5月11日、津地裁で掲示板、ごみ箱設置などの補助金詐欺で起訴された津市相生町元自治会長・田邊哲司被告、増田宏和被告、端地満被告の初公判が開かれた。予想に反し田邊被告は起訴事実を「間違いありません」と述べた。また端地被告も同じく認めたものの、増田被告は否認。同被告については弊社の取材に対しても補助金制度自体を知らないと訴えていた。田邊被告のような同和地区を背景とした「声の大きな特定市民」と「自治体」との関係は不可解な点が多いが、本裁判によってその内情が明らかになるかもしれない。
憔悴した田邊被告、傍聴席を見渡す増田被告
「全国の同和を連れてくるぞ」。市教育長室でS氏を糾弾したあのセリフは本事件の出発点かもしれない。通常、部落解放同盟関係の裁判では全国各地から同盟員やシンパが動員されるものだ。確かに「全国の同和を連れてくる」は誤りではない。と言っても田邊被告にそのような動員はかからない。仲間内と言えば田邊被告と親しくまた市幹部、職員らがよく利用した津市大門のスナックのロゴがついた自動車が駐車されていた。
開廷を待つ中にはマスコミの一団もあったが、車座で何やら雑談している。傍聴希望者の中には少なくとも3人は田邊容疑者をよく知る人物がおり、そうした面々に接触してもいいはずだが、報道陣は身内で雑談。これこそ“ マスコミ”村というものだろう。
傍聴席は感染対策もあり15席程度なので満席。刑務官に連れられ田邊被告らが入ってきた。上下灰色のスウェット姿だ。彼とはただ一度しか会っていないが「目がとても可愛らしい」という印象を受けた。というのは人権活動家あるいはセクト関係といった人間の眼は死んでいる。人間性よりイデオロギーに支配されるとそれは眼が物語る。あくまで感覚的、経験上のものだが「活動家」とはそうしたものだ。しかし田邊被告からそんな雰囲気は感じ取れなかった。まだ「人間臭さ」があるのだろう。
逮捕前に地元住民から「田邊被告はげっそり痩せた」と目撃証言が寄せられたが、この時の田邊被告は痩せたというよりも憔悴したという印象だ。顔色もあまりよくない。町で見かけたらごく普通の還暦過ぎの男であろう。対して増田被告の方が堂々としており、手錠や拘束具などを外してもらっている途中、非常に硬い表情で法廷を見渡していた。
それから端地満被告は逮捕前の取材では全く耳にしない人物だ。前科があると聞いておりアウトロー風の人物像を予想していたが大人しそうな初老の男性。愛知県内の会社に勤務するサラリーマンだった。田邊被告とは高校時代に知り合ったという。
おそらく同和マニアは「田邊被告の出身地」に注目するかもしれない。本籍地は津市大門、現住所は報道でもある通り津市中河原ということだ。本籍地は自由に移動できるからあまり意味はないが、本籍地の場所を調べると大門商店街振興組合になっていた。冒頭陳述では「松阪市出身」となっていたが、田邊被告をよく知る人物が言うには「母親の出身地」ということだった。
田邊被告は掲示板工事、ごみ箱設置の補助金詐取については「間違いありません」と述べ、補助金を自治会の口座から引き出し飲食代に使用したことも認めた。また端地被告も落ち着いた態度で、田邊被告に依頼され架空の請求書を作成などを認めた。逆に増田被告は「詐欺や共謀はしていない。補助金申請も関わっていない」と訴えた。この点については過去、増田被告に取材を試みた時も関与を否定。補助金の仕組み自体を知らないと話していた。
増田被告は6月初旬、また田邊、端地両国は6月中旬にそれぞれ審理されるが、被告らと市がどう関わってきたのか真相をぜひ語ってもらいたい。
元市職員に責任転嫁した市の報告書に呆れ
もう田邊被告らは遠慮することなく市の内情について暴露すべきだろう。というのは初公判の前に津市は調査結果報告書を発表したがその内容に「呆れた」という声が少なくない。初公判に出席した市民の間でも話題になったものだ。報告書の中でも特に下記部分に「退職した職員に丸投げ」と怒りの声が続出していた。
本件はむしろ市幹部や一部市議と田邊被告との関係が出発点であってまるで文中に出てくる「中堅職員」が田邊被告に弱みを握られ市政が牛耳られたと言いたげだ。当サイトも公開したが、田邊被告の親密女性、中川美佐氏が女将を務める小梅での飲み会リストを同中堅職員が管理していたという。おそらく弊社への情報提供も同職員周辺と思われるが告発に対する報復の如き言いようだ。
確かに田邊被告が市に対して要求行為を繰り返したのも事実。しかし市職員による忖度も大きいとは市政関係者の一致した見方だ。報告書では相生町公園の管理業務も言及されている。相生町自治会に公園管理委託料を支払いながら市職員が除草作業などを行っていた問題だ。しかし
「昔はこの公園で小中学生が野球やソフトボールをやっていて花壇に入ったらホームランというルールでした。ところが突然、花壇が壊されフェンスが設置されたのです。その結果、公園の使い勝手が悪くなっただけですが」(市政関係者)
ところが花壇の撤去も田邊被告が具体的に要望、指示したという痕跡はなくむしろ市が田邊被告、自治会に配慮した結果の工事だという。もちろんフェンス設置工事にも何らかのカネが動いたと見るべきだが「頼まれもしないのに市がやってくれる」という田邊被告の口癖も見逃せない。相生町公園は市側の異様な対応が凝縮していると言っても過言ではない。こうした関係性もぜひ田邊被告から直接、証言してもらいたい。
市長は今回、その中堅職員と会長との関係を知り、「驚いた」と会見で述べた。シラこいこと言う人間だ。おれみたいな、直の関係もないいち市民も数年前から知ってたのに、あんたが知らなかったわけがないではないか。放置し、職員に忖度させたのは市長、あんただ。
数年前、その「驚いた」事実を、いったいどれぐらいの職員たちが把握してたのかを知りたいです。一部の職員ではなく、多くが把握してたとなれば(そうに違いないが)、市長が知らなかったわけがないと推測できますから。