内紛が続く日本維新の会で今度は法廷闘争だ。北名古屋市・小村貴司市議は愛知維新の会から正当な理由がなく除名されたとして7月10日、同市議は350万円の損害賠償を求め同会を提訴。次いで18日、富山維新の会から除名処分を受けた射水市議も同会を訴えた。維新の地方議員軽視に対し逆襲が始まったのだ。
和歌山を皮切りに各地で続く離党者
現役議員が2人も所属した政党を提訴する異常事態は日本維新の会の闇を物語っている。本題の前に問題点を整理しておく。
「身を切る改革」と「パワハラ」。維新の代名詞といえるこの2つの現象が本件にも影響する。
日本維新の会地方組織で内紛が起きるとおおかた「パワハラ」と「身を切る改革」という2つの現象が浮かび上がる。
日本維新の会が掲げる「身を切る改革」とは「政治家自身が身分や待遇にこだわらず改革の先頭に立ち、既得権に切り込み政策の実現」を目指す党最大の目標だ。その具体的な行動として自治体、被災地などへの寄付がいわゆる「身を切る改革」である。
通常、議員報酬から月に10%を党に集め、これが寄付の原資だ。
身を切る改革を不履行の議員には「除名」という厳しい処分が待つ。維新の特徴の一つだが同時にトラブルの温床と化す。ここにパワハラも加わり党のお家芸になってしまった。
当サイトがスクープした【緊急告発】「お前、コラァ!」橿原市 維新議員が市長に 放った“ドン引き ”恫喝音声は最たる事例だ。“ ヤカラ感”がある維新関係者らしい騒動だった。
目下の話題といえば維新の公認候補、斎藤元彦兵庫県知事のパワハラ問題。百条委員会にまで発展したのはご存知の通り。これも維新らしい。昨年の統一地方選で成果を挙げて次期総選挙に弾みがついたはずが、相次ぐ不祥事と党内対立で勢いを失いつつある。
当サイトは昨年10月から「身を切る改革」問題に取り組み、和歌山県議会・林隆一県議らの離党問題について追跡取材してきた。林県議も「身を切る改革」を期限通りに実施しなかったという理由で離党勧告を受けたが、それは表向きの話。
林県議の妻、林佑美衆院議員(和歌山一区)は昨年、維新躍進のシンボルとして賞賛されたが、同時に党内での妬み嫉みを買うことになった。
加えて「EXPO 2025 大阪・関西万博」で自民党から協力を得るために、和歌山一区を自民に譲る密約説も囁かれた。つまり林県議を維新から追い出し、佑美氏を孤立させる狙いだ。
「身を切る改革」は離党させるため口実が真相ではないか。同様の事案がある。和歌山の騒動に次いで長崎県総支部でも所属議員3名がパワハラを理由に離党した。
当時、同支部幹事長は「議員報酬の一部を寄付するという党の規約を守らなかっため」と批判。これもパワハラ隠しのために「身を切る改革」を持ち出したわけだ。
「身を切る改革」の不履行を処分理由にするのは和歌山県、長崎県の離党騒動とも共通する。事情を知らない有権者にすれば処分された議員側が党則を破ったように映ってしまう。
しかし取材すると内情は異なる。執行部にとって都合が悪い議員に対し「身を切る改革の不履行」を持ち出す“ フェイク処分”だ。
それが如実に表れたのが愛知維新の会から除名処分を受けた小村貴司市議の一件。同市議が告訴に踏み切るまでの経緯を調べるとフェイク処分が見てとれた。
もとは岬麻紀衆院議員のパワハラがきっかけ
7月12日、小村市議は愛知県庁で記者会見を開催し、愛知維新の会を提訴したと発表。声明文がX上にも投稿された。
現職議員が党を訴える異例の事態だが、話は今年2月に遡る。2月13日、小村氏がX上で愛知維新の会に離党届を提出したと報告。理由は同会副会長の岬麻紀衆院議員のパワハラ告発をきっかけとしたものだ。
これに対し愛知維新の会は同月22日、身を切る改革の不履行を理由に除名処分を決議。議員にとって除名処分は「死刑判決」も同然である。刑事事件や女性スキャンダル以外で除名に資するのか疑問だ。政党とは少しでも多くの所属議員を確保したいもの。維新の場合、地方議員を“ポイ捨て ”にするのが不思議でならない。
小村市議が当時の状況を説明する。
「岬麻紀衆院議員のパワハラに悩んだ元秘書らから相談を受けたことが発端です。ハラスメント委員会に告発できるのは特別党員(議員)だけなので私が代表して昨年11月28日に告発しました」
岬衆院議員のパワハラについては昨年12月に『週刊文春』など各誌が報じた。また経歴詐称問題も批判されたお騒がせ議員である。なにしろこのご時世、パワハラ、セクハラには厳格だ。一般企業や行政の場合は厳しい処分が待つ。
ところが本来、一般社会の範であるはずの政党が適正な対応をしなかったというのだ。
「委員会の担当弁護士とやり取りをしたのは2回程度でした。弁護士から被害者に連絡があったのは1月24日の一度だけ。この時点で委員会は開催されておらず見通しも立っていないというのです。そこで1月26日にハラスメント委員会委員長へ進捗状況とスケジュールを文書で回答してほしい旨の質問状を郵送しました。ところが回答はメールでスケジュールなどの説明はありません」(小村市議)
和歌山、長崎と同様に党ガバナンスが機能しているとは思えない。この結果、2月13日に小村市議は離党を表明することになる。逆に愛知維新の会は先述した通り身を切る改革の不履行を理由として2月22日に除名を決議。3月7日に「本人から不服申し立て」がなかったとして「除名処分」が確定した。
しかし除名に至るプロセスが公正とは思えない。
「2月19日にLINEで愛知維新の会の勝股修二総務会長から身を切る改革の不足金があるから離党届を受理できないため、不足金支払いの支払い意思を確認したいとの連絡がありました。期限日の24日(土)までにどう返答するか思案しましたが、ところが21日にLINEで除名通知が送られてきました。確かに不足金はありましたが、愛知維新の会身を切る改革委員長と相談の上、残金を今年3月と6月に生産することで合意しています。それに離党してもこれは履行するつもりでした」
回答期限を待たずに処分ということか? すでに支払い期日については合意していたにも関わらずなぜか反故にして除名理由とした。それも弁明すら許されないで、だ。小村市議によれば一連のLINEのやり取りは保存されているという。
愛知維新の会は除名確定についてHP上で「本人からの不服申し立てが無かったこと」とするがむしろ除名ありきではなかったか。
小村市議の除名処分について「身を切る改革」不履行を持ち出したのは口実の可能性が高い。というのは昨年9月、東海市・村瀬進治市議が職員に対するパワハラ発言で離党処分になった。
村瀬市議のパワハラ騒動も報道されることになったが、内部で十分な聞き取り調査が実施されなかったとの証言もある。また興味深いのは村瀬市議も身を切る改革は不足金があったというが、請求されていないというのだ。
一方で、小村市議だけ狙い撃ちのように履行を求めるのは不可解。
さらに疑問は尽きない。小村氏の告発は続く。
「愛知維新の会自体が身を切る改革を適正に履行してこなかったのです。その証拠に愛知維新の会の身を切る改革用の通帳ができたのは昨年9月のこと。維新本部が専用の口座開設をせよと通知したのです。逆にそれまでは愛知維新の会は身を切る改革用の通帳がありませんでした。それでどうやって適正に履行するというのでしょう」
同会HPを確認してみると、小村市議の除名決議のアナウンス(2月22日)の5日後、27日に「石川県5市町に身を切る改革の寄付を実施」として「令和6年能登半島地震」の被災地への寄付が報告されている。もちろん正当な寄付には違わないが、あまりにタイミングが良すぎやしないか。身を切る改革の手続きに不備があったとの指摘に備えたカモフラージュと見えてしまう。
というのはこんな経緯がある。
「故・杉江秀一前幹事長(元愛知県議)は政党助成金で飲食をしたことを理由に2021年に除名されました。この一件にも実はいわくがあります。杉江さんは身を切る改革の口座について疑問を持っていました。僕が議員になった時に“ 小村サンなあ、うち(愛知維新の会)は身を切る改革用の通帳がないだろう? 通帳を作れと言ってごらんよ。絶対に作らないから”と言われました。僕がなぜかと聞くと“身を切る改革なんてしていないよ。セルフ領収書だからね ”とこっそり教えてくれたのです」(小村市議)
通帳がないと本部に対して内部告発をしたこともあったという。しかし各地方の支部に任せるとの回答するに留まった。この辺りが維新には党ガバナンスがないと言われる所以ではないか。
杉江氏はその後も口座を作るように求めたところ先の政党助成金の飲食問題で除名になった。だがそれも党紀委員会すら開かれず除名処分が下されたというのだ。除名処分という非常に重たい処分を党の裁判たる党紀委員会で決定しないのは不当である。
先述した通り、杉江前幹事長は身を切る改革の通帳について問題提起していた人物。そこで党紀委員会もなしで処分とは愛知維新の会にとって不都合だから排除されたという見方をされても無理からぬ話だ。
責任者の山下幹事長に説明を求めたが
小村市議の訴えや疑問に対して愛知維新の会はどう説明するのか。本件について一任されているという責任者の山下幹雄幹事長(尾張旭市議)に取材を申し込むとともに質問状を送った。
①HPで(岬衆院議員の)ハラスメントについて「関係者への事情聴取を進めるなど、正当な手続きを進めており」としていますが関係者とは誰で、どのような手続きですか。
②ハラスメント委員会は合計何度、開催されましたか。
③貴会で身を切る改革の口座を開設したのは昨年9月なのは事実ですか。
④小村市議の党紀委員会が開催されたのはいつですか。また開催について本人や他の党員に通知を
しましたか。通知文があればぜひご教示ください。
⑤離党した村瀬進治市議には身を切る改革不足分を請求していないのは事実ですか。
⑥小村氏がSNSに投稿した主張について「誤り」や「偽証」はありますか。
これに対して山下幹事長はこう回答した。
ご質問に対する山下幹雄の現況における回答となります。①②につきましては、総支部の所管外となっており詳細は共有されておりません。他につきましては、訴状が届いておらず内容が確認できておりませんので回答は控えさせて頂きます。今後予定される法廷で、真実は明らかになるでしょう。改めましてご理解の程、よろしくお願い申し上げます。
これはおかしい。なぜなら通帳を持った時期などは山下幹事長自身が知りえる情報の上、隠すような話でもないだろう。
なにしろ議員一人の人生がかかった話だ。事実関係を明確にしようと回答の再考を促した。これに対して
「ご連絡を確認しましたが、ご指摘には誤認があります。詳細は事実をもって公正な法廷にて説明申し上げたいとと考えており、これ以上の回答はご容赦下さい」
という返答で終わった。
ではどの部分が誤認なのか。それだけでも指摘してほしいところ。逆に小村市議は「2月18日に除名ありきの会議を開いたことも証拠保全してある」としており、確固たる証拠を持っていると自信を持つ。
対する愛知維新の会が今後、どう反論していくのか。法廷闘争によって「パワハラ」や「身を切る改革」だけではなく日本維新の会の暗部が炙り出されるだろう。
それにしても相次ぐ日本維新の会の内紛、離党問題。共通するのは地方議員軽視の風潮だ。小村市議に次いで党を提訴した富山県射水市・呉松福一市議はこう嘆く。
「国会議員の場合、寄付といっても政務活動費などの一部を返還するだけですよ。ところが地方議員の場合は収入である歳費を削って寄付しなければなりません。維新の地方議員にとってはあまりに大きな負担ですよ」
切実な話だ。いざ国政選挙となれば運動に駆り出され馬車馬の如く使われるのも維新の地方議員。お揃いの緑のウインドブレーカーを着た運動風景はSNSで公開されるものだ。一見は明るく活気に満ちた様子だが、その裏では身を切る改革、パワハラ、上下関係に苦悩する議員も少なくないだろう。
本来は政党の足腰、基礎となる地方議員の軽視と排除。その原因に「身を切る改革」がある。しかし現実は文字通り党自体の「身を切る」としか思えないのだ。
杉江秀一さんから維新の議員は身を切る改革なんかしてない、身を切った議員がパワハラで辞めているという話を聞きました。近頃、町でどんどん増える維新のポスター、ルールを守らない政治活動などを見て、いったい党内はどうなっているのか?と思いますが、正しい事が通る世の中に戻すためにも今後も真実を報道していってください。
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ありがとうございます。ポスターもかなりポイントになってきますので次回のレポートもご覧ください。
兵庫県知事も示現舎の資料で、ある団体と見えました。
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