統一地方選挙の後半戦投票が迫っている。主要政党がしのぎを削る中で、ひっそりと存在感を増している党がある。それが、「NHKから国民を守る党」(名前が長いので、本稿では「N国」と省略させて頂く)である。
その名前からして地上波テレビではほとんど話題にされることはないが、地方選挙では実際にごく小数とは言えないほどの当選者を出しており、とても泡沫政党とは言えない党だ。しかし、その将来は決して安泰ではない面もある。今回は独自取材したN国の内情をお伝えする。
どこにもNHKが親の仇みたいな人がいる
N国の選挙での強さの秘密は、反NHKというワン・イシューに絞るという分かりやすさである。
ご承知の通り地方選挙の投票率は下がる一方で、無投票当選も多くなった。特にこれといった問題を抱えていない自治体では、誰が議員をやっても役人が行政を回してくれるし、実際それでほとんど問題が起きないということもあるだろう。
そこで、反NHKという争点が光るのである。実際にN国で選挙運動をした人はこう語る。
「まず、どこに行っても、NHKが親の仇みたいな人がいます。そしてNHKの集金人が回っているところは当選できるし、逆に集金人が来ない所では当選できません。私の場合は、駅でアンチNHKのビラを配ったら1日で1000枚捌けたのを見て、この選挙は勝てると確信しました」
地方議員が反NHKのために何をやるんだという疑問が湧くかも知れないが、例えばNHKの集金人を始めとする個人宅訪問を規制する条例を作る等、出来得ることはあるそうだ。もちろん、現実問題としてN国が1つの議会に送り出せる議員はせいぜい1人が限界なので、そのような条例が通ることはない。しかし、概念としては出来得るのであれば、反NHKを理由に票を入れる人は必ずいるというわけだ。
実際、N国の公認を受けた候補者が当選した自治体は、大都市近郊の、いかにも問題が少なく有権者の政治に対する関心が低そうな自治体が多い。
日本初の Youtuber 政党!?
N国は各地の選挙管理委員会への届け出もされている、れっきとした政治団体ではあるのだが、実態は代表の立花孝志氏を中心とした「ゆるい集まり」である。そのため特に党員になる手続きはなく、政党らしいところがあるとすれば、選挙の候補者に対しては選挙管理委員会に公認候補として届け出ることくらいだ。ただし、選挙になれば手伝いに来たり、会合に参加したりする支持者は一定数いる。では、N国の支持者はどのような人なのか?
N国の活動に複数回参加している人物はこう語る。
「選挙の手伝いに来るのは4~50代の人が多いです。例えば、(立花氏の)Youtubeを見ている人が単発で来る感じです。毎回来るような人は立花さんの信者みたいな人で、ほとんどの人は輪に入れずに離れていきます」
ということだが、熱烈な支持者も多いのは確かで、献金する人も多いという。
チャンネル登録者を10万人以上抱える立花氏のYoutubeの威力は絶大である一方、Youtubeの視聴回数頼みなところもある。N国の会合というのは、言わばYoutubeの「オフ会」のようなものだ。
「オフ会で、当選した議員が政策の話とか、政治家としての仕事の話とかはしません。ほとんどの話題は選挙か、あとは立花さんの自慢話です。例えばYoutubeで収入が190万あるんや、というような話とか」
いかにも今の時代らしいが、立花氏のYoutubeチャンネル人気がN国の党勢と直結している。Youtubeの視聴回数が増えれば立花氏の収入が増えるのはもちろんのこと、支援者も増えるというわけだ。
N国と言えば、関係者がNHKに対する裁判を度々提起していることでも知られる。昨今で有名なのは今年の3月12日に確定した、ワンセグの受信機器に対するNHK受信料についての裁判だ。読者であればおそらくご存知の通り、携帯電話等のワンセグ受信機器でもNHKへの受信料支払い義務がありということで、N国側の敗訴で終わった。しかし、敗訴によってN国がダメージを受けたのかと言うと、そうではないという。
「裁判は勝っても負けてもいいと思ってます。動画のネタにしたいだけで、本気で勝とうと思っていないでしょう。選挙はめったにないし、政治の話でYoutubeの再生数は伸びません。裁判で活動をアピールするわけです」
確かにその通りだ。前述のNHKの集金人が回っているところでは当選できるという法則からすると、むしろN国が敗訴したほうが選挙では有利になるように思われる。何よりも、N国のNHKの受信料を巡る裁判では判例集に載るような判決が続出している。また、今月12日にはN国の候補者が居住歴により選挙管理委員会により被選挙権なしと判断された得票が無効になったことについて、供託金の返還を求めて訴訟を提起しており、選挙制度を巡る訴訟も起こしている。
それらはマスメディアで大々的に報道され、そこでN国の名前が出ることはほとんどないものの、気になった人がネットで「NHK 受信料」で検索すると、Youtubeの立花氏の動画がワンサカ出てくるというわけだ。
言ってみれば、N国は前例のない、政治系Youtuberによる、Youtube政党と言えるかも知れない。
立花氏の独裁と、金にまつわる不満
当初は泡沫政党と見られていたN国が実績を上げると、政党らしい問題が噴出するようになった。ここでは事情通の証言と共に、党の内情をお伝えしていこう。
「以前の選挙では党にはお金を出さずに、公認だけもらって、その代わり選挙費用は全て自腹でやっていました。しかし、最近のオフ会で聞いたのは、立花さんが“当選者に2000万円を党に献金しないと次の選挙で公認しないぞ ”というようなことを言ったことです」
また、ある議員は毎月20万円を献金していたものの、後で十数万円に減額してもらったということがあったという。
「そうなってきたのは、以前とは違って今は党に勢いがあるので、お金を出しても公認してもらいたい人が出てきたからではないか」
無論、お金を払うという契約書があるわけではないし、献金は強制できるものではない。全ての公認議員が言われるとおりに支払っているわけではないのだが、お金が集まるようになるにつれて、立花氏のお金の使い方に対する不満を口にする議員もいるということだ。
「新小岩の事務所には18万円くらい家賃を払っているはずです。理由は分からないけど他にも3つか4つ事務所があって、顧問弁護士とか事務員も雇っています。NHK撃退シールを毎月3000枚くらい事務所から希望者に無料で発送しているんですが、そんなのどこかの業者に委託すればもっと安く済むでしょう。自分で事務所を持って事務員を雇ってやるのが快感なのでは」
最近、立花氏は参議院選挙に出馬することを表明している。その理由も金ではないかとという。
「比例区で2%の票を取ったら政党交付金の支給対象になります。それが目当てでしょう」
しかし、参議院選挙の比例区に候補者を立てるとなれば、1人あたり600万円の供託金が必要になる。最近、なりふり構わず資金集めをしているのはそれが理由だと言われる。
N国の運営実態については、事実上は立花氏の独裁で、合議で何かを決めたということもないそうだ。そのような状況なので、政策について党内で議論が行われるということも、なかなか起こらない。
「オフ会で、党の活動に協力しない議員がいると、立花さんが名指しで批判していたと聞きました」
当然、そのようなことも出てくるのだろう。ただ、政党とはいってゆるい集まりで、先述の通り入党の手続きもないので、そのような議員を懲戒するとしても、除名のしようもない。
お金の問題だけでなく、党の政治的理念についても危うい部分がある。N国は反NHKということ以外には何もない政党である。保守でも革新でもなく、右でも左でもない。
「立花さんは胸に(北朝鮮の拉致被害者救出のシンボルである)ブルーリボンを付けてますけど、保守でも何でもないですよ。NHKをぶっ壊すと言うだけでそれ以外は空っぽです」
例えばN国の公認を受けて松戸市議会議員に当選した中村典子氏は元在特会であるとして左翼陣営から激しく批判されたが、一方で春日部市の酒谷和秀議員は反原発で左寄りの考えに近いと言われる。最近は立花氏は上杉隆氏や山本太郎参議院議員といった反原発界隈への支持を表明している。反NHKであれば、その他の政治的理念は文字通り何でもありなのだ。
立花氏に直撃してみた
ここまで実情を知るとN国はまるで立花氏の個人商店のようだが、他の政党に比べるとよほどオープンで民主的と言えるような側面もある。例えば、代表者である立花氏直通の携帯電話番号が公開されているところだ。早速電話して、立花氏に直接聞いてみた。
参議院選挙に向けて所属議員から資金集めをしているということは堂々とやっていることだそうだ。
「はい、一人100万円ですね」
しかし、先述の2000万円出さないと公認しないと言ったことについては、全ての所属議員に言ったわけではなく特定の議員のことだという。
「彼に関してはお金を出そうが何しようが、次の選挙では公認しないつもりです。彼は党に一切お金を出さない人間で、NHKの被害者を守ろうということもしないので。“あなたは何もしないから、次に公認するなら2000万円でも安いくらいだよ” と言ったんです」
そもそも彼との確執が生まれたのは別の背景もあるそうだ。
「…それに、過去の犯罪履歴を隠しての公認の申請だったので。僕は犯罪をしたということを、詳らかに明らかにした人には公認もするし応援もするんですよ。犯罪をしていることはよいくはないけど、(僕は)罪を認めて反省している人は積極的に応援したいタイプの人間なんですね。うちには3人前科者がいるのですが、彼だけは隠してたんですよ」
そして、公認は取り消さなかったものの、党として応援しなかったのだが、彼は当選した。
「まさか当選するとは思っていなかったんで…」
ともかく、お金の問題があったのはそれだけで、献金を強制することは一切ないという。
「任意なんですよ。議員で毎月12万5千円入れてくれる人は5人です。私を含めて8人は出してません」
ちなみに、この12万5千円というのは年額に換算すると個人が政治団体に献金できる金額の上限となる。
また、党は事実上立花氏の個人商店ではないかという批判についてはこう答えた。
「個人商店ですよ、今の段階ではもちろん。合議でやるためには、参議院選挙でどういった結果が出るのかなというところなんですよ。こんなの個人商店でしかできないんで」
勝手にN国を名乗る人も出現
N国で立花氏に権力が集中している一方で、集票力の源泉が立花氏にあるとは必ずしも言えないという。N国の選挙に関わってきた人物はこう語る。
「議員は、アンチNHKで当選したのであって、立花さんの知名度で当選したわけではないです。だから、自分で勝手に似たような政治団体を作ればいいので、党の看板は重要ではありません」
実際、言われるような現象が起きている。「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね」 というツイッターでの発言がきっかけで自民党を除名された金子快之元札幌市議会議員が 2016年に詐欺容疑での逮捕歴がある小林崇央元渋谷区議が、N国から公認を断られたものの、勝手に「NHKから国民を守る会
これが商売の世界なら「パクリ」と非難されるところだが、政治の世界ではパクリだろうとどのような主義主張を掲げるかは自由だ。例えば、橋下徹率いる「大阪維新の会」が選挙で躍進した時、各地で勝手に「維新の会」を名乗る候補者が続出した。
N国は労働組合や業界団体という支持基盤を持つ政党ではなく、反NHKという理念1つで成り立っている、政党である。それゆえ、名前だけでなく理念についても簡単に“コピー”されてしまう。ただ、反NHKの票はどこでも一定数得られるが、「アンチNHKだと逆にそれ以外の一般の票は入らない」という面もあり、明らかに党の拡大や持続性には限界がある。
しかし、N国が今までにない選挙活動の方法を生み出して一定の成果を上げているのは事実であり、NHKの受信料問題だけではく選挙のあり方についても様々な問題をあぶり出しているのもまた事実である。
映像を誰でも発信できる時代の選挙はどうあるべきだろうか。供託金という制度が候補者の乱立を防ぐ一方で別の問題を生み出していないか。選挙制度が抱える問題を考える上で興味深い政党であることは間違いない。
N国とは話が違いますが昨晩(4/18)のアメトーークの番組終了後に
西成のことを茶化した放送をしたということでお詫び放送がありました。
どうも部落解放同盟のしょーもない抗議があったらしいので
何か情報が入っておりましたら取り上げていただけたら嬉しいです
>100%完全無欠な、誤りのないものだけを掲載せいよ
学術資料にも誤謬が指摘されることはよくあります。たとえば『日本資本主義講座: 戦後日本の政治と経済』第8巻333ページには
「和歌山地方における皮革業は、和歌山市の芦原地区(三沢町、汐見町、島崎町、岡町、雄松町)に集中し、いわゆる未解放部落の特有産業として存在している」
とありますが、渡辺広によると現在の雄松町5~6丁目と島崎町5~6丁目は部落でなく、現在の汐見町と三沢町だけが部落です(渡辺広『未解放部落の源流と変遷』286頁)。もちろん渡辺の主張が正しいかどうか、そこは別途検証すべきことです。
このような探究と研鑽に基づくダイナミズムこそが学問の根幹であって、最初から「100%完全無欠な、誤りのないものだけを掲載せいよ」というのは研究活動の何たるかを知らない者による「ためにする議論」です。
なお「インターネットにウチが部落やと書いとるやと、そんなん許さん」と激怒していたという風呂屋の主人には、「自分は部落民ではないと思うことが、すでに相手を差別していることだ」という植木徹誠の言葉を贈ります。
そもそも、ラーメン屋や風呂屋は部落外という考えが、行政区画=部落という誤った認識によるものだと思います。
過去の航空写真と照合したところでは、一応その当たりも堀池の部落内です。
今は同和地区の区域の資料は行政が公開しないか、破棄されていますから、どこが同和地区でどこが同和地区でないかという議論は無意味でしょう。言った者勝ちですから。
今昔マップで1967~1970年までの地図を見ると現在の昆陽南の部分も堀池になってそうなんですが…地名が違うからと言って昔も違うとは限らないのではないでしょうか。
昆陽南は比較的最近出来た自治会みたいですし、この辺は昔の詳細な地図を見てみないとわからないですね…
あと、同和地区指定された範囲なんてそれこそ大阪の「X0年のあゆみ」みたいに詳細に範囲まで書かれたものがあれば別でしょうがほぼわかるはずがないでしょう。しかも地区指定が他地区に跨って行われていることはよくあることですし…
私も全くその通りと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=XQuTAb5mF-o&t=1m56s
議席を2000万円で売ろうとしたクズですよこいつは
コメントありがとうございます。
地方選挙の闇の部分ですね。
宇都宮健児氏が供託金制度は憲法違反って裁判してますけど、現にこういった弊害が起こっているのを見ると、氏の主張に同意できる部分も多々あります。
金子快之渋谷区議候補はN国党の公認候補です。
「守る会」を名乗っているのは同小林タカヒロ候補ではないでしょうか。
申し訳ございません、大変な事実誤認でした。記事を訂正しました。
示現舎の政治的な立場についてですが、金子快之の主張
「アイヌであることを声高に主張する連中は利権屋であり、アイヌ民族なんて今はもういない」
の「アイヌ」の部分を「部落民」に置き換えると示現舎の主張になる、という理解で正しいでしょうか?
概ねそういうことになりますね。
立花さんはNHKを辞めたあと、パチンコで食ってた時期があります。
自分がパチンコの打ち手グループのボスとなって
指定した台へ打ち子(自分の代わりに打たせてあがりをいただく)を
送るわけです。
しかし同じようなことをする人が増えすぎて、パチンコでは食えなくなったため
本格的に政治活動をはじめたというのが流れです。
選挙に関しても、パチンコの打ち子と同じで
当選しやすそうな選挙区(パチンコでいう甘い台)を見つけ立候補させる。
そして当選すればそのあがりをいただく。
同じ構図だと思います。
国政選挙ではまず当選は無理ですが地方選挙なら、甘い台(選挙区)は
ゴロゴロ空いてるので、よほど問題提起でもされない限り
この手法でさらに勢力を拡大させると思います。
またネットでは理念や手法、現実性、人物など、本来一番重要なことが
あまり批判にはつながらないのでネット世論に強く、
多数にはなれなくとも1割、2割のコアな支持を集めることでしょう。
今後こういったワンイシューをネタにした選挙ビジネスが増えるんじゃないでしょうか。
そのような過去があったのですね。ご意見ありがとうございます。
この動画見ると、実情をぼやいてますね。
https://www.youtube.com/watch?v=v_W1mzUr8SU
確たる理念がなく、ただ当選したくて議員報酬が欲しいだけの人を集めていたら、こうなるでしょうね。
>例えばN国の公認を受けて松戸市議会議員に当選した中村典子氏は元在特会であるとして左翼陣営から激しく批判されたが
元在特会は川西市議会議員に当選した中曽千鶴子氏だそうです。