曲輪クエスト(331)新潟県 岩船郡 関川村 高田

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By 宮部 龍彦

新潟県、長野県の辺りででは、「人たち」を指して「しょ」と言う。例えば「おとこしょ」と言えば男たちということになる。「しょ」に漢字を当てるとすれば「衆」だろう。

そこで、「たいしの人たち」をネイティブな発音では「てえししょ」あるいは「てえしんしょ」と言うそうである。

「ワタリ」については、新発田では「わたりばしょ」という言葉を聞いた。確かに、以前訪れた早道場には船渡し場があったので、「わたりばの人たち」という意味になるのだろうか。

今回訪れたのが、岩船郡関川村の高田という地域。『辺縁の未解放部落史研究』(木下浩)にはこう書かれている。

近正氏による、高田の船頭集落の旧家の由緒伝承は次のようである。『この村(船頭集落)の旧家は須貝氏で、その祖先は武士だという。はじめ中束(なかまるけ)村にいたもので、いまも山よりに屋敷跡がある。この高田村での渡守をすすめるものがあって現在地に住みついた。渡辺氏(もう一人の旧家)は、その後他所から加わったものだ。最初は門徒ではなかった。いま湯沢にある松岳寺(禅宗)が高田村にあった頃はその信徒で、亡くなられた前の住職から寺にわしらの系図があるということを聞いたことがある』、およそ以上である。

こう書かれていると、まるで高田全体が船頭集落のようであるが、実際はそうではない。この地域の一部が「てえししょ」なのだという。昭和初期の記録では16戸である。

「ワタリ」「たいし」の語源について、動画で解説したので、ぜひ聞いていただきたい。

この消火栓がある交差点から南東のブロックだと聞いた。文献では須貝、近正という名字が出てくるが、実際は「渡辺」なのだという。

名字の分布の解析から分かる通り、確かに渡辺が集中している。小池もあるのは、同じく荒川沿いにある湯ノ沢との交流があったからだろう。須貝は部落かどうかに関係なく高田に多い名字だ。そして、近正は見当たらない。

部落解放同盟が結成されており、それでも加入しているのは数戸だろうということだ。

確かに、船乗りと、その他農業以外の仕事をしていたということだ。近正という家は確かに昔はあったが、今は移住してしまったのでいないそうだ。その名字から分かる通り、海老江にルーツがあると言われていた。

須貝は確かに高田に多いが、部落内にもある。その理由は、一説ではもともと須貝は本村の名字だが、昔は「てえししょ」は別の自治会になっており、そこは会費がかからなかった。そこで、会費を払えなくなった、あるいは払いたくない須貝家が「てえししょ」に移ったというのである。

この部落にも落人伝説があるそうだ。ただ、湯ノ沢で伝承されている、もともとは大池だったが平家方であったことを隠すために小池にしたという話との関連性は不明である。

部落自体は、農村からあぶれた人が荒川沿いに勝手に住むようになったことが起源ではないかと言われている。

過去の記録では、関川村には他にもごく少数の部落が点在していたようである。しかし、実際は高田の「てえししょ」が関川村の唯一の部落で、他にあったとすれば、ここから移住した「渡辺さん」だろうという。

しかし、関川村では1967年の羽越水害で、荒川沿いは大きな被害を受け、それに伴う移住者が多かったという。だから、高田以外の少戸数の部落は現存しているかどうかも分からないし、発見はかなり難しいのではないかという。

前述の通り、昭和の頃までは「てえししょ」は別の自治会だったが今は一緒になっている。また、平成初期くらいまでは、高田在住の須貝さんや渡辺さんが交際相手にいると、あの交差点の東なのか西なのかを調べに来る人がいて、その結果によっては親に結婚を反対されるということがあったそうだ。

ただ、さすがに平成中期以降からは、その類の話はぱったりとなくなったそうだ。

なお、「たいし」については山形方面からやってきた山の民である「庄内てえし」がいるという話を聞いた。具体的に庄内のどこから来たのかということまでは分からなかったので、今後の研究テーマとなるだろう。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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曲輪クエスト(331)新潟県 岩船郡 関川村 高田」への4件のフィードバック

  1. 匿名

    新潟を見てると
    同和地区に指定されている、指定されていないを問わず
    一般的な漁村と部落の相違点がわかりません。
    漁村=部落と見てよいでしょうか?
    #059235b0b5691de884a600a2e178707f

    返信
    1. 宮部 龍彦 投稿作成者

      新潟の場合、漁村は部落ではないようです
      漁をするのではなく、人や物を運ぶ仕事が部落の生業だったようです
      むしろ漁村の方が殺生する仕事なのに部落ではないことに着目です

      返信
      1. 匿名

        ありがとうございます。
        なるほどですね。
        漁師は殺生をするのに差別の対象では無い。もともとは職業から部落差別はきていないのでしょうね。殺生と言えば、歴史上人を一番殺した人は信長だとか?人を一番殺した家系は天皇家だとか???

        #059235b0b5691de884a600a2e178707f

        返信