“命のビザ”杉原千畝一族の遺言闘争の中身

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By 三品純

第二次世界大戦中、リトアニアのカウナス領事館に勤務していた外交官、杉原すぎはら千畝ちうねは、ナチス・ドイツに迫害されたユダヤ人ら難民6000人を救出するため、外務省の方針に反し大量のビザを発給した--

同じく大戦中、大量のユダヤ人労働者を救った“シンドラーのリスト”ことドイツ人の実業家、オスカー・シンドラーになぞられ杉原の業績は、“命のビザ”や“東洋のシンドラー”と賞賛されている。戦後、杉原のビザ発給は、外務省の命令への「不服従」として長年、日の目を浴びなかった。しかし2000年、河野洋平外務大臣(当時)の顕彰演説によって正式に名誉回復がなされたのだ。

現在、その功績を扱った関連書籍は、多数に及び、小中学校の平和教育でも題材にされている。また生誕地とされる岐阜県加茂かも八百津町やおつちょうでは、千畝を称えて1992年に「人道の丘公園」、2000年には、杉原千畝記念館が建設され、全国から多くの見学者を集めている。さらに千畝に関する資料や関連施設をまとめた「杉原リスト」がユネスコ世界記憶遺産の国内候補に選定され、岐阜県、八百津町あげての取り組みが続いているのだ。

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そんな“千畝バブル”に沸く地元の反応とは、別に内情は“平和”ではないトラブルが相次いでいるのだ。その一つが出生地に関する問題。八百津町は、長年、千畝が同町生まれ、出身者と主張してきたが、戸籍上の生誕地は、同県旧武儀むぎ上有知町こうずちちょう(現在の美濃市)である。このため一部から八百津町出身ではないという声も少なくなかった。そこで同町は、ユネスコに資料を提出する際に八百津町出身との記述がある“千畝直筆”という原稿を提出し「出生地の証拠」とした。ところがその筆跡が別人のものという疑惑が浮上。地元メディアや週刊誌などでも追及されることになった。

一方、出生地問題が紛糾する中で、千畝の妻、幸子ゆきこ氏の遺言書をめぐり一族の法廷闘争も勃発。四男の伸生のぶき氏は、長男(故・弘樹氏)の妻、杉原美智みち氏とその長男で「NPO法人杉原千畝命のビザ」の理事長・杉原千弘ちひろ氏、同副理事長・杉原まどか氏らが作成した遺言書が「無効」としてこの3名を相手取り訴訟を起こしていた。千弘氏は、タイ在住で答弁書すら出しておらず、実質、伸生氏と美智氏・まどか氏の間で争われた裁判である。そして11月17日、東京地裁は、伸生氏の主張を認め、遺言書を無効とした。

判決文によると幸子氏は、2001年4月10日に自筆証書で遺言(第一遺言)を作成。次男の千暁氏(故人)に遺品、資産などを相続させるとしていた。ところが今回、無効になった遺言書(第二遺言)は、美智氏を遺言執行人にし、その子、千弘氏、まどか氏に千畝の遺産を相続させるという内容だ。第二遺言は、2001年12月28日、幸子氏の著書『六千人の命のビザ』の出版元・大正出版の社長、渡邉勝正氏の勧めにより作成され、文面は、まどか氏が考案したもの。伸生氏は、この第二遺言を無効とし、訴訟に至ったのである。

裁判では、幸子氏の判断能力が焦点となった。第二遺言書が作成された当時、幸子氏は、心身ともに著しく衰弱。高齢の上、認知症が進み、2001年11月に病院から「痴呆が急速に進んでいる」「疲れきっている」と診断されていた。また同年12月に入ると「ズボンを脱いでオムツを外す」「上半身裸になった」「スポンジを食べる」などの奇行が目立ち始めた。そして被告らの第二遺言が作成された同年12月28日、幸子氏は、膀胱カテーテル(膀胱にチューブを入れ排尿させる医療器具)を使用中の上、リハビリ中でもあった。とても第二遺言を正確に判断できる状況ではなかったようだ。

この時期、病院側は、幸子氏の症状を美智氏にも相談しており、被告側は、幸子氏の健康状態を十分、把握していたと考えられる。これに対して被告側は、幸子氏が異常な行動をとったのは、夜間で昼間は、正常だったと主張したが、裁判では、否定された。

第二遺言では、遺言執行人と指名を受けた美智氏だが、幸子氏との間に信頼関係があったのかも疑問が多い。幸子氏は、長年、講演活動をしており、その間、美智氏がマネージャー役を務めていた。当初、幸子氏は、講演謝礼が5万円と聞いていたが、後に10万円だったことを知ったそうだ。幸子氏は、美智氏を「毒婦」「口先ばかりで腹黒い女」と不信感を抱き、原告の伸生氏にも相談していた。

また被告らが遺言を作成した目的や根拠も曖昧だ。被告側は、次男の千暁氏が千畝の遺品をオークションに出品していたと訴え、遺品の散逸を防ぐこと目的に第二遺言を作成したと主張。ところが第二遺言の作成当時、遺品の散逸問題は、具体的になっておらず、この主張も退けられてしまった。

せっかくの千畝の功績も出生地問題、遺言書問題でミソがついてしまったのは、否めないところ。「平和」「人道」のシンボルになった杉原千畝だが、その功績が騒動の火種になっているとは、皮肉なものである。

杉原千畝の家系図。

杉原千畝の家系図。


 

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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“命のビザ”杉原千畝一族の遺言闘争の中身」への5件のフィードバック

  1. 匿名

    駐ドイツ特命全権大使でA級戦犯の大島浩陸軍中将の父親で陸軍大臣の大島健一陸軍中将。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%B3%B6%E5%81%A5%E4%B8%80

    1858年 – 美濃国岩村藩(現岐阜県恵那市、旧恵那郡岩村町)の藩士の子として生まれる[1]。
    ただし宮武外骨は「前陸軍大臣であつた大島中将は岐阜県の特殊部落の出身であると云ふ事が先年大阪の朝日新聞に出て居たが、果して其事が真ならば、我は旧穢多族なりと叫んで貰ひたい」と発言している(1919年8月13日、平民大学講演会での発言)。このとき臨監の警官は中止を命じたが、外骨は屈せず、これを『赤』第6号に発表している。『宮武外骨著作集』第8巻(河出書房新社)解説「宮武外骨と『穢多』の語」(師岡佑行)を参照。

    返信
  2. 匿名

    被差別部落の富裕層が没落士族から士族籍を買って出自を隠蔽することはあったみたいですね。
    奈良出身の融和運動家の松井庄五郎も士族籍を買って亀井姓から松井姓に名字を変更してます。
    http://kotobank.jp/word/%E6%9D%BE%E4%BA%95+%E5%BA%84%E4%BA%94%E9%83%8E-1655069

    明治35年に東京帝国大学を卒業したエリートで、息子は張家口特務機関長や函館聯隊区司令官を務めた陸軍少将の松井源之助(陸士22期、陸大33期)です。

    朝鮮人陶工の子孫でA級戦犯の東郷茂徳も士族籍を買って朴姓から東郷姓に変更してますね。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E9%83%B7%E8%8C%82%E5%BE%B3

    返信

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