【関市】映画『名もなき池』騒動② 撮影現場は監督交代とセクハラで混乱 市とイロハ社の癒着疑惑も!

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By Jun mishina

岐阜県関市が実施した「関市映像作品撮影事業補助金」2千万円で「(株)IROHA STANDARD」(以下イロハ社)が映画『名もなき池』を製作。だが同社が補助金の条件に違反したとして市は返還を求めている。一見すると市側が〝被害者〟のようだが実は内部でイロハ社との癒着が囁かれているのだ。(*写真は市に提出された監督・新原光晴氏のプロフィール)

関市とイロハ社の癒着疑惑

筆者が『名もなき池』騒動を初めて耳にした際は怪しげな業者に市がつけ込まれたという図式を想像したものだ。ところが映画製作以前から関市とイロハ社は関係、すなわち癒着があったならばどうか? 同社が補助金を返還すれば解決とはいかなくなる。

地元紙『岐阜新聞』(2021年3月12日)は「水発電機、災害時に活用 板取川流域観光案内所 東京の企業が貸与」と報じた。「Aqua Power Energy」社の森俊哉社長が災害時の非常用電源を寄贈するというニュースだ。

記事には渦中のシン・ベートーヴェンこと新原光晴氏が登場する。当時、新原氏は映画製作団体ではなく「板取川流域観光案内所SEKIMORI」の運営者として紹介された。

この寄贈も出来レースが疑われる。『現代ビジネス』(4月3日)でも「新原はAIを活用した「メタバース不動産」の取締役CSOも務めており、そちらの代表取締役・森俊哉は塩水で発熱できる水発電機を案内所に寄贈した「Aqua Power Energy」の経営者という顔を持つ」と指摘された。つまり新原氏と森社長は仲間である。寄贈というニュースも白々しい。

2021年3月12日岐阜新聞より。

同観光案内所所在地は映像作品撮影事業補助金の申請書類の住所と同一。観光案内所がイロハ社の拠点であるとは前回記事でも紹介した。

そしてある市関係者はこう疑問を投げかける。

「市の斡旋でイロハ社は2020年に『板取川流域観光案内所SEKIMORI』『いろは 風のとおり道』を開業しました。本来、イロハ社は観光案内所の運営者にすぎません。それが突如、映画製作に関与したわけです。当初は映画企画は1本で進行する予定でしたが、なぜか実績の乏しいイロハ社が審査に通りました」

一介の施設管理業者が映画を作るとは不思議。

一方、芸能事務所「タイタン」の太田光代代表取締役社長が総指揮をとった映画『怪獣ヤロウ!』も同補助金を受けて作られた。制作体制も整っておりスタッフ、キャストには岐阜出身者が並ぶ。ご当地映画というに相応しい内容だ。それに地元の映画館でも上映されており補助金の条件を満たしている。

それに比べて『名もなき池』はお粗末というレベルではない。

イロハ社が最初に映像作品撮影事業補助金を申請したのは2023年5月19日のこと。補助金の申請以前からイロハ社と関市は利害関係があったのだ。そもそも兵庫県に本社があるイロハ社がなぜ突如、板取に観光案内所を運営できたのか不可解である。

これまでの経緯からしてイロハ社に映画製作能力があったとは到底思えない。『名もなき池』騒動は起こるべくして起こったとしか言いようがないのだ。そうした視点で本稿を読み進めていくと、現場の異様さが理解してもらえるだろう。

クラウドファンディングや企業協賛金でも集金

前回の記事はこちら。

【関市】映画『名もなき池』騒動 当初キャストは新東名事故〝お騒がせ芸能人〟の広末涼子だった!

騒動になった映画『名もなき池』。当初は『はもん』というタイトルで永瀬正敏、柄本明、宮崎美子、前田敦子、そして新東名事故と暴行事件でスキャンダル渦中の広末涼子らが候補だった。

いずれも知名度がある俳優陣だが関市へのプレゼンで有利になるため〝ダミー〟の可能性が高い。前回は1期目の補助金交付までをレポートしたが今回は2期目の補助金申請からをお伝えしよう。昨年4月から製作サイドが怪しくなってきた。

名もなき池。

今月4日、名古屋市内で『名もなき池』の監督、「シン・ベートーヴェン」こと新原光晴氏が記者会見に応じて補助金の返還には応じないと明言した。「契約を解除されるほどの重大な行為はなかった」などと強調したが、筆者が入手した関連文書からは撮影陣の杜撰さが伝わってくる。

前回指摘した通り、当初から補助金狙いで企画されたのではないか。そんな疑問が払拭できない。下記の資料をご覧いただこう。イロハ社は2023年6月、2024年4月の2回合計2千万円を市から交付。またクラウドファンディングと企業協賛金でも2千万円超の資金を得た。となると一般の寄付者、企業に対しても謝罪、説明が必要ではないか。

2023年6月に交付された補助金1千万円(第1期分)。
2024年4月に交付された補助金(2期目)。
最初に提出された収支報告書(23年6月1日~24年3月29日)。
2度目の収支報告書(24年6月1日~25年3月1日)。

本当に出演交渉したのか?今度は寺島進、安田顕が候補

2期目の補助金申請書には従来の仮タイトル『はもん』に「モネの池」という文言が加えられた。副題なのか謎だ。そして唐突にタイトルや当初キャスト候補が変わった。

それが『刀鍛冶映画 名もなき池』。関市にちなんだワードを並べただけ。制作陣のプロフィールはいかにもな〝クリエーター感〟が醸し出されるがその割にセンスを感じない。

また驚いたのはキャストが大幅に変更したこと。今度は北野武監督作品でも常連の寺島進、安田顕といった名バイプレーヤーである。人気、知名度は申し分ない俳優だ。それからキャストは大幅に変更したが、広末涼子だけは継続。

結果はもちろん前回のキャストも寺島、安田、広末3氏ともに映画には出演していない。そもそも候補というだけならどんな俳優でも名を挙げられるのではないか。

ただしドラマ、映画の主役の常連クラスでは信憑性に欠ける。ここまで挙がった俳優陣は有名で実力派ではあるがいわゆる助演俳優たちだ。役所側に〝出演はありえそう〟と思わせるキャストを意図的に選んだ気がしてならない。

またこうしたロケツーリズムを前提にした作品の場合、何名かは岐阜県(特に関市)にゆかりがある俳優・タレントの起用があってもおかしくない。そうした話題作りすらないのが不思議だ。

俳優陣が刷新。
前回に続いて広末涼子は候補。

昨年10月4日、イロハ社の系谷瞳社長名で「関市映像作品撮影事業補助金交付申請変更等承認申請書」が提出された。前回もお伝えした通り、恵水流生監督が交代することが関市に報告されたのだ。変更内容としてこう述べている。

監督・脚本を新原光晴に変更。変更に伴う映画製作の企画意図や効果については、申請通りの内容に一切の変更はありません。監督変更に合わせ、脚本の見直しキャスティングの変更を一部行いますが、以前の計画内容より大幅に良い脚本・キャスティングにする為、制作上最も必要であり、また本企画の意図に添った、映画製作に必要と判断しましたので、申請いたします。(*原文ママ)

また監督の理由についてはこう報告した。

監督変更の理由について、恵水氏による本件キャストとのトラブル等が発生し、現在恵水氏側と弁護士を立て対処を行っており、撮影は疎か映画製作自体に大きな支障があり、大幅な制作スケジュールの遅れを招いていることです。また、現在トラブルとなったキャストは芸能事務所退所となるなど正常なキャスティングが恵水監督の影響により行えず、今後このような状況で製作に関わる状況を続けることは、関市を舞台にした本作品の価値を著しく損なっており、何としても避けたい現状です。また、今後も監督を恵水氏で製作した場合、損害賠償請求などに発展する可能性も否めない為、関市の皆様にご迷惑をお掛けするだけではなく本作品の意図を著しく逸脱する為、現段階での監督等の変更が主な理由です。(*原文ママ)

「前の計画内容より大幅に良い脚本・キャスティング」というくだりは後のために着目頂きたい。それから監督交代の理由について「今後このような状況で製作に関わる状況を続けることは、関市を舞台にした本作品の価値を著しく損なっており」(状況で製作に関わる状況という表現も変だ)「今後も監督を恵水氏で製作した場合、損害賠償請求などに発展する可能性も否めない為、関市の皆様にご迷惑をお掛けする」などの説明も見逃せない。

昨年9月、関市が補助金返還に言及する

現場の失態にも関わらず交代を認めないと関市にも不利益だと言わんばかりの態度。「釈明」というよりも「要求」「押し付け」に見えてしまう。イロハ社側は恵水監督交代によって脚本・キャストが向上するとの主張だが、その結果はどうなったのか。

また俳優陣には失礼ながら「大幅に良いキャスティング」と言えるのか。主演の伊達直斗氏はマルチタレントとして活躍中だが、これまで名が挙がった俳優陣より明らかに格落ちだ。

五代高之氏は『太陽戦隊サンバルカン』の2代目バル・イーグル役。半田健人氏は『仮面ライダー555』で主演。特撮マニア向け?
虎ノ門ニュースでお馴染みの「米粒写経」の居島一平氏も名が挙がった。

次いでストーリーはより良い内容になったのか。これも疑問が残る。

世界三大刃物のまちである岐阜県関市この町の経済は現在においても刃物メーカーによるところが大きい町、ここには今も日本の伝統文化を守る刀鍛冶『刀匠』が刀を作っている。若くして妻を亡くしたことで、娘とのコミュニケーションもうまく出来ず、作る刀にも魂が入らない日々が続く。娘はどこにも味方がいないと思って生きているが職人の家に生まれ、母も早くに失くし一生をここで終わると思っている。娘の心のよりどころはバイト先の魂を奪われる池『名もなき池(通称モネの池)』を眺めること。そして、娘を心から支えてくれるお店の店長とたまたま店を訪れて絵を教えてくれた画家さん、親友との葛藤。そして、外の世界を知り羽ばたきたいと考えるようになる。そんな時、弟子を頑なに拒んでいた父が師匠から無理やり弟子を押し付けられる。娘ともうまくいっていない中、弟子たちを育てることが出来るのか。様々な人たちとのかかわりから家庭よりも日本の伝統文化を守る頑固な父と娘との関係、娘の将来、そして昔のように魂の入った刀を取り戻すことが出来るのか。

このあらすじに興味が持てるか?

初期構想の『はもん』(仮)を踏襲した内容だ。ストーリー、作風ともに大差はない。それにこのあらすじを読んで「観たい」と思える市民はどの程度いるのだろう。

同じく「関市映像作品撮影事業補助金」を利用して制作された『怪獣ヤロウ!』は明快なコメディだ。プロモーション映像からしても「面白い」と思わせる要素に満ちている。逆に『名もなき池』は「悩める主人公ならばストーリー性が高い」という浅はかさを感じてしまうのだ。

それでもまだ話題性がある俳優が出演すれば作品も輝くかもしれない。しかし実際に起用されたのは当初の候補とは大幅に異なっている。本当に新原氏らイロハ社は出演交渉をしたのかすら疑わしい。俳優の名前を挙げるだけならば簡単なことだ。

市関係者によれば「伊達氏らのキャストが正式に決まった昨年〝最初に提案された俳優陣たちとあまりに違う〟と問題になったのです」と明かす。

そこでついに市が動いた。昨年9月18日、関市は「関市映像作品撮影事業補助金交付の対応について」と通知文をイロハ社に発した。

①映画製作監督の変更など、当初計画(応募時の審査対象となった内容)から大きく変更が生じたとき

②年度内の公開がスケジュール的に困難であると判明した時に(年内に撮影が完了しない場合)

①と②が守られない場合は補助金の返還を求めた。もともと関市映像作品撮影事業補助金交付要綱によれば「初めて補助金の交付を受けた日が属する年度の翌年度の3月31日までに映像作品を国内の映画館で上映すること」とある。

つまり今年3月31日までに映画館で上映することが条件だった。だが期限数カ月前で監督交代や出演俳優も変更している状態である。スケジュール通り製作が進んでいるのか市が促すのも当然だろう。

次いで11月22日、市がイロハ社に発した通知書も興味深い。

交付金の承認の条件として以下を挙げた。

・映画製作の進捗状況について適宜報告を行ってください
・当該補助金は令和7年3月31日(月)までに複数の映画館での公開が条件となるため、詳細な公開スケジュールを令和6年12月27日(金)までに報告してください
・監督を変更することになったトラブルの経緯の詳細及び経過を令和6年12月27日(金)までに報告をしてください
・変更前の監督である恵水流生氏との間で訴訟になる事案が発生や、今回のトラブルによる風評被害の発生により、映画の公開が見込まれなくなるなど、いかなる理由であれ令和7年3月31日(月)までに映画の公開ができない場合は、令和5年度に交付した補助金を含め当該補助金の返還を求めます

同様の通知文はたびたび発せられたが、イロハ社や実質的な責任者である新原氏から説明はなかったようだ。しかも昨年後半からはすでに関市と同社間でトラブルになっていることが報道された。今年に入るとさらに関市からの通知文は厳格になっていく。

1月10日の通知文には「*令和7年1月24日までに書面にて報告願います」と強調されていた。

内部では支払いのトラブルをめぐり関市に関係業者らから問い合わせがあったという。また出演者から撮影現場でセクハラの訴えもあったとの情報が入り、市側が確認に乗り出した。

行政からこれだけの文書が送付されるというのは一般企業であればかなり動揺するものだ。

ところが問い合わせに対してイロハ社は完全にスルー。まるで悪質な盛り土業者や産廃業者のようである。そして市からの通知は続く。3月5日にもイロハ社や撮影現場の問題点について同社に文書を送付。同日分は市が4項目の質問をしている。


①取引業者への支払いが滞っている点について②映画公開スケジュールについて③監督変更の経緯④撮影現場のセクハラ行為について。

この4項目に加えて同社関係者との面談を求めた。

この質問については同社は①について領収書等を市に送付。また公開スケジュールについては以下を挙げた。

兵庫県淡路島洲本オリオン4週間以上
シネマーゴ1週間
交渉中として
兵庫県丹波市エビスシネマ
北海道シネマトーラス
北海道シネマアイリス
北海道大黒座
群馬県シネマテークたかさき
埼玉県深谷シネマ
神戸映画資料館

シネマーゴとは正しくは関市内の「シネックスマーゴ」である。関市にちなんだ映画だから地元映画館で上映はあって然るべきだろう。ところが関市とは無関係の映画館ばかりだ。

少なくともこの並びで上映が確認できたのは先月29日の島洲本オリオンのみである。リストには挙がっていないが同29日の愛媛県松山市シネマルナティック湊町でも上映された。もちろん関市とは無関係の自治体だ。

④のセクハラ疑惑についてはこう回答した。

セクハラ行為としては当初の市からご紹介いただいた方のセクシャルハラスメント疑惑以外で制作として把握している事は、演出鋪より主演の娘役から手を握る練習をしたいといわれている。やりたくないとの報告を受け、脚本にないことだったので、そんなことはないだろうがもし、本当なら脚本にない事なので断っていただいて大丈夫と伝えた後、主演伊達直斗に確認したところそのようなことは一切言っていないしやる必要ないとの言質をとりました。そしてもう1件妻役に対して主役の伊達直斗が後ろから抱きかかえるシーンにおいて女優の胸に触ったことに対して衣装かスタイリストからあれは大丈夫でしょうかとの話が合ったので伊達直斗に確認すると衣装が滑って持ち上げられずああなってしまったとのことだったので、所属事務所社長にシーンの確認をとり、問題ありませんと頂いている2点です。

撮影中に確認でき対処した問いに該当しそうな案件です。

演出鋪とはなんだ?

イロハ社側は提出している文書は総じておかしな表現が目立つ。演出鋪とは何か。出演陣からも本作はChatGPTで脚本が書かれたと暴露されたが、こうした提出文書もAIだったのかと疑りたくなる。

最後の「撮影中に確認でき対処した問いに該当しそうな案件です」の部分はもはや意味すら通じない。これだけの事態が起きているにも関わらずよくこの回答を市に提出できたものだ。

観客からも音声の音ズレなど様々な問題が指摘されてきた。また作品の質の低さは伊達氏らキャストからも苦言されたほど。それも「令和7年3月31日(月)までに複数の映画館での公開」という条件を守った体裁を取り繕うためにクオリティ度外視で上映したのではないか。

イロハ社が非常に不誠実な対応を続けてきたのは明白。映画の完成を待望した関市民は多少なりともいたことだろう。そうした市民への裏切り行為でもある。

また補助金の返還を求める関市役所だが元を正せばイロハ社を優遇した責任は大きい。関市映像作品撮影事業補助金の選考委員会で委員長を務めたのは他でもない山下清司市長(当時、副市長)である。山下市長自身が改めて選考理由、またイロハ社との関係を説明すべきではないか。

そして同社と市の癒着疑惑についてはさらに追跡していく。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【関市】映画『名もなき池』騒動② 撮影現場は監督交代とセクハラで混乱 市とイロハ社の癒着疑惑も!」への2件のフィードバック

  1. 匿名

    そもそも、板取川流域観光案内所SEKIMORIは別の施設だったはずで行政の施設か行政に関係する施設だったような。あと、板取川温泉の指定管理を受けている企業はいろは側の紹介だったという話もあったりと、現市長・観光課とつながりが深そうですね。
    #105bc90d3be77fe9a5055de0c12f7b64

    返信
    1. Jun mishina 投稿作成者

      ありがとうございます。
      その点につきましては来週早々にも関係資料と証言を得る予定ですので随時、レポートしていきます。

      結論から申し上げると役所の大甘な対応と言わざるをえません。

      返信