岐阜県関市 “どんぶり勘定” 「融和事業」補助金の 対象地域名が消える

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By 宮部 龍彦

本サイトの人気シリーズである部落探訪。ぜひうちの近くの部落も探訪して欲しいというリクエストは絶えない。最近リクエストがあったのが関市柳町。戦前は22戸、職工や履物が主な産業であったとされる。

ただ、柳町全体が部落と考えるのは早計だ。より正確に部落の場所を特定するのに必要なのが事前調査だ。特に市町村のウェブサイトは参考になる。当然、関市についても調査を行ったのだが、その過程で突然公文書から特定事業の対象となっている柳町の地名が消えるという不思議なことが起こった。

まず見ていただきたいのがこの資料である。『みんなで創ろう市民が主役の元気な関市 21世紀の市政を築く政策総点検を終えて』という平成21年3月1日の資料だ。ここに「柳町自治会融和対策事業補助金」という項目がある。同和対策ではなく融和対策という言葉が使われていることに味わいがあるが、ほぼ直球に近い名称である。

同様の事業は現在も続けられており、直近では令和2年度の資料を関市のウェブサイトで見つけることができた。こちらは、この事業の位置づけが最下部に書かれている。その内容は次の通りだ。

・国の同和対策事業(同和対策事業特別措置法等 )は初期の目的を達成し一般対策へと移行。
⇒同事業は昭和44年に成立、平成14年に終了。以降は各自治体が地域の実情に応じて同和対策事業を実施。
⇒関市の上記事業は補助金の申請・実績報告等の事務手続き等は地域の実情から市の担当者が事務手続きを行っているのが現状。加えて、事業及び収支内容も不透明な部分が多く、事業の有効性があるのかは疑問。よって、同事業については終期を設定して補助事業の統廃合等を検討する必要あり。[地方改善対策事業:柳町自治会(自治会融和対策)、高齢者の生き甲斐講座/青壮年の地域活性化講座(講師謝礼)]

これが国が終わらせた同和事業を市が独自に継続いているものであるというのは想像通りだが、さらっと興味深いことも書かれている。

補助金の申請・実績報告等の事務手続きを市の担当者が代行しているという。これだけでもかなり問題が多い気もするが、「事業及び収支内容も不透明な部分が多く、事業の有効性があるのかは疑問」とあり、不透明な事業であることが率直に書かれている。「3 事後評価 【CHECK】」の部分の記述と完全に矛盾してるように見えるが、あえてこの記述を残したということは、当時の担当職員にとって腹に据えかねるものがあったのではと想像した。また、「③有効性」の「向上している」「大きい」の文字が赤いのも何らかの目印のように思うのは考えすぎだろうか。なお、他の予算の文書では赤文字は見られない。

「同和利権」は実在するのか? 10年以上前は「同和利権がある」と言えば、デマだ都市伝説だと言われたものだ。しかし、インターネットで公開されている地方自治体の例規集を調べれば固定資産税の減免等の同和地区に対するあからさまな優遇をしている自治体があるのは明白で、言い訳できず、2010年代にこれらの優遇策はほぼ廃止された。

そのような経緯を知らないのか、はたまた知らない振りをしているだけなのか、「2002年度をもって同和事業が終わってから同和利権はない」と強弁する人が未だにいるが、今も同和地区に限ったあからさまな予算支出の事例は絶えない。この関市柳町の事例はその非常に分かりやすい一例だろう。

しかし、6月末頃、さらに驚くべきことが起こった。関市のウェブサイトに掲載されていた前述の資料が、書き換えられたのである。

こちらが現在掲載されている『みんなで創ろう市民が主役の元気な関市 21世紀の市政を築く政策総点検を終えて』の内容である。自治会融和対策事業補助金から「柳町」の文字が消えている。

もしやと思い、補助金負担金調書を確認すると、こちらも改変されていた。しかもこちらは「柳町」の地名だけではなく、詳細に記述されていた「課題」がごっそり消されている。そしてなぜか、赤文字だったところも黒文字になっている。

関市の担当部署に聞いてみたところ「最近、市民の方から問い合わせがあって、その時に地域名を出さない形にしました」と文書を変更したことを認めた。「普通は消さないようなものを消すと、それはそれで、そこが同和地区だと分かってしまうのではないか」と問うと「そういうことではなく、不適切な表現がないようにモニタリングしており、県として地域名は出さないようにしている」ということであった。ただ「予算が出ていることは事実で、それを隠すつもりはない」という。

問い合わせをした「市民の方」と関係あるのかはご想像に任せるが、筆者の手元に情報公開請求により公開された文書がある。市の担当者が作成を代行し、不透明な部分が多いと指摘される補助金の概算払請求書と事業計画書、収支予算書である。

自治会が対象とされる補助金であれば、自治会名は公表されるのが通常のような気がするが、黒塗りにされている。自治会やその連絡先や口座以外の部分も黒塗りされているようだが、ここには「融和」あるいは「同和」を含む言葉が入っているのではないだろうか。いずれにしても、情報公開請求されたとことで、ウェブサイトに掲載された地域名もろとも隠されたことは間違いない。情報公開制度によって情報が隠されるというのは本末転倒ではないか。

さらに気になるのは、予算も決算も千円未満の端数がなく、しかも1円残らず使い切るということがあり得るのかどうか。確かに「不透明な部分が多い」状態だ。

予算の支出先の自治会が同和地区なのは明らかであり、その名前が消されるのは、法務省の指導や昨今の裁判の影響もあるので、関市ではなく国が悪いとも言えるだろう。

実は、関市では部落解放同盟と自由同和会にも補助金が支出されている。

最後に掲載しておくが、この決算書も柳町自治会の決算書と同様、千円未満の端数がなく、使い切っている。揃いも揃ってこのようなことがあり得るだろうか? もしかすると、これらについても市職員が事務を代行していたのではないか?

再び関市の担当者に聞いてみると、解放同盟と同和会については事務所もあって活動実態もあり、間違いなく団体の事務方が作ったものなのでそれは誤解しないで欲しいということだった。

柳町の自治会については、補助金・負担金調書にはあのように書いてしまったが、実際は自治会長が非常に高齢なため、市職員が手伝ったというのが正確なところで、同様のことは他の自治会でもそれなりにあること、ということだった。

ただ、予算について不透明なことがある点については認めた。「確かにどんぶり勘定なところがあって、問題があることは認識ているので、自治会さんや団体の事務方にもちゃんとして欲しいと言っているところです」とのことだ。ついでに「赤文字」については、私の想像通り、問題ありということを庁内で共有するための印がそのまま表に出てしまったということなのだそうだ。好意的に見れば、担当職員が問題に気づいて取り組んでいたということだろう。とすると、別に消す必要はなかったのではないか?

税金の遣い方のいい加減さの問題もあるが、通常は団体向けの補助金であれば団体名は公開されるものだが、団体名に部落名が入っていれば公開されないことがはっきりした。例えば、部落解放同盟や自由同和会の支部名が「関支部」ではなく「柳町支部」なら間違いなく団体名が黒塗りにされていた。

やはり、部落地名がずさんな公金の遣い方の隠れ蓑になってしまわないだろうか。

なお、部落解放同盟関支部長の連絡先が分かったので事情を聞いたが、支部長はやはり高齢で今年の3月に亡くなったということであった。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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岐阜県関市 “どんぶり勘定” 「融和事業」補助金の 対象地域名が消える」への2件のフィードバック

  1. 元は楕円形の丘をぐるりと取り巻く部落だったみたいですね。なかなか見ないタイプだなぁ。
    その丘が削平されて新しい住宅地になってますが。

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  2. 匿名

    近所だけど知らなかった
    ただこれといったハコ物とかあるわけでもない所なのでどこに金が使われているのか…

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