朝鮮学校大阪府・市補助金裁判明日判決 予想は?

By 鳥取ループ

2012年、大阪府と大阪市が大阪朝鮮学園に補助金を交付しない決定をした処分は違法であるとして、大阪朝鮮学園が大阪府と大阪市を訴えた裁判の判決が、明日13時30分に、大阪地裁で言い渡される。判決に先立ち、示現舎ではその判決を予想すると共に、判決を速報する。

判決の速報はツイッターで行うので、ぜひ @jigensha をフォローして頂きたい。

この裁判の発端は、大阪府と大阪市が2011(平成23)年度の大阪朝鮮学園への補助金を交付しなかったことだ。例えば大阪府は1974年から大阪朝鮮学園に補助金を交付しており、その額は最後に交付された2009で2716万5600円にのぼった。

朝鮮学園側は補助金の交付停止は政治的な背景があると主張している。確かにそれはその通りで、2010年11月23日に北朝鮮が韓国と北朝鮮の境界付近の延坪島を砲撃し、死傷者が出た延坪島砲撃事件があった。当時は民主党政権下で、いわゆる高校無償化が推し進められ、朝鮮学校も対象になると見られていたが、この事件がきっかけで北朝鮮への非難の世論が高まり、朝鮮総連を通して北朝鮮本国との関係が深いとされる朝鮮学校への支出することへの非難も高まった。

その結果、国策である高校無償化の朝鮮学校への適用は事実上見送られた状態である。それと並行して、朝鮮学校への補助金の交付を止める自治体が相次いだ。大阪でも、当時の橋下徹知事が朝鮮学校と北朝鮮本国との関係を問題視し、朝鮮学校の職員室に掲げられた金日成・金正日の肖像画を外すことなどを要求し、それを受けて朝鮮学校は肖像画を外したが、結局大阪府・大阪市ともに補助金の交付はしないことが決まった。

ただ、法律論で言えば、大阪府・大阪市側に分が悪いところがある。

韓国系の民族学校と見られている白頭学院が運営する建国高等学校にも補助金が支給されている。ただ、建国高等学校が朝鮮学校と違うのは、学校教育法第1条による認可を受けた「一条校」である点だ。よく知られているとおり朝鮮学校は学校教育法第1条による認可を受けていない「各種学校」である。

しかし、行政が補助金を支出してきた各種学校は朝鮮学校だけではない。例えば台湾系の大阪中華学校には大阪府と大阪市から補助金が交付されており、これは朝鮮学校と同じく各種学校の扱いである。

当然、朝鮮学園はこのことを問題視し、行政は政治的な背景を理由に朝鮮学園を差別的に扱ったとの趣旨の主張を行った。一方、大阪府は朝鮮学校の生徒が北朝鮮の歌劇に参加したことについて説明を求めたが協力しなかった事などを主張した。

朝鮮学園側は、朝鮮総連、北朝鮮との関係について否定していない…というよりは、「関係ありますが何か?」といった態度だ。朝鮮学校に通う生徒の保護者からも「朝鮮学校が朝鮮総連と関係が深いのは事実」との意見が多くあり、「補助金を受けるなら本国とは距離を置くべきではないか」との意見も見られる。

もう1つの論点は、手続き上の問題である。朝鮮学校は大阪府と大阪市が朝鮮学校の補助金交付申請を本来は60日以内で処理されるべきところ、この期間を超えて放置し、その後要綱を改定して遡及的にそれを適用したこと、行政不服審査や行政訴訟の手続きについての教示がなかったことが違法であると主張した。それに対して、大阪府と大阪市はそもそも補助金の交付は「贈与契約」であって「行政処分」ではないと主張した。

これはなかなか分かりにくい問題である。これは言葉遊びのようになってしまうが、行政機関が「行政処分」を行うにあたっては、様々な決まりがあり、行政手続条例にのっとって処理し、行政不服審査や行政訴訟による事後の救済を保障しなければならないということになっている。しかし、「贈与契約」は民間人や民間企業がお金を払うかどうかということと同様の問題なので、自治体にも「契約の自由」があり、支払いの約束をするのは自由だということである。

大阪府と大阪市が、朝鮮学園への補助金の交付が「贈与契約」である根拠は、補助金の交付は法令に定められたものではなく、要綱つまり役所の内規で任意に行っていたものなので、行政処分ではなくて任意の贈与契約だということなのである。

ただ、この点についても大阪市には分が悪いところがあり、実は大阪市には1952年に定められた「学校法人援助の手続に関する条例」があった。それが、朝鮮学校へ補助金を交付しないことが決まった2012年11月になって急に橋下徹市長が市議会に廃止のための条例案を提出し、廃止されたのである。これについて大阪市は「条例は1975年頃には既に形骸化していて、要綱はあくまで条例とは別のもの」という趣旨の主張をしている。

さて、どのような判決が出されるだろうか。

筆者の予想では、一番あり得るのは「却下」である。つまり、申請には処分性がないとして裁判所が門前払いするということだ。

その理由は、裁判所は「朝鮮学校に補助金を支給すべきでない」という世論におもねる一方で、私立学校への補助金の支給の是非や朝鮮半島にからむ政治的な問題に立ち入りたくないと考えられるからだ。

ただ、純粋に法律論で言うのであれば、要綱で基準を定めて長い間行われており、しかも子供の教育に関わる補助金の支給を「贈与契約」で済ますことは本来はあってはならないことである。「行政処分」として補助金の支給の是非を裁判所が審査することは可能なはずである。

しかし、その場合、客観的に見れば補助金の交付の是非の判断に政治的背景があることは明らかで、また事実として大阪中華学校には補助金を交付しているのだから、裁判所は行政側に不利な判決を下さざるをえない可能性が高いだろう。もちろん、朝鮮学園と北朝鮮との関係を問題視して、行政の監督の下で補助金が適切に使われる保証がないから交付すべきでないと判断する可能性もないわけではない。

本来、憲法89条により私的な教育事業に公金を支出することは原則禁止されており、もし支出するのであれば良いい意味でも悪い意味でも公平に支出せざるを得ないはずなのだが、昨今は憲法89条の「慈善、教育若しくは博愛」に関する部分はほぼ空文化しているのが実情である。裁判所は「行政が管理監督していれば、私学に公金を支出してもよい」といった判断をしているが、そもそも今時行政が公金を支出する先に対して何らかの管理監督をしないということはあり得ないだろう。

背景には朝鮮学校のみならず、私立学校への公金の支出という行為全般が抱える問題があるのだが、巨大な利権があり、憲法問題というパンドラの箱を誰も開けたがらないことから、これも日本のタブーの1つであると思う。

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