「二階（俊博）さん何かあったんですか？」。今月９日まで著者のもとに自民党・二階俊博元幹事長の安否に関する問い合わせが相次いだ。そこでSNSなどを確認すると、コロナウイルス感染による二階氏死亡説が飛び交っていた。明確なソースがなく一見して「デマ」だが拡散されている。そこで直ちに我々、「新日本ファクトチェックセンター」（本部／川崎市多摩区）が二階氏死亡デマを検証した。

和歌山知事選、岸本周平候補 出陣式の 前日に

GoogleとYahoo! Japanから出資を受け今年９月に開設された「日本ファクトチェックセンター」だが現状は右派ネットユーザー狩りと周回遅れの噂話検証の域を出ない。

そこで故・アントニオ猪木を敬愛する著者がストロングスタイルのファクトチェックを世に示すため「新日本ファクトチェックセンター」を創設した。

そして今回、注目したのが二階氏デマ。

今月５日、二階氏がコロナウイルスに感染したと報道された。感染自体は事実だが、「死亡」はデマ。なにしろ二階氏といえば親中派議員の筆頭格。アンチ二階、反中と思しき面々がコロナ感染を「死亡」として広めたようだ。また報道では二階氏が４回、コロナワクチンを接種していたことから反ワクチンの活動家らが「効果なし」と色めきだったのである。

つまり二階死亡説の裏側には反中、反ワクチンの２つが影響した。

🚨 二階元幹事長がコロナ感染
2022年11月5日 17時17分 
自民党の二階元幹事長が新型コロナウイルスに感染、死亡確認されました🙏
6日から静岡県内で研修会を行う予定でしたが、二階氏が出席できないことから、研修会を宴会に変更の方向で調整している。
御愁傷様です🙏😂 pic.twitter.com/uKD6U9Vcab

— 橋広バロン幸之助🇯🇵MJGA💫 (@hasibiro_maga) November 5, 2022

しかし今回の死亡デマはもう一つ別の憶測も飛び交った。それは当サイトも長らく報じてきた和歌山県知事選と関係する。自民党が推薦する元国民民主党衆議院議員、岸本周平候補の出陣式が10日に控えており、二階氏も登壇するとの情報があった。

つまり何者かが二階氏死亡デマを広めて出陣式を揺さぶろうというものだ。とすれば非常によくできた政治工作だが、投稿主や賛同者を見てもそのような「策謀」に関与するユーザーとは考えにくい。５日にコロナ感染を発表、10日に出陣式だからあまりによくできたタイミングがゆえに生じた憶測だろう。

だが10日、二階氏は無事、出陣式に登壇した。

二階氏は もちろん健在、しかし老いは 否めず

このところ二階氏の健康状態について報道関係者の間でもしばし話題になってきた。さすがに政界のドンも寄る年波には勝てぬ。党要職から離れたが存在感はさすがである。

10日午前10時、JR和歌山駅で岸本周平候補の出陣式が開催された。

現場にいた地元関係者は当日の様子をこう話す。

「聴衆は500人ぐらいだったと思います。とにかく驚いたのは私服、制服問わず警官が多数、配置されていたことです。スマートフォンを取り出そうとした人が職質されたり、写真を撮った人を追跡したり異様な雰囲気を感じましたね」

もちろん奈良市で起きた安倍元首相暗殺が影響してのことだろう。暗殺事件は警備体制にも強い批判が起きた。そこで隣の和歌山でトラブルが発生しては警察の面目丸つぶれどころではない。

また地元記者によると警察が過敏になるのは裏事情があるという。

「闘神雑賀孫市和尚を名乗る尾園晋造というYouTuberが実況中継で和歌山県警に“電凸 ”を繰り返していたんです。すでに動画は削除されていますが、県警本部長も激怒したと聞いています」

過去の活動をみても「ローンウルフ」を想起させる人物。こうしたネット活動家に触発され、何者かがコトを起こさないかとの懸念があったかもしれない。

さて出陣式はまさに“ オール和歌山”といった布陣だ。

「選対本部長として尾花正啓和歌山市長、また仁坂吉伸県知事、二階氏、鶴保庸介参議院議員、世耕弘成参議院議員、立憲民主党・国民民主党関係者から部落解放同盟和歌山県連、連合まで自民系、旧民主系が勢揃いでした」（前同）

解放同盟が現場にいることが有権者へどの程度、プラスに作用するのか分からない。ここ数年、共産党を含めた野党連合が叫ばれた中で和歌山知事選は明確な“共産党外し ”である。このことは今後、野党連合にどう影響するのか注目だ。

足元がおぼつかない 二階氏、誰よりも声が 大きかった世耕氏

死亡デマが広まった二階氏だが岸本氏の応援演説に登壇。

「二階さんは和歌山のために一致団結してやろう、と当たり障りない話を２分ほど話しました。選挙カーに乗る時は職員が前後を固めてサポートしていましたよ」（前出地元関係者）

死亡はデマだが、歩行は決して軽快ではない。ただ５日、コロナ感染が報じられた二階氏が10日の出陣式に参加したことは疑問だ。外出制限はなかったのか。

自民党和歌山県連に確認すると「すでに陰性ということで出陣式の参加は問題ありませんでした」と説明する。

病み上がりでも出陣式に参加した意欲と行動力は見上げたもの、と思いたいが和歌山自民の事情を考えると“ 参加せざるを得ない”面もある。

そこで注目したいのが世耕氏。

「演説は二階氏、鶴保氏、世耕氏の順番。本来、党の序列的には鶴保氏より世耕氏が先のはずなんですがね（笑）。やはり遺恨があったんでしょうか」（前出記者）

【政局】仁義なき 和歌山県知事選 小谷氏擁立はドン 二階＆世耕の 大芝居だった！

遺恨とは知事選を候補者の選定をめぐり世耕氏と鶴保氏の間で亀裂が生じた。国民民主党内で存在感が薄い岸本氏を知事選に担ぎ出し、和歌山一区に自民党候補を送り込むというのが当初からの自民の狙い。

岸本氏も年齢からして知事選ポストは魅力的で、双方の利害が一致したわけだ。

ただ問題は来年、予定される和歌山一区補選に自民党から誰が出馬するか？　これも火種として残る。

「世耕氏、鶴保氏、参議院議員から衆院一区への鞍替えはありえます。また出陣式では姿を確認できませんでしたが前衆議院議員の門博文氏も補選出馬に意欲満々です」（同前）

過去の衆院選で門氏は一度も岸本氏に勝てなかった。本来は出陣式でこの話題は“ タブー”と思いきや事情は違った。

「世耕さんは登壇した中で一番声が大きかったです。存在感を示したかったのでしょうか。“（岸本氏は）門氏とも長らく戦ってきた ”と話しましたが、“ それを言うなよ”と不満を口にする参加者もいました（笑）」（前出関係者）

確かにこの場で門氏の名を出すのは“酷 ”というもの。岸本ー門両氏にとってもバツが悪い

門氏の父、門三佐博氏は二階元幹事長の盟友。選挙区で勝てない門氏が国交省政務官のポストを得たのも無論、二階氏の力によるもの。

加えて二階氏は自身の三男、伸康氏の後継者問題がある。つまり盟友の息子と三男の処遇を決めない限り倒れるわけにはいかない。病み上がりの出陣式にはそんな強い思いがある。

というわけで二階氏死亡は悪質な「デマ」。政界のドンはコロナ感染でも負けられない事情があるのだ。