3年前の熱海市土石流によって全国的に違法な盛り土への規制強化が進むが、悪質な事案は後を絶たない。福島県西郷村真船地内の民有林で違法な盛り土を行ったとして茨城県つくば市の長嶺嗣義容疑者が23日、森林法違反で逮捕された。同容疑者は周辺の自治体から行政処分を受ける常習犯。改めて摘発の困難さを物語る。
盛土と メガソーラーの村で 起きた事件
白河高原地帯に位置する西郷村は栃木県と隣接し、村西部に那須連峰、北部は羽鳥湖高原に連なる。美しい景観で定評があるが、同時に盛り土業者から見れば格好のターゲットになりそうな地域だ。
しかも盛り土現場から北には各地で問題視される上海電力のメガソーラーが設置されている。盛り土、再エネに悩まさせる村なのだ。
報道各社の記事によると長嶺容疑者は昨年12月から今年2月まで国道289号沿、西郷村真船地内の民有林で県知事の許可を得ず1ヘクタール以上の盛り土を行った上、中止命令に従わなかった。
逮捕以前から盛り土の危険性が報じられており、昨年7月頃から12月までに高さ約10m、全長50mという巨大な盛り土が造成された。国道289号には運搬のためのトラックが大挙し、道路が泥だらけになったこともあったという。
同村議会は昨年12月27日の臨時議会で土砂埋め立て規制条例を可決。盛り土を規制する条例の場合、往々にして反対する議員がいるものだが本条例は全会一致でのことだった。県内の自治体では初の条例で今年4月1日からの施行だったが、残念ながら同条例で長嶺容疑者を規制することはできなかった。
地元では「条例が施行される前に駆け足で土を搬入した」との見方もあるが、どちらにしても条例で規制できる業者ではなかった。
報道関係者によれば長嶺容疑者は株式会社秋津洲工業を経営し、北関東地方で盛り土を繰り返してきたと話す。
「秋津洲は“あきつしま”と読むのですが、所在地もはっきりしていません。以前は盛り土造成地付近に連絡先や名前が書かれた看板が立っていましたが、いつの間にか撤去されていました」(同)
長嶺容疑者を追うと、民族派右翼団体茨城支部に名を連ねていた。団体本部の幹部に問い合わせてみると「ウチの団体とは無関係ですが、詳細を調べてみます」とした後、こんな返答があった。
「勝手に茨城支部を名乗って県に政治団体の届け出をしたそうだけど不受理ということです。確かに代表者は以前、ウチに出入りしていたけど離れて、今は服役中と聞いています。理由? シャブだったかなあ。長嶺という人物とは面識はありませんが(容疑者と)同一人ということです」
右翼団体構成員としての活動履歴は確認できなかった。
北関東の 複数の自治体から 行政処分
驚いたのは長嶺容疑者がこれまで受けた行政処分の数だ。栃木県東部、北部の自治体から措置命令を受けている。いずれも盛り土は撤去されていない状況だ。
栃木県内で土の持ち込み先を失い、北上して福島県西郷村を新たな造成地に選んだとみられる。しかしこれまで各自治体が長嶺容疑者に対して措置命令を下したにも関わらずなぜ放置され続けてきたのか。
措置命令を出した自治体はそれぞれ名称こそ異なるが、規制条例は施行されている。盛り土に詳しい自治体職員は「警察に相談しても結局、摘発するのは難しい」と嘆く。
これでは無法地帯だ。現に複数の自治体が措置命令を下してもどこ吹く風といったところだ。
「森林法では1ヘクタールを超える開発の場合は都道府県知事の許可が必要ですが、現場の盛り土は1.5ヘクタール以上のため今年3月に県南農林事務所が刑事告発をしたのです」(町関係者)
刑事告発となった場合、より権限が強い都道府県が動いた方がいいということか。しかし他県をみると条例違反で検挙できた事例もある。一方、長嶺容疑者の場合、措置命令を下した自治体の中には警察に相談したケースもあったが、刑事事件化できなかったのが不思議だ。
加えてかねてから指摘される複雑な法制度も課題である。
熱海市土石流でも盛り土規制の法令や権限(県と自治体)が非常に複雑で分かりにくいことが問題になった。規制条例を制定する自治体が増えているが、それよりも一律の規制法が違法盛り土撲滅の近道ではないだろうか。
ここに記載の住所は違うんですかね?
https://info.gbiz.go.jp/hojin/ichiran?hojinBango=8050001041353
#2ec7d76a3944b1328904a0a130fee396
同じ会社ですよ。所在地を転々としています。