統一教会報道で弱り目に祟り目の自民党。しかし選挙戦術の狡猾さは他党の追随を許さない。NHKが訳アリ明白の“ 報道しない自由”を行使する和歌山県知事選(11月27日投開票)で自民党県連が青森県総務部長・小谷知也氏推薦を見送る公算大だ。マスコミ報道ではその背景を自民党和歌山県連会長・二階俊博元幹事長VS会長代行・世耕弘成参院幹事長の抗争として描かれるが、二階ー世耕両氏の大芝居に“ 乗せられた”ことをご存じだろうか。結果的に自民一人勝ちの内幕をお伝えしよう。
9月3日の総会で 小谷氏のユルい ビデオメッセージ
恥ずかしながらかくいう著者も当初は、二階VS世耕という図式だと考えた。だが肝心な事を見逃していたのは反省点。ドン二階氏は高齢で後は三男、伸康氏を国政に送り出すことが大命題である。いずれ和歌山県連重鎮になるであろう世耕氏と対立しても何の得もない。この背景については【和歌山県】仁坂知事5選断念! VS 二階俊博“ に・に戦争”は痛み分けで指摘した。
確かに二階・世耕の対立関係は描きやすい上に刺激的だ。読者の関心を引く近道だろう。ただそれは社会的イメージの“ まとめ記事”の範囲を出ない。
二階・世耕氏が「代理戦争」 和歌山知事選で自民対応混迷(時事通信9月14日)
二階vs世耕の代理戦争となった知事選が岸田政権を左右する理由(ダイヤモンドオンライン9月9日)
不可解ではないか? 県連が総会で決定しHP上でも堂々と名前を挙げている。それが数日後には「見送り」というのは不自然だ。県連の決定とはかくも軽々しいものか。しかし小谷氏はハナから「ダミー候補」とすれば整合性がつく。
先の9月3日の県連総会を再度、取材・点検してみた。小谷氏擁立に疑問を持つ県連関係者の証言。
「総会では小谷氏のビデオメッセージが流されました。しかし生まれや出身大学、職歴といった簡単なもの。本気であれば知事選への抱負だとか政策を語るでしょ。本気度が伝わってこなかったのです」
小谷氏にとっては知事選候補としてのお披露目式だから政治理念を主張する重要な場。ところが“エントリーシート ”ですらない自己紹介に留まった。総会では「国会議員しか(小谷氏を)知らないから県連全体で共有してからでも遅くない」という反対意見も。ところが押し切る形で小谷氏推薦が決まった。
総会の内幕は「奥サマのNHK? 和歌山知事選 自民候補を報じない NHK和歌山は“ 岸本周平妻デスク”への 忖度だ!」(9月9日)でも触れたが、知事選に立候補している岸本周平氏を推した鶴保庸介参議院議員が総会で沈黙したこと。これには大きな意味があった。
8月12日に都内で二階、世耕、石田の三者会談
政界のドン、二階氏といずれは県連、安倍派重鎮と目される世耕氏の対立構図は確かに面白い。和歌山知事選が全国ニュースとして扱われるのは二階ー世耕代理戦争という見方があるからだ。
しかしそれは大きな誤り。むしろ報道各社が二階氏らが描いたシナリオに“踊らされた ”とさえ言えるのだ。
「世耕家は旧熊野川町(現新宮市)がルーツ。世耕氏は知名度があるものの、県西部の地盤が弱いから御坊市に事務所を置いています。御坊市とは二階氏のお膝元。仮に二階氏と本気で対立していれば許すはずがない。もちろん二階氏も納得の上でのことです」(前出県連関係者)
また二階氏は闇雲に政敵を作る人物ではないと地元記者は強調する。
「二階氏と親しい和歌山出身の元民主党国会議員が姫井由美子元参議院議員を引き合わせたことがありました。姫井氏は“あれほど大きな人物はいない ”と二階氏に感銘を受けたといいます。賛否はともかく二階氏が懐が広いのは確かでしょう」
そこがドンたるゆえんだが、つまり好んで「対立」を選ぶような人物ではなくむしろ「引き込む」ことを得意にする人物という訳だ。
現在の「二階ー世耕代理戦争」という報はむしろ二階氏にとってはしてやったりかもしれない。
二階氏に近い県関係者もこうした対立劇を否定し、小谷氏推薦のプロセスを明かす。
「実は8月12日に都内で二階氏、世耕氏、石田(真敏)氏の三者会談が行われました。世耕氏が“ 総務省官僚で青森県庁総務部長の小谷知也を知事選候補に推したい”と提案しました。二階氏も“ それでいい”という反応だったと聞いています。その場では同じく総務省官僚の東宣行氏(市原市副市長)の名前も挙がりました。ただし東氏については“様々な人材を精査しました ”という意味のダミーなんです」
だが今に至っては当の小谷氏が「ダミー」だったとは県連幹部、所属議員らも想像しなかったであろう。それはある人物も同様に。
県自民党員の話。
「この会談に本来は鶴保氏が呼ばれてもおかしくない。意図的に“ 外された”のです。その前に鶴保氏はモンゴルに外遊しており現地で風邪を引きました。コロナ感染ではないけれど、大事をとって自宅待機していたのです。それが8月12日前後のこと。つまり鶴保氏が出席できない日を狙い撃ちで会談をセッティングしました」
鶴保氏は岸本氏の“窓口役 ”だ。その役割上、「小谷氏推薦」を知られては都合が悪い。そもそも岸本氏は二階派入りが取沙汰されるなど関係は至って良好。にも関わらずまるで梯子外しになるのは不思議だ。
その狙いは岸本潰しではなく「岸本党潰し」。県連の一部からこれまで辛酸を舐めさせられてきた外様の岸本氏を担ぐのはおかしいとの意見が起きた。確かにこの心境は理解できる。2012年、旧民主党の逆風の中でも岸本氏は一区の議席を守ったのはまさに快挙。
その原動力が「岸本党」と呼ばれる強い支持者たちなのだ。岸本党は参院選になれば世耕氏に投票する場合もあり単純に親自民・反自民では割り切れない。
中西啓介元防衛庁長官以来の 県内保守傍流
岸本氏潰しではなく「岸本党潰し」とは県外から理解しにくい事象だ。先述した通り、岸本党とはこれまで一区の議席を守り抜いた強い支持グループ。岸本党の中心には県有数企業の資材メーカーM社がいる。
「岸本氏は官僚時代から中西啓介元防衛庁長官に可愛がられていました。中西氏はM社と懇意にしていたことからそれを岸本氏が継承したわけです。中西氏と岸本氏は県内トップクラスの和歌山県立桐蔭高等学校OB。その点もウマがあったのでしょう」
またもう一人、和歌山出身の小村武元大蔵省事務次官(県立星林高校→東大)も連なる重要人物だ。余談だが小村元事務次官は「大蔵省接待汚職事件」(1998年)いわゆるノーパンしゃぶしゃぶ事件の渦中の人。県出身の要人たちともパイプがあり本来ならば岸本氏は、自民党から出馬というのが既定路線。それが叶わなかったのは単純に中西氏が自民党を出たことである。
しかし幸か不幸か中西氏以来の県内保守人脈を岸本氏は継いだ。でもなければ長年、一区の議席を守ることはできなかった。
このため自民党和歌山県連の中には「知事選は党派と別問題。岸本氏は立派な保守政治家だ、と評価する人もいます」(前出記者)という背景もあり、自民党系候補として有力視された。
ただ一区が岸本氏一人勝ちだったのは汚点。しかもその傾向は先の和歌山市議選(定数2)でも顕著だ。
「維新候補がトップ当選で、自民党補は次点。本来はありえないことです。これは維新人気というよりも“岸本党 ”の票が流れたからです。岸本さんは維新と仲がいいから(笑)」(地元事情通)
県幹部がやはり「岸本党は目の上の瘤」と感じたのは言うまでもない。
そこで打ったのが小谷氏推薦だ。
自民党総どりで 衆院補選にも弾みがついた
和歌山県町村会も早々に「岸本支持」を決めた。これには二階氏の指示があったと目される。しかし「いずれにしても町村会は二階支持派。岸本支持は理事会で決まりましたが、理事に加わっていない首長もいます。対外的には他の首長の意見も聞いた上、としていますがどの道、二階氏の意向は優先事項です」(前出県連関係者)
しかし一方で二階氏は小谷氏推薦も了承している。非常に不可解だ。
「つまり県全体で岸本支持=自民党派という雰囲気を作って岸本党内の自民派を根こそぎ引っ張ろうというわけです。小谷氏推薦はアンチ岸本への一種のポーズで“ 皆さんの不満もよく分かる”という懐柔策なんです」(同)
この流れは自民党の戦略勝ちと評する他ない。まず何よりも一区から仇敵の岸本氏を追い出した。仮にこのまま知事選が進めばまず岸本氏優勢。岸本氏としても県知事のイスは目前だが、しかしキャスティングボートは自民党が握る。今回、岸本氏が知事選に当選したとしても自民にすれば“逆らえば若い小谷がいるぞ ”と圧をかけられる。
また岸本党にしても岸本知事誕生に協力してもらった以上、自民とも関係を保つ必要がある。
「岸本党の中には業者や団体もいます。公共事業や指定管理者といった利権上、岸本ー自民の関係に相乗りした方が得と考えるでしょう」(前出地元記者)
さらにこの効果は来年の衆院補選にも影響する。
「岸本さんの手前があるから岸本党としても補選で自民候補に投票せざるを得ません。仮に維新候補が出た場合、門博文前衆議院議員では弱いかもしれない。その時は世耕氏が名乗りを挙げる可能性もありますね」(前同)
3日の総会以来、大手紙・地元紙が追跡中というが岸本氏のコメントが伝わらない。ただ周辺情報では、小谷氏推薦に不満というよりも自民党が完全に主導権を持ったことに激怒しているという。
つまり二階VS世耕という対立劇にメディアは踊らされた一方で“ 自民党総どり”という現実があるのだ。大芝居と銘打った理由がご理解頂けただろうか。狡猾、なりふり構わず、どっちらけ、評価は様々だろうが巧みな選挙戦術は恐れ入る。現在、統一教会の選挙協力が槍玉に挙げられるが仮に教団票が消滅したところで野党が勝てるとは思えない。
珍妙なパフォーマンス、労働組合の動員、SNS上だけの盛り上がっている感、こういった運動に終始する野党諸氏は大芝居の巧みさを学んだ方がいいだろう。
さてもう一点、追記しておくことがある。実は本稿はあるマスコミに向けて書いたものだ。現在、NHKに対して小谷氏推薦を報じなかったことについて説明を求めている。現在まで無回答なのでNHK広報局に確認したところ「報道ガイドラインに沿っている」との説明を受けた(音声は録音済)。
なるほど岸本氏妻がNHKデスクという事情ではなく「報道ガイドライン」らしい。このコメントはぜひ有権者、読者各位にも記憶に留めおかれ、和歌山知事選のNHK報道を注目してもらいたい。
関係のない投稿なんとかしてください。
スレが伸びて本来のコメントが埋没してしまうよ。
面倒でしょうが削除するか書き込み禁止にできないのでしょうか?
いつも訳のわからん理屈をこねるけどこの記事に興味を持って見る人にとっては普通に荒らしとしか思えません。
この見立だと二階さんって本当策士ですね。安倍さんも政権で批判あっても幹事長を続けさせただけありますね。世耕さんも学ぶ事多いだろうなと思います。鞍替えするんすかね?このまま参議院のボス化していくのも良い感じもしますけど。
岸本さんなぜ強いのか不思議でしたが、M社ですか。合点がいきました。
ありがとうございます。
記事と違って申し訳ありませんが
世耕さんはおそらく新2区ではないかと予想します。
ただチャンスがあれば1区という可能性も排除できないし
維新が強いので場合によって1区に参戦もありえます。
岸本党の解体は注目でしょう。
もう解体は必須という状態ですから。
岸本さんに追随して岸本派として自民党にどれくらい行くか?
もともと岸本党には自民、公明支持も少なくないから、
1区補選に門前衆議院議員が出れば、門支持にどれくらい行くかも注目でしょうね。
維新に流れるのもいるが、どれくらいだろうか?
ここも一つのポイント。
自民、維新に行けないのも岸本党にはいる。
これは、立憲民主党に流れるのか?
国民民主党にとどまるのはかなり少ないかもしれない。
お詳しいですね。
その点ですが私が見聞した範囲ですのであくまで「推定」として
お話します。
岸本党の比率ですが
1,旧民主系右派+連合系50%
2,市民派&リベラル層30%
3,土着型保守10%
4,岸本氏個人への支持者10%
あくまで皮膚感覚ですがこんな印象があります。
1ですが連合が岸本さんの支持を決めたのは既報です。
ここで重要なのが和歌山の労組票は関電系、基幹労連が中心でこの層は
民主党右派とも合致しますので主力部隊ではないかと思います。
2は非自民、非共産党のリベラル層です。和歌山の解放同盟は自民党とも近い
ですが選挙では岸本支持だと予想します。
3は単純に業者さんとかあるいは非自民の古参の保守層ではないかと。
4はイデオロギーというか岸本ファンといった人々です。
地方の場合、高校人脈というのは意外と選挙に影響します。
例えば宮城県で言うと仙台一高、二高、旧宮城県第二女子出身というのが
かなり幅を利かせます。
桐蔭高校出身の岸本さんにもこうした地方の事情票が混入しているのでは
ないでしょうか。
このうち今回の知事選で少なくとも1と3、あるい4の一部票は自民に流れると予想します。
このままいくと岸本知事誕生ですから、来年の衆院補選にも岸本党の
いくつかが自民系候補に流れます。ただし維新候補の立候補も予定されており
どちらを選ぶか、ですね。
ここで「岸本仮知事」が自民の操り人形じゃないと気概を見せれば
岸本党票はあるいは「維新」にという可能性はありますね。
それから現状は門博文氏が衆院補選の可能性がありますが
さすがにもう往生際が悪い気がしますね。鶴保さんも色気があったみたいですが
完全に消えたのは記事中の扱いをみてもらえば(笑)