日本会議、森友学園… 元解放同盟員・菅野完に メディアが忖度!?(前編)

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By Jun mishina

※写真は櫟本いちのもと小学校の卒業生名簿より・

大阪府内の一騒動だった森友学園「瑞穂の國記念小學院」の用地買収問題が全国ニュースになり、3~4月はまさに“森友バブル”だった。ところがこのところTV、新聞の「森友学園」の続報は、かなり減ったようだ。安倍首相の追及に鼻息が荒かった野党は、今でも一応の“ファイティングポーズ”を取っているものの、最早、追及できるだけの物証も気概もなさそう。もし森友学園に関わった面々を「泣き笑い」で評価するならば「泣き」は民進党。そして「笑い」は間違いなく著述家の菅野すがのたもつ氏だろう。菅野氏と言えば著書『日本会議の研究』(扶桑社新書)は、ベストセラーであり、現在盛んな日本会議批判ブームの火付け役だ。

菅野氏は、籠池理事長の単独インタビューを実現し、同氏の情報源なくしてTVも新聞も成立しなかった。森友学園の報道が過熱していた頃は、常に氏の取材内容に注目が集まっていた。その活躍に目を見張ったものだ。

もともと菅野氏は、著述家やジャーナリストというよりも「レイシストしばき隊」などに参加していた運動家。市民団体の間では、同氏のハンドルネームが「noiehoie」だったことから通称「ノイホイ」と呼ばれてきた。その道では、知名度を持った運動家だったが、2013年に「差別撤廃・東京大行進」で実行委員を務めた時にカンパを着服したことから除名。また2016年7月に性的暴行事件を起こしていたことを『週刊金曜日』に報じられた。

保守論壇からは、こうした「過去」をタテに菅野氏を批判する向きもある。しかし過去の不祥事を持ち出すことが『日本会議の研究』の内容、また安倍首相夫妻に向けられた疑惑への反論とはならない(菅野氏の主張が正しいか否かは別として)。また菅野氏を「自称ジャーナリスト」と罵倒する人も多かった。「自称ジャーナリスト」「自称保守」・・・言論人に対する批判としてしばし「自称」を使用する人が散見される。これもおかしなものだ。そもそもジャーナリストとは「自称」するもので、ジャーナリストを名乗る人には、大手メディアの第一線で活躍する人もいれば、SNSにニュース記事をシェアしているだけで「ジャーナリスト」を名乗る人もいる。「自称」することを前提とした職種だ。

また菅野氏の持論は「保守/右翼であるからこそ、排外主義と戦わなければいけない」だという。菅野氏は自身を「保守主義者」と位置付けているようだ。このため一部保守層から「自称保守」と批判されることもあるが、これもおかしい。保守業界では、かねてから主張の違う相手を「自称保守」と中傷する傾向がある。そうだろうか? では「真正」にして「本家本元」の“これぞ保守”というものを提示できる人はいるだろうか。なにしろそこいらのアンちゃん・ネエちゃんが「我こそ保守主義者」と振る舞う時代だ。そういう世情にあって「自称保守」というレッテル張りにどれだけの意味があるのだろう。

元解放同盟員で極左という過去

それよりも菅野氏について興味深いのは「被差別部落出身」であることを公言していることだ。1974年、奈良県天理市の櫟本いちのもとの生まれで、実家は同市の石上いそのかみという菅野氏。ツイッターでの発言をざっと拾ってみよう。

まえも焼肉屋でその話したぞえ。バリバリの極左(というか解同内の極左)やったよ。高校の終わりぐらいは。その後、急転直下の再転向があって、今に至る。2011年12月15日

自分語りしてもしゃーないし、関西の奴しか文脈わからんと思うけど、「両方の祖父の代で金掴んだ家で親父が土建屋してて金は唸るほどあるし祖父の代からの資本蓄積もあるけど、勤め人の家の奴からエタ呼ばわりされ、旧家の奴から成金呼ばわりされる部落の子」はヤクザになるか勉強するしかない訳でね。2012年5月21日

私は被差別部落の出身者なんで、若い頃、地元で解放同盟に参加してましたよ?それがなにか? 2012年7月17日

例えばさ、俺、七十四年生まれの部落やねんけどな、二十五の時に結婚し損ねたことがある。その時に問題になったのは、俺の本籍地やねんな。向こうの親がきっちり調べて、「あかんやんこの人」って言い放ちよったの。そんなん、俺の時代でも、けっこう普通に関西ではあったの。2013年4月30日

僕は結婚を期に本籍地を被差別部落から被差別部落でない場所に移したが、僕は果たして「元被差別部落民」なのだろうか? 「元在日」という言葉に感じる違和感は、つまりそういうこと。リンダの違和感はとてもよくわかる。2014年3月20日

いいえ。差別ってそういうことなんですよ。よく、在日韓国人どうしで「チョンコがw」とかいうときあります。僕は部落民ですが、ふざけて「エタが!」とかいうときあります。これ、差別ですかね? つまり、「タームのみで差別かどうか規定できない」ということです。2014年10月5日

羽鳥慎一モーニングショーのお詫びはやりすぎだ!

菅野氏は自身のアイデンティティーを部落民とし、また部落解放同盟の活動家で、しかも極左だったらしい。まずはこの「部落出自」を念頭に置きつつ、次の話へ進もう。森友学園問題が紛糾する最中、菅野氏をめぐり妙な現象が起きた。4月4日、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でのこと。この日は、森友学園問題に絡めながら、教育勅語について検証する内容だった。そして次のコーナーに移る際にアシスタントの宇賀なつみアナウンサーがこう切り出した。

 「ここで先週木曜日に放送した内容についてです。3月30日、木曜日放送のパネルコーナーで森友学園をめぐり大阪地検特捜部が捜査に乗り出すことなどをお伝えしました。その中で籠池氏に関連して新たに動きが出てきたことについてお伝えした部分でパネル上において籠池氏周辺で新たな動きがあったというタイトルのもと著述家の菅野完氏のツイッターの文言や菅野氏が入手した籠池夫妻と安倍昭恵夫人の写真をお借りして紹介しました。籠池氏周辺での動きというタイトルでツイッターの内容や写真などをご紹介したことで菅野氏があたかも籠池氏の代弁者であるかのような印象を与えてしまいました。菅野氏は著述家であり一取材者として籠池氏やその家族に接し取材の結果をツイッターなどで報告されています。菅野氏並びに視聴者のみな様にお詫び致します」

随分と念の入った“お詫び”である。ではどんな報じ方をしたのか? 3月30日の放送回を見てみた。この時は、大阪地検特捜部が森友学園の捜査に乗り出していることなどが報じられた。問題点が整理された大きなパネルを交え、番組は進行している。司会の羽鳥氏がパネルの文言や図解を紹介しながら、コメンテーターに解説や見解を問うていた。そして森友学園による補助金不正受給の可能性などが論じられた後、籠池理事長側の動向に移った。パネルには「追い込まれた籠池氏(顔写真)周辺で新たな動き」というタイトルが打たれている。

「籠池理事長の周辺でまた新しい動きが出てきたということで昨日なんですけれども、著述家の菅野完さんがツイッターで公開しましたこちらの3ショットの写真です」

こう羽鳥氏がパネルの写真を指す。肌色のスーツを着た昭恵夫人と籠池理事長夫妻の集合写真だ。3氏の写真の隣には、菅野氏の顔写真とともに吹き出しが掲載されている。吹き出しには「場所と時期は」と印字されたマスキングシールが貼ってある。羽鳥アナは続けて

「籠池夫妻と昭恵さんです。はい3人の写真なんですけど、この写真が撮られた場所と時期が一つ一つポイントになってきます。これはあくまで菅野さんが籠池さんから聞いた話です。・・によりますと」

とシールを外し菅野氏の吹き出しの中身を読み上げる。

「あの豊中の土地なども行ってるよね これは第一回目の訪問の時かな? 2014年4月だってねぇ」

ここで言う“2014年4月”とは、この写真が撮影された時期をほのめかしたものだ。そして羽鳥氏は、念押しとばかりに補足した。

「菅野さんが籠池んさんから聞いた話です。あくまでも」

局自体の取材内容でもないし、菅野氏の分析を垂れ流す報道もどうかと思うが、「菅野さんが聞いた話」と繰り返すのもどうか? いざ問題があれば「菅野氏が言ったこと」として済まそうという意図なのか。菅野氏に便乗しながらも局側が“守りに入っている感”が満々だが、それはさておきの話だ。

集合写真の背景は「瑞穂の國記念小學院」の建設予定地だという。次いで昭恵夫人のフェイスブック(2014年4月26日投稿)が紹介された。この投稿は、夫人が森友学園を訪問したことを報告したもの。そしてボードには「この時はまだ土地取得申請中」との解説文が掲載され、今度は、「写真の意味」と書かれた吹き出し付きの菅野氏の顔写真へ。菅野氏の吹き出しのシールを剥がすと「初期からあの土地の話を知る立場にあった」と書かれていた。

森友学園側は、2013年9月に近畿財務局に土地の取得等要望書を提出しており、その申請中に昭恵夫人が森友学園を訪問している、と。この一連の流れは、昭恵夫人が早い段階で土地取得を知る立場にあったことを類推したものだった。そして集合写真の昭恵夫人のスーツが肌色で、4月26日のフェイスブックの投稿も同様の色のスーツだったことも指摘。その上で、籠池夫妻との3ショット写真は、同じく2014年4月26日ではなかったかと推定された。

以上がお詫びの原因になった3月30日のモーニングショーの一幕だ。しかし同日の放送を見ても「なるほど」という感想で、菅野氏が籠池氏側の代弁者という印象は持たなかった。それに菅野氏自身が籠池氏からの聞き取り結果を報道陣に流したわけだから「籠池周辺の動き」とされるもの当然のことだろう。もっとも仮に「籠池氏側」と考える人もいても無理からぬことだ。3月17日、菅野氏は、安倍首相が森友学園に寄付した100万円の物証として、苗字の部分は消され「晋三 (学)森友学園」と書かれた伝票を提示した。ツイッターなどの反応を見ると一部のユーザーたちがこの伝票を見て、小躍りし「物証キタ」「完璧な物証だな」などと感想を投稿していた。しかしこの伝票にどれだけの証拠能力があったものか。

こういうとおそらくアンチの人々は、激怒し反論するだろう。しかしよく考えてほしい。自身が支持する政治家に疑惑が浮上して同様の「伝票」が証拠として浮上した場合、これを容認できるだろうか。例えば「小沢一郎」「辻元清美」といった人物に置き換えてみる。すると血相を変えて「冤罪」「捏造」を訴えるはずだ。むしろこの伝票は、籠池氏側の“うさん臭さ”をより醸し出しており“出さない方がマシ”な代物に見えた。それ以前にもうこの伝票が話題にすらなっていないのは、どういうことか。このことは「証拠能力」としての伝票の価値を何より物語っているだろう。

にも関わらずモーニングショー側の懇切丁寧なお詫び。普段、こうしたワイドショーの特にコメンテーターという人々は、激しいコメントをしている。中にはただの「人格攻撃」といったものに終始している人も目立つ。ところがその後、決定的な事実誤認でもない限り「お詫び」が行われることもない。にしては、菅野氏に対しては随分、丁重な扱いだ。一つには、局側が森友学園問題で情報提供をしてもらう立場にあったこと。これも影響したかもしれない。

ただ「邪推」と言われるかもしれないが、モーニングショー側が菅野氏の出自、そして「部落解放同盟」の運動歴を「忖度」したのではないかと。後に菅野氏にこの件について問うたところ「質問されたから部落出身と答えただけで自ら名乗ったわけでない」との反論があったが、これはまた後の話。菅野氏は「解放同盟にもうそんな力はない」とも言っていた。そうだろうか。

メディア、行政、司法の人権感覚とは

現在、本誌示現舎は『全国部落調査』の出版をめぐり部落解放同盟と係争中だ。この係争の中で最も驚いたことは裁判所の見事なまでの“ビビり”っぷりだ。本WEBサイト上でも『全国部落調査』の刊行をめぐり横浜地裁から仮処分を受けたことは既報の通り。昨年、川崎の事務所に帰宅すると玄関口に横浜地裁の通知書が置かれていた。立ち入り検査をしたらしい。地裁がまだ出版すらしていない『全国部落調査』を差し押さえにきたのだった。それも後で地裁に確認してみると、出版してないのは把握していたらしい。しかし「立ち入り検査」をしないと、解放同盟側を収められなかったというのだ。あるいは地裁側の「忖度」だったのかは知らない。

本来、裁判所は最も中立的でまたどんな勢力に対しても揺るぐことがあってはならない。しかし「解放同盟」と聞いてこの始末。これでも「力がない」と言えるだろうか。ただ解放同盟に力があるという以上に、司法、行政、そしてマスコミが必要以上に配慮している側面もある。嘘だと思うならば、一度最寄りの役所に同和事業の予算書なり要綱を求めてほしい。まるで職員たちは「叱られた子犬」のようになってしまう。またこれも大袈裟と思ってほしくないが、マスコミ関係者の中には「同和を批判すると牛の首が会社に投げ込まれる」と真剣に恐れる人々がいる。ありえないことだ。むしろこういう考え方の方がよほど「偏見を助長」しているのではないのか。

もちろん一定量の知識を有した記者もいるだろう。しかし「部落民は川の近くのスラムに住み皮革業を営んでいる」こういう部落民像を信じている、もしくはそう思い込んでいる人も少なくなかった。本来、これこそ「偏見」であり「固定観念」、ひいては「差別的」のはずだが、解放同盟側も政治・行政もむしろこうしたイメージが固定化されていることを望んでいるフシがある。マスコミ諸氏もさほど大差ないだろう。彼らの同和関係の取材はあくまで運動体に寄り添う形で行われるもので、仮に意に反した取材をしたところで一般紙や地上波で発表できるわけがない。だから菅野氏が部落出自を訴えたところで、マスコミが「忖度」してしまうのは、経験上、ありえることだと考える。根拠を問われれば「それが日本のマスコミ」としか言いようがない話ではあるが。

一方、菅野氏の支持者、特に左派の支持層にとってみれば「気の毒な部落民」が作家となり安倍首相と日本会議を追及するというストーリーは、とても痛快なはずだ。この点においても「部落民宣言」をするのは有効だ。対して保守層に対して「部落解放同盟の運動歴」を持ち出すことは、一種の抑止的効果を持つだろう。「中国許すな」「北朝鮮を打倒せよ」と勇ましい人々であっても批判の対象が「部落解放同盟」となった場合、その勇猛と攻撃性を保てるだろうか。

つまり部落民を公言することでメディア、保守層をけん制したのではないか。この点も菅野氏に問うたが、あくまで菅野氏は「自称したわけではなく、聞かれたから答えただけ」と繰り返した上で「つまりエセ同和行為をしたとでも言うのですか」と反論する。もちろんエセ同和行為とは思わない。しかし「部落出身」「解放同盟員」という経歴に対してメディアは脊髄反射的に委縮してしまう。本人の意図とは別に結果的に「忖度」をもたらすものだ。何よりモーニングショーの「お詫び」はどう考えても行き過ぎている。すなわちその背後にあるものーーー「解放同盟の運動歴への忖度」ではないか。

そしてもう一つに菅野氏が公言する「部落民」という出自。果たして部落出身というほどのものであったのか? それを探りに同氏の故郷、奈良県天理市櫟本、石上に向かった。奈良県天理市。説明は要らないだろう。天理教の故郷だ。市内には至る所に「信者詰所」と呼ばれる宿泊施設がある。そして取材も早々に菅野氏を知る人はこう言った。

たもつ君が部落出身で差別されたといってるん? 名家の子やけどな」(続く)

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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日本会議、森友学園… 元解放同盟員・菅野完に メディアが忖度!?(前編)」への3件のフィードバック

  1. うんじゃらげ

    >マスコミ関係者の中には「同和を批判すると牛の首が会社に投げ込まれる」と真剣に恐れる人々がいる。ありえないことだ

    確かにマスコミではそのようなことをされた前例はないですね。ただ羽曳野市の津田一朗市長は、まさにその通りのことをやられましたけど。

    http://www.jcp-osakahugikai.com/katudou/2004/20040622.htm

    >「あげくのはては、ある朝、家内がガラっと入口をあけたら、血ぃのこびりついた牛の首がポーンと置いとりますねン。それもうちだけと違いますのや、私とこの家の前、当時の公室長の家、同和対策部長の家ね、建設部長ね、公室長の家は大きいので2つ、合計5つも置きよった。うちの家内、もうちょっとで腰ぬかすとこやった。(笑い)私はそんなんこたえんけどね 、女にはこたえますわなあ。

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  2. カミツレ茶

    『菅野氏は「解放同盟にもうそんな力はない」とも言っていた。そうだろうか。』
    ここで終わらないところが示現舎ですね!

    三品さん、とても興味深い分析でした。後半を楽しみにしています。

    返信
  3. うんじゃらげ

    同和絡みだと裁判所が「ビビる」のも浦和地裁に対する火炎瓶テロや東京高裁長官室乱入事件や東京高裁判事襲撃事件といった無数の前例があるからでしょう。もっとも、これらのテロ行為の犯人は石川一雄にシンパシーを持つ極左団体であって同和団体ではありませんが、同和団体とつるんでいる場合もあるのはご承知の通りです。

    水平社の時代から高崎区裁襲撃事件のような出来事がおきているわけですから、同和が絡むとビビる人が多いのは、それなりの根拠があることではないですかね。単なる偏見ではないでしょう。

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