【参院選】和歌山‐岐阜選挙区「立維」が候補者一本化で高笑いは自民党 泣くのは立憲民主党⁉

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By Jun mishina

今月6日、立憲民主党と日本維新の会は和歌山と岐阜両選挙区の候補者を一本化することで合意した。野党間初の予備選の結果、和歌山選挙区は県議で日本維新の会和歌山総支部幹事長の浦平美博氏、岐阜選挙区は立憲民主党の服部学氏が候補者になる。自民を追い詰めるのが目的だがむしろ後方支援になりえる。明らかに一本化は失策だ。

事前調査で好調だった立民・村上氏

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一本化によって立候補を取り下げた和歌山選挙区の立民・村上賀厚氏、岐阜選挙区の山田良司氏にとっては青天の霹靂だったに違いない。

特に村上氏については5月23日の記事で事前調査が二階伸康氏に次いで2位につけていることを報じた。その後の調査では浦平氏が2位に浮上しており、こうしたデータも浦平一本化に影響したかもしれない。

しかし初期段階では共産党候補がいないためリベラル票は村上氏が〝総取り〟の可能性もあった。ところが好調立民にも関わらず、内部に不協和音との情報も。それが候補者一本化だとは予想さえできなかった。

8日、立民和歌山県連の記者会見で山本忠相代表は「怒りにも似た悲しみがある」と声を落とし、また当の村上氏は「断腸の思いだ」と怒りをにじませた。同日、和歌山城ホールで開催された「和歌山県連報告集会」でも支援者らが不満をぶつけた。

さて一方の岐阜選挙区では反対に維新候補の山田良司氏が出馬を取り下げ、立民の服部学氏が統一候補という状況だ。紛糾した和歌山選挙区と異なり、岐阜選挙区の維新関係者は「納得している」と異口同音に話す。

「実は予備選の段階で山田氏は不利で、下手をすればダブルスコアで敗れる可能性もありました。このため当初は立候補を見合わせる予定だったのです」(岐阜維新関係者)

予備選では立民、維新それぞれ1000人の支援者が無作為で選ばれアンケート調査が行われたのだが、山田氏は下馬評よりも善戦。

「52対48、3ポイント程度の僅差で山田氏の敗北。ただし負けは負けです。山田氏も納得した上での服部氏一本化でした」(前同)

和歌山と岐阜では候補の一本化についてはかなりの温度差があるようだ。両県の関係者は共に「打倒自民」を掲げて一本化に踏み切ったのだが、しかしこの戦略は吉と出るのだろうか。

むしろ「凶」という見方が多数だ。むしろ自民にとってはプラス材料になりかねない状況である。各選挙区の内実に迫ってみた。

過去には有罪判決 浦平氏に対する強い反発

和歌山総支部の幹事長として林隆一県議らの離党処分にも関わった浦平氏。林県議の処分は現在も続く維新の離党問題の鏑矢と言ってもいいだろう。

かつては党の仲間を厳しく処分した浦平氏。ところが昨年12月末の和歌山県議会定例会で県知事、副知事また県議のボーナスを増額する改正条例に賛成した。これは維新の党是である「身を切る改革」に反しており明確な反党行為だ。

この辺りが維新の党運営の不可解なところ。浦平氏が処分されたという話は聞かない。こうした独善的な党運営のみならず同氏の過去も不信感が募る理由だろう。

浦平氏に陰惨な過去がある。

2003年、当時勤務先の高校で部活動の指導中に生徒4人を竹刀や木製バットで殴打する事件を起こした。2004年に和歌山地裁から懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。それ以外でも生徒への体罰で停職4月の懲戒処分を受けたこともある。

党内にもアンチは少なくない。同僚の小西政宏県議は浦平氏の対立候補、望月良男氏へ為書きを送ったほどだ。現在は世耕弘成衆院議員や海南市長のものとすり替わったが「小西氏が望月氏を応援することは変わらないです」(地元記者)という。

維新の小西県議が望月氏に為書き。
小西氏の為書きは外された。

維新内部ですら浦平氏に対する不満がくすぶる中、立民側が納得できるはずがない。当然、浦平氏の人物像について立民和歌山県連関係者らも把握している。だが地元事情を知らない党本部がトップダウンで候補者の一本化を指示したのだ。

事情を聞こうと山本氏に話を向けると「お話はできません。お察しください」とひねり出すようなコメントは苦渋に満ちていた。では、立民票はどうなるか。

「立民支持層が浦平氏に投票することはないでしょう。立民票の一部が望月良男氏に回ると思います。というのは望月氏の陣営に連合推薦の県議(電力総連)が加わっています。望月氏が旧民主系支持層を取り込む可能性もあります」(和歌山の地元記者)

8日の立民県連の記者会見後、事態は急変。村上氏が降りたことで11日、共産党が党県副委員長の前久氏を参院選候補に擁立。これにより立民票は前久氏に投じられる可能性が高まった。一本化したが全く浦平氏に有利になっていないのだ。

望月氏にとっては追い風になりうる。しかも浦平氏を統一候補にしたところで自民党を阻止できるわけではない。それならばリベラル票の唯一の受け皿である村上氏の方がまだ結束できただろう。一本化で浦平氏という選択は明らかに失敗なのだ。

政党、政治状況、地域性も異なるが統一候補を応援できないという点では岐阜も同様の反応である。

「市議選に落ちた人を推せない」

岐阜で立候補を取り下げた山田氏は下呂市市長を経て、民主党時代は2009年に衆院選に当選。政治キャリアでは服部氏より格上だ。しかし自民王国の岐阜にあって保守系の維新候補を自民候補にぶつけたところで勝ち目はない。それよりも服部氏でリベラル票を結集するという狙いだろう。この戦略自体は必ずしも誤りではない。

だが今度は維新支持者が立民・服部氏に投じるとは考えにくい。

「保守、リベラルという以前に〝岐阜市議選ですら落ちた人(服部氏)を推せるか〟という声は根強いです」(地元重鎮)

服部氏は2023年の岐阜市議選で落選。確かに勝てる候補とは言えない。

「中には〝いっそ参政党候補を応援して貸しを作っておくのも手だ〟という声もあります。どちらにしても維新票が服部氏に向かうことはないと思います。本来は候補の一本化で票をまとめる狙いでしょうけど、むしろ双方が反発し合っただけでしょう。むしろ自民党を利しただけだと思いますよ」(同前)

先の地元記者はこう分析する。

「立民も維新も本部が指示すれば従うと思ったのでしょう。それが大間違い。立民和歌山県連の山本代表ははっきりと浦平氏を応援しないと明言しました。立民と共産、立民と国民の一本化なら話は分かりますが維新と立民が成立するはずがありません。予備選にこだわったがゆえの失敗ですよ」

立維両党の幹部は「初の予備選」と自信を見せるが、自民党を追撃できるような一本化とは到底、言えないのだ。しかもアンチが多い浦平氏に譲った立憲民主党は参院選後、大きな禍根を残すことになるだろう。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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