帰ってきた『全共闘白書』続編へ

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By Jun mishina

全学共闘会議 (全共闘)に参加した77大学256人の団塊世代男女による証言集『全共闘白書』(新潮社・2000円)の続編『続全共闘白書』が企画中だ。同書は1994年に刊行され約4万部を売り上げた。「安保闘争」「学園紛争」などの貴重な資料として運動家、研究者らに現在も重宝されている。当時の団塊世代と言えばおおかた45歳前後で働き盛りだ。しかし世はもう「令和」、発刊から25年四半世紀過ぎ団塊世代は後期高齢者に差し掛かっている。冗談ではなく“ ♪おらは死んじまっただ”と、かつての闘士たちも「老い」と「死」を考える齢になってきた。そんな団塊世代が今、何を思うのか。

『全共闘白書』は全共闘に参加した元学生のアンケートを集計した構成だ。前回は早稲田大学全共闘の高橋公さんが「全共闘白書編集委員会」の代表を務めた。続編は「全共闘運動50周年『続全共闘白書』編纂実行委員会」が結成されノンフィクション作家の前田和男さんが事務局窓口を担当している。アンケート用紙はウェブサイト続・全共闘白書hからダウンロード可能だ。第1次回答期限として3月31日、また第2次回答期限が5月31日と設定されている。全共闘運動から50年、そして前号から25年が経つことから今年は節目の年。どれだけの回答が集まるのか見物である。

出版社はまだ未定だ。夏頃の完成を目指すというが。

キーパーソンは小沢一郎だった

ところで前白書が発刊された1994年はどんな時代だった? 細川連立政権がわずか一年程度で総辞職、北朝鮮の金日成が死去、イチローがシーズン200安打を達成、こんな出来事が印象的だ。生活様式と言えば?

「携帯もネットもなかった」「ポケベル全盛期」 「テレビの視聴率20~30%はザラ」「小室哲哉の曲だらけ」「CDのミリオンセラーは珍しくなかった」「学生どころか社会人もイッキ飲みをしていた」「オタクは蔑称だった」「牛丼並は450円」「駅のホームでタバコが吸えた。駅員も交じって吸っていた」「町にオウム真理教の施設があった」「オウムが経営する食堂やショップがあった」

私的体験を交えた1994年の風景はこんなところ。では団塊世代たちは当時、自分たちの思いをどう証言していたのか。白書を紹介しよう。質問は73項目に及ぶ。もちろん当時の運動についてや、政治問題、政策、労働運動、職業また年収、子供の教育問題、家事・育児など多岐に渡っている。

傾向としては当時の学生運動に対して肯定的で、全体的に左派的、リベラルだ。「全共闘・学生運動への参加をどう思うか」に対しては571人中296人(56.3%)が「誇りに思っている」と回答。「あの時代に戻れたら」という問いには526人中291人 (55.3%) が「また運動に参加する」。続いて「日の丸を国旗として認めるか」が526人中282人(53.6%)が「認めない」。「君が代を国歌として認めるか」は526人中367人(69.8%)が「認めない」と回答した。

帯にあるマルコポーロというのも懐かしい。

また興味深いのは政治家に関する質問だ。「いまもっとも好きな政治家」では577人中13人(2.5%)が小沢一郎を挙げた。これは土井たか子に次いで2位(同率で武村正義、江田五月も)。「いま最も嫌いな政治家」では683人中119人(22.6%)が小沢一郎。2位の中曽根康弘の31人(5.9%)を大きく離している。また「好き嫌いは別にして、いま最も注目している政治家」では605人中153人(29.1%)が小沢一郎だ。これも2位の横路孝弘の32人に大きく差をつけた。とにかく小沢の注目度の高さは群を抜く。

小沢一郎は二度の政権交代の中心人物だ。当時からその動向は注目されていた。しかしこのアンケートの数年前にバラエティ番組で「メロリンQ」と踊っていた若者と20数年後、小沢が政治活動を共にしようとは。もちろん誰も想像できなかったはずだ。

それから働き盛りの年代だけに質問は「持ち家か借家か」「転職回数」「子供を塾や予備校に行かせたか」あるいは「介護する家族を抱えそうか」といった項目もある。この45歳前後であれば「親の介護」が問題になっていた時期だろう。

TVコメンテーターとして活躍する鎌田實氏も。著名人もチラホラ。

自分が介護される側に・・・

では続編のアンケート項目を見てみると前回と同様に全共闘に対する思い、政治問題、社会問題を扱う問いもある。だが変化したのは自分自身の医療、介護問題だ。一部を抜粋する。

問29 認知症など高齢化により財産の適正な管理や活用に不安が生じた場合、どのようにされますか。

問30 治る見込みのない病気になった場合、最期はどこで迎えたいですか。

問31 治る見込みがなく死期が迫っていると告げられた場合、延命治療をどうされますか。

問32 「終活」(死に向けての準備)はされていますか。されている方は具体的にお書きください。

問33 死後どのように葬られたいですか。

問73 子供あるいは孫の世代への遺言(継承してほしいこと、ほしくないこと等)をお書きください。

問74 辞世のことば」があればお書きください。(定型の俳句、短歌、自由体なんでも可)

50年前は長髪にギターとベルボトム、ミニスカートでビラを巻いた女子大生もいたことだろう。若き闘士たちも人生の終焉を意識するようになった。酒場で雄弁に語ったデモの武勇伝…。「丸太を持って防衛庁に突っ込んだ」こんな話が盛り上がれたのは遠き昔。今時の若者は「ヤバい」と反応してくれたらまだいいところ。『僕って何』どころか「全共闘って何?」という状態かもしれない。

いわゆる「終活」をイメージする項目が並ぶ。

今後の出版計画について『続全共闘白書』編纂実行委員会の事務局に問い合わせてみると出版社はまだ決まっておらず、夏頃にはアンケート回収も終わり編集作業も目途が立っているとの説明だった。全共闘白書に詳しいベテラン編集者によると「前回、新潮社から出版できたのは編集委員の先輩が新潮社にいたから。もう新潮ルートは切れただろうから版元選びで難航するかもしれませんね」と解説する。

全共闘に関わった当時の団塊世代は高学歴エリートも少なくない。だから大手出版に勤務するかつての仲間、理解者もいたわけだ。しかし1994年なら編集者として力を振るっていたが、現在はリタイアしているだろう。人脈も乏しくなった上、なによりこの出版不況のご時世だ。白書を引き受ける出版社があると良いが…。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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