今回は2年ぶりに佐久市を探訪してきた。最初に訪れたのは上平尾で、ここには7戸の部落があったという。

ところで、佐久市と言えば一昨年、佐久市長と小諸市長が長野地方法務局佐久支局に部落探訪の削除要請を行った。しかし、1つの事実を示すと、佐久市自身が事実上の同和地区地名一覧をインターネットで公開している。

菊池山哉もこの部落を記録している。

○上下平尾村の中間で、重要地鮎ではない。
○白山神。九戸も戸数があるが、神社は貧弱である。末社に三峯様を祭る。一尺四方藁屋根の招ぎ代を、四本柱高く設けて居る。
○平根の村が新しいのであるから、曲輪も新らしい。

これは現地にある「佐久市上平尾同和対策集会所」。看板には「同和対策」の文字はないが、前記が正式名称である。管轄は佐久市人権同和課だ。

入り口の形状が、ややバブリーな雰囲気があるので昭和60年頃のものかと思ったら、実際は昭和55年建設である。なぜそれが分かるかというと、佐久市が公開した同和対策集会所の一覧に設置年が書かれているからだ。

かつて最高裁が、滋賀県の同和対策施設一覧を「本件要覧は、その作成の当時、普通地方公共団体である上告人が、各地域センターが設置されている各地区と同和地区との間に一定の位置的な関連性があるとの認識の下に、各地域センターの名称や所在地等とともに上記各地区の位置及び名称や居住者等の具体的な状況の詳細を網羅的かつ一覧的に掲記した資料であり、かつ、そのことが容易に看取される資料であるということができる」という理由で高裁の判決をひっくり返してまで非公開としたことがあった。

なお、筆者が解放同盟から訴えられている全国部落調査事件では、東京高裁が「一般的に、地域住民以外の者は隣保館が存在している場所を知るものではない上、今日において、その設置経緯等を知る者は必ずしも多くはなく、隣保館の意義・役割等も、社会状況等に照らし、設置当初から変容している面があるとも考えられる」と判断している。

まあ、端的に言えば佐久市が何がやりたいのか分からないし、最高裁も東京高裁も何を言っているのか分からない。事実として、佐久市は部落を特定することを問題にしながら、わざわざ同和地区名をを冠した施設を設置して、その一覧を公開している。

最高裁と東京高裁の判決はこられの実情と矛盾しているし、また判決文を読むと同じ書面の中でも前後で言っていることがコロコロ変わるので、結局何がよくて何がだめなのか分からない。

同和施設の名称や位置情報が、同和地区の場所を示したものかどうかについて、行政も司法も意味のある答えを示さないまま判断している。裁判所が言っているような説明が通るなら、その時々の都合で何とでも言えてしまうのではないか。

要は、彼らには深い思慮というものがなく、解放同盟という圧力団体の威力に屈して、後付けでその場限りの説明に終始しているから、このようなことになるのだ。

佐久市の同和対策集会所一覧には、「場所」が空欄になっているものと、書かれているものとがある。これは「同和地区の場所を公開したものではない！」と言い訳するためかも知れない。ということは別の考え方をすれば、場所が書かれているものは設置場所が同和地区外で、空欄のものは同和地区内にあるということだろうか？　ただ、探訪による研究では、同和地区＝部落と考えるのなら、明らかに部落外に同和対策集会所が設置されている場合もある。

佐久・小諸などの東信地方では、部落には高橋という名字が特徴的であることが知られている。1984年6月に小諸東小学校の小学6年生の児童が「高橋と言う名字は部落だよなあー」と発言して問題になったことがあるくらいだ。

そのような言説をもとに分析してみると、少なくともこの上平尾同和対策集会所については、部落の中にあることが分かる。

ただ、この部落については、正確には「髙橋」。はしご髙の方である。古くからの家は一貫してこちらの漢字をつかっているようだ。

ただ、これもまた多くの人が知る通り、高橋は全国でも3番目に多い、ありふれた名字である。さすがに長野県、東信地方でも高橋が全て部落の名字というわけではない。

この部落でも、よそから引っ越してきたと見られる新しい家が建っており、高橋という新住民がいても不思議ではない。

なお、集会所の敷地には十九夜塔がある。安産にご利益があるという。たぶん、集会所の場所に白山神社があったのではないか？

最後に、少し離れたところにある平尾大社に行ってみた。ここの白山神社が合祀されているという。

大社というくらいだから、立派な神社である。

境内に、おそらく周辺から合祀されたと見られる神社がある。この一番端に白山神社がある。

境内社であるが、ちゃんと鳥居もあった。

祠の中には、大字上平尾氏子中と書かれた木札があったので、これが上平尾内にあった白山神社であることは間違いなかろう。

境内にある、明治以前の石碑には高橋という名字はなかった。もともと平尾大社の氏子ではなかったということだろう。