特集LGBTを斬る① 「ゲイやレズの極右がいたらその時、左翼は・・・」

三品純 By 三品純

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとった「LGBT」は、今、空前のブームだ。SNSなどのプロフィール欄を見ると、シンボルのレインボーフラッグを使用する人が散見される。政治分野では、今年7月「LGBT自治体議員連盟」が発足し、各自治体では、支援策が打ち出されている。また関連するシンポジウム、イベントも多数、開催されており、関心の高さが伺える。まさに”LGBTバブル”なのだ。こうした風潮は、性的マイノリティの地位向上に寄与することだろう。ただ過去の「人権施策」また現在の日本の「人権」を取り巻く環境を見ると、疑問も感じてしまうのだ。今のLGBTは、本当にLGBT全体の権利擁護となるか、一過的な現象に終わるのか? 「特集LGBTを斬る」とシリーズ化してこの問題に迫っていきたい。

データから読み解く 13人に一人はLGBT!  

まずは、LGBTの概況について説明しておきたい。平成26年度総務省の統計局によると日本国民1億2711万3千人中約966万人がLGBTの可能性があるという。少なくともこの数字からは日本人の13人に1人はLGBTということが分かる。この数字の多寡については、個人の判断に委ねるしかない。また異性への恋愛感情を持たない「アセクシュアル」という存在もあるため、性的マイノリティの正確な実数を測ることは、容易ではないだろう。

連合のLGBTに関する職場の意識調査より抜粋

一方、連合(日本労働組合総連合会)が昨年、実施した「LGBTに関する職場の意識調査」によると「全国の20歳~59歳の有職者1000名(出生時の性別で、女性500名、男性500名)に、自認している性別、性的指向を聞き、分類したところ、「LGB」(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル)が3.1%、「トランスジェンダー」1・8%、「アセクシュアル」(他者に対して恋愛感情も性的感情も向かない者)2・6%、「その他」0・5%で、LGBT当事者は8%だった。またLGBTブームと言われるものの、LGBTという言葉の認知については、ほぼ半々だったのが意外だった。

また「LGBTに対して、どのようなイメージを持っているか 」という設問に対しては、「他の人と変わらない存在」という回答が47・1%、「差別や偏見を受け、大変な境遇にある人びと」が41・8%、「テレビに出たりする等、芸術やファッション、芸能等の分野で秀でている人びと」が20%となっている。またこの設問では、「一部の職業に偏っていて、普通の職場
にはいない人びと」が16・5%となっているが、「職場の人からLGBTをカミングアウトされた・カミングアウトしていると聞いた」経験を持つ人が 7%という結果もある。

さらに「職場の上司・同僚・部下等が、いわゆるレズビアンやゲイ(同性愛者)、バイセクシ
ュアル(両性愛者)であった場合、どのように感じるか」という設問に対しては、「嫌だ」が7・5%、「どちらかといえば嫌だ」が27・5%、「嫌だ」と感じる人の合計は、約35%となっている。この数字の多寡についても判断はできないが、どういう結果であれ、国内の人権派からすれば満足するものではないだろう。

立場で変わる日本の人権派たち

こうした調査を見るとまだLGBTは、市民権を得たとは言い難い。しかし根強い偏見や差別があるという一方で、テレビを見れば、シャンソン歌手の美輪明宏氏、マツコデラックス氏などゲイを公言するタレント、文化人がごく普通にゴールデンタイムに出演している。もちろんこうした一部の芸能人をもって偏見は解消されつつある、とも言えない。

ただ一つだけ確実に言えることがある。それは、日本の人権問題は、政治的立場が変われば「取り扱い」も変わるということ。LGBTに関わらず人権問題は、何らかの「政治的バイアス」がかかってしまうものだ。

例えば部落問題はどうか。日本の人権のピラミッドの頂点に位置する被差別部落問題は、メディア、政治家、運動家の間でも最大級の配慮を受ける。ただこうした面々が部落を扱う時に、その対象となるのは、いつも「部落解放同盟」とその衛星的な文化人・ジャーナリストである。共産党系の人権連の見解や主張が取り上げられるというのは、まずお目にかからない。

在日コリアンを見ても、日本に批判的な在日コリアン、例えばしん淑玉すご氏に対しては、人権派と思しき左派の活動家も敬意を寄せるが、その反面、保守系のちょん大均てぎゅん首都大学東京都市教養学部特任教授に対しては、厳しい批判を浴びせる。アイヌ問題も同様に当事者であっても、砂澤陣氏には容赦がない。

要するに同じ社会的弱者とされる属性の人々であっても、政治的立ち位置次第で、人権派たちの態度は、コロリと変わる。こう指摘するときっと烈火の如く怒り猛ることだろう。

LGBTは左派・リベラルのものか!?

こうした人権派の有様を踏まえた上で、LGBTと政治の関係を考えてみる。冒頭の「LGBT自治体議員連盟」の代表格は、世田谷区議の上川あや氏だ。同氏もリベラル派の議員として、ジェンダー施策などで実績がある。参加している議員を見ると社民党、無所属でも革新系の面々だ。もちろんこの動きをもってLGBTは、左派・リベラルとはならないが、LGBTの取り組みは、左派の方が活発な模様である。

では、保守系の政治家とLGBTの関係はどうか? 過去、保守系の議員がLGBTについて不用意な発言をしてSNSやブログが炎上することがたびたび発生している。攻撃者たちは、保守系の議員は、旧態依然とした思想を持ち、LGBTに無理解だと断じて、敵意を露にする。

中でも印象的だったのは、2015年、海老名市議の鶴指眞澄氏がTwitterで「同性愛者は異常動物」とつぶやいた時のこと。たちまち炎上し、謝罪に追い込まれたこと。当時、本誌編集長、鳥取ループが同議員宅に取材を試みたところ、鶴指議員自宅周辺に公安警察が張り込んでおり、周辺の立ち入りを規制された。保守派の鶴指氏に反感を持つ一派が襲撃する可能性があり、警戒に当たっていたという。

こういう背景を見ると、LGBTが左翼というよりも、LGBTを取り巻く環境が左翼的と表するべきだろうか。なら国内の人権派、あるいはLGBT周辺の左派層の人々に聞いてみたいことがある。

「もしゲイやレズが極右運動を始めたら、人権派と称する人々はどう反応するのか」

もちろん推測の域でしかないが、おそらくは、「このホモが」「このレズが」となじる気がしてならない。なにしろ人権問題、同和問題に取り組む大学講師が匿名のブログを乱立させ、示現舎を攻撃することもあった。しかも同氏は、ネット上で匿名の差別発言、誹謗中傷問題に取り組むような人だ。この人権派なる世界は、全く本末転倒な事象が起こり得るものだ。こうした過去を鑑みると、極右のLGBTがいた場合、前述したような反応が一部で起きたとしても不思議ではないだろう。

一方、LGBT=リベラル・左派のイメージについて、LGBT団体関係者に尋ねてみたところ「その質問自体がバイアス」という指摘を受けた。もちろん著者自身にもそうしたバイアスの一人であることは認めざるをえない。

ただ現状を見ると左派運動家からも、保守勢力対LGBTと対立的に見る向きもある。単にバイアスでもない気がする。それが如実に表れたのが8月5日、東大駒場キャンパスで開催されたシンポジウム「道徳的保守と性の政治の20年―LGBTブームからバックラッシュを再考する」だった。(*バックラッシュとは、男女平等、ジェンダーに反対する運動、勢力)

同シンポジウムでは、男女共同参画社会基本法(1999年)前後から今に至るまでのLGBTの権利問題、また保守派の言説、主張を読み解くというものだった。おそらく演題からしても「左派色」を帯びたシンポジウムであるのは言うまでもない。つまり日本会議など保守勢力がLGBT、あるいは女性の権利を阻害してきたというわけだ。また「日本会議から見たら、フェミもLGBTも在日コリアンも一緒」という主張もある意味では、想定の範囲だった。

そしてバックラッシュの背後にいるのは、自民党日本会議、統一教会、日本政策研究センター、教育再生・地方議員百人と市民の会、保守知識人と分析を加えた。しかしこうした運動家たちは、多様性と言いつつ、自身らがLGBTに「色」を付けてしまっているのではないか。

ならば表題の問題、「極右のゲイやレズは許容されるのか」という問題について専門家はどう考えるのか? シンポジウムに登壇した国内のフェミニズム研究の第一人者、飯野由里子氏に質問をしてみた。飯野氏の見方は意外なものだった。

「性的マイノリティだからといってリベラルである必要はありません。実際、保守的な性的マイノリティは意外と多いです。わたし自身は、今後のLGBT運動においては、リベラルな勢力よりも保守的な勢力が力をもつようになるだろうと想定しています」

とした上で

「その上で、自分に何ができそうか、どの辺りが「闘いどころ」になってきそうかを探っているという段階でしょうか。その意味では、日本会議等の保守派のスタンスや動きを知っておくことは、大切だろうと思います」

と説明した。普通、人権関連の質問をすると逆切れか、罵倒されるか、どちらかが多いが、飯野氏からは大変、丁寧な説明と解説があり、感謝したい。もちろん性にも多様性がある以上、主義主張にも多様性があるはずだ。だから右だから悪いLGBTとはならないだろう。もし今後、極右なLGBTが増加したら、その時、人権派や左派・リベラル層はどう反応するのか? 見物である。

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三品純

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

特集LGBTを斬る① 「ゲイやレズの極右がいたらその時、左翼は・・・」」への13件のフィードバック

  1. 名無しのプログラマー

    >もちろん推測の域でしかないが、おそらくは、「このホモが」「このレズが」となじる気がしてならない

    ここは推測ではなくファクトを持ってこないと意味がないでしょう。右翼のLGBTということでは武藤貴也という実例があるのだから、人権派による武藤への非難の中に「このホモが」「オカマ野郎」といった文言が含まれていたかどうかを具体的に検証すればよいのでは?

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    1. 三品純三品純 投稿作成者

      大変すばらしいご指摘ありがとうございます。そのあたりの話は、当事者の方のインタビューなどを予定しておりまして、検証していきたいと思います。

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  2. KBTec

    海外でわーの出羽守ネタで参考までに。
    フランスの国民戦線の記事
    フランスのゲイはなぜ極右政党に投票するのか – BBCニュース
    ttp://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-39689829

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  3. しじみ

    極右なLGBTですか。。 基本極右は反同性愛主義ですからね。現れたとしても、いないとは言えない、程度の勢力にしかならないような気がしますが。

    稲田朋美なんかはLGBTのイベントに出てたと思いますけど、本心なのか、偽装なのか。

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    1. 三品純三品純 投稿作成者

      稲田朋美は政調会長の時にLGBTを扱っていましたね。アタシも人権問題に取り組んでいるっていうポーズのような気がしますが。

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  4. KBTec

    オランダのピム・フォルタインは該当しないのかな?
    ゲイだとカミングアウトしてるし。
    狙ってやっているのかナチス突撃隊風の衣装を着てる写真があったはずです。
    流石に腕章は鉤十字でなくてオランダの正式名称のネーデルランドの
    頭文字のNだと記憶してます。
    同じ性癖のエルンスト・レームを踏まえてるかもしれません。
    反イスラムなのは前回投稿した記事に共通点がありますね。

    海外の事例だとこんなものでしょうか?国内は分かりません

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    1. 三品純三品純 投稿作成者

      海外の事情はもうちょっとしっかり研究している人にインタビューなどをして検証したいと思います。

      返信
  5. KBTec

    一研究者さん。
    ありがとうございます。記憶の片隅の範囲だったのでこれの可能性が高いです。

    三品純さん
    私はネオナチだった 黒人女性と恋に落ちるまでは – BBCニュース
    ttp://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-41091958
    事例的にはフロリダのナイトクラブ銃乱射事件の犯人の実情に近いかもしれません。

    取材されたシンポジウムに出てくる用語からして、「ジェンダーフリー」を隠れ蓑に好き勝手にやってきたフェミニストの影がありますね。

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    1. 三品純三品純 投稿作成者

      ジェンダーフリーって男女関係ないはずなのになぜフェミニストがイニシアティブをとっているのでしょう。なんか根底に「男はわかってない」という妄念を感じます

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  6. Cavagame

    極右な同性愛者といえば三島由紀夫氏が直ぐに思い浮かぶのですが、間違いでしょうか?

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