「一日一善!」。日本船舶振興会(現日本財団)の創始者、笹川良一氏(以降、敬称略)のCMは40代以上の人ならご記憶にあるだろう。笹川は社会事業家の一方で政界の黒幕と称された。そんな笹川マネーで創設された「中国国際友好連絡会」は現在でも稼働する。友好を冠するが日台専用の“ 対外工作機関”なのだ。
同和、ジャニーズに 匹敵する タブー日本財団
昨今、先鋭化が著しい日本のマスコミ。「報道」より「活動」、「報道機関」というより「社会団体」といったところが現在のマスコミのイメージに近いのではないか。
反論できない相手には高圧的、タブー視した相手には徹頭徹尾、沈黙する。その一つがジャニーズ事務所、そして同和団体、ここに「日本財団」を加えてもらいたい。
昨年7月に安倍元首相は旧統一教会信者2世の山上徹也被告によって暗殺された。事件によって統一教会、関連団体の国際勝共連合がクローズアップされることになる。国際勝共連合は1968年に設立され、日本船舶振興会会長(現日本財団)の職にあった笹川良一が名誉会長に就任した。
山上が逮捕された時点でまだマスコミ報道は「統一教会」ではなく「教団」「宗教団体」といった呼称を使用。教団側が宗教2世であることを発表した以降、盛んに「旧統一教会」を報じた。相手の状況が不利になった時点で攻勢を強めるのは日本のマスコミのお家芸。それは今、話題のジャニー喜多川氏の性被害についても同様だ。
しかし統一教会をめぐっては不思議なことに笹川、日本財団、いずれの名前も出てこない。確かに事件と笹川、日本財団は無関係だ。しかしマスコミ、左派も「キャンセルカルチャー」(著名人、団体の過去について炎上を煽り社会的地位を失わせる運動)を好む。平素ならば創始者が勝共連合や旧統一教会と蜜月な関係にあったことは執拗に攻撃材料とするはず。ところが全力で「日本財団」を避けて通るよう。
【Colabo問題】“ネオ同和” 東京都若年 女性支援事業に マスコミが 肩入れする理由
あるいは昨年から紛糾する「一般社団法人Colabo」が日本財団から助成金を受けていることについて支援者、賛同者たちはどう思うのだろう。Colaboのシンパたちの傾向をみるとほんの僅かな意見の相違、あるいは過去の不祥事をあげつらい敵認定するものだ。しかし日本財団の歩みについてはどう感じているのか。
妙なもので笹川良一、統一教会、勝共連合と対立関係にあった共産党ですら近年の赤旗で日本財団の取り組みを好意的に扱っている。
左派系の社会事業に多額の寄付、助成金を出しておりそのことが“ 禊”になっているとすれば金で懐柔されたということなのか。仲間への協力は“同志 ”ということだ。
笹川マネーで 作られた 中国国際 友好連絡会
笹川良一といえば日本船舶振興会会長(現代日本財団)として慈善寄付金額は最高記録としてギネスブックに認定されたこともある。それほど笹川マネーは莫大で多岐に及ぶがもちろん海外にも。もちろん政治的な事情込みで、だ。
1984年、鄧小平の提唱で創設された「中国国際友好連絡会」にも笹川マネーが投じられた。笹川が約100億円を寄付してその基金を元に運営されてきた。通常、政界関係者にとっては「友連会」の略称の方が馴染みがあるだろう。
中国の犯罪組織「三合会」に対しても「黒社会にも愛国者はいる」という鄧小平の肝入り組織なのだ。表向きの活動は国際交流、文化交流だが、友連会は人民解放軍総政治部連絡部に所属する。事実上の工作機関といってもいいだろう。その任務は情報収集、情報工作、中国のプロパガンダなど多岐に及ぶ。
大使館員、また研究者、実業家としても活動する者も。
「友連会に所属しながら日本の大学の研究室に所属する部員もいます。私が知る限りだと北関東の名門国立大教員。あるいは絵描きだとか書道家とか」(情報提供者)という証言が示す通り、文化人や研究者がスパイというよりもスパイを文化人や研究者に仕立てるといった方が適切だ。
役員リストをみると鄧小平の娘、鄧榕氏が副会長を務めている。鄧小平といえば中国の「改革・解放・集団指導体制」を推進した政治家で日本国内でも人気が高い。その娘の鄧榕氏が幹部である以上、中国はもちろん日本の政治家たちも尊重せざるをえないだろう。
ただの文化交流団体ではないことは何より関係者がご存知のはずだ。関西日中平和友好会会長・見本重宏氏の「第4次日籍老戦士訪中記」は冒頭から“ 軍事案件”であることを示している。
胡錦濤主席の発案及び国務院・共産党・人民解放軍の指示により、中国国際友好連絡会が 2010 年から実施している「解放戦争・初期中国建設への功績に対する感謝」を目的とする「第 4 次日籍老戦士訪中事業」が、7/29~8/5 の日程で行われました。(*2012年)
中国の国益、外交、軍事に貢献する団体だから中国政府としても重視するのは言うまでもない。しかも鄧小平プリンセスが幹部という点も利用価値がある。
対日よりも 実は台湾への 工作機関だった!?
2007年、中国大使館員同会の王慶前常務理事が日本に情報漏洩した罪で死刑判決を受けた。このことは同年11月16日、衆議院で鈴木宗男氏が質問主意書を提出したほど国内でも衝撃をもたらした。
政府は「回答を差し控える」としたが、ともかく「友好」という生易しい団体ではないことがお分かりだろう。
さらにもとのスポンサーである日本財団も友連会と距離を置いた。友連会一部幹部が団体活動を通して利権漁りをしていたことが原因だ。中国における利権とくれば日本のODA絡みを連想するかもしれない。ところが事情は少し異なる。
「もちろん日本の案件もあります。むしろ大きいのは台湾人を相手にしたビジネスで利権を漁っていたこと。例えば中国に“台湾人限定 ”の経済特区を作りそこからいくらか“ 抜く(リベート)”ということですね」(日台議連関係者)
さらに
「もちろん対日情報工作の役割もありますが、むしろ日本を媒介にした台湾工作が重要な任務ですよ。日本に在住する台湾の国民党関係者を取り込むなどですね」(同)
外交能力に長ける中国が日本と台湾を同時に仕掛けていたことになる。
だが2016~2017年頃から状況が変わったというのだ。「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」(習近平思想)を党規約に明記して習近平の独裁体制が強化された頃だ。
「中国人民解放ド軍総総政治部連絡部部長で友連会の事実上のトップ、邢運明副会長が失脚したのです。習近平が軍を掌握すること、また胡錦濤元国家主席の色が強いことからの粛清だと考えられます」(情報提供者)
中国のプロパガンダ機関としては有用なのは習近平主席もよく知るところ。すでに会を掌握し利用しているとみられる。台湾危機でも暗躍する可能性が高いが、もとをただせば笹川マネーが作り出した機関である。台湾情勢が緊迫する中で日台の情報が友連会を通じて中国政府に流れてきた可能性は大だ。
笹川家の名誉という一点で中国を肥大化させてきたとすればあまりに責任は大きい。同和に匹敵するタブーとして今後も注視したい。