【検証 トランプ応援 デモ】背後に蠢く 新興宗教の怪

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By Jun mishina

不正選挙、選挙妨害…様々な憶測や陰謀論が飛び交った米大統領選。すったもんだの末、20日(日本時間21日)に第46代アメリカ合衆国大統領に就くジョー・バイデン氏の就任式が行われた。現地では熱狂的なトランプ氏支持者による米連邦議会議事堂襲撃事件も発生したこともあり厳戒態勢。一方、トランプ応援、支持は日本国内にも波及し、昨年末から各地で応援デモが開催されてきた。デモ参加者の大半はいわゆる「保守派」の面々だが、その中心には幸福の科学、日本サンクチュアリ協会といった新興宗教の存在がある。

星条旗、日の丸が乱立する光景

トランプサポートインジャパンの古山貴朗氏。応援デモの主催者の一人であり、幸福の科学の信者でもある。
昨年12月23日、大阪・靭公園の応援デモ。
反中をうたったスローガンも。

トランプ応援デモ、トランプ支持は保守派にとってもはや“ 異端審問”になった感すらある。トランプ支持でなければ「バイデン支持」「裏切り者」のそしりを免れない。トランプ氏がまるで精神的支柱だ。国境を超え市民を熱狂させるドナルド・トランプという人物は特異な政治家だったとも言える。

デモ終了後は記念撮影。
新中国の存在についてはいずれレポートする。

特徴的なことは「トランプ応援デモ」はいわゆる保守派デモとやや毛並みが違うように思えた。通常の保守派のデモや集会、例えば反中、反韓国、慰安婦問題等、歴史認識をベースにした場合、例えば「チャンネル桜」などの保守系メディアや団体が主催するものだ。そして参加者は男性が中心で年齢層は高い、かつならず者風情の男性も散見される。

しかしトランプ応援デモの場合、典型的な「保守色」を感じさせない。赤いトランプキャップとシャツで統一されている。適度に“小ぎれい ”といった体で若い男女も多い。実際に話してみるとその大半が東アジア出身の外国人、または法輪功のボランティアだ。

会場に設置されたメッセージボードを見ると「加油」「新中国」といった書き込みが目立つ。またチベット、内モンゴル自治区、ウイグル、こうした地域の出身者、支援者らも参加。こうした参加者から見ても単純に「トランプ応援」ではなく「反中国」の色が濃い。

内モンゴル支援のメンバー。

実際にデモをウォッチしているとアジテーションにある特徴があった。一つは「保守派の文化人は現実を直視せよ」といったもの。この間、保守派の著名人の間でも大統領選をめぐる「勝ち組/負け組」が鮮明だった。つまりトランプの敗北を認めるのではなくて、最後まで支持せよとの意味だろう。

「マスコミの報道」に対する抗議の声も多く聞かれた。

「メディアは真実を報道しろ!」といったコールやプラカードは少なくない。確かに心情的には理解できる。というのは先の大統領選以前から新聞・テレビの“ バイデン推し”は明らか。中でも一見は報道番組のスタイルをとる情報バラエティは全く知見のない芸能人たちの雑感の開陳の場と化した。

要するに安倍前首相が辞任後、振り挙げた拳を下す先がないものだから権力の象徴としてトランプ氏をアベに見立てたのではないか。逆にトランプ応援デモ隊の面々にしても安倍前首相の幻影をトランプに見た――。つまり立場は違うが両者はともに「安倍ロス」の状態に陥っている。お互い批判的だが構造自体は大差ない。

それに「真実を報道しろ」とはどういう意味だろうか。トランプ支持派、あるいは不正選挙の主張派が根拠とするのは法輪功の機関紙『大紀元時報』が主だ。もちろん日本の報道の問題点があるにしても、それ自体が大紀元の信頼性を意味しない。

陰謀の根底にディープ・ステイト?

トランプ応援デモの特徴として、香港問題、チベット、内モンゴル自治区(南モンゴル)、ウイグル、中国の統制下にある地域の出身者、支援者らも多数、参加したのは先述した通り。むしろトランプという話題の人物に各々の主張を乗せている印象だ。

そして保守派の面々が集まるのもトランプ支持というよりも「反中国」という臭いをかぎ取って集まってくるのではないか。

それに日本国内でトランプ応援デモをやって仮に1千万人もの人を集めたとしても選挙結果が変わるとでも思っているのだろうか。日本でいかに声を挙げようがバイデン大統領が覆ることはありえない話だ。つまりこのデモは何に向けて行っているのかさっぱり理解できない。

それでも続くこのトランプ推しというのはすなわち「安倍ロス」の延長戦と、「反中国」という二大要素が詰まっているからだろう。そこに各種宗教団体が便乗してきたとしか思えない。

大阪、東京でデモを企画した幸福の科学信者で「TRUMP SUPPORTER IN JAPAN」の古山貴朗氏にデモの意義について聞いてみた。古山氏で印象的だったのはデモ前の集会で「幸福の科学の方いませんか」と呼びかけていたことだ。

「おっしゃる通り、日本でデモをやって大統領選の結果が覆るのは難しいと思います。しかし報道の問題を含めて問い続けることが重要です。そしてこうした動きを尖閣諸島を守る運動につなげていければと思っています」

なるほど、「志」は高い。しかし尖閣を守ることとトランプ応援は一致するものだろうか。保守派という人々がトランプ氏に日本の領土保全を託すなど不自然ではないか。まだこれを機会に自主防衛、再軍備といった方が清々しい。

一方、今月17日、福岡市内で開催されたトランプ応援デモは統一教会の分派である世界平和統一聖殿日本本部(日本サンクチュアリ協会)の福岡教会長・松本昌昭氏らが主催。問い合わせ先も松本氏になっていた。なぜサンクチュアリ協会がトランプ応援デモなのか、教義との関係性について直撃してみると―――

「(協会は)アメリカに本部がありますから。アメリカはディープ・ステイトやロスチャイルド家といったエリート集団による支配がどんどん進んでいます。トランプ政権はそういう支配層を破る目的があり、応援してきました。だから教義としての関係ならば(ディープ・ステイトなどを排した)神様を中心にした国作りです」

どうしても陰謀論のように聞こえてしまう。この点については

「従来は陰謀論みたいに呼ばれてきましたが、今回の大統領選を通じて陰謀論の人たちが出てきたのです。こうした人々の操作によってトランプ票がバイデンにいきました。映像でも不正の証拠があがっていますが、裁判所も無視しています。非常に強大な力が働いているのです。トランプさんがこういう勢力を“ワシントンDCのどぶさらい ”と位置づけ取り組んできました。しかし日本のマスコミも報じないため、ネットが情報の中心になっています。ご存じないのでしたら篠原常一郎(軍事・政治評論家)さんなどの話を聞くといいと思いますよ」

「陰謀論」で語り継がれてきたことが、大統領選によって具現化したという考えだ。それから注目したいのは松本氏に限らずトランプ応援デモ関係者の間で「ディープ・ステイト」なる用語がたびたび使用されたことである。

トランプ支持派の間では一種のスローガンと言っても差し支えない。

『ディープ・ステイトの真実 』(西森マリ―著、秀和システム)ではバイデン新大統領は「ディープ・ステイトの長年の寄生虫バイデン」と論じている。

ディープ・ステイトと民主党が「トランプは○○という罪を犯した!」と叫んだときは、実際にその罪を犯しているのはディープ・ステイトと民主党だ、と考えてほぼ間違いないでしょう。これは、心理学でプロジェクション(投影)と呼ばれる自己防衛手段の一つで、自分の罪をなすりつける行為、つまり偽旗工作です。ディープ・ステイトと民主党は、やることなすことすべてが偽旗工作、というわけです!! 

バイデン新大統領は「ディープ・ステイト」の影響下にあるというのだ。もちろん本書に限らず「ディープ・ステイト」を言及する保守文化人は少なからず存在する。

またSNSでもインフルエンサーとして注目されている大本教の信者、経済アナリストの藤原直哉氏も

ディープ・ステイトの存在を指摘していた。

幸福の科学・大川隆法総裁の霊言。

トランプ応援デモには新興宗教とアメリカ陰謀諸説が混在しているのがお分かり頂けただろうか。

もし各宗教団体がトランプ応援も教義と訴えるのならばそれも自由だ。しかし非信者で、一般市民がこうした団体の活動に共鳴するのはどうしたものか。分派したとは言え日本サンクチュアリ協会とはあの統一教会の系統である。保守層が忌み嫌う韓国由来の宗教なのだが…。

また幸福の科学は『明治天皇・昭和天皇の霊言』『今上天皇・元首の本心』こんな書籍を刊行してしまう団体なのだが…。保守派、右翼という人々がこれに対して怒らないことが不思議でならない。

「新興宗教のすべてが悪いわけではない」という反論も多く聞かれた。しかし各団体が信じる頂点は各々の教祖なのだ。表面的な主義主張が一致(宗教側が寄せているとも)しているに過ぎず本質的な価値観が共有できるとは思えない。非信者の保守層がこの活動に共鳴するのはそうした宗教活動に「便乗」もしくは「加担」しているにすぎない。こうした助言も仮に「闇の勢力」に侵されている――こう考えるとすれば「従順な信者」という言葉を贈ろう。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【検証 トランプ応援 デモ】背後に蠢く 新興宗教の怪」への5件のフィードバック

  1. .

    https://president.jp/articles/-/42592
    偶然にも古谷経衡が同様の分析をしています。

    宗教絡みと言えば西森マリーはカイロ大学出身のイスラム教徒ですが、なぜトランプを応援しているんでしょうか? 西森の著書に何か書いてありましたか。

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  2. なんで他所の国の大統領を支持するとかしないとか無意味なことやってるんだろう?

    返信