香山リカ放言
「吉田証言誤報で傷ついたことありますかぁ」に朝日記者も沈黙

三品純 By 三品純

今や医師、学者というよりも活動家と化した精神科医・香山リカ氏。専門外の分野でも、話題性があれば飛びついて一席ぶつ。言うならば言論界のダボハゼ状態のセンセーが目下、ご執心なのが反レイシズム、反ヘイト運動だ。11月5日、在日本韓国YMCAアジア青少年センターで開催されたシンポジウム「反レイシズム情報センター NPO設立記念  —深刻化する日本的レイシズムへのアプローチ/解消法のその先へー」にパネラーとして登壇したのだが、この日も香山節全開。勇ましく政権批判を訴え「朝日新聞の吉田証言誤報で誰も傷ついてない」とぶちまげた。

シンポジウムを主催した「反レイシズム情報センター」について補足しておくと、一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程のりゃん英聖よんそん氏が代表を務める人権団体である。今年6月、一橋大学の「KОDAIRA祭」で予定されていた作家の百田ひゃくた尚樹なおき氏の講演会を中止に追い込んだ、と言えば旧聞に属するだろう。シンポジウムのパネラーには、香山氏、ジャーナリストの津田大介氏が名を連ねた。一般メディア、ネット上でもお馴染みの顔ぶれなのだが、この陣容を見れば、講演趣旨はお察しの通りだ。津田氏の場合、ネット上の言説、フェイクニュースなどに批判、論考を加えるというもの。そして香山氏の場合、早い話が右翼的、保守的な言説を好む者は、古い流行語ではないけれど”ほとんどビョーキ”と認定するメンタル診断室というわけだ。つまり保守政治家と右派・保守層は“病める人々”と断じては、アンチ右翼・保守の人々に束の間の清涼剤を処方するのである。

最後は3氏によるパネルディスカッション。左から梁代表、香山氏、津田氏。

さてシンポジウムは梁代表から差別問題の取り組みなどの報告が行われた後、香山氏、そして津田氏の順番で講演し、締めとして三氏によるパネルディスカッションという流れだ。梁氏の話で場も温まったところで香山氏の登場。そして、例によってドクター香山の診断が下された。

同氏によると日本の技術力や経済力が低下しても現実を認めたくない人がおり、そうした層は負け惜しみ、躁状態になるという。すると攻撃的になり、そして「日本すごい」といい始め、「悪性自己愛」を抱くそうだ。彼らは高収入、高学歴者であっても「こんなはずじゃない」「何かを奪われた」と考えているそうで、安倍首相が「私が取り戻してあげましょう」と言ってくれ自己愛者たちの「癒しに」になっているとか。

得意顔で「誤報によって多くの人が苦しんだんでしょうかね」

なるほど確かに最近では、TVでも日本の礼賛番組、雑誌でも日本の技術、文化、思想を称える専門誌が発刊されている。こうした風潮に白々しさを感じるのも確かで、その点においては同意できる。ただ攻撃的で自己愛に満ちるのは、左翼活動家、人権運動家、また彼らに追随する匿名のネットユーザーも同様では? そもそも香山氏、ツイッターなどSNSでも意に沿わない相手は即座にブロックする。また彼女はシンポジウムで「対話しても無駄だから相手にしない」と訴えた。そうだろうか。彼女が粘り強く批判者たちと“対話”したとは思えない。なにしろ香山氏も参加した部落問題の講演会では、本誌代表・鳥取ループも活動家らによって強制排除された。意に反する者は許さない。これ自体、立派な自己愛という気もする。さておき話を戻すと、安倍首相は、世相によって単語をすり替え、攻撃対象を変えながら、自己愛を持つ人々の支持を受け、生き延びてきたのだとか。その最たる例が朝日新聞の誤報問題だとし、嬉々としてこう話すのだ。

2014年9月11日に日本放送のラジオ番組に安倍さんが生出演しました。この時に、ちょうど前にですね、朝日新聞の従軍慰安婦の一連の報道で謝罪を朝日新聞が出すっていうことがたまたまあったんですね。この生放送に出るのは、前から決まっていたことらしいですが、もちろんラジオのアナウンサーは、「朝日新聞の報道がありましたね」と最後に振りました。そのとき答えたときは、安倍さんは非常にすごく上手い答えをしました。「この誤報によって非常に多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられたことも事実といっていいと思います」と述べたんですね。だけども朝日新聞のいわゆる吉田証言とかそういうのをめぐる報道で朝日新聞が謝罪しましたけど、その誤報によって多くの人が苦しんだんでしょうかね。当事者とかそれを引用して論文を書いちゃった学者とかは突っ込まれたことはあったかもしれませんけどね。

「誤報によって苦しんだでしょうかね?」と発言をした時の満足気な表情を忘れない。“ほれ、言ってやったぞ”というオーラに満ち溢れていた。あまりに身勝手な言い様ではないか。香山氏は、今年9月、朝日カルチャースクールで「フェイクニュースと差別」と題した講義を担当していた。同講座に限らず、彼女は、フェイクニュース、まとめサイトの類を問題視している。もちろんアクセス数稼ぎで、事実を歪曲するこれらネットメディアの有り方は問題だ。しかしフェイクニュースやまとめサイトは人を傷つけるが、誤報なら傷つかない、というのはおかしい。それに仮に『産経新聞』『読売新聞』の記事に誤報があった場合、同様の態度を貫けるとは思えない。たびたび自身を好意的に取り上げてくれ、主張も近い朝日新聞の誤報になると「読者のアナタは無関係」と言うのならばあまりに身勝手でダブルスタンダードだ。

さらに批判のトーンを上げお説は、こう続く。

だけど一般の読者とかが毎日苦しんだとか、国際社会で日本の名誉とか書いてますけど、みなさん外国旅行にいって、「お前の国は読んだぞ。朝日新聞。ひどい国だ。慰安婦強制連行した。吉田って人の証言を読んだ。だからお前も同じだろう」と傷つけられたことありますか。ないと思いますよ。多くの人はね。仮にほとんどの人は報道そのものによって違ったのか、と思った人はいるかもしれないけど自分が苦しんだり、傷つけられたりしたわけがないですね。だけども上手くすり替えた。もしかしてこれを読んで普段の生活で苦しんだ人がいて「そうか私がつらいのも、私の会社で出世できないのも、朝日新聞のこの報道のせいだ」みたいなね。(会場笑い)そうか安倍さんありがとう。分かったよ。という風に思っちゃった人がいたんじゃないですかね。だから朝日新聞を訴えることにつながったと私は思っていますけど。誘導が上手いですね。

吉田証言によって国際社会で日本は大いに傷つけられたのではないか? 国際社会でも国連人権理事会から慰安婦に対して謝罪せよとの勧告がある。また本来は、慰安婦ではなく米軍の車両で亡くなった少女を慰安婦像として、世界各地に設置されている。こうした事態が起きたのも、元をただせば吉田証言の影響が少なくないはずだ。

誤報によって苦しんだ人はいない。これも残酷な言葉だ。なにより証言の張本人、吉田清治の長男が父親の“負の遺産”を清算するために謝罪碑の撤去などの活動を続けている。彼もまた苦悩した一人だろう。また当時の旧日本兵、あるいはその遺族は? 自分の親族が慰安婦を強制連行したかもしれない、こう心を痛めてきた人も少なくないはずだ。それが誤報、捏造だった時の衝撃や徒労感は、計り知れない。そして自身に置き換え考えてみる。左翼活動家の類に「朝鮮人にどれだけひどいことをしたんだ」とどれだけなじられてきたことか。

だから誤報です、しかし一介の読者に過ぎないあなた方とは関係ない! そう簡単に言ってもらっても困る。吉田証言という存在によって紛れもなく左翼活動家、在日の運動家、野党政治家、そして何より進歩的メディア、こういった面々が増長してきたのは言うまでもない。

「当事者とかそれを引用して論文を書いちゃった学者とかは突っ込まれたことはあったかもしれませんけどね」

随分、さらっと言ってくださるが、吉田証言を支持した学者たちがツッコミどころか批判されて当たり前である。十分な検証をしないまま吉田証言を鵜呑みにして論文を書いたとすれば研究者、学者失格だ。しかし吉田証言を真に受けた歴史家、研究者の類が訂正、謝罪に応じたことは聞かない。それに香山氏はもちろん津田氏も忌み嫌うフェイクニュースを安直にシェア、転用するネットユーザーと何が違うというのだろう。

嫌韓派を増やした要因、二次的被害を生んだ誤報問題

「そうか私がつらいのも、私の会社で出世できないのも、朝日新聞のこの報道のせいだ」みたいなね。(略)だから朝日新聞を訴えることにつながったと私は思っていますけど。

おそらく彼女が言うところの、朝日を訴えたというのは「朝日新聞を糺す国民会議」(故・渡部昇一議長)のことだろう。確かにこの中には安倍首相の御用作家、御用文化人といった人々もいる。しかし彼らが出世できないのは、朝日のせいと考えたのだろうか。国民会議の中には、社会的ステータスが高い著名な学者、大学教授、文化人も名を連ねる。もちろん「イデオロギー闘争」の一環であったとしても、生活状況を嘆き朝日を訴えたとは思えない。このような批判スタイルも香山氏の手法の典型例だ。批判対象に向け「社会的底辺」「この人たちは報われない」「貧困層」というレッテル貼りに過ぎない。簡単に言えば「アタシとその仲間を批判するやつは、みな日陰者」と言うわけである。「レッテル貼りは差別を助長する」とは、部落解放同盟や左翼団体の集会でもよく耳にしたものだが。

それに考えてみてほしい。保守系の学者、文化人、そして保守政治家ももともとは、親韓派だったことを。日本の一般社会を鑑みれば、2003年の『冬のソナタ』に始まり長らく「韓流ブーム」が続いた。右派・左派ではなくごく普通の日本人にとって日韓友好を好む層は、少なくなかった。ところが慰安婦像の設置によって、親韓派の日本人の心にも影を落としたことだろう。無論、日韓関係、国際的にもダメージは大きい。11月23日、大阪市の吉村洋文市長は「信頼関係は消滅した」とし、少女像の設置を受け入れた米・サンフランシスコ市との姉妹都市解消を決断した。これも吉田証言誤報問題の二次的被害ではないのか。軽々と香山氏は、吉田証言で日本人が「傷ついてない」「苦しんでない」とのたまうが、与えた影響の大きさを自覚できないというならば単なる「朝日新聞シンパ」か「情勢が読めない」そのどちらかだ。

この一連の主張について改めて香山氏に発言の意図を求めたが、結局回答を得ることはできなかった。また主催者の梁英聖氏にも確認を求めたが同様に回答はもらえず。一方、当日のシンポジウムには、現在本誌が部落解放同盟と係争中の「全国部落調査」裁判を取材する朝日新聞編集委員・北野隆一氏の姿もあった。北野氏は、吉田証言報道に関わった当事者ではないが、朝日新聞の有力記者として、香山発言についてどう感じたのか聞いてみた。北野氏はシンポジウムに参加したことを認めた上で「会社の見解を代表する立場ではないのでコメントはしません」ということだった。

確かに彼の立場で「吉田証言の誤報は問題ない」とは言えないだろうが…。それにしてもなぜこういう傲慢な態度が左翼、リベラルに対し反発を招いていることを理解できないのだろう。自身と異なる者、批判対象には異常に厳しく、自身とそして同じ属性の者にはとことん甘い。現状のリベラル左派の人々には、こういう態度がありありとうかがえる。これでは、彼らの忌み嫌うタカ派政治家やネトウヨを抑えることはできないだろうし、またリベラル勢力の復権は遠いと言わざるをえない。もっとも密室の空間で「あいつらは病気だ」と信者を集めて喝采を浴びるだけでご満悦、というのならばその時は香山氏ら一派に「悪性自己愛」という言葉を贈ろう。

日本の良識、社会の木鐸の朝日新聞が長年、誤報を放置していたのも日本の名誉に傷!?

「対話」というほど彼女は批判者たちと対話をしていない。

香山リカ放言
「吉田証言誤報で傷ついたことありますかぁ」に朝日記者も沈黙
」への7件のフィードバック

  1. カミツレ茶

    鳥取部落マップが公開されて、清見久夫さんが怖くてガタガタ
    ふるえたって、一般の読者には無関係だね!
    なにより誤報ということもないし、実害なんてあったの?

    それはさておき、香山氏が自身の政治的主張をどのように披瀝しようが
    全く自由ではあるけれど、最後のスライドはいただけないね。

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    1. 三品純三品純 投稿作成者

      ここまで日本が憎いかあって思うと、私も香山さんの話に怖くてガタガタ震えました。

      清見さんですか。
      地区外の人が地区に住むと、旧来の住民よりも声がでかくなる典型例ですね

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  2. さつき

    >吉田証言誤報で傷ついたことありますかぁ
    香山りかその他の反日左翼の活動家が
    なぜ、これほどまでに日本の国益・名誉を毀損することに心血を注ぐのがわからないです。
    本人たちに、一体何のメリットがあるんでしょうか?

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    1. 名無しの組織内議員

      当人は自説が真実だと信じている上、信念を貫けば貫くほど仲間内でのステータスが上がるからでしょう。この点は右も左も同じです。

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      1. 三品純三品純 投稿作成者

        そうです。結局、右も左も論壇の世界がただの罵倒芸に陥っていると思います。

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    2. 三品純三品純 投稿作成者

      あの世代の文化人の宿命だと思うんですよ。90年代ぐらいまでは
      カラスが黒いのも日本のせいと言っていれば論評が成立していたんですが。
      もう今の時代、通用しないですよ。

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