前稿で掲載した津市相生町公園トイレ修繕工事の関係文書は怪しさ、ツッコミどころ満載。さらに取材協力者の証言をもとに分析すると増田容疑者と津市の受発注システムが浮き彫りになった。一見は他業者との競争入札の形を取りながら事実上、市から増田容疑者への単独発注。しかも工事現場として提出された写真も疑わしい点があった。言うなればフェイク見積書、フェイク工事だが津市は「知らなかった」の一点張りだ。
田邊‐増田‐北工事事務所の暗黙の了解
「中央市民館の話、ありえないですよね」
とある市関係者が怪訝そうな様子で弊社に連絡をしてきた。中央市民館の話とは前回、田邊容疑者が増田夫妻を呼び出し、津北工事事務所職員も同席していた一件。当初は田邊容疑者が増田夫人に「乳揉んだる」などの発言が「(モラル的に)ありえない」という意味かと解釈した。しかしその意味はまるで違ったところにある。
「田邊と増田と津北工事事務所職員は基本的に人前で同席しないんですよ。あくまで増田―津北工事事務所のやり取りであって、市側が田邊(自治会の方等)の意向を増田に伝える形が原則でした」
そんな掟は田邊容疑者がかつて経営していたたこ焼き屋でも伝わったという。。
「開店当時でしたか、北工事事務所職員が作業着姿で挨拶に来ていました。少し離れた場所に増田容疑者が車中で待機していたのです」(同前)
両者がその場で遭遇すること自体は問題行為ではない。増田容疑者もお祝いに訪れ偶然、北工事事務所職員と鉢合わせした・・。十分起こりえることだと思うが? 裏返せば田邊‐増田‐北工事事務所職員は“ 席を同じうせず”を厳守した証左ではないか。
この3者関係をまとめると「田邊‐増田‐北工事職員は同席しない」「工事の打ち合わせは増田‐北工事職員」というのが他業者、市関係者の一致した見方だ
増田‐津市役所、正確には北工事職員の不可解な関係は相生町公園の見積書からも読み解ける。
自作自演見積もりだ!
5月発注、9月発注、10月発注、各見積依頼書を掲載する。
まずは5月発注の依頼書。株式会社瀧澤、ケーズホームサービス、増田塗装の3社に依頼。

9月発注の依頼書。三重メンテナンス、鳥山工業、増田塗装。

そして最後に10月発注の依頼書。業者は9月と同じ。

前回も指摘したが大半の業者がダミーである。ケーズホームサービスについては浮上した人物を補足。「増田が印鑑等も全て管理している」(増田周辺)というのが実態だから名義貸し、もしくは無断使用した可能性が高い。玩具のような印鑑がダミー企業ということを何より物語る。

公共事業や競争入札に詳しい人物はこの印鑑を見て一笑に付す。
「普通、役所相手に見積書を提出する時、代表者印(丸印)を押印するのが基本的と思います。粗末な会社角印だけとはおかしいですね」
その他、鳥山工業は妻、三重メンテナンスについても「疎遠の親族まで無断使用した」(増田知人)という有様。
つまり瀧澤を除き、全て増田容疑者の手中にある業者なのだ。いや業者というのは表現が親切すぎた。増田容疑者本人と言ってもいい。
唯一と言える正式な業者、株式会社瀧澤の営業担当によれば「増田さんから見積書作成の依頼を受けました。このような価格でお願いできないかということで見積もりを出したんですけど」と当時を振り返る。ということは最初から入札する意思がなかったのでは?こう問うと「まあそうですね。はい」とあっさり認めたのは驚いた。
もうお分かりだろう。相見積もりと見せかけて実際は津市‐増田塗装への発注なのだ。「フェイク見積もり」「やらせ入札」「自作自演」と評したところで市が反論できるだろうか。
この見積もりについて倉田智司検査担当参事に確認した。
「ケーズホームサービス、三重メンテナンスは私たちが調べさせて頂いた時は津市の登録にございました。実質は増田さんの経営? 三重メンテナンスは別の方のお名前になっていましたので。委員会、報告書でもあります通り本来は市からそれぞれに見積もりをお願いすべきですが、一社にお願いしたのは不適切であったと認識しております」
市が確認した時には正式な事業者で、市も実態が把握できる立場ではなかったとの説明だ。増田塗装に見積もりの取りまとめ役をさせたことが問題ではない。市‐増田容疑者への単独発注だったことを認めるべきだ。
JAZZや小梅経由で金が渡る!?
そしてもう一点の疑問を挙げておく。まずは5月発注の修理伺を見てほしい。事業が発案されると修理伺を関係職員に回覧。各自の承認を得る。

修繕場所は相生町及び東丸之内地内とある。増田塗装に送った見積依頼書には相生町公園と明記されているが東丸之内地内については工事個所が定かではない。

この東丸之内とは「東丸之内緑地児童遊び場」(津市東丸之内7)のこと。なぜこの公園名は省略されたのか。

前回、指摘したが全社の見積書に「等」が追記されている。おそらく等が「東丸之内緑地児童遊び場」だと推定できる。そして次に示すのはブランコ塗装の工事写真。


黒板を見てほしい。相生町公園トイレ修繕は工事名と工種が明記されているがブランコ塗装についてはなぜか「空欄だ」。
見積もりの件名に「東丸之内緑地児童遊び場」と書かれていない点を倉田参事に確認したところ「そこは書き忘れでした」と一応、不備は認めた。だがある市関係者に一連の写真を見せたところ疑わしい点があるという。
「公共事業がやたら多い相生町ですが、それでも一応予算に上限があります。その上限額に達した場合、相生町関係以外の地区も増田塗装が工事をするのです。もちろん増田塗装に収益が全て入るとは思えません」
となると誰かの懐に? 唐突に東丸之内緑地児童遊び場を工事に含めたのは随意契約上限額の帳尻合わせではないかとの疑念だ。
しかも書面だけ見れば東丸之内緑地児童遊び場も工事対象だったのか判別できない。あるいは「このブランコ塗装写真も書類上は相生町公園の遊具と見せかけたのではないでしょうか? しかしあそこは二連ではなくて四連。地元の人間が見ればすぐ区別がつきますけどね」(前同)
なぜ「等」が追記されたのか、それ以前になぜ件名に東丸之内緑地児童遊び場が抜けていたのか。同関係者の指摘を考慮すると単純なミスとは思えない。とりあえず現状は「書き忘れ」として収めておく。次に金の流れ。
ではこの3期分の工事で田邊容疑者にいくら渡ったのか。ここが気になるところ。
「(3期工事分で)60万円だと聞いています。しかしこのカネの流れを証明するのはまず不可能だと思いますよ」
とは増田容疑者知人の証言。随意契約50万円の場合、20万円前後が田邊側に渡ると他業者からも証言を得た。3期60万円という額は一致する。ただ証拠を突き止めるのは不可能だと同氏が断言するのはこんな理由だ。
「田邊(容疑者)と直接的に金のやり取りをすることはありません。JAZZや小梅で例えばビール1本5万円、焼酎のボトルが10万円という風にして支払いをすれば単なる飲食の会計になります。そこから田邊に渡るのだと聞いています」(同前)
JAZZや小梅は市職員を動員して収益を得る商売方法と思っていたが、しかしそれは表層かもしれない。すなわちマネーロンダリング(資金洗浄)に使われていた可能性も排除できない。
いずれJAZZや小梅の実態も司法の場で明らかになると信じたい。そんなマネロンの場で飲食をしていた津市職員たちはその時に何を思うか。
闇は深いですなあ。
深いというか、けち臭い。
中学生が駄菓子屋でお釣りをごまかしたり万引きしたりする光景のよう。
伊勢新聞に、市長が再度内部の調査を命じたとある。それはいいのだが、なんかこの人、いつも他人事なんやなあ。
命じるんじゃなくて、己が率先してやる感を出せないものか。
市長が、自分から火の中に入る訳がない。
なぜなら、自分が火の勢いを強くしてしまった張本人なのだから。
続き
市長は今、必死に火の粉を振り払っているが、丸焼けになるのは
時間の問題かも。