ハアハア系、フェミ? アイドル市議を引退に追い込んだのは誰だ

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By Jun mishina

「美人すぎる」「美女候補」というふれこみで2015年に八王子市議選でトップ当選を果たした社民党・佐藤あずさ市議が今月、SNS上で「引退表明」をした。もはや政党要件を保つのが精一杯の社民党にあって数少ない若手ホープ。それだけに引退を惜しむ声も少なくないが、佐藤市議の引退理由が物議を醸しだしている。さらに11月28日には公式HP上で「一部マスコミへの抗議のための「積極的断筆」/ホームページ、SNSの中止について」と投稿し、HPやFBの利用中止まで明言した。議員活動どころか言論活動も控えようというのだ。一体、何が彼女を追い詰めたのか?

女性議員に欲情する市民派、左派有権者

3月25日の「緊急新宿大街宣」で演説する佐藤市議。

八王子市は「三多摩」と呼ばれる地域だ。三多摩は革新政党が強く、労働組合、反戦活動、市民運動が盛んである。地域的背景、そして社民党の数少ない若手議員ということもあり左派の間で佐藤市議は人気と知名度を有していた。いわゆる「市民活動上がり」が目立つ社民党にあって、彼女はNHK社会部出身だから党内ではエリート筋の議員と言えよう。市議候補時代から集会でも登壇し、SEALDS主催の「戦争法案に反対するハチ公前大集会」(2015年6月27日)で演説、「南スーダンが危ない!緊急講演会」(2016年10月1日)の司会を務めた。今年3月25日の「緊急新宿大街宣」では国政議員にならび「私は地方議員として怒っています。安倍内閣は総辞職せよ」と訴えていた。この通り活動的でこれから議員キャリアを積もうという矢先の引退宣言だ。

11月20日、佐藤市議はFB上に[任期満了後の引退について]と投稿した。同エントリーはこんな書き出しで始まる。

私はことし1月末に、次期統一地方選への挑戦を断念しました。このかん、その経緯の一部を綴ってきました。自分の気に入らない議員に執拗に誹謗中傷を繰り返し、暴力的に消し去ろうとすることは、民主主義を求める市民運動ではないと思います。

暴力的に消し去ろうとは穏やかではない。彼女は以前、ツイッターのアカウントを有しており、発言をめぐって保守派、右派からバッシングされたこともあった。右派からの攻撃に耐えかねて引退を選んだかと思いきや事情は違っていた。

昼夜問わず連絡を頻繁にしてくる人や、不要な長電話を繰り返す人、SNSへの書き込み・私的なメール・手紙などが頻回すぎる人、私的かつ一方的な連絡への返信を要求してきて、こちらがその人の思い通りに応えないと機嫌を損ねる人、自分のブログや手作りのチラシ等を見るよう求めてきて、こちらが賞賛や感想を伝え続けないと拗ねたり怒り出したりする人、市議会報告(あずさジャーナル)の編集権を自分に渡せと迫る人、いまから来いと夜間に突然居酒屋などに何度も呼び出そうとする人、私生活に土足で入り込もうとする人や、家族のことを根掘り葉掘り聞く人、仕事とは無関係に誰といたのかを確認しようとする人、仕事とは無関係なこちらの知人友人にSNS等で勝手に接触を図る人(私の学生時代の友人女性に「自分は佐藤さんを応援しているので」と面識もないのに突然メッセージやコメントを送り、私的なやりとりを求めるなど)、好意を告白してきてこちらを理想化・美化し追いかけようとする人、待ち伏せをする人、市民相談などの理由なく2人きりで会おうとする人、「佐藤さんに会いたがっている人がいるから」と嘘をついて呼び出し連れ回す人、相談があるからと自宅に呼ばれて訪問すると2人きりで自慢話やよくわからないプライベートな話をする人、、などです。

なんとも嘆かわしい話だ。イデオロギー上の対立等ではなく男性支持者、いや支持者と言えるのか疑問だがとにかく佐藤市議に欲情した男性たちのアプローチに嫌気がさしたようだ。本誌も過去記事で指摘した政治に群がる「ハアハア系男」というものである。こうした男性陣にとって女性議員は一種の「会いに行けるアイドル」に過ぎない。

アイドルの場合、アプローチするにはCDを購入するといった「握手券商法」を経なければならない。しかし議員の場合、握手も無料。いやむしろ議員側から握手を求めることもありえる。それに少々の接触も「有権者」というポジションを取っている以上、女性議員も拒絶しにくい。

佐藤市議はこうした現象を「カスタマーハラスメント」を持ち出して説明していたが、確かに酷似している。佐藤市議に接触し断られた結果、「もう支持しないからな」と男性側が逆切れする光景は目に浮かぶようだ。

さらに痛々しい内幕が綴られていく。

私はこの4年間、敵対する党派の人からの直接的な嫌がらせはほとんどなく、むしろ「リベラル」や「左派」「市民派」を名乗る男性たちの一部からの攻撃や依存、異様な執着が酷かったです。地獄のようでした。 世代で一括りにしてはいけませんが、50〜70代の男性が圧倒的に多かったです。ことし1月末に、一部の元支持者・一部の市民運動家の人による攻撃を引き金に次期統一地方選への挑戦を断念して以後、静かに去ることが良いことだと思っていましたが、こうして書き残したのは新たに政治の世界に挑戦する若い人、そして女性には、私と同じ思いをしてほしくないためです。どうか私の苦しんだ4年間が無駄にならないようにと祈っています。

本来ならばこうしたトラブルが起きれば「ネトウヨがー」という大合唱になるかと思いきや、実態は違っていた。「女性の権利擁護」「社会進出」に敏感であるはずのリベラル、左派、市民派の面々が執拗にアプローチをしていたのだ。また厄介者はハアハア男に留まらない。やはりSNS上でも話題性がある北九州市・村上さとこ市議が20日のエントリーに激励のコメントをつけたところ佐藤市議はこう返信した。

それでもどうしても納得がいかなかったのは、男性たちからの異様な執着や接触について、「あなたは美人コンテストのような写真で女をアピールしたのだから自業自得」であるとか「あなたは顔で受かったんだから仕方がない」という言葉を、あろうことか同性の、フェミニストの先輩たちから向けられたことです。

フェミニストまでが佐藤バッシングに加わった。政治方針やイデオロギー上の対立でフェミが敵に回るならば分かる。しかし欲情した男たちに対して真っ先に異議を唱えるべきはフェミニストではなかったか? 佐藤市議を通じてリベラルや革新の残念な実態が浮かび上がった。対して引退表明の後、「保守」「愛国者」「自民党支持者」を名乗る男性たちからメールが届いたという。

内容の多くは激励で佐藤市議を保守陣営に引き込もうという意図があったらしい。あまりに分かりやすい現象だから失笑を禁じ得ない。古くから革新政党から保守論壇に転じるパターンはよくあること。もちろん逆のパターンも存在し、保守論壇あるいはネット批評家からリベラル側にスライドすることもある。こうした政治的な左右間の「FA宣言」は意外と重宝されるものだ。商業的に見れば保守アイドルに転向という選択肢もありえるだろう。しかし佐藤氏は今後も社民党の党籍を残す方針だ。

本件について佐藤市議に取材を申し込んでみたが、事務所の応答はなかった。また党としては引退の件をどう考えているか? 社民党東京都連に聞いてみると女性職員が応じてくれた。

「10月の八王子総支部の会議で引退が正式に決まったと聞いています。説得? そりゃこれからの人だし残念だけど本人の意向もありますから。卑猥なメールや電話? それは把握してなかったけど、抗議にしても嫌がらせにしてもどうせ匿名の人からでしょ。そんなのは無視すればいいと思うんですけどね」

実に単純明快にして正論だ。そう、なぜ無視しないのだろう。女性目当てで匿名の中高年にどんな力があるというのか。「相手にせず」という選択肢もあったはずだ。

市民派の悪い部分だけ引き継いだ!

女性議員に対して男性の有権者が「異性」として一方的な好意を持つ。このことのストレスは大いに理解できるし、同情できる部分もある。これは彼女に限らず起こりえることだ。特に野党議員の場合、積極的に街頭演説を行い、市民集会にも参加する。だから与党の議員よりも有権者と距離が近い。

彼女に接触を試みるのは「50〜70代の男性が圧倒的に多かった」という分析も当たらずも遠からずだろう。タウンミーティング、演説会、市民集会では会終了後、議員らが出口で聴衆を見送ることがある。高齢男性らはお目当ての女性議員の元にいっては握手を求め離れない。

そしてその後に似たような男たちが列を作ることも。完全に目がハートになっている市民もいる。特に高齢者の場合、なぜか異常に顔を近づけて話しかけてくる。議員という仕事の性質上、仕方がないが厄介な存在には違いない。残念ながらこういう手合いも含めて有権者であり、ハート目の男を排除することはまず不可能だ。有権者の意識向上を期すという他ない。

ただ本人の意図とは別に政党や支援者が佐藤市議を「アイドル的」に売り出したのは容易に想像できる。結局、政治がショー化してしまい「キャラクター勝負」になっている現在、「美人すぎる」といった浅はかなフレーズは浮動票を得るにも有効だ。だからメディアの責任も大きいのではないか。「美人すぎる」と飛びつくのは有権者だけではなくメディアでもある。

かといってこうした扱いが彼女にとって不利益だった訳でもない。失礼ながら彼女が「50代の市民運動上がり」だったらトップ当選も果たせてないだろうし、キャリアの浅い彼女が政治集会で登壇することもなかっただろう。彼女の演説内容も拡声器でアジる活動家や居酒屋政談の類と差がない。もちろん「アイドル議員枠」というのは彼女が望んだわけでもないだろうが、結果としてメリットも少なからずあった。

それに彼女の場合、「覚悟」のなさも感じた。今年2月、佐藤市議はツイッターのアカウントを停止した。きっかけはこの投稿に、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が反論したことだった。

産む選択をしても、産まない選択をしても、女性にとって「地獄」であるような国を果たして先進国と呼べるのか。私の母も教員だったが、切迫流産を二度経験している。激務のなか、母が切迫流産の危機を乗り越えて守ってくれた命がこの私である。当時から何も変わっていないのかと愕然とする。(2月8日)

しばらく論争が続いた後、佐藤市議はこう投稿した。

そうですか。私はほとほと、ツイッターというものに疲れました。前々から考えていましたが、この際、ツイッターはやめようと思います。有益な情報を得られるなどメリットもあるので迷いもありましたが、今回の中川淳一郎さんとのやりとりを通して、そうしよう、と決められました。本日限りとします。

トゥゲッターでも中川氏とのやり取りがまとめられているが「ショック」というほどか?

中川氏の投稿は女性蔑視や中傷的な内容でもなかったが、なぜかツイッターをやめるという結論に至った。彼女は勇ましく政権批判をする。公の場で政治主張をする。しかしそういう立場にあるものは当然、批判という返り血は浴びるものだ。

こうした覚悟が佐藤市議に足りなかったようにも見える。公式HPの「あずさジャーナル」では2月12日にこう報告していた。

女性が政治的、社会的な発言をしたり、そうしたことを役割とする職業に就いたりすると、執着や悪意、ミソジニーの対象とされて日々苦しめられることが多いと感じています。私は、これらのことを総合的に検討した結果、抗議の意味も込めて、ツイッターのアカウントは削除し、SNSの空間から距離を取ることを決めました。

中川氏とのやり取りを「攻撃的なリプライ」「粗野な言葉遣い」と訴えていた。男女、左右、政党問わず議員に対してはあらゆる言葉が投げかけられる。もちろん卑猥な言葉や脅迫は言語道断だ。しかし中川氏のやりとりを見ても「ショックを受ける」というほどなのか? 佐藤市議は集会でも舌鋒鋭く政治批判をする。

繰り返すが相手を批判した以上、同等の批判が戻るのは議員の宿命だ。彼女が訴えるところの悪意、ミソジニーとは別次元ではないか。もし自身に向けられた批判が「女性蔑視」に由来しており、それに抗議をしたいならばアカウントの削除は全く逆行する。むしろ徹底的に向き合い反論した方がよほど「女性の地位向上」につながるのでは? 批判は嫌です、政治主張はしたい、というのは申し訳ないが「お嬢さんのママゴト」としか思えない。

ならば一市民団体の活動家として八王子駅前でトラメガを片手に絶叫しているのがよろしかろう。言いたい放題の上、誰も批判はしない。ただ多くの一般人は見向きもしないだろう。

とにかく野党の女性議員にありがちな「市民派政治家」という存在の悪い部分だけを引き継いだ印象だ。市民派が掲げる平和、反戦、人権といったフレーズに対して正面から批判をするのは難しい。それにメディアなどで「市民団体」「市民活動」はまず好意的に扱われる。

特にこれが若者になると「王子」と「お姫様」扱いだ。だから市民派は批判に慣れていない。それでいてスポットライトは浴びたいという人々だ。しかしこれが議員となれば事情は異なる。国政、自治体問わず批判は待つものだ。ところが感覚的にはいつまでも市民団体の「お姫様」だ。佐藤市議の一連の動向を見るにこの「感覚のずれ」が如実に表れた気がしてならない。

SNSだけではなくHPの記事も削除する意向だ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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ハアハア系、フェミ? アイドル市議を引退に追い込んだのは誰だ」への5件のフィードバック

  1. .

    中川淳一郎の場合はIDからして「うんこ食べるの」で、ツイートの内容も「うんこ食べる」の頻度がやたらに高いので、異常者だと思われたのかもしれません。もっとも、それぐらいで怯むような神経の持主に政治家は無理だという点では同意ですが。

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  2. 斉藤ママ

    >彼女に接触を試みるのは「50〜70代の男性が圧倒的に多かった」という分析も当たらずも遠からずだろう。タウンミーティング、演説会、市民集会では会終了後、議員らが出口で聴衆を見送ることがある。高齢男性らはお目当ての女性議員の元にいっては握手を求め離れない。そしてその後に似たような男たちが列を作ることも。

    これには笑いました。芸能人のアイドルでは物足りないのかな?

    返信
    1. 通りすがり

      この逆パターンが進次郎。自民党員でも支援者でもない進次郎を見たいというだけの追っかけオバサンが存在するようだ。ただ彼は客寄せパンダという役割を理解している池上彰の言う通り「小泉進次郎」を徹底的に演じている。

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  3. 通りすがり

    もはや支援者とは言えない連中からのストーカー的行為については佐藤市議もお気の毒としか言えない
    それに佐藤市議自体ルックスのみをほめられる事に嫌悪感を覚えるあたりまじめな人なのであろう。
    だが選挙には「風が吹いていれば案山子でも受かる」という言葉があるように今となっては当選時期が悪かったものある。
    実際佐藤市議当選の2年後の都議選では都Fが誕生し美人・高学歴・一流企業勤務又は有名人という女性都議候補が大量当選した。佐藤市議もこの条件にぴったり当てはまるのでこの時都Fに鞍替えすれば議員の椅子は安泰だっただろうしひいては国政への転換もできたであろう。
    フェミニストの言うようにルックスを利用した、いわば「助平票」を利用して当選したのもまた事実。
    佐藤市議はまじめ過ぎて「風を読む」ことができなかったしスケベ親父を手の上で転がすようなしたたかさがあってもよかった。
    ただただ残念でならない。

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