市幹部のパワハラ問題を受け、交野市議会は11月28日、職員によるハラスメント問題調査特別委員会を設置した。パワハラ問題を取り扱った報道番組の取材に応じた市職員が「中で突き詰めても最終てっぺんのところで限界がくる」と嘆いたのが印象的。では〝てっぺん〟とは一体何のことか。それはパワハラ加害者職員と同期グループを中心とした幹部層だ。
てっぺんの正体を見たり!

懸案事項だったパワハラ問題に対してついに議会が動いた。同市議会は11月28日に「職員によるハラスメント問題調査特別委員会」を設置。「調査が終了するまで閉会中も継続調査を行う」とし強い姿勢で臨むようだ。
【交野市】市長も黙殺 都市まちづくり部次長のパワハラ事件 〝フェイク改革派〟山本景市長の正体③
過去記事でも指摘した通り、パワハラ加害者として浮上したのが企画財政部次長兼都市計画部次長H氏だ。2023年に開催された交野市マラソンの打ち合わせ中に教育委員会に所属する職員(今年3月退職)を暴行するなどの行為が指摘されてきた。ところが告発から1年以上も放置されついに特別委員会の設置に至った。
パワハラが黙殺された原因は一部幹部層が障壁になったこと。11月21日、関西テレビ『ツイセキ』のインタビューに応じた職員は「中で突き詰めても最終てっぺんのところで限界がくる」と苦しい胸中を明かした。
そして筆者はてっぺんの正体についてH氏を取り巻く副市長、部長級、そしてH氏同期グループという結論を得た。
このてっぺんグループは中田市政の時代から問題を起こしていた。関係人物を列記しておく。H氏、A氏、M氏、K氏は同期入庁組で横のつながりも強いという。そしてこのグループのフォロー役といった存在が艮副市長、N企画財政部長だ。
N氏→企画財政部長(マラソン事業にも関係。星田エリア全体事業選定委員)
H氏→企画財政部次長兼都市計画部次長(渦中のパワハラ加害者)
A氏→総務部長(パワハラ問題に対応。市長の記者会見に同席)
M氏→財産管理室次長(同僚に対して複数の暴行歴。星田エリア全体事業事務局)
K氏→社会教育課課長代理(女性職員、H氏と懇意)
特徴としては山本景市長になって昇格した職員が目立つ。
中田市政時代の頭突き事件からお友達人事で昇進

このグループがどうパワハラと関係しているのか。H氏同期組の歩みを検証してみよう。
H氏は市役所内で〝コワモテ〟として通っている。交野市は相撲が盛んだがその風貌はまさに「親方」。加えてM氏も職員の間で恐れられる人物だ。
中田仁公市長時代にM氏は飲み会の席で頭突き事件を起こした。ところが頭突きについて処分されたという話は聞かない。しかもM氏は2015年、黒田実市長時代に平手打ち事件を起こしたというから驚きだ。この時は減給処分が下されたという。
2019年、A氏が総務課長の頃、M氏は財産管理課長、H氏は公共施設等再配置準備室課長に昇進。またK氏は公共施設等再配置準備室係長になった。余談だがH氏とK氏は非常に懇意にしているという。交野市では市内または近隣自治体への調査、視察等でも「出張」と呼ぶ。H氏とK氏は同じ車で出張し直帰ということもあったそうだ。となると男女関係が勘繰られたのは言うまでもない。
山本市政以前から素行が問題視されたH氏、M氏の厚遇に対してもちろん不満の声は起きた。いわゆる「お友達人事」ではないかという指摘だ。
そして「公共施設等再配置準備室」という謎の部署については後々、重要になってくる。H氏同期組にはクセのある人物が多く、そのフォロー役、いわば〝猛獣使い〟が企画財政部長のN氏だ。なお星田エリア全体事業の選定委員会は委員にN氏、事務局に財産管理室次長M氏がいる。またN氏は中田市政の時代に交野市マラソンを担当した。
公共施設等再配置準備室はマラソン対応部署
交野市マラソンは府内でも人気イベントだ。担当部署は主に「総務部行政経営室」だった。市民マラソン大会は通常、地元有志らの実行委員会や市民団体との協業というケースが多い。ところが交野市は職員主導であり、負担が大きいとの不満が漏れた。
そこで2018年に「公共施設等再配置準備室」が発足。一体、何をする部署なのか名称だけでは判断がつかない。
「結局、公共施設等再配置準備室はマラソンのことばかりやっていました。H氏らの趣味でできたような部署」とある関係者は失笑した。
さらに意味深なのは同室の初代部長は当時、企画財政部長だった艮幸浩・現副市長。N氏が室長、H氏が課長、K氏が係長。確かにマラソン色が強いメンバーだ。交野市はマラソン事業が〝出世コース〟と勘繰りたくもなる。あるいはH氏の同期メンバーだけが厚遇を受けたのか。筆者はどちらもあり得ると推測する。
いずれも山本市政における幹部層だ。現に11月14日、山本市長は突如、記者会見を開催して減給を発表したがその場に同席したのが艮副市長、そしてA総務部長だ。14日の記者会見は重要人物が揃った場面でもあった。

H氏の暴行現場を目撃したはK社会教育課課長代理
「公共施設等再配置準備室」の主要人物たちを見て欲しい。今回、パワハラを起こした人物(H氏)とパワハラ対応に当たる艮副市長が関係している。マラソン運営メンバーといってもいいだろう。そんな関係性で果たしてH氏に厳しく指導できるのだろうか。しかも担当の総務部長A氏は同期である。
そしてもう一人、重要人物がいる。H氏とも懇意にしている社会教育課課長代理のK氏だ。名指しこそされていないが、K氏に関する情報は他でもない山本市長が言及している。
パワハラが大々的に報じられるようになると山本市長は11月1日、ブログに「交野市役所職員によるパワハラ報道について」と題した記事を投稿。その中でこのような記述があった。
事案7の診断書の提出を求めましたが拒まれました。また、事案7の目撃者に部長をつうじてヒアリングし、ヒアリング記録に署名押印するよう求めましたが拒まれました。
事案7とは、H氏が教育委員会職員を暴行した問題のこと。その目撃者とされているのが、H氏と親しいK氏(社会教育課課長代理)なのだ。
それでなくともH氏の横暴な態度は市職員の間でも問題視されてきた。それがパワハラどころか治療を要した暴行事件である。それに対して同期、親密職員だからといってヒアリングに非協力的というのは言語道断だ。
結局、H氏が起こしたパワハラだが、なんと対応に当たってきたのもH氏グループなのだ。無論、友人割引で判断に手心もありえただろう。何より告発が1年以上も放置されたこと、課長代理のK氏はヒアリングに非協力的だったことはその証左。歪んだ絆だ。
すなわちこれが職員が嘆いた「てっぺん」の正体ではないか。こう筆者は結論づけた。市側は過去の質問に対して「取材や問い合わせに対する協力はいたしかねます」ということなので、市側には質問という形をとらず事実関係だけを伝えた。本稿に事実誤認があればぜひ抗議してほしい。
今後は特別委員会で関係者にも調査が及び、また市民の目もある。これまでのように〝てっぺんグループ〟の思惑通りにはいかないだろう。
それから山本市長の「協力してもらえなかった」という弁解は通用しない。普段、見せる威勢の良さはH氏グループには向かないのだろうか。記者会見で発表した「減給処分」で済む話ではない。もし府内の維新系の首長が同じ対応をした場合、山本市長は辛辣な批判をしたはずだ。
なにしろ山本氏は普段から政府、大阪府などに対決姿勢を示す。
最近ではお米券配布について11月30日、Xに「交野市は、鈴木農林水産大臣の露骨なお米券への誘導には屈しません。私は、農林水産大臣ではなく、市民を見て判断しますから、お米券は絶対に配りません」などと投稿した。
この通り、勇ましく国に抵抗する割に一人の職員のヒアリングができなかったのはおかしい。むしろ指導力がないと公言したようなもの。国や大阪府に向けたファイティングポーズはあくまでれいわ新選組など一部の支持者に向けたものに過ぎないのだ。特別委員会が設置された今、そのような徒手空拳が通用するのか見届けたい。



