旧民主党政権で総務大臣などを歴任した立憲民主党・原口一博衆院議員の陰謀論が止まらない。オカルト雑誌のムーと見間違う主張が続く。そんな原口氏の信奉者、予備軍が集うのがグループチャットだ。中ではトンデモ話が横行するが個人情報の収集目的という疑惑がある。思い込みが強い参加者たちは利用しやすいとも。

左右を超えた オカルト言説団

SNS上では日々、保守派・野党支持者、右派左派で対立しているものだ。しかしその点、立民・原口氏は独特の立場にある。

現在、原口氏は非核を訴えるため訪米中だ。現地ではれいわ新選組・櫛渕万里共同代表、幸福実現党幹部の及川幸久氏という不思議な一団で行動している。到底、実現できそうにもない政策や目標を掲げSNSやデモで信奉者たちが歓喜させる手法で共通する面々。

そればかりか８月20日、佐賀市内で参政党・神谷宗幣参院議員と揃って街頭演説に立ったことも衝撃的だった。原口氏のライフワークは反ワクチン、反ＤＳだから参政党の理念とも一致する。原口氏は「参政党に入ろうかな」と上機嫌だった。

立憲民主党所属でありながら新興の右派政党とも交流し、一部保守派からも評価される原口氏なのだ。立民からは注意を受け日々、バッシングや批判が続くが全く意に介さない様子。それどころか発言内容はエスカレートする一方。

今月12 日に放送された自身のYouTube チャンネル「緊急ライブ！ 2024 年アメリカの崩壊はあるのか！？」でウクライナ侵攻に触れ「やっぱりだからネオナチ だから日本はネオナチ政権の後ろにいる」と発言。明らかにウクライナ政府をネオナチ政権と論じた内容だった。

現在、同日の放送は削除されたものの基本的な主張は現在も変わっていない。

原口氏には事務所を通して「ネオナチ政権とは具体的に何か」について質問状を送付したが応じる気配はなかった。

地元、佐賀事務所でも確認してみたが「議員会館事務所のスタッフが不在ということはありません」と説明した。しかし「ネオナチ発言」について応答がないのは後ろめたさがあるかもしれない。

グループチャットは あなたの知らない世界

かつては『たかじんのそこまで言って委員会』で「闇の組織と戦っている」と発言。もともとその気がある人物だったが特に最近は陰謀説が強烈になっている。DS、反ワクチンを訴える保守系団体については過去でもレポートしてきた。政党、主張は異なるものの原口氏とオカルト系保守の相性は悪くない。

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おそらく立民支持者からも原口氏に対して「幻滅」という向きも少なくないだろう。一体、誰が今、原口氏を支持しているのだろうか。もちろんネット住民ということになる。

各種SNSで支持者は散見されるが、特徴的なのは反ワクチン支持者らが運営しているグループチャットだ。LINEなどのアプリで誰でも参加可能。なにしろ膨大な投稿が日々、アップされている。内容は推して知るべし、だ。常軌を逸した言説がまかり通る。

「論理の飛躍」というレベルではない。「コロナワクチンの開発にヒトの胎児細胞が使われる理由」（2021年12月13日、日本経済新聞）というニュースが報道された。するとなぜか胎児細胞が転用させているとう主張する。

ケチャップ、ソース、インスタントラーメン、ガムに胎児細胞が使用されていると訴える。グループチャット内部でこうした主張に対して疑義が向けられるわけではない。むしろ発言内容が奇異であればあるほど信奉者たちは「真実」と受け止める。

一般的な医薬については否定するが、自然治癒、波動といった民間医療に対しては全幅の信頼を寄せていた。

著名人の死は問答無用でワクチン接種と関連付けてしまう。人気落語家の笑福亭鶴瓶氏は今月17日のラジオ番組で姉、兄を亡くしていたことを公表。ところがこうしたニュースもワクチン接種が原因だと拡散する。

とにかく異様な言説の世界が広がる。それが反ワクチンのオープンチャット。常に「監視されている」「狙われている」という強迫観念に囚われてはいないか。しかし冷静になって考えてもらいたい。実は本当のリスクは内にあるということ、を。

無意味な 署名、それは個人情報の 収集では？

こうしたチャットやネットの交流で情報を得ると「覚醒した」という。しかし少なからず「逆覚醒」する人もいる。ぜひ判断能力を取り戻してもらいたいもの。

老婆心ながら警鐘を鳴らしておきたい。

アスカ（仮名）さんもやはり反ワクチン、国際問題のオープンチャットに参加した一人だ。しかしある時期から内容に疑問を抱き始めたという。

「署名が怪しいんです。例えば離島を守る、LGBT法反対、いろいろな署名が呼びかけられます。インボイス反対の署名ならばマスコミがこぞって取り上げてくれるでしょ。でもオープンチャット内で呼びかけられる署名は絶対に実現不可能なものばかり。意味がないんです。それに署名のとりまとめが特定個人だったり、中には自然食品など物販している団体ということもあります。個人情報がどう扱われているのか心配で…」

妙なものだ。普段は「監視されている」「ICチップが埋め込まれる」という懸念をしている面々が署名には気軽に応じる。反ワクチン、反DSを唱えれば誰もが正義の戦士と考えているのだ。

「超監視都市スーパーシティが作られる」「DSの監視」

こう訴える割に自身の情報を進んで提供するというのは単純に判断能力の欠如にすぎない。メンタルもユルい上に財布の紐もユルユルという。「勧められるままに高額な波動測定器を購入する人も」(アスカ氏)。波動、無農薬、電磁波保護、免疫力、こんな枕詞がつけば思考停止に陥る人々なのだ。

約３年に渡るコロナ禍でもたらしたのは情報に振り回される人々だとすればあまりもの悲劇である。