前回の記事では、「多くのメディアも行っている第3の道」などと思わせぶりなことを書いてしまったが、要は情報公開制度を当てにしないで自分で調べるということである。筆者は情報公開訴訟で勝つことも負けることもあったが、負けてもそれで終わりではなく、独自に調べるという第3の道を模索してきた。
一番の興味は解放同盟、同和会、人権連の3団体の支部がどこにあるのかということである。まず、解放同盟から調べると、思いもかけないことが判明した。
解放同盟神奈川県連はダメ県連?
神奈川県の同和団体事情は非常に独特だ。放同盟、同和会、人権連が正式に県が交渉している団体で、市町も同様の対応をしており、3団体の勢力が拮抗している。そして、それぞれの団体の活動も他の都府県と比べて、非常に「ゆるい」ように見える。
例えば、2011年に作家の塩見鮮一郎氏が著書「新・部落差別はなくなったか?」で神奈川県内の部落を写真入りでレポートしたことについて、解放同盟が塩見氏と「話し合い」を行ったことがあった。この時、ある意味「当事者」であるはずの神奈川県連は、塩見氏に対して抗議しているというよりは「そこは部落ではない」とツッコミを入れていた。
塩見氏の一件の経過を見ると、むしろ、問題視しているのは中央本部や東京都連の方で、神奈川県連はそれらに急き立てられて、渋々ながら参加しているような印象を受けた。実は本誌が関わっている「全国部落調査」のことについても、似たような状況があったという。事情を知る人物はこう語る。
「全国部落調査の件で、神奈川県連は中央本部から責め立てられていたようですよ。示現舎は(神奈川県連)川崎支部の目と鼻の先にあるのに、何も対処しないのかと」
しかし、示現舎には今のところ神奈川県連からも川崎支部からも、何の抗議も受けていない。不思議な事だが、結局神奈川県連や川崎支部は何もしなかったということだろう。
神奈川県連自体が、以前から解放同盟の中でもやる気のない県連と見られていて、「ダメ県連」と言われているという声も聞かれる。神奈川県連の特徴としては、委員長を始めとして幹部に元公務員が多いという。それゆえ、役所とのしがらみがあり、あまり「イケイケ」なことはできない、ということがあるのかも知れない。
「一般社団法人部落解放同盟神奈川県連合会」登記の不可解
解放同盟神奈川県連川崎支部について調査しているうち、「部落解放同盟神奈川県連合会が一般社団法人として登記されている」そのような情報が筆者に寄せられた。
しかし、これは解放同盟について知っている者からすれば信じがたいことだった。解放同盟をはじめとする部落解放運動団体には、「解放運動は部落民による自主自立の運動」という建前がある。それゆえ、登記することで行政のお墨付きを得ることはタブーとなっている。もっとも、これも形骸化していて、関連団体をNPO等として登記することは普通に行われている。ただ、それでも部落解放同盟本体を登記するということは聞いたことがない。
半信半疑で、法務局で登記簿謄本を請求してみると、確かに「一般社団法人部落解放同盟神奈川県連合会」という名前で登記されているのが確認できた。登記されたのは今年の3月30日で、ごく最近のこと。主たる事務所の住所は川崎市麻生区王禅寺とある。
登記の内容は不審なことだらけだった。第一、部落解放同盟神奈川県連合会の事務所は山北町岸にあるはずだ。なぜ川崎市の、しかも部落でない場所で登記されているのか不可解だ。そして、理事の名前が「土谷哲明」「土谷滿男」になっていることだ。神奈川県連の委員長は三川哲伸氏であるはずだ。
筆者は、実際に登記された事務所の場所を訪れてみた。周辺は新興住宅地のようで、明らかに部落ではない。
そして、問題の住所には大きな黒い家があった。ガレージがあり、自動車が何台が置かれていたので、どうも自動車に関連した事業を行っているようだ。
インターホンを押すと男性が出てきたので、「部落解放同盟川崎支部ですか?」と聞くと、「そうです」ということだった。しかし、示現舎であることを告げると、さすがに「話すには支障がある」と断られた。当たり前といえば当たり前だ。
それにしても、なぜ部落解放同盟川崎支部がここにあるのか、なぜそれが部落解放同盟神奈川県連合会として法人登記されているのか、むしろ謎が増えてしまった。
とある運動団体関係者に部落解放同盟神奈川県連合会が法人登記されたのを知っているか聞いてみると、「そんなことは始めて聞いた」ということだった。「もしかすると、エセ同和団体ではないか?」と不審がられたが、「土谷滿男」という人が理事になっていると言うと、さらに不思議がられた。
「滿男さんなら知ってますよ、以前は確か県連の委員長をやっていましたよ」
「土谷滿男」という人物は、実は神奈川県の運動団体関係者の間でも有名で、解放同盟神奈川県連の設立にも関わった古株中の古株だという。ただ、神奈川県の部落出身というわけではなく「東京から来た」ということだ。
さらに取材を進めたが、神奈川県連の法人登記については、誰もが初耳だと言うのみだった。おそらく、何らかの考えがあって、土谷氏が独断でやったことなのではないかという。そして、川崎支部のメンバーはおそらく数十人程度で、その中に川崎市内の部落にルーツがある人がいないわけではないが、ごく僅かということだ。
それでは、行政から委託された相談事業にはどのような意味があるのだろうか?
(次回に続く)
佐賀県連唐津支部に法人番号(国税庁の方の)がついています。
これも登記されているんじゃないでしょうか。
唐津支部も登記されていると思います。法務局の端末で「部落解放」で前方一致検索すると他にもいろいろ出てきます。
ただ、本物なのかは分かりません。無関係な人が勝手に登記することも可能ですからね。
一般社団法人と言っても、公益事業制度改革後は公益財団法人とは別れたので、別にどんな人達が
どんな活動でも今は自由に作れるはずで、そこがおかしいとは思いません。公益財団法人になってた
らさすがにおかしいと思いますけど…。一般は登記申請すれば誰でも作れるはずです。
登記したのは単なる地域ごとの事情じゃないでしょうか?
解放同盟神奈川県連については、単なる地域ごとの事情ではないと思います。
あまりに不審な点がありすぎるので。
川崎支部の名前で登記されていれば、まだ地域の事情で説明はつきますが…
これの続きって、どうなったんだろう。
同和団体関係者は攻撃されやすいみたいな理由で不開示にされたままです