2016年(平成28年)9月26、27日両日に津市役所内で行われた田邊被告と坂倉水道、津市の間で行われた「話し合い」は事実上、同和行政を背景にした圧力だ。事件と津市の暗部を探るための重要な資料であるのは言うまでもない。今後、交渉の音声を検証していくが今回は特に田邊被告と人間関係という点に注目してみた。
周囲はイエスマンでも実はぼっち?
「Youtubeで音声をあげた会社でしょ。過去の収支報告書を調べても田邊という人からの献金は確認できませんでした」(政治資金を管理する前葉泰幸後援会)
先の音声は予想以上に広がりを見せたようだ。当然のことだろう。まるで研修ビデオでも見ているかのようなエセ同和のリアルな現場。同業者にとっては背筋が凍る思いかもしれない。しかしある市関係者はこう不思議がるのだ。
「田邊被告が意外と温和であんなに話すのかと驚いたんですよ。田邊氏と市職員、業者が工事の打ち合わせをする時、または工事の挨拶に行く時はまず田邊は市職員とだけ会話をして直接、業者とは話しません。こうやって工事の挨拶自体を引き延ばして“これだけ自分は大物なんだ ”と印象付けさせるわけですが・・」
交渉の中でも席を立とうとした田邊被告。南人権担当理事(当時)、水道局職員、それから坂倉水道社長も懸命に引き留めるが「退席をして困るのは何より田邊」(敬和地区業者)という点に尽きる。
「なんだかんだ社長、社長、と自分の陣営に置いておこうと必死でしょ。坂倉水道以外、他に都合よく使える業者がいなかったんですよ」(同前)。実際に田邊被告の近所には小中学校時代から知る業者もいるが全く疎遠だという。田邊被告にとって小中学校の先輩後輩というのは主力の人脈のはずだが「自分の思い通りにならない人は別」(同)という。
あるいはこんな証言も興味深い。
「大門商店街で行事の打ち合わせの時にスタッフが必要だということで田邊が連れてきたのは皆、女性。それも水商売絡みですよ。市職員を従わせているけど実は人間関係がとても薄い」(大門関係者)
女性というのも重要な存在。
「録音の中で業者が土下座しているかのようなシーンがあります。田邊は“やめて ”と言っていますが実際の土下座の舞台はあんなものじゃない。自分の側近の女性も同席させて彼女たちの前で相手に土下座させます。女性の前で土下座させるという屈辱を味わわせるのです」
虚勢を張っているものの、実は乏しい人間関係。市職員らを集めた飲み会も孤独の裏返しかもしれない。坂倉水道に執着するのもよく分かる。
増田被告がたこ焼き屋を経営したワケ
自分にとって好都合の坂倉水道が離れ、残る業者が増田塗装ということになったのか。田邊、市職員、増田、三者関係については今後、裁判での証言を期待するとして単なる市職員‐受注業者という関係以上なのは間違いない。増田被告は平成28年労災休業補償金の詐取で不起訴になったものの、市から一時、指名停止処分を受けていた。この時期、塗装業から離れ、田邊被告の勧めもあり移動式のたこ焼き屋を営んでいたという。この一件についても田邊ー増田ー市職員の関係が垣間見える。
「南天(田邊被告の自宅兼事務所)で増田のたこ焼きの腕前のお披露目会があったんですよ。南(勇二元理事)さん他、田邊派とされる市職員も来ていました。普通、そんな時はタダで振る舞うものじゃないですか。そのたこ焼きも市職員に購入させていたました」(市関係者)
音声で田邊被告はまるで篤志家のように雄弁に語っていたが実に“ セコい”。また「世間と生きていきたい」と強調していたがこれが「世間」並とは到底思えない。さらに市関係者の話は過酷だ。
「ある時、増田君がJAZZに来ていたから“珍しいな、今日はどうしたんや? ”と声をかけたら金を持ってきたと。たこ焼きの売上の一部を田邊さんに渡しにきたと言っていました(笑)。さすがに“それはやりすぎやろ ”と増田に言いましたが」
奇妙なことに市関係者に田邊ー増田両被告の関係について聞くと一種の“徒弟関係 ”のような証言をする。しかし一方で増田周辺からは「増田君も田邊さんを利用していた」と真逆の反応だ。「増田君は離婚歴があって養育費も払っていなかったんですよ。金には困っていたから、共謀の意図があったか別として田邊さんを介して金を稼ぎたいというのはあったでしょう」(周辺)と話す。
増田被告の懐事情は決して良好なものではなく、そこが田邊被告に利用される背景だったかもしれない。ただ繰り返すが両者の力関係について謎が多い。以前も紹介したが増田周辺によれば田邊被告と増田被告と市職員は同席しないというルールがあったという。となると南天でのたこ焼きお披露目会の件は稀なケースなのか。逆に南氏らは「同席しないルール」と無関係に増田被告とやり取りできたとも考えられる。
いずれにしても増田被告が公共工事以外の面でも協力させられていたのは間違いない。
以前も紹介した津市大門の「あの津うどん」の写真を示す。同店は音声でも田邊被告が「子供たちにうどんを食べさせたい」ということで2019年に始めた開業した。Facebookにみどり自由学園が投稿した写真を見ると興味深い事実が浮かび上がる。増田被告も花輪を出していた。クラスコーティングとあるのは「プラスコーティング」の誤りと思われる。それから南天という名で花輪が出ている以上、もちろん田邊案件。ピンクの壁面がそのニュアンスを出している。
音声を聞いた人ならばお分かりだろう。田邊被告が同園に寄付をしていると語っていた。写真を見ると前葉市長の後ろに同園で子供食堂を開催している高洲町教育集会所人権教育指導員の細谷演夫氏の姿も確認できた。同氏はバスケットボールの指導を介して田邊被告と親交がある。青木謙順県議を田邊被告娘の結婚式に案内したのも細谷氏だと以前も説明した。
もちろん当時の前葉市長がこの一連の人間関係を把握できる立場だったとは思えない。しかし田邊被告の側近の一人とされる田矢市議と同席している以上この時期、田邊被告の存在を“「知らない」とか“「自治会長の一人」という説明はあまりに無理がある。“ 田邊肉声”の公開後、前葉市長は内容についてどう説明するか見逃せない。
たなべが娑婆に出てきたら何を語るのか。
こころを入れ替え、「すべてを語る」と公約し、市議会議員に立候補してくれ(笑)
そして今回の件、藤堂高虎ならどう思う。