行政とは狡猾で恐ろしい。「情報公開」は渋るが「個人情報」は異常に厳格で、「人権」「SDGs」といった分野については肝心な業務よりもやたらスピーディー、なおかつ住民の声に耳を傾ける訳でもないのに「特定団体」「特定人物」には異様に甘い。特に東京都が進める「東京都パートナーシップ宣誓制度」(素案)はこうした構図を地でいく。LGBT活動家に対する忖度の産物としか思えないのだ。
キラキラなLGBT活動家、内に秘める超不寛容
90年代に起きた「情報公開」と「説明責任」(アカウンタビリティ)という概念。当時、薬害エイズ事件も相まって政治、行政に求められるようになった。ところが「個人情報保護」によって情報公開は「隠蔽」が公然とまかり通る。特に人権が絡むと黒塗り文書は当たり前。
その点、LGBTについては「隠蔽」以前に、住民への十分な周知もないまま、行政と一部の活動家のみで進めてはいないか。
「東京都パートナーシップ宣誓制度」(素案)
ごく一般的な都民にとって趣旨すら「知らない」というのが大方であろう。自治体が同性カップルの「結婚に相当する関係」を認定する制度だ。
同制度は社会的ニーズというよりも、一部の活動家を意識した“ 仕事やってる感”だと過去記事で指摘した。制度自体が問題というよりも検討プロセスがあまりに不透明で、なおかつ“LGBT活動家界隈 ”だけで進めているとしか思えない。推進派にすれば「これぞ天下の人権」とお考えだろうが、非常に密室的で外部からみると不気味に映る。
「東京都パートナーシップ宣誓制度」検討に係る有識者等ヒアリング有識者等一覧をみると、遠藤まめた氏を筆頭に名うての活動家がズラリ。また当サイトで三重県男女共同参画センターと宝塚大学・日高庸晴教授が実施した「多様な性と生活についてのアンケート調査」の杜撰な内容を指摘したが、日高氏も有識者の一人。
制度に対して批判的な一般社団法人 LGBT理解増進会・繁内幸治代表理事を有識者に加えたのは「異なる意見を聞いた」というポーズであるのは明白だ。
不気味さといえば「保守の会」がオンライン署名収集サイト「Change.org」で募集した「『東京都パートナーシップ宣誓制度』創設に待った!」が削除されたという。
推進派の一人、東京都にパートナーシップ制度を求める会・山本そよか代表は削除について快哉を叫ぶが、しかし保守の会の主張から「差別的な意図」は汲み取れなかった。自身の意に反する者は皆差別者とするならばそれこそ独善的というものだ。意見があれば堂々と同会と対話してみてはどうだろう。
パートナーシップ制度を求める会に質問状を送ってみたが、予想通り反応はない。LGTB活動家のTwitterに共通するがリプライ(コメント欄)を閉じている。反対意見は聞く耳持たぬ、ただ行政という生温い空間で活動する。実に脆弱な存在だ。妙なもので活動家がマスコミで紹介される時は、多様性、共生社会と語り“ キラキラ”している。
しかしいざ異なる意見や価値観と直面した時、活動家たちは“ ギラギラ”して不寛容だ。
パートナーシップ制度 「半数が知らない」
「パートナーシップ制度成立に向け、都がパブリックコメントを募集していたんですが期間が延長になったんです」
問題意識を持つ当事者から連絡を受け、「性自認及び性的指向に関する調査」結果をみると確かに「本調査の結果等も踏まえて御意見をいただくことを目的として、意見募集の期間を令和4年4月11日(月曜日)午前10時00分まで延長します」とある。
調査結果は非常に興味深い。
「調査はおそらく民間委託でしょうが、調査機関を報告書に書いていない辺りいかにも自治体の仕事ですが(笑)」(先の当事者)
というのはご愛嬌のレベル。こうした杜撰さが通用するのはズバリ「誰も見ていない」という自治体側の算段があってのことだ。
痛々しいのは「導入認知」の項目。パートナーシップ制度について「分からない」というのが全体の約70%。推進派にすれば「分からない」が多数の方が納得できただろう。「分からない」とは当事者にとっても「関心がない」ことを意味しないか。
「“ パートナー制度は啓発や当事者エンパワーメントに効果がある!”という主張の妥当性すら怪しくなってきましたね」(同前)
という冷ややかな見方も頷ける。
また調査結果を検証したある関係者は別の項目に注目した。「行政文書の表題に“ 性自認”という用語を使うというのが疑問ですが…」と前置きしてこう指摘する。なお「性自認」とは性は自分自身が決定するという概念だ。つまり外面、内面が男でも「女性と自称すれば女性」という考え。
「活動家が進める『性自認』という用語よりも、『性同一性』の認知度が高かったのです。正直、LGBT活動家にとって不都合な結果も目立つ。だから都側はパブリックコメントを延長してでも“ 活動家寄り”の意見を収集したいのではないでしょうか」
この推測も確かにありえる。是が非でも成立させたいというのが都の方針。というのは
「小池百合子知事のトップダウンだからです。パートナーシップ宣誓制度は知事のパフォーマンスでもありますが、同時に古巣・自民党への意趣返しでもあります」(都政関係者)
という内情も囁かれた。自民党はパートナーシップ制度に対して反対の立場。小池知事にすれば「排他的な自民党と戦う」と印象付けられる。もちろん“ メディア映え”するのはいうまでもない。
「小池知事は各メディアに贔屓の女性記者がいるんですよ。LGBT関係は女性記者ウケもいいのでしょう」(政治記者)
なんとしてもパートナーシップ制度に好意的な意見を集める“ 延長戦”かと睨んだが、事情は異なっていた。同案を担当する東京都総務局人権部企画課に延長の理由を聞いた。
「3月16日の都議会定例会で自民党・早坂義弘都議から調査結果をオープンにした上で素案への意見をもらった方がいいのではないかとの指摘がありました。そこで意見の募集期間を延長することになりました」
早坂都議も調査について問題意識を持つ一人。コメントを求めると
「都民の皆さまから制度に関するご意見(パブリックコメント)を頂くには、そして都民の代表者たる東京都議会において制度に関する議論を行うにあたっては、都庁が持っている情報を可能な限り全て公開する必要があります。今回の大規模調査の結果公表に関して、そうした当然の配慮に欠けていたことは、民主主義への冒涜だと思います」
との返答があった。当事者のみならず、議員の目から見ても情報公開があまりに不十分だったのだ。人権問題をめぐっては同和事業に限らず“ 密室的”。小池知事の思惑と活動家まがいの有識者が進めるパートナーシップ宣誓制度は「宣誓」どころか「専制」という言葉がよく似合う。