“お東さん ”こと真宗大谷派(東本願寺)は日本有数の宗教団体であり、また関西におけるリベラル言説の発信源になっている。人権問題、反戦・平和、死刑廃止…こういった活動に取り組む一方で解放運動推進本部という部署がある通り部落問題にも熱心な団体だ。人権を叫ぶ一方で内部ではパワハラ等の問題行為の発生もしばし。そんな風潮に嫌気がさしたか愛知県岡崎教区のとある住職が教区内の会合で解放同盟批判を行ったというから驚き。住職を批判に向かわせたのは意外な理由だった。
同和タブーを 実感したキラキラ 部落報道
今年は水平社100周年をテーマにしたマスコミ報道が散見される。その実態は運動体の意を汲んだ内容で、活動家の一人語りの垂れ流し。典型的なキャンペーンであり、報道と別次元のシロモノだ。著者の目には記者が“ 良い子”でありたいキラキラ報道にしか見えない。
しかしその一方で同和行政、解放運動が残した負の部分と向き合うマスコミはまずお目にかかれない。現在、取り組む熱海市土石流は自由同和会神奈川県本部の前代表・天野二三男氏が関与しているのはご存知の通り。同市が開催した土石流原因を究明する特別委員会(百条委員会)でも委員(市議)たちから意外なほど同和行政に関する指摘があった。しかし同委員会における同和部分の証言や関連性が報じられることはない。それ以前に「自由同和会」というキーワードすら確認できないのは奇妙だ。
同団体は自由民主党と関係が深い。反体制、反権力、反自民を是とするマスコミにすれば格好の攻撃材料ではないか? ところがこと同和が絡めば普段の威勢はどこへやら、だ。
「今なお根強い部落差別」といった言説には堂々と水平社、部落、同和といった用語が躍る一方で、同和が含む不都合な側面は“ スルー”という現実。もはやマスコミとは報道ではなく特定団体、特定人物のスポークスマンに過ぎない。
マスコミにすればそれが「寄り添い」「向き合い」「考える」というに違いない。しかし運動体と関わる関係者の中には切実な向き合い方をする人物も存在する。
キラキラメディア、活動家にとってみればこれも「差別」と断じそうだが。
教師修練で 糾弾集会のビデオを 見せられる僧侶たち
大谷派と解放同盟の糾弾の歴史は長い。1967年、真宗大谷派難波別院の輪番(役職がある僧侶)が被差別部落出身の男性職員と交際していた女性職員に対し交際を絶つよう勧めた「難波別院輪番事件」の糾弾の模様は『解放新聞』や大谷派関係資料にも記録が残る。また1987年、元宗務総長が講演会の発言を糾弾された「全推協叢書『同胞社会の顕現』差別事件」(糾弾集会は1989年)は現在、解放同盟と大谷派と関係を決定付けたといってもいいだろう。
ある大谷派宗議員はその卑屈な関係性を打ち明ける。
「小森龍邦氏(部落解放同盟広島県連連合会委員長、元衆議院議員)に対して大谷派役員や事務局幹部は“小森先生 ”と呼んでいました。元衆議院議員だから“ 先生”には違いないけど後継者の(同県連委員長)岡田英治氏にまで“先生 ”というのは違和感がありますね」
また若手職員も派内の風潮に辟易する一人。
「教師修練のプログラムでは解放同盟の糾弾集会のビデオを見せられます。部落問題の学習とはタテマエ。単純に恐怖感を植え付けるだけです」
こうした状況にあって解放同盟に「ノー」というのはかなり勇気がいることだ。愛知県岡崎教区のある僧侶がたった一人の抵抗を見せたのは今年1月11日のことだった。
住職「部落解放同盟と いうのは腐っているのでは ないか」
現在、大谷派は各寺、門徒の負担軽減や財政健全化を進めるため「宗務改革」に取り組む。全国の教区に「内局」(政府で言うと官僚のような立場)らが巡回し議論している。今年1月11日、「真宗大谷派行財政改革についての内局巡回」でそれは起きた。岡崎教区のある住職が解放同盟批判を始めたのだ。記録を転載するが「質問者」というのが件の僧侶である。
質問者 資料にある中央宗門機構の改編についての要望。(宗門機構の中にある)私は解放運動推進本部と、その中にある女性室を廃止すべきだと考えています。また、同宗連を脱退して、部落解放同盟との関係を解消すべきだと考えています。 理由は、2011年に東日本大震災が発生し、多くの方々が大変な被害に遭ったわけですが、その時の民主党政権で復興担当大臣を務めていた松本龍という人がおられます。この人は衆議院福岡1区の選出で、松本治一郎さんの・・・
内局 すいませんが、改革案についての質問を。
質問者 そういうことです。言わないとわからないから、わかっていただきたいと思い、長くなって申し訳ないが続けます。その松本龍という人は、部落解放同盟の副委員長を務めておられ、その人が被災地で、被災地の知事さんたちに知恵を出せと。知恵を出さない奴には金はやらないと。サッカーボールをぶつけたりとか。礼儀作法がお前らはなっていないとか。
非常に高圧的な暴言を吐き、さらにマスコミの人たちにこれを報道した奴は終わりだぞと脅しをかけると。それは今でもユーチューブで見ることができるわけです。 今まで、差別の痛みがお前たちに分かるかと言って、散々私たちを謝らせてきた人たちが、被災地の人たちの痛みを全然わからないわけですよ。
その松本龍さんは、大臣は辞めたけど議員は辞めない。次の年の衆議院選挙では又立候補して、今度は落選した。そのひとを立候補させる神経って一体何なんだろうと。組織として部落解放同盟というのは腐っているのではないか。
内局 すいません、他の組織を誹謗中傷するような言動は・・・
質問者 ですから、これは誹謗中傷でございますが、常識的に考えて、誹謗中傷せざるを得ないじゃないですか。
内局 そのことと内局巡回と・・・
質問者 関係しています。だから、そういう酷い組織と縁を切ってほしいということを私は言っている。
内局 その件については、また別途ご相談させていただく。
質問者 私は常識的なことを言っていると思っていますが。ではこの件はこれで。
内局 またご相談させていただく。
一字一句まっとうなことを住職は発言しているが、しかし運動体、マスコミからみれば差別発言と批判されかねない。「言及すること、論評すること自体が差別」とい考え方は現在のフェミニズム、LGBTでも見られる現象。その根源は元部落解放同盟中央執行委員長、朝田善之助の「朝田理論」だろうか。すなわち「ある言動が差別にあたるかどうかは、その痛みを知っている被差別者にしかわからない」「日常生起する問題で、部落にとって、部落民にとって不利益なことは一切差別である」といった思想だ。
しかし先述した松本龍発言というのは明らかに問題である。しかもそれが長年「差別」「啓発」だとし教派に介入してきた解放同盟の頭目たる人物だ。現場の僧侶が不満に思うのは無理もない話。
解放同盟批判住職は 部落問題に熱心な人物だった
事情を聞いてみようと発言主の住職にインタビューを申し込んだが、「松本龍? なんのことでしょう。どこに電話をかけていますか。どこから電話をかけてきましたか」と妙な対応をする。本人で間違いないはずだが…。
事情に詳しい宗議員に説明したところ、問題の住職は「精神的に参っている」ということだった。
「実はこの住職は部落問題にとても熱心な人で、独自に取り組み、研究をしてきたんです。ところがその結果“ なぜ部落問題はなくならないのか”という疑問に対して“解放同盟があるから ”という結論に至りました。そこで内局巡回の時の発言につながったんです。ところが問題が大きくなってしまい本人も悩んでしまって…。応対がおかしかったのもそのせいでしょう」
解放運動について熱心に向き合った末の「解放同盟批判」というのは、対立団体である人権連(共産党系)に近いイメージだが「本人(発言住職)はアンチ共産党ですよ」(前同)という独特の立ち位置だ。
これまで発言が差別と問われ糾弾集会が開かれた大谷派。この住職の身辺も気がかりだが
「特に糾弾ということはありません。岡崎教区内で研修会という形で終わらせる、という方針のようです」(宗派関係者)
ということで内々に処理という顛末のようだ
熱心に考えた末の解放同盟批判というのも部落問題に対する向き合い方、取り組み方の一つではないか。ところがこうした考え方はマスコミに取り上げられることもなければ、特に声が大きい活動家にすれば問答無用で「差別」と断じられ、同和タブーが高まっていくだろう。ただそれが同和地区にアイデンティティに持つ住民に有意義なのかは判断できない。
こういうまともな住職もおられるのですね。
こういう方が発言後に心の病に陥るというような現状では部落問題なんて何も変わらないような気がします。
お寺もマスコミも頭の中ではわかってると思うのですが。
寺社と解同になんで事実上の上下関係が?と思ったら難波別院輪番事件とか、こんな針の穴でも遮二無二こじ開けて浸徹する組織方針には恐怖を覚える
今でいえばSNSの呟き一つ発掘して拡散炎上させるようなものか
カネのため差別を利用するという、歪んだ物事に真面目に接すれば理不尽に直面することになる。病むのも仕方ないように思えます。それでも信念を曲げなかったのでしょうね。
この住職さんに全く賛成です。以前糾弾学習会に出席したことがありますが、これが人権団体なのかと恐怖をおぼえました。もちろん功績もあるでしょうが負の面もあります。宗派は門徒のためになどと言いますが、こうした団体とタッグを組んでいるということを門徒はどう思い、門徒に対してどのように説明するのでしょうか。
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