先週末から政治記者らの間で自民党・二階俊博元幹事長が「重篤」との情報が広まっていた。筆者は「報道勇者」Xアカウントで報じたがその後、都内病院でICU入りが判明。ここにきて大手メディアも続々と二階氏の近況を報じ始めたが、町村会による三男への出馬要請報道は新2区争いが勃発したことの鏑矢でもある。
世耕氏を 道連れに したまでは シナリオ通り
「二階氏が重篤で入院した」「公務に姿を見せない」
先週末から政治記者の間で不穏な情報が飛び交った。当時、自民党議員によると「発熱は事実だが重篤というほどではない」との話だった。なにしろ季節の変わり目で体調を崩しやすい。なおかつ政治資金問題、自身の出処進退、後継者問題などで心労が重なったこともあるのだろう。「体調不良」程度と思われたがその後、「都内の病院でICU(集中治療室)に入り伸康氏(三男)がつきっきりだ」といった話が続々と寄せられた。
二階氏の容態をめぐってはマスコミ各社も追っており、「在京メディアが私のところにも入院先を聞いてきた」(野党系議員)という状況。報道各社も混乱しているようだ。
二階氏は公の場に出ておらず動静はつかめていない。16日には都内で町村会のメンバーと会合、17日に出席予定だった政治評論家・田原総一朗氏の卒寿と出版を祝うパーティーはいずれもキャンセル。20日は自民党和歌山県連の会議も欠席。翌21日に同県連に確認したところ「昨日(20日)の会議を欠席したのは事実ですが、容態については確認できていません」との説明だった。
20日開催の県連会議というのが「次期和歌山県連会長の選定」というこれまた厄介な問題だ。同県連は現在、二階氏が会長だが、引退後も留任するわけにはいかない。本来は世耕弘成参院議員で決まり、のはずだがご承知の通り、同氏は政治資金問題で離党。となると後任候補として現会長代行・石田真敏衆院議員が浮上するはず。
ところが「20日の会合で不可解なことが起きていました」と党関係者。
「会議の開催について有力者であるはずの石田さんが呼ばれていないのです。また県連事務局が“世耕先生も呼んだ方がいいのでは”と連絡しました。これついては世耕氏側が断りましたが、後に本部からお𠮟りを受けたのです。それから周囲が頭を抱えたのが二階先生の代理として長男、俊樹氏が出席したこと。御坊事務所代表という名目ですが、これでは周囲に“後継者”と思われてしまいますよ」
すでに三男、伸康氏が後継者として認識されてきた。そこで俊樹氏が代理出席というのは後継者問題はまだ未解決ということになる。
「俊樹氏も県議らに頭を下げて回っていました。本人は(衆院選に)出る気満々なのでしょう」(同前)
もはや組織の体を成してないのが今の自民党和歌山県連。自民党のドン、二階氏が減退したことがあまりに大きい。二階氏の引退は政敵、世耕氏排除という大きな賭けだったが、しかし自身の後継者問題が残る上に、県連内部の混乱をどう治めるつもりか。
二階氏の目論見が 外れた末の町村会要請
一方、「二階氏が体調不良」と囁かれる中、和歌山県内21町村で構成する「和歌山県町村会」(会長=岡本章九度山町長)が23日、二階氏三男の伸康氏に新2区からの出馬を要請すると発表した。16日に予定された町村会メンバーとの会合は出馬要請に関することだろう。
もともと二階氏と町村会の関係は深い。新2区を伸康氏に継承させるのは「世襲批判」を受けかねないが、首長たちが二階氏への援護射撃を行った。町村会発表はマスコミ各社が報じており、「後継者は伸康氏」と有権者に印象付けた。
しかし不思議ではないか。6月解散説も取沙汰され次期衆院選は近い。本来は二階氏子飼いの議員団から要請があってもいいはずだ。これにも裏事情がある。
「県連有力者が県議、市議らに“二階先生、会長職の続投、伸康さんの出馬をお願いします”という要請をやってもらえないか。こんな風に頼んで回ったものの、誰も応じませんでした。そりゃそうでしょう。政治資金問題と世襲を追認するのだと有権者に判断されてしまします。それでなくても過激ダンスパーティーで状況は厳しいから」(地元自治体議員)
先生!ご決断を! まるで幕末ドラマのワンシーンだが誰もこんな芝居を打ちたくないのだろう。その結果が町村会の要請ということになる。あるいは二階氏が全盛期であれば県議、市議らも従ったはずだ。だが二階氏の威光はかつてのそれではない。
それを象徴するのが白浜町長選(28日投開票)。
「現職、そして二階さんと懇意にしている大江康弘元参院議員、鶴保参院議員元秘書、古川禎久衆院議員元秘書が立候補しています。もし二階さんが元気なら現職と大江氏の一騎打ちだったでしょう。大江さんは“ オレは二階先生の紀州犬だ”というほど心酔していますから」(現地記者)
二階氏が衰退しているのは「重篤説」以前から顕著。各議員たちの動きからも透けて見える。
世耕氏、鶴保氏、それぞれの思惑
二階氏の側近、鶴保庸介参院議員だが衆院一区に鞍替え表明していたが頓挫。
「あの過激ダンスパーティーのリークを鶴保派議員らが仕組んだことから反発が強いですね。世耕一派の排除目的だったのが、党全体の問題になりました」(前出記者)
いずれにしても一区には現職の維新、林佑美氏がいる。「彼女は和歌山県総支部内で妬み嫉みを受けたとはいえ、馬場伸幸代表のお気に入り。自身の親族を秘書にあてサポートしていますよ」(同前)
自民党には逆風、しかも現職有利という鉄則を考えても林氏優勢は否めない。鶴保氏の一区撤退はやむを得ないだろう。
しかも「(鶴保氏に)信頼があるわけないやろ」とは地元有力支援者。
「2月に御坊市で“にの親父”(二階氏)の誕生日パーティーがあったが、鶴保が欠席したんや。だから古い有力者たちは“不祥事を起こした時もかばってもらったやろ。(二階氏に)どんだけ世話になったんや”とカンカンやね」(同)
衆院鞍替えが構想が崩れた鶴保氏。対して離党中の世耕氏だが失地回復を狙っている。
「御坊市に世耕後援会御坊支部を置いた時に二階さんは“どういうつもりや”と激怒しました。対して世耕氏さんは“だから(二階氏子飼いの)門博文の選対本部長(昨年衆院補選)をやっている”と反論したんですよ。これがお詫び代わりになるとは思えませんけどね(笑)」(前出県連関係者)
新宮市(新2区)が本拠地の世耕氏にとって衆院2区への鞍替えによって復権したいところ。伸康氏が立候補したとしても世耕氏には十分、勝算がある。しかも選挙区内には近畿大学関係施設もあり、地域的な結びつきも強い。
しかも世耕氏はすでに臨戦態勢。
「世耕氏の有力支援者の事務所になぜか維新・林衆院議員のポスターが貼られるようになりました。世耕氏は一区で林さんを応援して、代わりに維新からの協力を得ようというのでしょう」(前出記者)
このような状況だから二階氏にすれば町村会からの出馬要請は頼みの綱だった。ただ二階家内部は揺れている。先述した通り、長男・俊樹氏が県連会議に代理出席というのはまだ後継者争いが続くこということだ。
俊樹氏との関係、権謀術数が飛び交う国政選挙、それも相手は大物の世耕氏の可能性…伸康氏が置かれた立場は過酷だ。しかも父、二階氏にかつてのような力はない。
「状況、立場は異なりますが、河村建夫元官房長官‐建一親子も2021年の衆院選で山口3区から追放されました。自民党のドンと呼ばれた二階氏の後継者とはいえ選挙は甘くない。伸康氏の新2区継承は並大抵のことではありませんよ」(前出県連関係者)
二階氏が復帰できたとしても引退表明した以上、従来のような“剛腕”とはいかない。あの町村会要請は政界のドンと呼ばれた二階氏最後の仕掛けだったとすれば痛々しさすら感じてしまうのだ。
1本化も出来無い様じゃ世耕にヤラれる。世耕も嫌だけど先ずは二階親子の政界追放ダ。
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新・和歌山2区民(旧・和歌山2区民)です。5月1日の「わかやま新報」(和歌山県北部をカバーするローカルほぼ日刊紙)1面に、二階俊博氏の後援会「新風会」が、伸康氏を後継指名したという記事が出ました。俊樹氏からの提案だとのことです。