイスラム圏出身者、ベトナム人、ミャンマー人が増加し多国籍化しています。こんな状況だからいつまでも民団だ、総連だ、というのは時代錯誤という気もしています」

在日コリアンの人口減少、そして“民団離れ ”も指摘される。この中で従来の民団‐総連という対立関係から距離を置きたい若者の存在も見逃せない。金新体制で民団内紛が収束したとしても、それが在日社会への恩恵とは限らないのだ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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