昨年9月27日に東京地裁で判決が下された全国部落調査事件の裁判、双方とも控訴したものの、書類がずっと地裁に留め置かれる状態になっていました。そして、先日4月15日にようやく東京高裁に書類が届き、担当部署が決まったことが確認できました。
また、解放同盟側がウェブサイトで控訴理由書を公開し、双方の控訴理由が明らかになってきました。そして、判決では全国部落調査の出版禁止対象は一部に留まったにも関わらず、裁判所の訴訟記録にある全国部落調査については、全面的に閲覧制限されることが決定されました。
東京高裁の担当部署は第16民事部、事件番号は令和4年(ネ)1893号です。今後傍聴される方はこの情報を参考にしてください。ただし、事件記録が膨大で、当事者が多数いるため、裁判所側の準備に時間がかかるため控訴審が本格的に始めるのはいつになるのか未定の状態です。
解放同盟側
控訴理由書-2022-3-24.pdf
なお、解放同盟側の控訴理由書は示現舎側が正式に受け取ったものではなく、解放同盟側がウェブサイトで公開しているものです。
控訴理由書での主張は多岐に渡ります。
示現舎側の主な主張は、「地名は不特定多数の集団に属するものであり、プライバシーという概念では理解不能」ということです。プライバシーと言えば本来は個人に属するものであり、それを公表するかどうかは個人の自由であり、他人のプライバシーについても公表の許可を求める主体は具体的に誰と特定できるので明白です。しかし、地名については個人で公表の是非を判断できる性質のものではないし、公表の許可を誰に求めればよいのかはっきりしません。そのため、地名をプライバシーと強弁するのは無理があるということです。
一方解放同盟側の主張を見ると、とにかく「差別されない権利」にこだわっており、その点の説明に多くのページ数を割いています。その根拠は憲法の平等権であったり国際条約であるようです。そして、その権利を持つのは「被差別部落出身者」なのですが、その範囲は明確に示されていません。地裁判決では原告がいない県の出版差し止めができなかったので、それらの県在住者の意見書が提出されていますが、おそらく時効の問題があるためか、新たな提訴は今のところされていないようです。
ただ、解放同盟側については、さらに書面を提出する意向が書かれています。刻々と状況は変化しているので、示現舎側もさらに主張を追加することになるでしょう。
同じ裁判官が 全国部落調査を 全面的に閲覧制限
一方裁判記録のうち全国部落調査の閲覧制限の解除を求めて裁判所に申し立てた人から、今年の3月30日に出された決定書の写真が送られてきました。それによれば、全国部落調査の閲覧制限解除は一切認められず、その判断を下したのは判決を出した成田晋司裁判官です。
判決後半年近くも経てからやっと決定されるというのも不可解ですが、その決定内容は明らかに判決と矛盾しています。無論、控訴審では示現舎はこのことも問題にします。後で同じ裁判官が自ら否定するような、いい加減な判決であり、地裁の審理もいい加減であったという証拠になるでしょう。
閲覧制限を解除しなかった理由は「当事者の私生活についての重大な秘密」だからだそうです。しかし、県によっては当事者がいないことが分かっています。
また、裁判記録の閲覧制限の基準は情報公開や出版禁止等と基準は異なり単にプライバシーだからということで認められるものではありません。そもそも、訴訟というのはほとんどがプライバシーに関わることなので、プライバシーだから閲覧制限してよいということになってしまえば、ほとんど全ての裁判の記録が閲覧制限できることになってしまいます。
裁判の公開原則は憲法で明文化されており、典型的な例では性犯罪やわいせつ物に関わるようなものでなければ非公開にはできないとされているのですが、昨今は個人情報や知的財産保護の名目で、改憲されないまま死文化させられつつあるように思います。
認定されなかった6県の陳述書が気になります。
特に岐阜県ですね。
同和の会長の本が言い訳でしたら・・