※写真 顕正新聞をひたすら掲げる信者と配布する信者
なんだかんだで自民党の圧勝に終わった先の衆院選。選挙運動中の街頭演説では、アンチ安倍の有権者がヤジを飛ばす、というのが風物詩となった。こうしたヤジをめぐっては、今年7月の都議選、秋葉原にて安倍首相が演説中、「安倍やめろ」の大合唱が起きると、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と応戦し批判されたのは、まだ記憶に新しい。ヤジ攻撃が効果的と考えたのか、首相の演説スケジュールが発表されると、ツイッターなどSNSで拡散され、活動家たちが押しかけるのが定番となった。だが、その一方でひっそりと首相、自民党に抗議を続ける別の一派も目立っていた。一見、左派の市民団体、と思いきや、実は冨士大石寺顕正会(本部・さいたま市)の信者である。首都圏の自民党街頭演説に出没しては、黙々と抗議活動を繰り広げていた。いわば顕正会の面々は、もう一つの“こんな人たち”なのだ――――。
顕正会は、日蓮正宗法華講の一派として1942年に結成された妙信講を前身とする。日蓮正宗顕正会などの名称変更を経て、1996年、現在の「冨士大石寺顕正会」になった。長年、創価学会や、その他、法華構中の団体と対立関係にあり、機関紙『顕正新聞』でも学会、公明党に対して批判を繰り返してきた。そして今、自公政権批判を強めている。そんな同会の抗議活動は、特に7月の都議選から活発化した印象だ。主に自民党の街頭演説会場付近に信者たちが現れては、機関紙などを配布するというスタイル。抗議といっても特定のコール、ヤジを飛ばすのではなく、機関紙『顕正新聞』を掲げ、配布するだけ。こうした風景は、都内、神奈川、埼玉など首都圏で散見された。
手渡された『顕正新聞』(10月5号「安倍ペテン政権」特集号)の見出しを見ると、
卑劣「森友・加計疑惑隠し」の解散
「丁寧、謙虚、真摯に説明」の誓い破る 総理大臣は嘘をついてはいけない!!
と手厳しい。ライバル創価学会の『聖教新聞』のコラム「寸鉄」や幹部座談会を思わす内容だ。一面は、9月に開催された総幹部会の浅井昭衞会長の講演録が掲載されているのだが、
「この安倍政権には、日蓮大聖人の出世御本懐たる『本門戒壇の大御本尊』をも捨て奉るという、極限の大謗法を犯した創価学会・公明党が加わっている。まさに『二悪鼻を並べる』の凶事が、日本国に出現したのである。どうして国が保とうか」
この通り、反安倍、反自公政権を鮮明にする。となると左派団体とも志を同じくするわけだが、そこは“連帯”というわけでもなく
「機関紙やビラを配布していたけど、信者の電話番号が書かれていた。要するに政治活動に見せた勧誘活動でしょ?」(市民団体役員)
と冷ややかな目も。
また抗議の場は、政党の街頭演説にとどまらない。
「再稼働反対のための経産省前の座り込みの現場にも顕正会の信者がやってきて、機関紙の配布や座り込みを始めた」(脱原発の活動家)
などと活動は、原発反対活動にも及ぶ。実際に演説会場にいた信者を直撃してみたが、「大聖人への御奉公です」と信者たちの明確な主張は、伝わってこなかった。そもそも彼らの目的は、純粋に安倍政権批判だけなのか? また信者たちの自発的な活動なのか、謎だ。そこで「街頭活動の始まった時期」「抗議活動は、政治活動なのか、勧誘活動なのか」「抗議活動は、創価学会批判でもあるのか」「本部からの指示なのか?」、こうした点について、さいたま市の顕正会本部に質問してみると、「冨士大石寺顕正会広報室」名の文書でこう回答があった。
「街頭演説中の抗議に関する質問状」につきましては、回答を差し控えさせていただきます。あしからずご了承ください。
総選挙は終わり、今度、顕正会の抗議隊を目にするのは、2019年に控える参院選、統一地方選となるのだろうか。『東京五輪音頭』ではないが、2年たったらまた会いましょう、ということになる!?