12日、熱海市百条委員会で証人尋問を受けた前土地所有者。もうご存知だろう。かつて同市議会で「同和系列の会社」と答弁された人物である。約2時間に及ぶ証人喚問の中で焦点はやはり“ 同和の名刺”がどの程度、行政に影響したのかという点だ。
2人の委員が果敢に 同和に切り込んだ
弊社が取材に関わった津市相生町自治会長事件の背景には同和行政が大きく影響しているが、事件を検証した津市百条委員会で「同和」「部落」という用語は皆無に等しかった。逆に熱海市百条委員会では市との折衝の中で同和団体、つまり“ 同和の名刺”の影響を指摘してきた。今回はその中心人物たる前所有者に委員たちが切り込んだ。前所有者は冒頭、犠牲者へのお悔やみを述べ尋問はスタートした。
10年以上前のことなのでいかんせん記憶の違いがありますのでご承知ください ご遺族の方には心よりお悔やみ申し上げます。
―委員長 伊豆山赤井谷の盛り土業者は誰に頼みましたか。
B社(*公文書上はE社でもある)でございます。盛り土業者と契約をした覚えはありません。
―委員長 B社からはA社(前所有者企業)にどれぐらいの収入がありましたか。
補足説明=前所有者はB社に伊豆山土地を「貸した」という形にしており、B社から賃借料を得ていたのではないかという指摘である。
収入はないと思います。頂いておりません。
―委員長 熱海市へ届出書の内容、盛り土の高さは15m以下、盛り土最下部に土堰堤や沈砂池等の届出書通りに施工するよう盛り土業者に指示をされましたか。
許可書と設計図書を渡しています。沈砂池については当社で築造しています。
―委員長 沈砂池だけはA社で施工されたということですか。
そうです。
―委員長 2010年10月に熱海市からA社に土採取等規制条例に係る行政文書が発出されています。内容は土砂の搬入をしないこと、完了届けを提出して検査を受けること、行政を無視して残土搬入が行われており、土砂崩壊が発生すると逢初川水域の住民の生命と財産に危険を及ぼす可能性があるので、土砂搬入中止を要請しています。これらの要請に対して盛り土の届出者、土地所有者として適切に対応されましたか。
文書については分かりません。記憶がないですね。現場のことは分からないですね。ただ事務方がしっかり対応しているはずだと思われます。
―委員長 事務方から報告を受けたことはありますか。
記憶の中ではありません。
―委員長 土地を売却する際、土地購入者に対して盛り土が適正に施工されていないことや県や市から土砂流出の懸念や防災工事を依頼されていたことを説明しましたか。
土地を売却する際に本件土地については私の方から売りたいということではありませんでした。現所有者からぜひ買いたいということで仲介人(現所有者担当の不動産業者)から(前所有者側の)不動産業者に(話が)きたそうです。この不動産業者から「この土地を売れるか」となったのが経緯でございます。
―委員長 では詳しく説明していないということですか。
違います全然。そして仲介人が私の事務所に来て、本件土地に関する概要等はしっかり説明しています。仲介人は説明を受けて熱海市役所に何度も足を運び、この土地について是正項目が入っていることを知っていましたから、確認をして売買契約書は不動産業者(前所有者側)、重要事項説明書は仲介人が作り上げました。
―委員長 A社は〇駅裏側の宅地分譲開発で所要の申請をせずに、斜面の木を伐採しそこに多量の土を落とし、2012年5月に多量の土砂が隣地の墓地に、その下の市道に350mほど流出し大変な事態になりました。赤井谷の盛り土ははるかに超える盛り土量であり、さらにその下には逢初川があり、土砂の崩壊の危険性は十分、認識できたと思いますがその点はいかがでしょうか。
本件土地は是正終了、当社の考えにおける是正終了しています。また本件土地につきましてはもともとは安定しています。さらに是正指導を行っていますので、この危険性についてはありえません。10年間の安定が示しています。
―委員長 是正終了しているということですが、具体的に説明してもらえますか。
行政と打ち合わせをして、検査済み、完了は取れる状態とはどういう状態か私自身が確認しています。現所有者とやり取りの中で中止をした訳ですが、役所が言っている構造的確認、構造的安全ははかられています。できなかったのはごみ処理の問題です。
―委員長 市役所が言っている安全対策は終了していると言いますが土堰堤を、15mの盛り土の高さをはるかに超えていて、安全に問題なしというのはないと思いますがいかがですか。
これは仲介人が役所に出向いて、完了届を出せる状態であることを確認しています。その報告を受け、重要事項説明書ができあがったんです。だから役所の行政指導の通りです。
―委員長 再度、確認させてください。仲介人が役所に行って、完了届ができる状態ですと市が言ったということですか。
そういうことです。
A委員 A社は伊豆山赤井谷35万坪の土地を取得して、大規模な宅地造成を計画したのは事実ですか?
事実です。
A委員 崩落したところを宅地にする計画はありましたか。
宅地は設計部がやっていましたが、宅地までは考えていなかったと思います。その奥です。熱海市が使用している水道管の道を使って、現在のグランド、その右手側のソーラー、その水道管道に沿って特に左側、グランドの用地のところを設計した図面を私は見ております。
A委員 赤井谷の崩落現場はどういう予定でしたか。
通過道路とゲートですね。記憶ではそのような意識があります。
A委員 赤井谷の崩落現場ですが2007年3月9日、県土採取等規制条例に基づく「土の採取等計画届出書」を提出し4月9日に熱海市は受理しています。空欄や記入が不備のまま提出されていますが、なぜですか。
設計部の担当になると思いますが、なぜ空欄にしたのかは私は分かりません。許可担当者(故人)が空欄のまま出すことは行政指導の下で行っていますから、役所が書けと言えば書く、書かなくていいと言えば書かない、当社職員はこれぐらいの認識ですので、行政指導のまま行っていると認識せざるを得ません。なぜ空欄のまま受け取ったのか逆に理由を聞きたいです。
A委員 空欄というのは通常であれば「無届状態」と一緒ですが、市役所ではこれを受理しないことの方がその後の影響が大きいと解釈したようですが、それについてはどのような考え方でしたか。
議員のおっしゃる通り、申請書ですから受け取るべきではないと私は思います。申請書は見ていませんから今のような答えしかできないことをご理解ください。
A委員 土採取等規制条例について平成21年12月10日、熱海市に提出された一回目の土採取等規制条例変更届を熱海市が受理しています。図面の制作者は証人(前所有者)になっていますが、静岡県は受け入れ可能な土の量が約6000~8500㎥程度で、あの土地に3万6千㎥は到底入らないと言っています。証人の意見を聞かせてください。
設計部の職員は専門家と聞かれたらそうではありません。設計部は真面目に計算をしています。行政はあらゆる許可に対して検証して適正か判断して、許可をすることが職務です。熱海市なのか静岡県なのか分かりませんが、検証して許可したなら反対に責任問題。会社としてはいい迷惑と考えています。
A委員 3万6千㎥という数字は最初に土採取(*盛り土の申請こと)が出された時の堰堤がロックフィルダムの数字ですね。それを土堰堤に変えたわけです。3段15m程度(*の土しか入らないのは)設計部も理解されていると思うんですよ。土堰堤になるということは(盛り土の)規模も小さくなるはずなのになぜ3万6千㎥という数字が書かれていたのですか。
(*公文書より。前土地所有者A社が市に県土採取等規制条例に基づく土の採取等変更届(第1回)を提出。市がA社の変更届を受理。変更内容は以下の通り。1.工法:ロックフィル→土堰堤2.面積:9446平方メートル→9695.89平方メートル3.工期:2007年4月9日~2008年4月8日→2007年4月9日~2010年4月8日4.現場責任者:D社→E社)
補足説明=つまり強度の強いロックフィルダムから強度で劣る土堰堤に変わったのは必然的に盛り土量も少なくなると考えられる)。
設計部は行政と打ち合わせをしてロックフィルから変わったであろうとしても、行政協議の中で図面を作成したから、それを言うなら行政検証がされていなかったことになるのではないでしょうか。
A委員 3万6千㎥という数字自体は間違いだったということですか。
私は申請書を見ていません。担当者をかばうわけではありませんが、このようにしか回答できないということになります。
A委員 市の方では入らないと理解していると。当時、3段15m以上は盛りませんという約束があった中で指導する方法をとったとそのようなお話をされています。当時の(A社の)担当者も理解していたと思いますが、それ以上に盛られましたが、どうお考えですか。
それについてはコメントできません。当時、聞いているわけではありませんので。
B委員 売買契約成立前は現所有者と会いましたか。
売買で初対面だったと記憶しています。
B委員 何回ぐらいお会いしましたか。
3回は会っていますね。
B委員 売買契約成立後は現所有者と会ったことはないですか。
ありえません。
B委員 その後は会ってない?
会ってます。(*ありえませんとはっきり言ったがその後の証言は会ったと言っているのでこのまま)
B委員 場所は?
小田原で会いました。
B委員 あの土地(伊豆山)で会ったことはないですか。
私の職員が会った話を聞いていますが、私は会ってないと思います。
C委員 4月8日の参考人(盛り土の実行行為者)により2009年11月17日、A社事務所に行った際、証人から伊豆山赤井谷の奥にもっと土を入れてくれと(指示があった)証言がありましたが事実ですか。
彼(8日参考人、盛り土の実行行為者)に土地を貸しているわけですね。貸している人間に指示は出せない立場でした。またひな段の奥に入れろとは私が言いにくいことだと思う。言葉の端々をとって言っていることではないかと思います。私の範疇では記憶にありません。
補足説明=元社員によれば前所有者は同参考人に土地を貸したという点は正確だが、金銭を受け取っていないという証言は疑問が残るという。一方で同参考人は前所有者が湯河原に持つアパートに居住した過去があり、電気代・ガス代などの領収書が存在するという説明だ。
C委員 同参考人は月末の報告書は提出していたと言っています。どのぐらいの経費がかかり、残土がどれぐらい入っていたか報告書を提出したと証言されていますが、事実ですか。
月間の報告書は見ていません。知りません。まして経費が出ているとあるが貸している土地の経費がなぜ必要なんですか。意味が分かりません。
C委員 熱海市内の土地購入や開発で市長や議員の介入はありましたか。
市長や議員は申し訳ないが誰も知りません。当時の議員の先生もまず知らないと思います。市長については一度だけ挨拶をした程度です。
C委員 市職員に自由同和会の名刺を出した理由を教えてください。
これにつきましては私どもの職員はほとんど元ヤクザや刑務所から出てきたりで、小田原拘置所から依頼があって採用した職員です。私の行政交渉の中で役所は人を見て指導するということがありました。そのような点から過去はともかく現在は真面目にやっております。そのような点から行政に行って許可をとったり、交渉をやらせていました。したがって各セクションのだいたいの課長にお会いして、こういう人たちだけどよろしくご指導くださいと名刺を出しています。
C委員 聞いているのは自由同和会の名刺を出した理由ですが。
以上です。同和会の名刺を出せば親切にやって頂けるからです。
C委員 市の職員の反応はどうでした。
様々だと思いますよ。熱海市の職員は大変、親切にやって頂いたと思っています。一生懸命やっていましたよ。他の行政庁に何百も挨拶をしてきましたが、熱海市はよくやって頂きました。
C委員 2007年3月9日に申請された土採取ですが、添付図面を作成した人物に当百条委員会で参考人として証言してもらいましたが、赤井谷(の図面)を作ったが、申請書に使用されるとは考えていなかった証言しています。また当委員会で証言したD社も自分は知らなかったと証言しています。同じ申請で2人とも知らないと言っていますが、どういうことでしょうか。
(図面を作った)参考人は〇〇社の方だと認識します。彼はA工区からお願いしたと記憶しています。参考人が設計図書を知らないというのならば、許可担当職員と実行行為者(B社)が直接お願いしたと思います。しかし数年前に参考人(〇〇社の)と会った時に「だいぶ設計代がたまっているんだよね」と言われました。彼が知らないという認識は私にはございません。
数千万たまっているといってますから。D社関係ですが彼(参考人、開発業者)は紹介でもってうちに入社した人です。私にとって便利なのは彼が建設業免許を持っていること。(当時代表者だった)D社社長〇〇君は(参考人、開発業者の)娘婿でした。うちの息子も就職させてくれないかということで、彼(参考人、開発業者の)は開発部長、娘婿は総務課長として採用しました。したがって会社ごと就職をしている解釈をしています。ただ当社の10数か所の開発現場の工事関係の責任者はすべてD社です。彼が知らないというのはありえないという認識をしています。山梨県の建設許可登録は確か3,5年で書き換えになると思いますが、当社の工事台帳を全て添付しています。彼の発言はありえないと認識しています。
補足説明=D社の事実上の代表者は造成、盛り土工事の中心人物。参考人、証人喚問の両方に出席。前所有者の音声データを提供している。元社員によると娘婿氏はD社の名義上の社長にすぎず、すでに前所有者、D社から離れている。
C委員 土地造成に関わっていない、土地所有者として3万6千㎥の申請を出し、許可を受けましたが、土地造成を行ったのはB社でウチは許可証を渡して、土地造成を任せたものの倍の盛り土なんて知らなかった、この発言は覚えがありますか。
事実です。
C委員 先ほどの証言で土砂を搬入したのはB社であると証言しましたが、ここで2009年12月13日に熱海市役所がA社を訪問した際の音声があります。この音声については一部をお聞きして頂きます。音声が劣化して聞きにくいと思いますが、ご自身で間違いないでしょうか。
補足説明=前所有者と思しき声で赤井谷、B社代表者名、施工方法といった言葉は聞き取れた。
不鮮明だけど私の声とも思えますね。
C委員 私の声とも? そうではない可能性も?
そのように言われると作られているかもしれませんし、分からないじゃないですか。私の声だとも思われます。(*少しイラついた雰囲気だった)
C委員 まず「うちがあくまで管理している、うちが決めたことをB社にやらせたらいいじゃないか」。指示をしているんですが、先ほどの冒頭の答弁にB社からの収入がない、とお答えしていましたよね。収入がないのに指示をしていたんですか。
部分的にとらえた言葉のあやだと私は考えます。
C委員 そういう風に言われるからあらかじめ(長めの音声内容を)お渡しして百条委員会に出ているんですよ。他の委員も知っているし、音声の一部を確認のために聞いて頂いたのですが、あらためて聞きますが収入はないのに指示をしていたのですか。
収入はありません。はっきりしていません。
C委員 指示はしたんですか。
していません。今言ったようにB社との話なんですが、(音声は)行政との話と聞きましたが。
C委員 行政との話ではなくウチ(A社)が管理をして、ウチが決めたことをB社にやらせればいいじゃないかという発言は事実ですか。
それは泥入れについてはB社にやらせればいいじゃないかという意味だと思います。
C委員 この音声であなたの発言を聞く限り盛り土の施工方法や管理はあなたが主体で進めていたと推察できます。市から当初の図面と土量や形が違うこと、土砂流出などの指摘を受けています。この後、証人は施工について熱海市と協議し、B社にどのような指示をしたのでしょうか。
私は分かりません。今、言っていることも理解できていません。
C委員 マスコミに対して埋め立て(盛り土)に関与していない、土砂の搬入は指示してないと答えていますが、全く指示をしていないということですか。
相談があればアドバイスもしました。他人じゃないからどうしたらいいかな、というなら当然アドバイスをします。ここでこう言っているじゃないか、というのは言葉のあやです。
C委員 次進めます(突き放した様子で)。次に2010年11月2日の音声を聞いてください。聞きにくいですが。
「俺はこういうよ。熱海市役所に行ってまず入れさせないことなんて飲まない。まずここからが出すんだから入れる。入れながら今度はこう入れる。それが全部だな。後は入れる所は全部入れる。理由がない。断られる理由がない。B社云々じゃない」
C委員 こういうことですが、(声は)証人で間違いないですね?
私の声とも思われます。入れるというのはD工区を言っているんですかね。逆に私が聞きたい。埋立地に限定しているようですが、E工区もあれば、C工区、D工区もあるんです。埋立地を指して言っているんですか?
C委員 そうだと思いますよ。
それは判断できません。
C委員 B社は「これ以上の土砂搬入はしない」と熱海市に通達したようですが、それでも証人はB社の通達は関係ないとし、熱海市から搬入を断られる理由がない、追加で土砂を入れると発言しています。あなたに対して熱海市が断れない理由とはどんなことでしたか。
全く分かりません。B社がもう入れられないと言ったことも記憶にありません。泥を入れるのは勝手だと言ったのも記憶にありません。
C委員 もっと長い音声をお渡ししていますが、土砂搬入の会議で指示しているのは間違いないのではないでしょうか。
分かりません。なぜそんなテープがあるんですか。
C委員 次進めます。次の音声は現所有者に譲渡された後、2011年6月20日に熱海市役所内で録音されたものです。この音声も証人で間違いないですか。
補足説明=切り取りとの指摘もあるかもしれないが是正工事などについて「俺がやるしかない」と言ったのは聞き取れた。
そうとも言えますね。
C委員 この音声で変更届と是正工事完了について、今後は証人が責任を持って完了させると断言していますが、変更届に必要な図面と是正工事に対してどのような対応をしたんでしょうか。
分かりません。
C委員 また断言した責任を果たしたとお考えですか。
6月20日は私は記憶がなかったんですが、行政記録の中から私が言っているように見受けられましたので、当時一緒に行った元社員に確認しました。そして記録の中では私と元社員と仲介人(現所有者の)が行っているようですね。その中で工事をやらなければならないということでいいでしょうか。
C委員 ということは音声はご本人と認めますか。
いやだから。私だとしてもそのようなことを言っているのでしょう、としか言えません。
C委員 元社員と仲介人と行ったということですが。
この音声を聞いて、そうではないかなという打ち合わせをしました。そうじゃないかな(本人である)ということでした。
C委員 2011年1月28日、A社、関係企業、現所有者で契約された売買契約に売り主、買い主間で約定された土の処分場を、盛り土について次の通りで間違いないか。売り主は沈砂池に対してひな段崩壊防護を形成し、凝固剤で固めることを引き渡しまでに買い主に対して確約するものとする。この契約時の重要事項説明書は仲介業者が熱海市に売り主、買い主と協議し、作成したもので間違いないですか。
売買契約に仲介人が重要事項説明書を作ったということですか。そうですよ。
C委員 間違いないですね。
そうですね。
C委員 そうすると売り主が責任を持つわけですから、本日別の証人(D社)は「前所有者企業が何もしないので現所有者から発注を受け工事をした」と言いましたが、事実ですか。
現所有者からではないと思いますが、私がD社に行ったのは「300万円もらえるからいいだろう」と同意をしたのは覚えています。
C委員 そうすると2011年6月20日、熱海市と協議時も是正工事を完了すると断言していますが、A社が責務を生じると思いますが、なぜ実施しなかったんでしょうか。
当時、うちの担当は〇〇さんだったんですね。本来、私どもの会社はひな段固めとごみ処理でした。当社の引き渡し工事の都合上、遅れました。仲介人(現所有者の)が「早くやってくれよ」ということでした。そして5月16日、当社の〇〇さんが仲介人(先の)と行政が集まって協議をした結果、排水路を作れということになりました。泥を除去しろと、ということの2項目が増えてしまった。その2項目はうちの責任ではないが、仲介人が「やってくれないと困るんだ」と現所有者からも責められたのでしょう。そして出てきたのが、先ほどの録音と思われます。
7月12日に当社と仲介人、〇〇さん、熱海市、静岡県、10名前後が集まったそうです。その中でこの工事をやってくれないと困ると、この工事はやらなければならないとなった。そしてうちの〇〇さんが現場に確認に行ったところD社は硬化剤で固めたよ、水路を作ったよ、沈砂池も全部、洗ったよ、ということを言ったそうです。
またしばらくして行ったところ、ごみを出すから鉄板を用意してくれと。鉄板なら〇〇社があるからと鉄板が運ばれてきました。その中で、D社が「手付が振り込まれたけど、残金が来ないからできない」と言ったそうです。そこでD社が現所有者の携帯に電話をしたところ「A社からもらえばいい」と電話を切られた、ということでした。そのことをうちの社員に話し、D社はお金がもらえないんじゃできませんよ、と教えられました。お金がもらえないならば、仕方がないので会社で工事中断を決定したということになります。
C委員 仲介業者は300万円を残金として決済したとありますが、事実ですか。
事実です。
C委員 300万円の意味はなんですか。
留保金です。工事が終了していないための留保金です。
C委員 メディアに名義だけ貸している、運搬したのは別の業者と言っていますが事実ですか。
事実です。
D委員 源頭部の盛り土に対する行為は率直に認めるけど、行っていないことで批判や責任を負うのは我慢できないと主張されたと聞いてきました。ご自身、行った行為は何で、行っていないという行為をご説明ください。
当社は許可申請会社で、埋め立て工事会社ではないということです。
D委員 今回の伊豆山開発のことでご自身も足を運ばれて窓口で話し合いをされたと思いますが、名刺を出した時に職員はどのようにはからってもらったと感じていますか。
同和会の名刺を出すと優遇される、とれない許可をとれてしまうと言われますが私の40年間の中でとれない許可がとれたことは一切ありません。ヒントをもらったりアドバイスは頂きますが、だけども名刺については行政が受け取らないならばいいですし、そういうところもありました。答えが外れてしまいましたが、もう一度。
D委員 同和の名刺は職員にどう影響を与えたか、どう感じましたか。
名刺のおかげか分かりませんが親切に対応して頂きました。しかし(名刺のおかげで)ああだの、こうだのということは一切ございません。
D委員 本来、そうあるべきだと思いますね。名刺を出さなくても適正に窓口に来た方に対応するのが行政だと思います。御商売の名刺以外に、世間では「こういう方なのか」という名刺を出すことはどうなのか、と。
行政はですね、(相手の)顔色を見るんですよ、残念ながら。こういう人なら、こういう人。私ははっきり経験則の中で言えるんですよ。私が名刺を出すのと同じように、議員の先生も名刺を出すとよくやってくれるじゃないですか。そこをご理解ください。私は前職過去を一切聞きません。私が思っている趣旨は人権運動なんてオーバーなことは言わない。しかしこの人たち(社員)はそういう立場(過去の履歴)をもって人生を歩んできた人たちが私のところに就職をしてきたんです。そこをご理解ください。私は前職を聞きません。今が良ければいいというのが私の趣旨です。
D委員 行為は大変、素晴らしいと思いますが、受け取る側としてやっぱり萎縮をしたり、行政手続きに影響があるという心配が大変な事故につながってしまうとプラスにならないですよね。
ようやく先生の趣旨が分かりました。名刺を出すということなんですが、当社の社員のZの時代からということもあるんですが、Zは行政に対してもつっぱってモノを言ったのでそういうことはあったのかという気はしますね。
D委員 D社が勝手に名義を使われたという主張ですがこれは事実でしょうか。
D社は就職をした際に、先ほどのZが本来、工事部長。Dが来たからZは許可担当部長で、Dが工事部長になりました。名義を勝手に使われたのはありえません。Dが会社にハンコを預けるというのはないと思います。
D委員 音声データを聞かせてもらいましたが不明瞭な点もあります。一部報道でD社があなたに音声を買わないかと持ちかけられたという元社員の証言を紹介していましたが、あなたも認めたということです。本当ですか。
それでは音声データについてお答えします。このテープと写真は私にとって不利な資料をD社が持っていると。その代理人が音声データを買わないか、買わないといけないのではないか、ということで相談に来たのです。
D委員 いくらで買わないかときたんですか。
D社のお父さんが持っていた自宅の隣、それが200坪ございます。それを彼は平成25年、26年だったか競売にかかる「社長、なんとか助けてくれないか」と相談に来ました。最低額が750万円でした。落とされたら(他人に落札)大変だから、彼の自宅は450坪と広いからこの角地を競売で落とせば、そこから道路を入れて自己の土地を分譲してお返しするんで、1200~1300万円で入札してくれ。うーんしょうがないなということで、1239万円で甲府の裁判所に社員を行かせ落札したんです。私(D社)も老後があるから現金で500万円ほしい、とそういうことを言われました。
D委員 2007年当時のことについて、赤井谷の貯圧槽の応急復旧工事が進まなかったのはなぜでしょうか。赤井谷の土砂流出で逢初川の濁りも早急に防災工事をしなかったのはなぜでしょうか。
Zの時代ですね。彼もツッパリ屋ですが、一生懸命やっていたと思うんですね。記憶はありませんが、彼のことだからよくやっていたとしかお答えできないです。
D委員 同年7月に土採取等計画届出書の工期がきれていたために熱海市がA社に対して変更の書面を出すよう求めましたが、社員に指示をしましたか。
現場の報告は私にはきていないです。許可担当部長がいますから、もし私のところにきて、私のアドバイスを受けたということならばZを飛び越えてきたということです。(社員が)早急に変更を出せばいいんじゃないですか。
D委員 2009年9月にA社と伊豆山観光関係者と市との会議がありましたが、観光関係者は誰ですか。
私は出ていません。私は伊豆山漁港に迷惑をかけたのはよく覚えています。漁協のVさんという方をよく覚えています。
D委員 12月2日はD社、B社とA社ビルで職員が面会しました。その際、B社が防災工事と法面成形に着手するところ社長(前所有者)がくるはずだから、社長が来るとややこしいと発言しています。防災工事を反対していましたか。
防災工事を反対したことはないです。ややこしい、というのは裏があるとしか思えません。(是正工事など)やることはやるんです。
D委員 2010年8月25日に木くずの混入が確認されていますが、搬入したのは誰ですか。
分かりません。
D委員 同年10月31日にD社、B社と搬入業者と木くずの対応についてあなたはどのような結論を下しましたか。
事務所でD社と搬入業者といましたが、会議の議事録が8月19日付けで出てきました。
D委員 2011年当時について。現所有者への売却を説明してください。35億円で売却を目指した土地を3億円という破格の安値で売った理由について教えてください。
ここの土地(伊豆山)を地主から買おうと思って、本人に電話をしました。数万坪の土地をもらって道を作れば価値があがると言ったらなんだかんだで10億円で買いました。工事の許可がもろもろ遅れることでリーマンショックのあおりを受けて融資会社がギブアップしました。
それに伴い私もギブアップした。返済計画ができあがってきたので現所有者から売ってくれないかという話があったんですが、1月になって現所有者に返事をしないといけないから34万坪5千坪を提案しました。5千坪を残したのは3億円という低額であったことなどが経緯でございます。
D委員 土地の売買契約の覚書で「赤井谷の土砂処分場のひな段を成形して硬化剤などで固めて産業廃棄物を場外に搬出して工事完了届を提出する」という確約したのに履行しなかった理由はなんでしょうか。
ここについては他の工事が追い込まれて、仲介人が困るんだということでしたので、やることになったんですが、300万円の留保金が払われなかったから工事を中断したのが結論です。
D委員 5月19日、A社社員らが静岡県、熱海市と話し合い、土採取の期限変更を書面で提出するよう求められましたが、報告はされましたか。
報告は受けたと思います。変更届ですから社員でも出せると思いますが、私に言っていると思います。
D委員 9月19日、D社が熱海市に電話であなたと決別した。土を放置していいか、崩落の可能性は高い、と発言しました。こうしたやり取りを知っていますか。当時の状況についてD社と同じ見解ですか。
決別の意味が分かりません。単なる辞職なんでしょ、と。決別には理由があると思います。そのことについて私も調べましたが、決別の意味が分からないのは8,9、10、12月にも給料が払われています。再三、私も発言していますが、10年の安定が証明しています。
D委員 産廃や土砂等を入れる時に伊豆山を選んだ理由はなんでしょうか。
私はリゾート型別荘地、世界の熱海ということで300区画の別荘地を予定しました。ヘリポート付きで設計しました。
D委員 行政的にやりやすいからここを選んだということはありませんか。
ありませんね。たまたま売り地がありファイナンスが理解してくれたということです。
D委員 源頭部の不安定土砂の対応について強制代執行の可能性があるが、あなたは費用弁済を求められた時に資力はありますか。
資力はありません。しかし熱海市の通知、4月1日に届いて19日に回答期限です。これだけの大事を短期間で答えるのは遺憾な文書です。何か裏があるとしか思っていません。回答はできないということを弁護士に相談しました。
意見書を出そうかということになったが弁護士が間違って答弁をしてしまいました。弁明の付与措置について4月24日までに提出しなさい、という通知をもらったので弁明の付与をしっかりしようと思っていますが、良識がある熱海市が出したとは思えません。静岡県の圧力で仕方なく出したかもしれません。実質的、指導対象者は現所有者であるという答弁を弁護士と相談するつもりです。
D委員 通告はしていませんが、一つだけ聞いてほしいのは去年7月3日10時半頃、ものすごい土砂が海まで流れて27人、または28人の犠牲者が出て100世帯の家が無くなってしまったんですよ。まだ小学校にあがらない女の子をお母さんが逃がすために家から抱えて玄関から逃そうとしたところ、上から黒い土石流で帰らぬ人になったんですよ。伊豆山小学校で追悼式で娘さんがお母さんの遺影を持った時に涙をなくして見てられない。その人たちの人生が一瞬にして変わってしまったんですよ。行政を含めていろいろな場面になっていくと思うんですが、ご自分の主張も分かりますが、そこに土が運ばれていろいろな条件はあるけども事故につながったという思いは我々も含めて避けて通れませんが、ぜひ対応してください。
私も真実は真実ととらえ努力させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
指導が後手に回った理由は「同和」以外何がある?
前所有者の証人尋問で一応、百条委員会は終了した。なお参考人招致、証人喚問に応じなかった業者一名は後日、何らかの形で招致される予定だ。
現所有者と同様に「記憶がない」という回答が目立ったが、前所有者証言の中でたった一つだけ確実に「真実」と言える証言があった。それは
「行政は相手の顔を見る」
ということだ。
前所有者は自社社員の過去が“ 訳あり”で更正の意味合いで同和の名刺を出したという考え。しかしこれはおかしい。社員の過去に配慮することと、同和の名刺を差し出すことに整合性があるだろうか。
また前所有者企業に“ 訳あり社員”が多いとの主張は大いに疑問がある。なぜなら確実に暴力団と関係があったとさせる元社員は前所有者が言うところの「つっぱり」という社員Zのみだ。
加えてそもそも行政とは反社風、暴力団風、こういった存在に弱い。恐怖感を持つだろう。結局、各地で起きる盛り土、不法投棄、産業廃棄物問題はこうした勢力が強く影響している。その上で同和の名刺を出すことは「威圧」以外の意味が見つからない。
市長をはじめ百条委員会に出席した職員はみな「同和の影響」を否定したが、では逆にここまで指導が鈍る要素について説明してもらいたいところだ。
なお関係先として公文書に登場するG社は「全日本同和会」の支部長であることが判明した。前所有者によれば特に行政交渉と関係はなく、G社経営者も依頼されて運んだに過ぎず団体とは無関係という説明だった。これは単純に自由同和会、全日本同和会も土木建設業者が多いことが関係しているだろう。
名刺を出したことについてムニャムニャ言ってるけれど
結局、対応が変わるから出したとしか聞こえないですね。