一昨年から当サイトが追跡取材をしてきた和歌山市芦原地区連合自治会長事件。2月2日、和歌山地裁は金井克諭暉(本名・金正則)被告に1年10か月の実刑判決を言い渡した。金井被告は連合自治会長の立場を利用し「協力金」名目で複数の事業者から金品を騙し取っていた。被告は同和地区住民と和歌山市の交渉団体である「芦原地区特別対策協議会」会長職も務めており、同和問題を背景にした市と地区の不自然な関係も見逃せない。果たして金井被告への実刑判決をもって和歌山市政は是正されるのか。
和歌山市は無傷で終わって一安心?
ベンツで和歌山地裁にやってきた金井被告。
現地ジャーナリストによると関係者の間では執行猶予がつくと予想していたが、反して「懲役1年10か月の実刑判決」に報道陣らも驚きだったという。
執行猶予がつかなかった理由として裁判所は「被害額が多額だったこと、不合理な弁解を続けたこと、弁済していないことなどです」(前同)などを重視したようだ。
今回、問われたのは芦原認定こども園の新校舎の設計業務に関わった企業から協力金として85万円を受け取っていたこと。平成31年1月、4月に芦原地区行事実行委員会の運営費で私的な仲間との飲食をしていたこと。詐欺と横領の2点である。
しかし金井被告だけの問題なのか、という疑問は払拭できない。
「協力した市職員はおとがめなしなのか」
市内の業者はこう憤るが、ともかく金井被告への実刑判決をもって芦原地区連合自治会長事件は幕引きになりそうだ。
複数の業者が市に怒るのは当然だ。過去、報じた通り金井被告と業者との面談の場に市職員も同席しまるで“仲介人 ”のように振舞った点にある。
この点は現在、当サイトが追跡調査中の「三重県津市相生町自治会長問題」とも酷似する。つまり同和地区の自治会長に市側が「忖度」し入札業者に挨拶や御礼等を市職員が“ させる”という悪習だ。市側の責任が曖昧に終わった感もある。
また量刑としては予想より重いが、これまでの裁判で和歌山市の同和行政について踏み込んだ証言、解明がなかったのは残念だ。とは言え和歌山市側はほぼ無傷で、金井被告に懲役刑というのは行政側にすれば最良の“落としどころ ”と言えよう。
芦原地区の影響はこれからも続く
今のところ金井被告の控訴に関する情報は入手できていない。しかし同氏が連合自治会活動、芦原地区特別対策協議会から退いても和歌山市政、特に公共事業の在り方が変わるのかは全く不透明。
その最たる例が現在、和歌山市が進めている市役所庁舎玄関前広場の整備事業。
この事業を請け負ったのは自民党・二階幹事長と金井被告のツーショット写真にも同席した中山勝裕氏が代表を務める良誠工業だ。演歌歌手・山川豊氏をゲストに呼んだ金井氏のド派手な還暦パーティーの発起人になった人物でもある。
芦原地区連合自治会長問題が全国区ニュースになったのは紛れもなく二階幹事長と金井氏のツーショット写真が公になったこと。ある意味、本件の象徴と言えるだろう。
ところがその場に同席した人物の企業に和歌山市役所の玄関口を整備させるという事実。もちろん違法ではないが、道義的に疑問を抱かざるをえない。
「勇気こそ差別をなくす第一歩」
玄関口にあった「同和碑」が工事のため移動しているので、代わりにこの横断幕を掲げたのだろう。
市に勇気がないため芦原地区問題がおざなりにされ、歪な関係を築いてきたのでは? しかし当の連合自治会長と懇意にする人物に玄関口の整備事業をさせ、その上まだ「同和行政」を匂わすスローガンを高々と掲げる和歌山市。
つまりあの横断幕は今後も同和事業を継続するという裏メッセージとも解釈できないか。加えて本裁判に部落解放同盟和歌山県連の職員が傍聴に来ていたのも大いに関係性を匂わせる。
金井氏は芦対協、自治会活動から一線を引くかもしれないが、第二、第三の“ 地元同和のドン”の出現は十分ありえる!