「みんなでつくるみんなの交野」をスローガンに掲げる交野市・山本景市長。支援者たちは「改革派」であることを信じ、日本維新の会出身ながら今では共産党、れいわ新選組といった革新政党とも共闘する。しかしそんな山本信者たちに聞いてみたい。山本市長が多額の献金を受ける建設会社との関係は果たして〝改革的〟であるのか。(写真は交野市駅前の野村工務店の野外広告)
自転車で街宣すれば改革派なのか
前回記事
【交野市】「命令違反だ」9月議会で答弁中の副市長を詰めた〝フェイク改革派〟山本景市長の正体
市議時代、山本景氏はノボリを立てた自転車で市内を巡回したものだ。交野市は面積のおよそ半分が山林だから市街地は決して広範囲ではない。だが有権者、特に高齢者たちはその姿を〝若手議員の奮闘記〟のように受け止めてきたという。2022年市長選で現職を破ったのもそんな高齢者票に支えられてのことだろう。市長選では今や党員の8割が60代の共産党が山本氏を応援したが、高齢者人気を物語っている。
一つには「改革派」という言葉の魔力かもしれない。日本維新の会が大阪府内で与党化して以来、「改革」がもてはやされてきた。離党したとは言え山本氏も維新の党風を継ぐ首長だ。山本氏は非自民で前市政を厳しく攻撃するのも維新らしいスタイルだ。こうした手法がなぜか「改革派」に映ってしまうのだろう。
しかし市内の有力企業、野村工務店との関係性をみれば果たして改革派と言えるのか疑問が残る。
山本氏の特徴として対人関係が衝動的であることだ。議員との関係でも接近‐対立を繰り返してきた。それは地元企業も同様。かつては支援者だった(株)オクノナマコン(同市倉治)が河川敷を占拠しているとして昨年、刑事告訴。また市は占有の賠償を求めて民事訴訟も起こした。こうした過去も山本氏らしい。
その点、現在は山本氏と野村工務店の関係は至って良好のようだ。
雑木林が野村工務店社長の自宅?

JR学研都市線「星田駅」近く(株)野村工務店・野村健二代表取締役は山本氏の有力支援者である。山本氏のブログ『みんなでつくるみんなの交野』には市長就任以前から同社との関係を匂わす記述が印象的である。
要望(星田・野村工務店所有地を活用した歩道整備)対応257(2021年5月3日)
星田駅近くの歩道を野村工務店が所有地を使って整備したことに対して山本氏は謝意を述べた。
本来なら交野市が市費を投じて整備すべきです。しかしながら、交野市にその気がないことから、株式会社野村工務店に歩道整備を要望いたしましたところ、地域の後押しもあり、令和3年4月末~5月ごろを目途に株式会社野村工務店が歩道整備をしてくれることが決まりました。
文章からは同社に対する配慮が滲み出る。メディアでも山本氏と野村工務店の関係は〝ミエミエ〟だ。
また地元ケーブルテレビ企画「長っと散歩北河内 2023年1月号<交野市>に出演した山本氏が野村工務店の農業事業部「野村ファーム」を訪問。同社Webサイト上で「また、ケーブルテレビの「長っと散歩北河内」でもご紹介いただきました。交野市長の山本景さんがファームに来られ、番組詳細はYOUTUBEで視聴できます。(ファームの紹介は、動画の9分26秒あたりからです。)」とある。
そして金銭面のサポートも見逃せない。野村氏は山本氏に対して多額の政治献金を行ってきた。
令和4年(2022年)分の政治資金収支報告書によると野村氏は「チェンジ交野」に140万円、「新時代の交野を作る会」「チームみんなの交野」にそれぞれ150万円を寄付している。すでに地元有志も指摘してきたが、今年3月19日に「寄付者の住所相違」と修正が行われた。寄付者の住所が「交野市星田7‐69」から「交野市南星台」に変更された。
なお交野市星田7‐69とは南星台に向かう途中のごく普通の雑木林である。これをどう住所と間違えて記入したのか不思議でならない。

地元住民も疑問視する星田エリア全体事業
地元政治通の話。
「本来、野村社長は政治に熱を入れるような人ではありません。確かに以前は平野(博文、元民主党衆議院議員、元官房長官)さんを応援していたけど、地元の縁という程度。野村工務店で政治と言えば親族の役員さんが熱心に佐藤(ゆかり、元衆院議員)さんを応援していました」
前回記事で山本氏は維新を離党後、佐藤ゆかり氏に接近したことを説明した。野村工務店との関係も地元・政治人脈の中で生じたものだろう。交野市以外の自治体でも首長、有力議員と関係が深い企業があるものだ。野村工務店もそうした企業の一つだが、より地域への影響力は強い気がしてならない。
JR星田駅を起点に山側の南星台方面を目指して、そこからJR河内磐船駅へ下っていく。この途中に野村工務店が手掛ける新興住宅街が本当によく目立ったものだ。
同社付近の旧NTT星田社宅、河内磐船駅近くなど好立地で野村工務店は新興住宅街を建設している。


無論、造成工事自体を批判するものではない。しかし地元でも問題視されているのが現在、進められている「星田エリア全体事業」なのだ。同事業は交野市大字星田5098番8など市有地を売却し新たに住宅地を造成する事業である。
地元業者「いつ公募があったんや」
1989年、「市民創造の森整備推進ゾーン構想」として星田地区の整備が進められ交野市は約9億円で南星台地区の山林を買い取った。一つには当時、住宅バブルの中で乱開発を防止し自然環境を保護するという目的があったという。一方、同地区の区域には急傾斜地があり、地元では通称〝がけ〟として住民の不安材料になっていた。
そこでがけや山を削り、その土で不要になった農業用ため池『全現堂池』を埋め立て宅地化するのが「星田エリア全体事業」なのだ。




崖の下には造成地があったが、危険性があることから開発不可の塩漬けの土地となっていた。ところが星田エリア全体事業によって崖を撤去すれば新しい住宅街ができる。安全になれば市民生活が向上し、何より交野市への転入者が増加するだろう。しかしそのプロセスに対して疑問の声は少なくない。
あるデベロッパーの話。
「知人の業者が〝南星台の山が売りに出ているから買ったらよろしいやん〟と言われたから調べてみたんやけど、公募情報がないんですわ。おかしいなと思ったら山や崖の造成と池の埋め立てがセットでの公募やったんです。分かりにくいというか最初から野村さんありきとちゃうの?と仲間内でボヤいていましたけどね」
事業はプロポーザル公募方式で実施され2023年(令和5年)11月16日に募集開始。参加申込書の提出締切日が11月30日、提案書の提出締切日が翌年1月12日で3社が手を挙げた。その後、参加企業からのプレゼンテーションを経て、1月31日に仮契約に至った。
なお筆者は同方式について官製談合の温床として注目している。 「企画提案」を評価基準として委託先を決める発注方法というのが本来のプロポーザル方式の目的だ。しかし現実的には特定の条件を課すことで入札企業の参加を制限し、事実上の談合という実態がある。
もちろん星田エリア全体事業がそうだとは言わない。結局、野村工務店を代表企業とし株式会社佐々木産業(寝屋川市)の共同事業で決定した。
市民創造の森急傾斜地対策に係る工事請負契約は2億4882万円で佐々木産業が受注。また星田地区の山部分については1億2100万円、全現堂池は7億2千万円で野村工務店に売却された。
市関係者は「入札は適正に行われた」と強調する。しかしその一方で土地売買に通じる業者らからも「分かりにくい方式だ」との声が挙がっていた。
仮に入札が適正に行われたとしても釈然としない関係者や市民がいるのは当然だ。当初の計画以来、星田エリアの開発は非常に難航を極めた。それが山本市政になった途端にスムーズに進んだ。しかもそれが政治献金をしている野村工務店が受注したという事実に対して〝怪しむな〟という方が無理である。
また普段、首長と地元企業の関係については非常に厳しい革新政党議員が全く沈黙しているのが不思議でならない。これが仮に交野市以外の自治体で起きていることならば「自然な公共事業」と考えるだろうか。山本氏を改革派と慕う市議、市関係者、市民らに聞いてみたいものだ。