桜井市豊田には64戸の部落があったとされる。産業は農業と商業。生活程度は比較的良かったようだ。

ここを訪れたのは、西日本では珍しい白山神社のある部落との前評判を聞いていたからだ。

とりあえずは墓地を訪れる。この墓地は明治時代から存在している。

宗派は浄土真宗で、奈良の部落ではよく見る中川、山口といった名字も多いが、特にこの地域で特徴的なのは藤田と堤野であろう。

この分布を地図上で検証すると、豊田という大字の範囲が部落の範囲にほぼ一致していることが分かる。

なお、今は墓地の駐車場となっている場所には火葬場があったが、ごく最近になって取り壊された。

なお、墓地の住所表記は桜井市大西になる。その周囲にある市営住宅も住所は大西。昭和50年代に、もとは田畑だった場所に建てられたものである。

掲示板には求人情報などが掲載されているが、同和だの人権だのといったものはない。

コミュニティーバスがあるが本数は少ない。

墓地のすぐ近くに小さなホルモン屋がある。残念ながらまだ開店時間ではなかったが、後述する理由でここのは絶対に美味いはずだ。

市営住宅の北の大和川にかかる橋の近くにあるのが、桜井市共同浴場。料金は300円。Googleマップの口コミを見る限り、近所の目を気にしなければ、よそから来て入ることもできるようである。

そして、この浴場から北東のブロックが昔からの部落の場所である。かつてはもっと家が密集していたであろうと考えられる。

この西福寺が部落の中心にある。

寺の周囲には細い路地があり、奥の方は空き地や廃墟が多い。

そして、この部落と言えば何と言っても食肉である。部落内や周辺にはこのような食肉卸店が多数ある。

この「ふじた食肉店」が特に名店だというので行ってきた。

しかし、平日に訪れたところ、閑散としていた。実は客が多く訪れるのは日曜日で、その時は様々な惣菜を出すのだという。ただ、平日もちゃんと店をやっていて、言えば店の奥からいろいろ出してくれる。商売上手でいろいろ買わされてしまうのでちゃんと現金を持っていこう。

この部落では、昭和初期には既に食肉産業があった。当時は村に屠場もあった。なお、屠場があった場所は現在は「高齢者ふれあい広場」になっている。

ということは、過去の記録の商業というのは食肉業だろう。生活程度が良かったのはおそらくそのためだ。

現在は屠場は廃止され、大和郡山市の屠場に統合されている。それでも、朝一番に屠場から仕入れた、一度も冷凍されていないホルモンは大人気で、各地の焼肉屋に出荷しているのだそうだ。

なお、白山神社については「別の村のもの」だそうである。ここは三輪にある大神神社（三輪神社）の氏子であり、「関西には珍しい白山神社がある部落」という前評判はガセと言わざるを得ない。

部落には隣保館もある。ここにも筆者の手配書が回っているであろうから、ひっそりと通り過ぎた。

なお、市営住宅の配置図を見つけたが、日焼けによる劣化が激しくて、よく読めなかった。