辺野古転覆事故は沖縄県民にとっても心を痛めた事件に違いない。しかし抗議船の中心人物、故・金井創氏は北海道出身、運営団体のヘリ基地反対協議会、浦島悦子共同代表は鹿児島県出身だ。むしろ本土の活動家、組織が沖縄を混乱させてはいないか。ワシントン駐在問題でも問題視された新外交イニシアティブ(ND)は東京に本部を置く団体だ。(写真=鳩山由紀夫元首相と対談するND・猿田理事長)
NDの公文書だけが年度が変わり混乱して延長?

【辺野古沖転覆事故】左翼活動家天国! 新外交イニシアティブが沖縄県から随意契約6年7800万円の怪
辺野古転覆事故は「反基地闘争」「平和学習」の利権と闇を露呈した。沖縄での「平和活動」を狙って本土の団体、企業が多数、参入している。その中の一つが「新外交イニシアティブ」(ND)だ。同団体はT『羽鳥慎一モーニングショー』でコメンテーターを務める猿田佐世弁護士が代表を務める。
NDは、沖縄県が実施する平和関連事業を6年間で約7800万円分受注している。しかも政治性の高い基地問題の発信事業で、同じ系統の団体に委託が続くなら、事業設計そのものが特定団体向けだったのではないか。
筆者は県に対して知事公室が実施する平和関連事業に関する公文書を開示請求してみたが、奇妙なことに新外交イニシアティブ分(シンポジウムの実施等)だけが延長となった。担当課の平和・地域外交推進課に問い合わせてみると「年度が変わって混乱している」という説明だ。
これはおかしい。なぜなら、その他の団体分についても同時期に請求したにもかかわらず、公開が決定しているからだ。なぜ新外交イニシアティブだけ〝混乱〟するのか。
そしてNDをめぐって昨年から紛糾しているのは沖縄県のワシントン事務所問題に関与した疑惑だ。
沖縄県のワシントン事務所は、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を米国側に直接訴える目的で2015年に開設された。しかし実態は、県が米国に営業実態のない株式会社を設立し、職員を「社長」「副社長」などとして就労ビザを取得していたものだ。会社設立や株式保有、決算、出資法人としての扱いなどが県議会に約9年間報告されておらず、行政手続き・議会統制・公金管理の面で大きな問題になっている。
県の出先機関のように説明されながら、実体は米国法人
問題の核心は、単に沖縄県が米国に拠点を置いたことではない。基地問題を米国に訴えるという名目の下、県が米国法人を設立し、公金を投じてロビー活動に近い対外発信を行っていたこと、その手続きや管理体制が極めて不透明だったことにある。
沖縄県の調査検証委員会報告書によれば、ワシントン駐在のために設立されたのは「Okinawa Prefecture DC Office, Inc.」という米国法人だった。しかもその形態は株式会社にあたる「C Corporation」。報告書では、2015年5月に設立認可を受けた経緯や、県庁内での意思決定、米国法律事務所とのやり取りなどが整理されている。県の出先機関のように説明されながら、実体は米国法人という分かりにくい構造だった。
県議会で問題視されたのは、この法人設立に伴う出資金、県職員の営利企業従事許可、地方自治法上の出資法人としての報告義務、FARA=米国外国代理人登録法に関する資金の流れなどである。監査請求資料でも、沖縄県、本件株式会社、委託先、再委託先の間で資金の流れがどう整理されていたのかが問われている。つまり「沖縄の声を米国に届ける」という美名の裏で、行政手続きと公金管理が適切だったのかという疑念が生じているのだ。
そこで問題視されたのが「新外交イニシアティブ」の存在である。NDは沖縄県のワシントン駐在会社そのものを運営していたわけではない。しかし、沖縄県の基地問題に関する対外発信、世論形成、トークキャラバン事業などで、玉城県政と近い距離にあった団体として、県議会でもNDが浮上。
猿田氏は昨年5月20日、ワシントン事務所に関する沖縄県の百条委員会に参考人招致された。
RBC琉球放送によれば猿田氏は「翁長前知事が那覇市長だった2013年に、沖縄の声をワシントンに届けるための人を置くことについて提案したことはあるものの、その後の事務所設立や運営には一切関わっていない」と証言したという。
猿田氏本人が成果のように語っている

猿田氏は事務所について提案したが運営には関与していないというのだ。しかし2018年9月6日、NDのWebサイト上でワシントン事務所についてこう述べた。
私は本土出身者であるが、この間、日米外交の観点から沖縄の基地問題に深く関わってきた。名護市長など沖縄の政治家や市民団体の方を米国の首都ワシントンにご案内し、米政府・米議会との交渉の場を作るなどしてきた。
翁長氏とも、「米国への訴え方」という観点から時に意見交換する機会があった。知事選の前に沖縄県ワシントン事務所の設立を提案したところ、氏は県事務所設立を知事選の公約に入れてくれた。そして、当選後、翁長氏は、実際にワシントン事務所を設立した。その後も、氏は何度もワシントンに通って辺野古基地建設反対をアメリカで訴えた。
猿田氏がワシントン事務所設立までの流れに影響を与えたことは否定しがたい。むしろ仕掛け人に近い存在だったとも言える。しかも自ら政治家や市民団体をワシントンに案内したという。この通り、当時はまるで自分の成果のように発表していた。普段、ND関係者は厳しい政府批判を繰り返すが、彼らの活動に透明性があるとは思えない。
明らかに自治体と一事業者の関係を超えていたのではないか。
NDが請け負った「We love OKINAWA デニー知事トークキャラバン」は、普天間飛行場移設問題、辺野古新基地建設問題、日米地位協定問題などについて、玉城デニー知事が各地を巡り、メディアや市民に訴えたものだ。NDはこれを「沖縄県の基地問題・基地負担の現状を広く日本国民に伝える」事業と位置づけている。
もちろん、沖縄県が基地問題について全国や海外に発信すること自体は否定されるべきではない。基地負担は沖縄県政にとって重要課題であり、国に対して意見を述べるのも自治体の政治的役割の一つだ。しかし問題は、その発信業務を担う団体の政治的性格である。NDは単なるイベント会社ではなく、外交・安全保障政策への提言、辺野古反対に近い論陣、対米ロビー活動などに関わってきた団体だ。そこに県の公金事業が委ねられると、行政の広報なのか、特定政治勢力の世論形成なのか、境界が見えにくくなる。
実際、2019年には玉城知事の「万国津梁会議」をめぐる会食問題も発覚した。琉球新報によれば、万国津梁会議設置支援業務を受託した事業者と正式契約を結ぶ前日に、玉城知事や県職員らが会食していたことが問題になった。県側は私的な会食であり、同席職員は受託業務を担当していないなどと説明したが、明らかに公平性を欠いていないだろうか。
さらに会食に出席した人物の中にND理事がいたこと、県職員がトークキャラバン事業や万国津梁会議に関わる部署にいたことも問題である。
特定団体、特定活動家との決別を
そもそもワシントン駐在問題とNDを結ぶ線は、直接的な運営責任というよりも、沖縄県の「対外発信人脈」である。翁長県政から玉城県政にかけて、沖縄県は基地問題を国内世論だけでなく、米国議会、シンクタンク、国際社会に訴える路線を強めてきた。その中でNDは、トークキャラバン、基地問題シンポジウム、政策提言などを通じて、県の主張を外部に広げる役割を担ってきた。
だが、行政が特定の政治的主張を持つ民間団体と密接に連携し、その活動に公金を投じる場合、透明性は通常以上に求められる。とりわけ基地問題は、県民の間でも賛否が分かれる高度に政治的なテーマだ。県民全体の税金を使う以上、委託先の選定、事業内容、登壇者のバランス、費用対効果、関係者の利害関係は厳しく検証されなければならない。
ワシントン駐在問題は、米国法人設立の手続き不備だけの問題ではないのだ。むしろ本質は、沖縄県が「基地反対の国際発信」を行政事業として進める中で、公金、民間シンクタンク、政治運動、ロビー活動が一体化して見える点にある。ND問題もまた、その文脈の中で理解すべきだろう。ワシントン駐在問題とは、沖縄県の対米発信が「県民のための行政」だったのか、それとも特定の政治的立場を国際的に広げるための運動だったのかを問う問題なのである。
沖縄県政は、特定団体や特定活動家の影響から距離を置き、公金事業としての透明性を取り戻すことができるのか。転覆事故の検証、そしてワシントン駐在問題とND委託事業は、その点を問う格好の材料である。



